個人事業主じゃない人の請求書の書き方|会社員の副業・個人から会社へ

個人事業主じゃなくても請求書は出せる(開業届も屋号もいらない)
結論から言うと、個人事業主でなくても、会社員の副業でも、一般の個人でも、請求書は問題なく発行できます。請求書は「代金を請求する通知」にすぎず、発行できる人を事業者に限る法律はありません。仕事を引き受けて報酬を受け取る立場なら、誰でも請求書を出せます。
よくある不安が「開業届を出していないのに請求書を出していいのか」ですが、開業届を出していなくても請求書は発行できますし、報酬を受け取っても問題ありません。そもそも開業届(個人事業の開業・廃業等届出書)は、提出が求められているものの(所得税法229条)、提出しなくても罰則はありません。届出の有無と、請求書を出せるかどうかは別の話です。なお開業届の提出期限は2026年1月1日以後の開業から見直され、事業を始めた年分の確定申告期限までに提出すればよいことになっています(それ以前の開業は開業日から1か月以内)。
屋号も必須ではありません。屋号がなければ自分の氏名(フルネーム)を発行者として書けば、それだけで有効な請求書になります。事業用の口座を持っていなくても、ふだん使っている個人名義の銀行口座を振込先にして構いません。
「個人事業主」かどうかは、開業届を出したかどうかで決まるわけではありません。継続して事業として収入を得ているかどうかで判断されます。スポット(単発)で原稿を書いた、知人の会社の作業を1回手伝った、という程度なら、無理に開業届を出さず一般の個人として請求書を出せば十分です。確定申告では、その収入が雑所得になるケースもあります。
そもそも自分は請求書を出す側?(給与なら出さない)
書き方に入る前に、ひとつだけ確認しておきたいことがあります。もらうお金が「給与」なら、請求書は出しません。アルバイト・パート・日雇いなど、雇われて働いた対価は給与です。給与は会社が金額を計算して支払い、給与明細が発行されるため、こちらから請求書を出す場面はありません。
請求書を出すのは、雇用ではなく「業務委託」「請負」として仕事を受け、報酬を受け取る場合です。会社員が休日に受けた制作の仕事、知人の会社から頼まれた単発の作業、フリマやハンドメイドではなく「依頼を受けて納品した」ケースなどがこれにあたります。自分がどちらかわからないときは、次の表で見分けてください。
| もらうお金 | 性質 | 請求書 |
|---|---|---|
| アルバイト・パートの賃金 | 給与(雇用) | 出さない(給与明細が出る) |
| 副業・単発で引き受けた仕事の報酬 | 報酬(業務委託・請負) | 出す |
| 原稿料・デザイン料・講演料など | 報酬 | 出す |
迷ったら「相手の指揮命令に従って働いたか」で考えます。時間や場所を会社に管理されて働くなら給与、成果物や仕事の完成に対して支払われるなら報酬、というのが大まかな目安です。この記事は、報酬として請求書を出す人に向けた内容です。
個人から会社へ出す請求書の書き方と記入例
個人が会社へ出す請求書も、書く項目は会社が出すものと基本的に同じです。発行者は屋号がなければ氏名、宛先は相手の会社名に「御中」、あとは件名・明細・金額・振込先・支払期日をそろえれば完成します。決まったフォーマットはないので、必要な項目が漏れていないかだけ確認すれば大丈夫です。
| 項目 | 書き方のポイント |
|---|---|
| 発行者(自分) | 屋号がなければ氏名(フルネーム)。住所・電話・メールは義務ではないが、連絡先として書くのが安心 |
| 宛先 | 相手の正式名称+「御中」。担当者個人宛なら「様」。御中と様は重ねない |
| 発行日・請求書番号 | 作成・発送する日付。番号は管理用。なくても請求書としては成立する |
| 件名・明細 | 「○○制作費」など、何の対価かがわかるように品目・数量・単価・金額を書く |
| 振込先 | 個人名義の口座でOK。銀行名・支店名・口座種別・口座番号・名義(カナ)をすべて書く |
発行者の住所や電話番号は、法律上は書かなくても請求書として成立します。ただし連絡先が一切ないと、相手が問い合わせできず入金確認も取りづらいので、氏名のそばに連絡先を添えるのが実務では一般的です。会社員の方で勤務先に副業を知られたくない場合でも、請求書に勤務先の情報を書く必要はありません。書くのは自分の氏名と連絡先だけです。

押印は必須ではありません。個人の請求書に印鑑(認印など)を押しても構いませんが、なくても効力は変わりません。気になる場合だけ、氏名の横に認印を押すか、PDFなら画像の印影を添えれば十分です。
送り方は、完成した請求書をPDFにして、メールやチャットで送るのが主流です。ただし会社によっては紙の原本を郵送するよう求められることもあるので、初めての相手なら、送る前に担当者へPDFでよいか原本が必要かを確認しておくと安心です。
源泉徴収はどうなる?(会社が天引きする・自分では引かない)
個人が会社から報酬をもらうとき、知っておきたいのが源泉徴収です。源泉徴収(所得税の天引き)をするのは支払う側の会社であって、請求するあなた自身が引くわけではありません。あなたは請求書に本来の報酬額を書き、会社がそこから所得税分を差し引いて振り込む、という流れです。
ただし、何でも天引きされるわけではありません。源泉徴収の対象になるのは、所得税法で決められた一定の報酬です。原稿料・デザイン料・講演料・翻訳料、弁護士や税理士など士業への報酬などが対象で、これに当てはまらない作業の報酬は天引きされないこともあります。対象かどうかは支払う会社が判断します。
税率は報酬額の10.21%(所得税10%+復興特別所得税0.21%)です。同じ相手への1回の支払いが100万円を超える場合は、超えた部分だけ20.42%になります(国税庁 タックスアンサー No.2798)。計算で1円未満の端数が出たときは、原則として切り捨てて構いません。対象になる報酬を請求するときは、相手が振り込む金額がはっきりするよう、源泉徴収税額を差し引いた形で書いておくと親切です(記載は義務ではありません)。
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 報酬額 | 50,000円 |
| 源泉徴収税額 | △5,105円 |
| ご請求金額 | 44,895円 |
ここで個人どうしの取引と違う点があります。源泉徴収をする義務があるのは、給与を支払っている会社や個人など(源泉徴収義務者)に限られます。会社はふつう従業員に給与を払っているので源泉徴収義務者にあたり、あなたへの報酬からも天引きします。一方、給与の支払がない個人が支払う報酬・料金は、源泉徴収する必要がありません(国税庁 タックスアンサー No.2502)。つまり相手が「会社」なら天引きされることが多く、相手が従業員のいない一般個人なら天引きされない、という違いがあります。
天引きされた所得税は、払いすぎになっていることがあります。源泉徴収は経費を引く前の金額にかかるため、確定申告をすると納めすぎた分が戻る場合があります。副業の所得が年20万円を超えるなら確定申告が必要ですが、20万円以下でも源泉徴収されているなら申告して還付を受けられることがあります。請求書の控えは、申告のときの記録として残しておきましょう。
会社員の方が気にしておきたいのが住民税です。所得税は副業の所得が20万円以下なら確定申告が不要ですが、住民税にはこの20万円ルールがなく、副業の所得が少しでもあれば住んでいる市区町村への住民税の申告が別途必要になります。所得税の確定申告をすればその情報が市区町村にも回るので住民税の申告は不要ですが、確定申告をしない場合は住民税だけ申告が要る、と覚えておきましょう。
副業を勤務先に知られたくないときは、住民税の納め方を「自分で納付」にします。副業が会社に伝わる主な経路は、住民税額が変わって勤務先に届く通知です。確定申告書の第二表「住民税に関する事項」で、給与以外の所得にかかる住民税の徴収方法を「自分で納付(普通徴収)」に指定すると、副業分の納付書が自宅に届くため、勤務先に金額が通知されにくくなります。
消費税とインボイスは?(登録は基本いらない)
最後に消費税とインボイス(適格請求書)です。個人事業主でない人がいちばん身構えるところですが、単発・小規模で請求書を出すだけなら、インボイスの登録番号は基本的に書きません(書けません)。登録番号「T+13桁」は、税務署に登録した適格請求書発行事業者だけに割り当てられるものだからです。
そして、適格請求書発行事業者として登録するには、消費税の課税事業者であることが前提になります(国税庁 適格請求書発行事業者の登録申請手続)。継続して事業を営んでいるわけではない一般個人や、ごく小規模な副業の人は、そもそも登録の対象になりにくく、登録する必要もないのが通常です。登録番号がないなら、欄を作らず何も書かないのが正解です。架空の番号やそれらしい英数字を「登録番号」として書くのは禁止されています。
消費税そのものについては、登録していない人でも、報酬に消費税相当額を上乗せして請求すること自体は問題ありません。「税込○○円」とまとめて書いても、税抜+消費税相当額に分けて書いても構いません。迷ったら、税込の総額だけを書くのがいちばん無難です。免税事業者(登録していない人)の消費税の見せ方は、別の記事でくわしく整理しています。

免税事業者の請求書の書き方|消費税は請求していい?登録番号の扱い
免税事業者の請求書の書き方を、発行する側の視点で解説。消費税相当額の請求は問題ないこと、登録番号は書けないこと、適格請求書は出せないこと、買い手側の仕入税額控除の経過措置(80%)まで、国税庁の情報をもとに記入例つきでまとめました。
記事を読む登録していなくても、相手の会社が困るわけではありません。登録番号のない請求書を受け取った会社は、当面は仕入税額控除の経過措置を使えます。控除できる割合は2026年9月30日までは80%、2026年10月1日からは70%へと段階的に下がっていきます(国税庁 令和8年度税制改正特集)が、あなたの側で特別な様式を用意する必要はなく、通常どおりの請求書で構いません。
個人の請求書もテンプレートで簡単に作れる
ここまでをまとめると、個人事業主でない人の請求書は「開業届・屋号がなくてもOK/発行者は氏名/登録番号は書かない/源泉徴収は会社がする」の4点を押さえれば十分です。あとは氏名・宛先・金額・振込先を埋めるだけで形になります。
書式をゼロから作る必要はありません。TEMPLEXの請求書テンプレートなら、フォームに入力するだけで体裁の整った請求書をPDFにできます。屋号がなくても氏名だけで発行でき、登録番号は空欄のまま出せるので、個人でもそのまま使えます。テンプレートはこちらから無料で使えます。
コラム著者・編集者
TEMPLEX編集チーム
TEMPLEX編集チームは、ビジネス文書の作成・管理に精通した実務経験者と技術ライターで構成されています。送付状・請求書・見積書をはじめとする各種ビジネス書類のフォーマットや書き方のノウハウを、わかりやすく丁寧にお届けします。「Office不要で誰でもすぐ使える」をコンセプトに、忙しいビジネスパーソンの書類作成をサポートします。








