請求書の振込手数料はどちらが負担?|書き方・差し引かれたときの対応・インボイス

振込手数料はどちらが負担?結論は「支払う側が原則・特約が優先」
結論から言うと、振込手数料は法律上は支払う側(買い手)の負担が原則です。代金を支払うために銀行へ払う手数料は、民法485条の「弁済の費用」にあたり、別段の意思表示がなければ債務者(=支払う側)が負担すると定められているためです。請求書を発行する側が手数料を負担しなければならない決まりはありません。
ただし、この原則は当事者間の取り決め(特約)があればそちらが優先されます。契約書や請求書で「振込手数料は売り手負担」と決めていれば、その合意が法律の原則より優先します。実務では、立場の弱い側が配慮して受取側(売り手)が負担するケースもありますが、何も取り決めなければ支払う側の負担になる、と覚えておけば判断に迷いません。
| ケース | 誰が負担するか | 根拠 |
|---|---|---|
| 何も取り決めていない | 支払う側(買い手) | 民法485条(弁済の費用は債務者負担) |
| 「貴社にてご負担ください」と請求書等で依頼 | 支払う側(買い手) | 原則どおり。念のため明記して認識を合わせる |
| 「弊社負担」「差し引いてお振込みください」と合意 | 受取側(売り手) | 特約が優先(民法485条の「別段の意思表示」) |
請求書を発行するあなたが手数料を負担したくない(相手に負担してほしい)場合は、原則どおりであっても請求書に一文を添えて認識をそろえておくのが安全です。書かずにいると、相手が手数料を差し引いて振り込み、入金額が請求額に足りない――という行き違いが起きがちだからです。まずはそのまま使える依頼文から見ていきましょう。

請求書での書き方と記載位置
負担を依頼する一文は、振込先(口座情報)のすぐ下か、備考欄に書くのが基本です。口座情報の真下に置くと、相手が振込画面を入力する直前に目に入るため見落とされにくくなります。長い説明は不要で、口座・支払期限とセットで簡潔にまとめれば十分です。
毎月の請求などで定型化したいときは、もっと短い一文でも構いません。「※振込手数料は貴社負担にてお願いいたします」程度の簡潔な表記でも意図は十分に伝わります。書き方のトーンは取引先との関係に合わせて選んでください。
口座名義や桁数のミスがあると、手数料の負担以前に振込自体が止まります。銀行名・支店名・預金種別・口座番号・口座名義(カナ)の並べ方や、口座番号を7桁にそろえるルールは請求書の振込先の書き方で記載例つきにまとめています。
振込手数料を差し引かれて入金額が足りないときの対応
相手が振込手数料を差し引いて振り込み、入金額が請求額より数百円足りない――これは入金管理でいちばん多い行き違いです。請求額10,000円に対し、手数料440円が引かれて9,560円しか入っていない、というケースですね。このとき取りうる対応は、大きく次の2つです。
- 不足分を再請求する — 手数料を相手負担で合意していた/請求書に明記していた場合は、差し引かれた分を請求する正当な権利があります。翌月の請求にまとめて上乗せする方法もあります。
- 少額なので売上の値引き(雑損)として受け入れる — 数百円のために再請求の手間や角を立てたくない場合は、差し引かれた額を売上値引きや支払手数料として処理し、消し込みを合わせます。
どちらにするかは金額・取引の継続性・相手との関係で判断しますが、取り決めがないまま数百円を引かれた1回限りのケースなら、今回は値引き(雑損)として処理して消し込みを合わせ、次の請求書から負担先を明記し直すのが現実的な落としどころです。数百円のために再請求の連絡を入れるのは、手間や関係性を考えるとコストに見合わないことが多いためです。相手負担で合意済みなのに繰り返されるなら、次回以降のために一度きちんと伝え、上記の連絡文で再請求します。いずれの場合も差額を未消し込みのまま放置しないことが大切で、月をまたぐと売掛金の残高が合わなくなります。
再請求する場合は、相手を責める書き方を避け、行き違いの確認という体裁にすると角が立ちません。次の連絡文がそのまま使えます。
そもそも合意があいまいだったなら、再請求より先に今後のルールを決め直すのが先決です。「今回は当方で負担しますが、次回以降は振込手数料を貴社にてご負担いただけますようお願いいたします」と一言添えて、次の請求書から負担先を明記しておけば、同じ行き違いを繰り返さずに済みます。
取適法(旧下請法)では一方的な差引きが「減額」になる
相手が大企業などで、あなたが「中小受託事業者」にあたる継続的な委託取引では、発注側が振込手数料を一方的に差し引くことが法律で禁止されています。2026年1月1日に施行された取適法(中小受託取引適正化法。旧・下請法)は、発注側が代金を不当に減らす「減額」を禁止しており、振込手数料の差引きもここに含まれます。
ここが2026年の改正で大きく変わった点です。取適法の対象取引では、当事者間の合意の有無にかかわらず、振込手数料を受託事業者(売り手)に負担させて代金から差し引くと違反(「減額」に該当)になります(公正取引委員会・中小企業庁 トリテキ法の確認ポイント(代金編))。以前の下請法では「事前の書面合意があり実費の範囲なら差引き可」と整理されていましたが、取適法ではその合意による例外がなくなり、代金の受取に係る振込手数料は発注側が負担する扱いに改められました。
取適法が適用されるのは、製造委託・修理委託・情報成果物作成委託・役務提供委託などで、発注側と受託側に資本金または従業員数の規模差がある取引です。かみくだくと、大企業や中堅企業から個人事業主(フリーランス)や小規模な会社が仕事を請け負うような、立場に差が出やすい取引が中心です。自社が対象になるか、相手にどう伝えるかは慎重な確認が要るため、判断に迷うときは公正取引委員会の特設ページや窓口で確かめてください。なお、取適法の対象外の取引(事業者間の対等な関係など)でも、一方的に差し引かれた手数料は前のセクションのとおり差額を請求できます。
インボイス|売り手が手数料を負担するときの返還処理
あなたが適格請求書発行事業者で、合意のうえ振込手数料を売り手側(自分)が負担する(代金から差し引いてもらう)場合は、インボイス制度上の扱いに注意が必要です。差し引かれた手数料相当額をどう処理するかで、必要な書類が変わります。国税庁は国税庁 インボイスQ&A 問29で、処理方法を3つに整理しています。
| 処理方法 | 消費税の考え方 | 必要な書類 |
|---|---|---|
| ①売上値引き(対価の返還等)として処理 | 売上に係る対価の返還等 | 原則は適格返還請求書。ただし税込1万円未満なら交付義務免除 |
| ②支払手数料(代金決済上の役務提供)として処理 | 買い手から受けた役務提供の課税仕入れ | 買い手が発行する適格請求書、または仕入明細書 |
| ③立替金として処理 | 買い手が金融機関へ支払った手数料の立替 | 金融機関の適格請求書+立替金精算書 |
実務でいちばん簡単なのは①の売上値引きとして処理する方法です。差し引かれた手数料を「対価の返還等(売上値引き)」とみなすため、原則は適格返還請求書(返還インボイス)の交付が必要になります。しかし、返還する金額が税込1万円未満なら、適格返還請求書の交付義務は免除されます(国税庁 少額な返還インボイスの交付義務免除)。振込手数料は数百円程度なので、この免除でほぼ書類を出さずに済みます。
この1万円未満の交付義務免除は、期間限定の経過措置ではなく恒久的な措置です。仕入税額控除側の「少額特例(税込1万円未満は帳簿のみで控除可)」が2029年9月までの経過措置であるのとは別の制度なので、混同しないようにしてください。返品・割戻しなど値引き全般の請求書への書き方は請求書の値引きの書き方でまとめています。
受け取る側が手数料を負担したときの会計処理
受取側(売り手)が振込手数料を負担した場合の会計処理は、「支払手数料」で費用計上するか、「売上値引き」として売上から控除するかの2通りです。前のセクションのインボイス上の区分(②支払手数料/①売上値引き)と対応しており、どちらでも最終的な損益への影響は同じです。差し引かれた手数料の分だけ利益が減る点は変わりません。
- 支払手数料で処理 — 売掛金は満額で消し込み、差し引かれた手数料を「支払手数料」として費用に計上する。経費として分かりやすく、勘定科目が安定する。
- 売上値引きで処理 — 差し引かれた額を「売上値引」として売上から直接マイナスする。消費税法上の「対価の返還等」に最も近く、返還インボイスの考え方と整合する。
| 処理方法 | 借方 | 貸方 |
|---|---|---|
| 支払手数料で処理 | 普通預金 9,560/支払手数料 440 | 売掛金 10,000 |
| 売上値引きで処理 | 普通預金 9,560/売上値引 440 | 売掛金 10,000 |
毎回どちらにするか迷わないよう、社内で処理方法を1つに統一しておくのがおすすめです。支払う側として手数料を負担したときに使う勘定科目(支払手数料)や、振込手数料の証憑(振込明細書で足りるか)については振込手数料の領収書は必要?で詳しく解説しています。
TEMPLEXなら手数料の一文入りの請求書がそのまま作れる
振込手数料の負担を依頼する一文は、毎回書くと地味に手間がかかります。TEMPLEXの請求書テンプレートなら、振込先・支払期限とあわせて「振込手数料は貴社ご負担」の一文まで整ったレイアウトでPDF出力できます。登録不要・無料で、Officeソフトがなくても使えます。
コラム著者・編集者
TEMPLEX編集チーム
TEMPLEX編集チームは、ビジネス文書の作成・管理に精通した実務経験者と技術ライターで構成されています。送付状・請求書・見積書をはじめとする各種ビジネス書類のフォーマットや書き方のノウハウを、わかりやすく丁寧にお届けします。「Office不要で誰でもすぐ使える」をコンセプトに、忙しいビジネスパーソンの書類作成をサポートします。











