請求書を電子化・PDFで作る/送る方法|電子帳簿保存法と電子インボイス

PDFの請求書は有効?電子化のメリット
結論から言うと、請求書をPDFで作成してメールで送ることは法的に問題ありません。請求書の発行は法律で紙と決められているわけではなく、紙でもPDFでも証拠としての効力は同じです。インボイス制度でも、適格請求書を電子データ(電磁的記録)で提供することが認められています(国税庁 インボイス制度について)。
請求書をPDFにする実務的なメリットは大きく2つです。1つ目は印刷・封入・郵送のコストと手間がなくなること。切手代や封筒代がかからず、発行したその場でメール送付まで完結します。2つ目は相手が誰でも同じレイアウトで開けること。ExcelやWordのまま送るとソフトのバージョンやフォントで体裁が崩れますが、PDFなら見たままの形で届き、金額や明細を相手が簡単に書き換えることもできません。
紙でもPDFでも請求書に書く項目は同じです。インボイス制度に対応するなら、登録番号・取引年月日・取引内容・税率ごとに区分した合計額と適用税率・税率ごとの消費税額・宛名の6項目が必要になります。各項目の具体的な書き方は 請求書の書き方 にまとめています。この記事は「電子化してPDFで作り、送り、保存する」流れに絞って解説します。
請求書をPDFで作る方法(Excel/Word・専用ツール)
請求書をPDFにする方法は、①Excel・Wordで作ってPDFに変換する、②専用ツールで直接PDFを作るの2通りです。たまにしか発行しないなら①、毎月発行するなら②が向いています。
Excel・WordからPDFに変換する
すでにひな形がある場合は、印刷せずにそのままPDFへ書き出せます。「ファイル」→「名前を付けて保存」でファイルの種類を「PDF」にするか、「ファイル」→「エクスポート」→「PDF/XPSの作成」を選びます。Googleスプレッドシート・ドキュメントなら「ファイル」→「ダウンロード」→「PDF(.pdf)」から変換できます。専用ソフトの追加購入は不要です。
Excelで変換するときに注意したいのが印刷範囲のずれです。明細が複数ページに割れたり、余白が大きく出たりしやすいので、変換前に印刷プレビューでA4・1枚に収まっているかを確認します。改ページ位置や用紙の向きを整えておくと、きれいな1枚のPDFになります。
専用ツールで直接PDFを作る
毎月のように請求書を出すなら、項目を入力するだけでPDFが出る専用ツールのほうが速くて確実です。単価×数量や消費税・合計が自動計算されるため計算ミスが起きにくく、税率ごとの区分や登録番号といったインボイスの記載漏れも防げます。Excelのような印刷範囲の調整も要りません。
TEMPLEX の請求書テンプレートも、フォームに入力するだけで体裁の整った請求書をPDFで出力でき、登録不要・無料で使えます。項目ごとの消費税表示(インボイス対応)にも対応しているので、ブラウザを開いてすぐ試せます → TEMPLEX 請求書テンプレート。スマホでの作成手順は スマホで請求書を作る方法 でも紹介しています。

PDFで送る請求書は朱肉で押印できないため、角印は「電子印影」をPDF上に重ねるのが一般的です。ただし請求書への押印は法的な必須ではないので、相手が求めなければ印影なしでも通用します。TEMPLEX では 電子印鑑作成ツール で社名から無料で角印を作り、PDFに重ねて出力できます。
PDFの請求書をメールで送るときの注意点
PDFをメール送付に切り替えるときは、いきなり送らず「請求書をPDF(電子)で送ってよいか」を取引先に一言確認するのが安全です。経理の処理上、紙の原本を求める会社もまだあるためです。ファイル名は「請求書.pdf」だけにせず、「請求書_株式会社○○御中_20260602.pdf」のように書類名・宛先・日付を入れると、相手の受信箱で他社の請求書と紛れず、保存もしやすくなります。送信前に、添付したPDFが正しい相手・正しい内容かを必ず開いて確認しましょう。
メール本文には短い挨拶と、請求書を添付した旨の一文を添えます。下記はそのまま使える一文です(件名・宛名を含む送付メールの全文は 請求書送付メールの例文 にあります)。
パスワード付き(PPAP)での送付は避ける
迷いやすいのが、PDFにパスワードをかけて別メールでパスワードを送る方法(いわゆるPPAP)です。これは現在は推奨されていません。同じメール経路でパスワードを送るため盗み見対策にならず、暗号化ファイルはウイルスチェックをすり抜けるなど、かえってリスクになりうるためです。2020年に内閣府・内閣官房が政府内での運用を廃止して以降、大手企業でも取りやめが広がっています。
暗号化ファイルそのものを受信拒否する企業も増えています。たとえばGMOインターネットは2025年12月1日から、パスワード付きのPDF・ZIP・Officeファイルなど暗号化ファイル全般の受信を制限します。通常の請求書のやり取りなら、パスワードをかけずにそのまま添付して問題ありません。秘匿性が高い場合は、メール添付ではなくファイル共有サービスのリンクで渡すのが安全です。
PDFで送った請求書は発行側も電子で保存する(電子帳簿保存法)
見落としがちなのが、PDFで送った請求書の控えは、発行した側も電子データのまま保存する義務があることです。メールに添付して授受した請求書は電子帳簿保存法の「電子取引データ保存」にあたり、2024年1月1日からすべての事業者に義務化されています(国税庁 電子帳簿等保存制度特設サイト)。法人・個人事業主・規模を問わず対象です。
ここで多い勘違いが「送ったPDFを紙に印刷してファイリングすればよい」というものです。電子で授受した請求書を紙に印刷しただけの保存は原則認められません。送ったPDF(控え)のデータそのものを、次の2つの要件を満たす形で残す必要があります。
真実性の確保(改ざん防止)
後からこっそり金額や日付を書き換えられない状態にすることです。次のいずれか1つを満たせば構いません。
- 授受したデータにタイムスタンプを付与する
- 訂正・削除の履歴が残る、または訂正・削除ができないシステムで授受・保存する
- 改ざん防止についての事務処理規程を定めて運用する
小規模な事業者で現実的なのは3つ目です。事務処理規程を作って運用すれば、専用システムやタイムスタンプの契約がなくても真実性の要件を満たせます。規程のひな形は国税庁サイト(各種規程等のサンプル)で配布されています。ただし規程は作っただけでは足りず、書いた手順どおりに運用していることが前提です。中身と実際のやり方が食い違っていると認められないため、自社で無理なく守れる内容にしておきましょう。
可視性の確保(検索性)
求められたときにすぐ該当の請求書を取り出せる状態にすることです。具体的には、「取引年月日・取引金額・取引先」の3項目で検索できるようにします。専用システムがなくても、ファイル名にこの3項目を入れて規則的に保存する方法で足ります。
基準期間(2年前)の売上高が5,000万円以下の事業者は、検索要件をすべて満たさなくてよいとされています(税務調査でデータのダウンロードの求めに応じられること等が前提)。売上高がこれを超える場合でも、PDFを印刷した書面を取引年月日・取引先ごとに整理して提示・提出できるようにしていれば、同じく検索要件は不要です。いずれの場合もファイル名での索引づくりまでは不要ですが、「電子データを残すこと」自体は省略できません。請求書の保存年数(法人・個人事業主)や保存方法のくわしい解説は 請求書の保管期間 をご覧ください。
「PDFの請求書」と「電子インボイス(Peppol/JP PINT)」の違い
「電子インボイス」という言葉を見かけて混乱しやすいのですが、PDFをメールで送るのと、電子インボイス(デジタルインボイス)は別物です。PDFは人が目で見て読む電子書類で、相手は受け取ったあと手作業で会計ソフトに入力します。一方の電子インボイスは請求データそのものを決まった形式でシステム間が直接やり取りする仕組みで、受け取った側は手入力なしで会計処理に取り込めます。
その国際的な標準規格がPeppol(ペポル)で、日本向けに調整した仕様がJP PINTです。日本ではデジタル庁が日本のPeppol管理機関としてJP PINTを管理しています(デジタル庁 JP PINT)。取引先と違うシステムを使っていても、双方がこの規格に対応していれば請求データを自動で連携でき、入力ミスや転記の手間が減るのが利点です。
電子インボイスの利用には、対応した会計・請求システムどうしの接続(Peppolネットワーク)が前提になります。まだ取引先がそろっていない・件数が多くない段階では、PDFをメールで送る方法で十分です。PDFでの請求もインボイス制度上は適格請求書として有効なので、無理にシステムを入れる必要はありません。将来やり取りが増えてきたら電子インボイスを検討する、という順番で問題ありません。
コラム著者・編集者
TEMPLEX編集チーム
TEMPLEX編集チームは、ビジネス文書の作成・管理に精通した実務経験者と技術ライターで構成されています。送付状・請求書・見積書をはじめとする各種ビジネス書類のフォーマットや書き方のノウハウを、わかりやすく丁寧にお届けします。「Office不要で誰でもすぐ使える」をコンセプトに、忙しいビジネスパーソンの書類作成をサポートします。











