請求書の値引きの書き方|値引き行・端数調整の記載例とマイナス表記

請求書の値引きの書き方|値引き行・端数調整の記載例とマイナス表記

請求書の値引きは「値引き」行をマイナスで立てる

請求書で値引きをするときの基本は、各品目を通常の単価のまま並べて小計を出し、その下に「値引き」という1行を追加して金額をマイナスで書くことです。単価をこっそり書き換えるのではなく、引いた事実を1行として残します。

金額の頭には「▲」または「-(マイナス)」を付けます。会計慣行では白抜きの「△」もよく使われ、どれでも構いません。いずれも法律で定められた様式ではなく慣行上の表記なので、記号は社内で1つに統一することが大切です。文字を赤くするだけで値引きを表す書き方は、白黒印刷やFAXで伝わらず誤解のもとになるため避けます。

品名・摘要数量単位単価金額
Webサイト 保守費(4月分)1200,000200,000
追加コンテンツ制作5ページ20,000100,000
小計300,000
値引き(継続契約のため)▲20,000
値引き後 小計(税抜)280,000
消費税(10%)28,000
ご請求金額(税込)308,000
請求書内の値引き行・小計/消費税/請求金額の記載例

上の表のように値引き前の小計・値引き額・値引き後の小計を3行で見せると、相手の経理は「定価いくらから・いくら引いて・いくらになったか」を一目で追え、社内で支払処理を通しやすくなります。摘要には「値引き」とだけ書かず、後ほど触れる値引き理由を一言添えるのがおすすめです。

値引き行をきちんと立てるのは、相手への親切だけが理由ではありません。単価を黙って下げると、その金額が「正規の価格」だと相手に認識され、次回以降も同じ単価を求められます。値引き行があれば「定価はこの額で、今回は特別に引いた」という事実が書面に残り、双方にとって誠実なやり取りになります。明細欄や内訳の作り方そのものは請求書の明細(内訳)の書き方を参照してください。

請求書の値引きは項目立てするのがおすすめ
請求書の値引きは項目立てするのがおすすめ

消費税は「値引き後の金額」に対して計算する

値引きで最も間違えやすいのが、消費税との計算順です。消費税は、値引きしたあとの金額に対して計算します。つまり「税抜の小計から値引き → 値引き後の税抜額に消費税を掛ける」という順番です。先ほどの例なら、税抜300,000円から20,000円を引いた280,000円に10%を掛けて消費税は28,000円になります。

国税庁も、これから行う取引の値引き(請求前に減額するケース)について「値引き後の対価の額に係る消費税額等」を記載すると示しています。税込合計から直接値引きする方法も税法上は認められていますが、その場合は値引き後の税込額を税率ごとに割り戻して消費税を出し直すことになり、計算が複雑でミスを誘発しやすくなります。税抜の段階で値引きしてから課税するのが、最もシンプルで間違いの少ないやり方です。

請求書全体の消費税の端数処理(円未満を切り捨て・切り上げ・四捨五入のどれにするか)は、1つの適格請求書につき税率ごとに1回と決められています。これは値引きの有無とは別のルールなので、詳しくは請求書の書き方(端数処理)を参照してください。値引き行・端数値引きそのものの作り方の基本パターンは見積書の値引きの書き方に図つきでまとめています。

端数調整の書き方(請求金額を切りのよい額にそろえる)

「請求金額の端数を落として切りのよい金額にしてほしい」と頼まれることはよくあります。このときも端数を独立した値引き行にして差し引くのが基本です。請求書の合計を勝手に書き換えると、小計+消費税と合計が合わなくなり、相手の経理で突き返されます。

相手が気にしているのは「いくら払うか」なので、税込のご請求金額をちょうど300,000円にそろえるのが分かりやすい見せ方です。ここでも値引きは税抜の小計に入れ、消費税は値引き後の税抜額に掛けます。次の例は、税抜小計290,910円(そのままだと税込320,001円という半端な額)から端数を値引きし、税込合計をちょうど300,000円にそろえた記載です。

摘要金額
小計(税抜)290,910
値引き(端数調整)▲18,183
値引き後 小計(税抜)272,727
消費税(10%)27,273
ご請求金額(税込)300,000
端数調整の記載例(税込のご請求金額を300,000円にそろえる)

摘要は「値引き(端数調整)」「端数調整」「サービス」など、端数を落としたと分かる名目にしておきます。請求金額の合計の端数を丸める値引きは、いわゆる出精値引き(企業努力として総額を調整する値引き)にあたります。出精値引きという言葉の意味や使いどころは出精値引きの意味と書き方で詳しく解説しています。

見積書で決めた値引きを請求書に転記するとき

見積書の段階で値引きを提示していた場合は、見積書と同じ値引き行・同じ金額を請求書にそのまま転記するのが原則です。見積では値引きを見せていたのに請求書で値引き行が消えていたり、定価だけが載っていたりすると、相手は「話と違う」と感じて支払いを止めかねません。

見積の段階から税抜で値引き→値引き後の税抜額に消費税、という順番でそろえておくと、請求書では金額を写すだけで済みます。逆に見積を税込で値引きしていると、請求書の消費税計算と食い違いやすいので、見積を作る時点から税抜段階で値引きしておくのが安全です。

見積より作業が増減して金額が変わったときは、定価側(数量・単価)を実態に合わせて直し、値引き額は据え置くか、理由を添えて調整するのが筋です。値引き額だけを黙って削ると「値上げされた」と受け取られます。値引きの依頼・回答のやり取りや断り方は見積書の値引きの書き方を参照してください。

請求書を出したあとに値引きするとき(返還インボイス)

値引きには、請求書を出す前に減額するか/出したあとに値引くかの2つのタイミングがあり、書き方が変わります。これは見積書にはない、請求書ならではの分かれ道です。

  • 請求前の値引き(直接減額) — 請求書を作る時点で値引きが決まっている場合。これまで説明したとおり、請求書に値引き行を立てて対価の額から直接引き、値引き後の金額に消費税を計算します。
  • 請求後の値引き(売上対価の返還等) — 一度請求・販売した後に、返品・割戻し・お詫びなどで値引く場合。相手が課税事業者なら、原則として「適格返還請求書(返還インボイス)」を交付します。

つまり、すでに請求済みの取引を後から値引くときは、当月分の請求書にただマイナス行を足すだけでなく、返還インボイスとして必要事項を満たす必要があります。とはいえ別の書類を起こす必要はなく、今回の請求書と返還インボイスを1枚にまとめて発行できます。実務では、当月の新しい請求の下に返還行を1行加える形が多く使われます。

このとき注意したいのが摘要の書き方です。返還インボイスには、値引きの基になった元の取引がいつのものか分かる年月日を記載する必要があります。そのため摘要は「値引き」や単なる「前月分 値引き」ではなく、「4月分取引に対する値引き ▲〇〇円」のように対象月を明記します。毎月継続して取引している相手なら、個別の日付ではなく「4月分」のような月単位の記載で差し支えありません。

国税庁の取扱いでは、値引きの時期が請求の前か後かの厳密な区分が難しいときは「直接減額」と「返還等」のどちらで処理しても差し支えないとされています。また、返還する金額(税込)が1万円未満なら返還インボイスの交付義務は免除されます(国税庁 少額な返還インボイスの交付義務免除の概要)。少額の端数調整までいちいち返還インボイスを出す必要はない、ということです。

前受金・既払い・未入金と相殺するとき

値引きと混同しやすいのが、すでに受け取ったお金を差し引く「相殺」です。前受金・着手金・内金をもらっている場合や前回の過入金を充当する場合は、それは値引きではありません。請求総額はそのまま計算したうえで、受領済み額を最後に差し引いて「今回ご請求額」を出すのが正しい書き方です。

値引きと相殺で決定的に違うのは、差し引く位置です。値引きは税抜の小計から引く/相殺(前受金など)は消費税を計算したあとの税込合計から引く。前受金は値引きではなく「すでに支払い済みの代金(税込)」なので、税抜の小計から引くと消費税が二重に減ってしまいます。前受金を差し引く請求書の具体的な記載例・備考の書き方は前受金・前払いの請求書の書き方で詳しく解説しています。

なお、入金が遅れている相手に「今回だけ値引きするので支払ってほしい」と持ちかけるケースもありますが、未入金分の減額は安易に値引きにしないのが無難です。まずは支払いを促し、それでも回収が難しい場合の最終手段として検討します。督促の進め方や文面は入金催促メールの例文と売掛金回収にまとめています。

軽減税率(8%)と10%が混在するときの値引き

飲食料品(8%)と一般商品(10%)を1枚の請求書にまとめ、合計から一括で値引きするときは、値引き額を税率ごとに分けてから、それぞれの値引き後の金額で消費税を計算します。値引きを片方の税率にまとめて押し付けると、税率ごとの消費税額が正しく出ません。

税率ごとの値引き額がはっきりしないときは、国税庁の取扱い値引き額を「資産の価額の比率」で按分すると決められています。たとえば10%対象が税込3,300円・8%対象が税込2,160円(合計5,460円)の取引で1,000円値引くなら、次のように分けます。

区分計算値引き額
10%対象1,000 × 3,300 ÷ 5,460約604
8%対象1,000 × 2,160 ÷ 5,460約396
一括値引き1,000円を税率ごとに按分した例(国税庁の計算例)

値引き後の税込額は10%対象が2,696円(3,300−604)、8%対象が1,764円(2,160−396)です。これを税率ごとに税抜・消費税へ割り戻すと、請求書の最終的な金額欄は次のようになります。

区分値引き後 小計(税抜)消費税値引き後 合計(税込)
10%対象2,4512452,696
8%対象1,6341301,764
ご請求金額(税込)4,460
按分後の税率ごとの値引き後合計とご請求金額

上のように、値引き後の金額(10%対象2,696円・8%対象1,764円)を出し、それぞれに消費税を計算して税率ごとに区分表示します。なお、どちらか一方の税率からだけ値引きした場合でも、値引き額か値引き後の金額が請求書で分かれば、合理的に区分されたものとして認められます。明細に税率を併記するときは「8%」「10%」とだけ書けば足り、軽減税率の脚注(※印など)は必須ではありません。

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