個人事業主・個人の請求書の書き方|屋号・印鑑・インボイスと記入例

個人事業主・個人でも請求書は発行できる(屋号なしでもOK)
会社員から独立したばかりだと「会社じゃないのに請求書を出していいのか」と不安になりがちですが、個人事業主・個人でも請求書は問題なく発行でき、法的にも有効です。請求書には法律で定められた決まった様式がなく、誰がいくらを請求しているかが相手に伝われば足りるため、屋号がなくても本名(個人名)だけで発行できます。
法人の請求書と中身はほとんど同じで、個人事業主で違いが出るのは主に「発行者欄(屋号か氏名か)」「押印」「源泉徴収」の3点です。この記事ではその3点を中心に、個人事業主ならではの迷いどころを記入例つきで解説します。請求書全体の必須項目や端数処理など共通の基本は請求書の書き方にまとめています。
ここでいう「個人」は、事業として継続的に仕事を請け負う個人事業主・フリーランスが前提です。開業届を出していない会社員の副業や、フリマ・単発の謝礼など事業者でない立場での請求は扱いが少し異なるため、その場合は個人事業主じゃない人の請求書の書き方をご覧ください。
屋号と氏名、どちらで出す?(発行者欄の書き方)
個人事業主の請求書でいちばん迷うのが発行者欄です。屋号を書くか、本名を書くか、両方書くか。結論から言うと、屋号のみ・氏名のみ・屋号+氏名のどれでも有効です。屋号を持っていない方は氏名だけで構いません。
インボイス(適格請求書)として発行する場合でも考え方は同じで、国税庁は電話番号を記載するなどして交付する事業者を特定できれば、屋号や省略した名称での記載でも差し支えないとしています(国税庁No.6625・インボイスQ&A問55)。屋号で出すなら、連絡先を併記して「誰の事業か」が分かる状態にしておけば問題ありません。
- 屋号がある場合 — 「屋号+代表者名」が最も無難。取引先からも誰の事業か分かり、口座が個人名義でも照合しやすい
- 屋号がない場合 — 氏名のみで問題なし。氏名の下に「個人事業主」と添える必要もない。後から屋号を付けるのも税務署への届出でいつでも可能
- 屋号のみで通す場合 — 電話番号など連絡先を必ず併記して事業者を特定できるようにする
- 住所・連絡先 — 住所と、電話またはメールを記載。自宅兼事務所で自宅住所を知られたくない場合はバーチャルオフィス等の住所を使う方法もある
そのまま書き換えて使える発行者欄の記入例です。屋号がない方は屋号の行を削り、氏名から書き始めてください。

登録番号の行は、インボイス発行事業者として登録している方だけが入れます。登録していない免税事業者は登録番号の行を削除してください。持っていない番号を書くことはできません(詳しくは後述)。
印鑑は必須ではない(押すなら認印で十分)
請求書への押印は法律上の義務ではありません。押印がなくても請求書は有効です。ただ日本の商習慣として押印した請求書が広く使われているため、特にこだわりがなければ押しておくと相手に安心感を与えられます。
個人事業主の場合、会社の角印がなくても問題はなく、押すなら個人の認印で十分です。屋号印(角印)を作る方も多いですが、なくても請求書の効力は変わりません。一方で実印・銀行印は重要契約用・銀行届出用なので請求書には使わないのが普通です。
- 屋号印(角印) — 屋号や事業名を彫った印鑑。あると請求書・領収書で見栄えが整う。文具店・ネット通販で数千円から作れる
- 認印(個人の苗字印) — 既製の苗字印で代用できる。屋号印を作っていない場合はこれで十分
- シャチハタ(浸透印) — 改ざんに弱いとして敬遠する取引先もある。重要取引では認印・屋号印が無難
- 電子印(印影画像) — PDFで送る場合に貼る。無印のまま送るケースも一般的
屋号印は税務署への登録などは不要で、文字を彫れる印鑑ならどれでも構いません。PDFでメール送付するなら、印影画像を貼っても無印でも実務上の支障はなく、押印の有無で印紙の要否が変わることもありません。
インボイス登録番号は任意(登録している人だけ書く)
請求書にインボイスの登録番号(T+13桁)を書くかどうかは、自分が登録しているかで決まります。適格請求書発行事業者として登録した個人事業主は、取引先が仕入税額控除を受けられるよう、登録番号と税率ごとの消費税額・適用税率まで記載した適格請求書を発行します。
一方、登録していない免税事業者は登録番号を持っていないため、書くことはできません。体裁を整えるために番号らしき英数字を「登録番号」として書いたり、他人の番号を借りたりするのは禁止されています。登録していないなら、登録番号の欄は作らない(空欄のまま何も書かない)のが正解です。
自分が登録事業者かどうかの確認や、取引先のT番号が本物かの照合はインボイスの登録番号の調べ方にまとめています。
免税事業者でも、消費税相当額を上乗せして請求すること自体は問題ありません。「登録番号は書かないが、消費税分は載せてよい」が基本形です。消費税の見せ方(消費税と書くか消費税相当額とするか、買い手側の経過措置など)は免税事業者の請求書の書き方で詳しく解説しています。
源泉徴収の書き方(個人事業主の請求書で最重要)
個人事業主の請求書で法人と最も違うのが源泉徴収です。原稿料・デザイン料・講演料・士業報酬など、所得税法で定められた特定の報酬を個人に支払う場合、支払者(取引先)には源泉徴収の義務があります(国税庁No.2792)。この場合、相手は報酬から所得税分を天引きして支払うため、請求額より実際の入金額が少なくなります。
源泉徴収の対象になる主な報酬
- 原稿料・講演料・翻訳料・通訳料
- デザイン料(広告・装幀・工業デザインなど)
- 弁護士・税理士・公認会計士・司法書士・社労士などの士業報酬
- プロスポーツ選手・モデル・芸能人の報酬
- ホステス・コンパニオン等の報酬
- 外交員・集金人の報酬
Web制作・プログラミング・コンサルティングなど、上記に当てはまらない業務は原則として源泉徴収の対象外です。ただし注意したいのが、サイト制作の一括見積りからデザイン費や原稿執筆費(ライティング)を別の明細として切り分けて書くと、その部分は源泉徴収の対象になる点です(デザイン料・原稿料は所得税法で対象とされているため)。取引先によっては請求総額に一括で源泉をかける運用のこともあるので、自分の仕事が対象か分からないときは、取引先(経理担当)に源泉徴収の有無を事前に確認するのが確実です。
源泉徴収税額の計算式
- 1回の支払金額が100万円以下 — 支払金額 × 10.21%(所得税10% + 復興特別所得税0.21%)
- 100万円を超える部分 — (支払金額 − 100万円)× 20.42% + 102,100円
- 計算結果の1円未満は切り捨てて記載する
もう一つ重要なのが、源泉徴収の対象にする金額です。原則は税込の支払総額ですが、請求書で報酬額と消費税額を明確に区分していれば、消費税を除いた税抜の報酬額だけを源泉徴収の対象にできます(国税庁No.6929)。区分せず税込で書くと税込全額が対象になり、天引き額が少し増えてしまいます。源泉徴収対象の報酬は、税抜本体と消費税を分けて書くほうが有利です。
請求書への記載は任意(書くと入金額が明確になる)
源泉徴収税額そのものは支払者が計算して天引きするものなので、請求書に書くこと自体は義務ではありません。ただし、請求書に「源泉徴収税額」と「差引お支払額」を自分で書いておくと、相手との認識のずれや入金額のトラブルを防げます。天引きされた所得税は払い過ぎになっていることが多く、確定申告で精算(還付)されます。
源泉徴収は所得税法に基づく支払者側の義務で、あなたの報酬そのものが減るわけではありません。請求書では「請求は税込55,000円・源泉徴収後の振込額は49,895円」のように、請求額と振込額を分けて理解しておくと安心です。記入例は後半のサンプルCにあります。
個人事業主の請求書に書く項目
個人事業主の請求書に必要な項目は、法人とほぼ同じです。下の項目をそろえれば、取引先にも税務上も問題のない請求書になります。インボイス登録事業者か免税事業者かで、登録番号と消費税の書き方だけが変わります。
| 項目 | 個人事業主の書き方のポイント |
|---|---|
| タイトル | 「請求書」と明記 |
| 発行者(自分) | 屋号+氏名/屋号のみ/氏名のみ。連絡先を併記。登録事業者は登録番号(T+13桁)も |
| 宛先 | 取引先の正式名称。会社宛は「御中」、担当者宛は「様」 |
| 発行日 | 発行した日付。月締めの取引先は締め日に合わせる |
| 請求書番号 | 自分で振る通し番号(登録番号とは別物)。「2026-0042」など自分のルールで |
| 取引内容・明細 | 品目・数量・単価・金額。軽減税率(8%)対象を含むなら区別する |
| 金額 | 小計・消費税・合計。源泉徴収対象なら税抜と消費税を区分すると有利 |
| 振込先 | 銀行名・支店・口座種別・番号・口座名義(カナ)。名義は銀行に登録されたカナのとおりに。屋号付き口座は屋号から記載する |
| 支払期日 | 「○月○日」または「○月末日」など |
振込先の口座名義は、銀行に登録されているカナ名義を一字一句そのまま記載してください。屋号付きの口座は「ヤマダデザイン)ヤマダ タロウ」のように屋号から書かないと振込でエラーになることがあります。個人名のみの口座なら氏名のカナだけで構いません。
請求書番号は、国税庁から割り振られるインボイスの登録番号(T+13桁)とはまったくの別物です。請求書番号は自分の管理用の通し番号なので、自由に決めて構いません。番号の付け方は請求書番号の付け方に、消費税の端数処理など金額まわりの細かいルールは請求書の書き方にまとめています。
そのまま使える記入例(3パターン)
ここまでの内容を踏まえた、個人事業主向けの記入例を3パターン示します。ご自身の状況にあわせて選んでください。明細はコピーしてそのまま下書きに使えます。
サンプルAの「消費税相当額」は免税事業者向けの表記です。登録事業者は「消費税」と書き、登録番号と税率ごとの消費税額を記載します(サンプルB)。サンプルCは源泉徴収対象の報酬で、税抜50,000円×10.21%=5,105円を天引きし、差引49,895円が振込額になる例です。
請求書をメールで送るときに、本文へ添える短い一文の例です。
テンプレートで効率化する
個人事業主は経理も営業も一人でこなすため、請求書づくりに時間をかけたくないものです。TEMPLEX の請求書テンプレートは、フォームに入力するだけで体裁の整った請求書をPDF出力でき、消費税や合計の計算も自動です。登録不要・無料で使えます。
- 屋号・氏名・住所・連絡先をまとめて入力。一度入れれば見積書・領収書など他の書類でも同じ情報を使い回せる
- 登録番号は入力欄に入れるだけ(免税事業者は空欄でOK)
- 税率10%・8%(軽減)の項目別設定に対応
- 備考欄に源泉徴収税額・差引お支払額を追記できる
請求書テンプレートはこちら → TEMPLEX 請求書テンプレート
請求書をPDFでメール送付したら、送った側の自分にも控えを電子データのまま残す保存義務がある点に注意してください。メール添付などでやり取りした請求書は電子帳簿保存法の電子取引データにあたり、2024年1月以降は原則として電子データのまま保存することが義務づけられています(要件に従えない相当の理由がある場合の猶予措置あり)。PDFでの作り方・送り方と、この控えの正しい保存方法は請求書を電子化・PDFで作る/送る方法で解説しています。
よくある質問
Q. 屋号と本名、請求書にはどちらを書くべきですか?
どちらでも問題ありません。インボイスでも、電話番号などで事業者を特定できれば屋号や略称で記載してよいとされています(国税庁No.6625)。屋号があるなら「屋号+代表者名」が最も無難で、屋号がなければ氏名のみで構いません。
Q. 個人事業主の請求書に印鑑は必要ですか?
法的には必要ありません。押すなら個人の認印で十分で、屋号印を作る必要もありません。PDFで送る場合は電子印(画像)か無印でも実務上問題ありません。シャチハタは重要書類では避けるのが無難です。
Q. 免税事業者でも消費税を請求していいですか?
消費税相当額を上乗せして請求すること自体は問題ありません。ただし登録番号(T+13桁)を書くことはできず、適格請求書も発行できません。見せ方や買い手側の経過措置は免税事業者の請求書の書き方で解説しています。
Q. 源泉徴収は請求書に書かないといけませんか?
記載は任意です。書かなくても、取引先が源泉徴収義務者なら天引きされます。ただし「源泉徴収税額」「差引お支払額」を書いておくと入金額が明確になり、確認の手間やトラブルを減らせます。源泉対象の報酬は、税抜本体と消費税を分けて書くと税抜分のみが源泉の対象になり有利です。
Q. 会社員の副業でも同じ書き方でいいですか?
開業届を出して事業として行っているなら、この記事の書き方でかまいません。開業届なし・単発の謝礼など事業者でない立場での請求は扱いが少し異なるため、個人事業主じゃない人の請求書の書き方をご覧ください。
コラム著者・編集者
TEMPLEX編集チーム
TEMPLEX編集チームは、ビジネス文書の作成・管理に精通した実務経験者と技術ライターで構成されています。送付状・請求書・見積書をはじめとする各種ビジネス書類のフォーマットや書き方のノウハウを、わかりやすく丁寧にお届けします。「Office不要で誰でもすぐ使える」をコンセプトに、忙しいビジネスパーソンの書類作成をサポートします。










