始末書を書いたことがある人の割合は?業界別データと体験者の傾向

「始末書を書いたことがある人の割合」を調べたいあなたへ
始末書を書くことになって、あるいは身近な誰かが書かされたという話を聞いて、「自分(あるいはその人)だけが特別なのか?」「世の中でどれくらいの人が書いているのか?」と気になっている方に向けた記事です。
結論を先に書くと、「始末書を書いた経験のある人の割合」を直接ピンポイントで集計した大規模な公開調査は現時点ではほとんど見当たりません。ただし、周辺データ(懲戒処分の実施状況、職場ミスの経験率、ハラスメントを含む処分事由の傾向、就業規則上の譴責規定の普及度など)を組み合わせると、「珍しいことではないが、毎年経験する人は限定的」という像が見えてきます。
本記事では、公開されている公的・民間調査の数値を出典付きで引用しながら、始末書を書く立場に置かれる人の割合と、その内訳・業界別の傾向を整理します。数値が断定できない部分は「公開データの範囲では」と限定したうえで紹介します。
「自分のケースは深刻なのか」をまず知りたい人は『始末書はやばい?書くとどうなる・クビになる可能性を判例も踏まえて解説』の「やばさレベル早見表」もあわせて確認してください。
結論:直接の調査は限定的だが、関連データから割合は推測できる
前提として、「始末書を書いた経験者」のみを母集団とした全国規模の公開調査は、本記事執筆時点で確認できていません。一方で、関連する公開データは複数あり、これらを重ね合わせることで「年あたりに始末書を書く人」の割合の概観を捉えることはできます。
| 関連データ | 数値 | 出典・年次 |
|---|---|---|
| 「譴責」を懲戒処分として規定している企業の割合 | 9割以上(譴責・減給・出勤停止のいずれも9割超) | 労務行政研究所「企業における懲戒制度の最新実態」(2023年、回答225社) |
| 国家公務員のうち年間に懲戒処分を受けた人の割合 | 0.09%(一般職、令和6年・総数285人) | 人事院「令和6年における懲戒処分の状況について」 |
| 過去3年間にパワハラを受けた経験のある労働者の割合 | 19.3% | 厚生労働省「職場のハラスメントに関する実態調査」(令和5年度) |
| 職場で「忘れられない大きなミス・大失敗」を経験した人の割合 | 100名中、ミス経験ありを前提に集計(うち上司への報告58%) | 株式会社スタジオテイル「職場の忘れられない大きなミス・大失敗」(2023年) |
| 社会人で「会社への遅刻経験が一度もない」人の割合 | 87%(裏返すと約13%は遅刻経験あり) | ベースメントアップス株式会社調査(プレスリリース) |
| アルバイト等での「お仕事の失敗経験あり」の割合 | 66%(その後の糧になっている:92%) | エンバイト「お仕事での失敗経験」アンケート(2012年、2,729名) |
これらの数値から言えるのは、次の3点です。
- 始末書の前提となる「譴責処分」はほぼすべての日本企業で就業規則に整備されている
- ただし実際に懲戒処分まで至る労働者は1年あたり1%未満(公務員ベースで0.09%)であり、毎年大量の人が書いているわけではない
- 一方で「業務上のミス」「遅刻」「ハラスメント被害」のような始末書のきっかけになりうる事案そのものは、職場で広く経験されている
上の表の数値は「始末書経験者そのものの割合」ではなく、関連調査から推測する材料です。直接の統計が公開されていない以上、断定はできませんが、概観をつかむための参考になります。
ほぼすべての企業に「始末書を書く制度」がある
民間調査でもっとも体系的に懲戒制度を扱っているのが、労務行政研究所が2023年に上場・非上場企業5,394社を対象に実施した調査(回答225社)です。この調査によると、懲戒処分の種類のうち「譴責(けん責)」「減給」「出勤停止」を就業規則に定めている企業はそれぞれ9割以上、「懲戒解雇」はすべての回答企業で設定されていました。
譴責は通常、始末書の提出を伴う処分とされており、これは「始末書を提出させる仕組み自体は、ほぼすべての日本企業に存在する」ことを意味します。
出典:労務行政研究所「企業における懲戒制度の最新実態」プレスリリース(PR TIMES掲載ページ/WEB労政時報の解説記事)
懲戒の段階数は「6段階」が41.8%で最多、次いで「7段階」28.4%、「5段階」15.6%でした。標準的な6段階の例としては「譴責 → 減給 → 出勤停止 → 降格・降職 → 諭旨解雇 → 懲戒解雇」となり、譴責はその最も軽い処分として位置づけられています。
「自分の会社にだけ始末書制度があるのではないか」という誤解はこの数値の通り誤りです。むしろ就業規則に譴責規定がない企業のほうが珍しい、というのが実態に近いと言えます。
公的データで見る「年間に処分を受ける人」の割合
民間企業の懲戒処分件数を全数集計した統計は公表されていませんが、参照できる公的データとして人事院が毎年公表する「国家公務員の懲戒処分の状況」があります。これは民間とは事情が異なるものの、「組織で働く人のうち、1年間に正式な懲戒処分を受ける人がどれくらいか」の参考値になります。
| 項目 | 令和6年(2024年)の数値 |
|---|---|
| 処分者総数 | 285人(前年比45人増) |
| 在職者数に対する処分者の割合 | 0.09% |
| 免職 | 20人 |
| 停職 | 50人 |
| 減給 | 134人 |
| 戒告 | 81人 |
| 公務外非行関係 | 105人(最多) |
| 一般服務関係(欠勤・勤務態度不良など) | 91人 |
| 交通事故・交通法規違反関係 | 34人 |
| 通常業務処理関係 | 21人 |
| セクハラを理由とした処分 | 46人 |
| パワハラを理由とした処分 | 18人 |
出典:人事院「令和6年における懲戒処分の状況について」
ポイントは2つあります。
- 「在職者の0.09%」という割合で、1年あたりに公的な懲戒処分を受ける人は1,000人に1人未満であるということ。これは「普通に働いていれば、毎年自動的に始末書を書くはめになる」というほどの頻度ではないことを示している
- 処分の中身を見ると戒告(口頭または文書による軽い処分)と減給が中心で、最も重い免職は7%程度に過ぎない。多くは「始末書相当(戒告・減給)の軽めの処分」で完結している構造が読み取れる
民間企業では、軽微なミスについて「正式な懲戒処分にはせず、始末書の提出だけで済ませる」運用が広く行われています。そうした「処分歴は付かない始末書」を含めると、実際に始末書を提出した経験のある人の割合は、上記の0.09%よりもかなり高いと推測されます。
始末書を書く事案のタイプ別頻度
次に、始末書のきっかけになる「非違行為」がどのようなタイプに集中しているかを、公的・民間調査から推測します。
| 事案タイプ | 公開データから読み取れる傾向 | 出典・参考 |
|---|---|---|
| 業務上のミス(うっかり・確認不足) | 職場の大きなミスの68%が「うっかりミス」、22%が「判断ミス」と分類される | スタジオテイル「職場の忘れられない大きなミス・大失敗」100名調査(2023年) |
| 遅刻・無断欠勤 | 公務員の懲戒処分のうち「一般服務関係(欠勤・勤務態度不良含む)」が91人で全体の約32% | 人事院・令和6年データ |
| 交通事故・交通違反 | 公務員の懲戒処分のうち「交通事故・交通法規違反関係」が34人(全体の約12%) | 人事院・令和6年データ |
| ハラスメント関連(加害側) | 公務員ではセクハラ46人・パワハラ18人で前年比増加。民間でも企業の64.2%がパワハラ相談を受けている | 人事院・令和6年データ/厚労省「職場のハラスメントに関する実態調査」令和5年度 |
| 金銭関連(横領・着服等) | 公務員では横領等関係の処分は14人(全体の約5%)と少数だが処分は重い傾向 | 人事院・令和6年データ |
| 情報漏えい・社内規定違反 | 売上金100万円使い込み75.9%、機密漏えい69.4%が「懲戒解雇」適用と回答 | 労務行政研究所・2023年調査 |
傾向としては、軽微な「業務上のうっかりミス」「遅刻」「軽い交通違反」が始末書(譴責止まり)で処理されやすい一方、「金銭の横領」「機密漏えい」「長期の無断欠勤」になると懲戒解雇に直結しやすい、という二層構造が読み取れます。「始末書を書いている事案」の多くは、前者(軽微なミス・勤怠系)に集中していると推測できます。
事案タイプ別の例文・書き方は『作業ミスの始末書』、『遅刻の始末書』、『無断欠勤の始末書』、『交通違反・事故の始末書』、『レジ過不足の始末書』、『紛失の始末書』、『物品破損の始末書』、『社内規定違反の始末書』を参照してください。
業界別の傾向:始末書が出やすい業種・場面
業種別の「始末書経験率」を直接示す調査は確認できませんが、(a) 公務員における処分が多い省庁、(b) ハラスメント被害が多い業種、(c) 現金・物品の取扱いが多い業種、という3つの観点から、始末書が出やすい職種を推測することはできます。
| 観点 | 傾向 | 出典 |
|---|---|---|
| 国家公務員の処分者数(省庁別) | 海上保安庁65人、法務省44人、国税庁43人、国土交通省29人。現場第一線の組織で多い | 人事院・令和6年 |
| ハラスメント相談があった企業の業種傾向 | 「医療・福祉」「製造業」などでパワハラ・カスハラ事案が比較的多いと指摘される | 厚労省「職場のハラスメントに関する実態調査」令和5年度 |
| 現金取扱いが多い業種(小売・飲食・サービス) | レジ過不足・釣銭ミス等の事案で始末書が運用されるケースが多いと労務系メディアで紹介される | 労務系メディアの実務解説(公開データなし) |
| 運送・営業など車両運転を伴う業務 | 業務中の交通事故・違反による始末書が多いと指摘される | 労務系メディアの実務解説(公開データなし) |
| 情報・金融など機密性が高い業種 | 情報漏えい・コンプライアンス違反は懲戒解雇まで一気に進むケースが多い | 労務行政研究所・2023年(懲戒解雇適用ケース) |
重要なのは、「始末書を書く確率が高い業界=危ない業界」ではなく、「現場接点が多い業界・現金/車両/個人情報を扱う業界では、軽微なミスが始末書で処理される運用が定着している」ということです。
同じ「うっかりミス」でも、内勤の事務職では口頭注意、店舗運営では始末書、というように、運用の慣行が業種ごとに異なります。
「同じ会社で何度も書く人」の割合は?
ここも直接の公開統計はありませんが、間接的な参考データとして、「無断欠勤の日数別に企業がどの処分を選ぶか」を示した労務行政研究所のデータがあります。
| 状況 | 最も多い処分 | 比率 |
|---|---|---|
| 無断欠勤3日 | 譴責(始末書) | 34.8% |
| 無断欠勤5日 | 減給 | 22.2% |
| 無断欠勤14日(=2週間) | 懲戒解雇 | 77.4%(同調査の紹介によっては74.1%。設問条件の差として表記揺れあり) |
この表が示すのは、「同じ非違行為でも程度が深まるにつれて処分が段階的に重くなる」運用です。逆に言うと、軽微な段階でとどまる限り、始末書(譴責)で処理されるケースが多いことを意味します。
実務的には、「同じ会社で2〜3回始末書を書いても、その都度同じ譴責で済むケース」と「3回目あたりから減給・出勤停止に切り替わるケース」の両方があり、運用は会社ごとにかなり異なります。
「同じ問題で複数回書いていてクビが心配」という方は『始末書はやばい?』の「3回書いたらクビ?」セクションも参考にしてください。
「自分だけが書いている」という不安への現実的な答え
ここまでのデータを総合すると、次のように整理できます。
- 始末書を書く制度(譴責規定)は、ほぼすべての企業に存在するため、書くこと自体は特殊なことではない。
- ただし、毎年のように懲戒処分を受ける人は0.1%未満(公務員ベース)で、ありふれた事象でもない。
- 民間では、正式な懲戒に至らず「始末書だけで完結」する運用が広く存在するため、実体験者の割合はもう少し高いと推測される。
- 事案の多くは業務上のうっかりミス、軽い遅刻・欠勤、軽微な交通違反で、これらは職場経験者の多くが何らかの形で経験している。
- 業界・職種・現場特性によって、同じミスでも始末書になる確率は変わる。
つまり、「自分だけが特別」というのは正確ではなく、「ありふれてはいないが、書いている人は確実に一定数いる」というのが現状に最も近い表現です。
重要なのは割合の大小ではなく、書いた事実をどう次に活かすか(再発防止策の実装、評価面談での共有、書き方を整えてやばさを増やさないこと)です。
「始末書経験者の割合」を直接ピンポイントで示す全国調査の不在は、それ自体が「始末書は社内文書として処理されるため、外部統計の対象になりにくい」ことの裏返しでもあります。これは、転職時に外部から処分歴を直接照会されにくい、という現実の運用とも整合します。
「書いた事実が転職に影響するか」が気になる方は『始末書はやばい?』のFAQ、納得できないために退職を考えている方は『始末書後の退職判断』を参照してください。
身近な人へのヒアリング結果と筆者自身の経験
公開データだけでは伝わりにくい現実感を補うため、筆者の身近な社会人6名(20〜40代、業種は小売・IT・製造・公務など)に「始末書または始末書に類する文書を書いた経験があるか」を尋ねた、ごく小規模な聞き取りの結果を紹介します。
結果は6名中4名が経験ありでした。書いた事案は、軽微な業務ミス・社内規定違反・サービス残業に関わる管理上のトラブルなど、いずれも「特別に重大な事案」ではない範囲でした。
筆者自身も、過去に一度、サービス残業に関わる内容で始末書を書いた記憶があります。当時は重い処分を受けた感覚はなく、提出をもって一区切りとなり、その後の業務や評価に大きな影響は出ませんでした。
あくまで小規模なヒアリングであり、統計的な代表性はありません。それでも、公開データの「年間0.1%未満が処分される」という数字と「身近な範囲では珍しくない経験」という体感のギャップは、正式な懲戒に至らない注意指導レベルでの始末書が広く運用されていることの傍証として読めます。
データを読むときの注意点
本記事の数値はいずれも公開資料からの引用ですが、「始末書経験者の割合」を直接示すものではない点に注意してください。
- 労務行政研究所の懲戒制度調査(2023年)は、回答225社という限られた母集団に基づくため、業界全体の代表値ではありません。
- 人事院の処分統計は国家公務員のみを対象としており、民間企業の数値とは構造が異なります。
- 厚労省のハラスメント実態調査は被害側の経験率であり、始末書を書く加害側の割合ではありません。
- 民間アンケート(スタジオテイル100名調査、エンバイト2,729名調査など)はサンプル数や対象が限定的で、全国推計値ではありません。
本記事ではこれらの数値を「始末書経験を取り巻く実態を多面的に示す参考データ」として提示しています。確度の高い割合数値を求める場合は、各出典の原典をそのまま参照することをおすすめします。
書く必要がある場合は、テンプレートで素早く整える
「自分だけじゃない」と分かっても、実際に書く手間と精神的負担はゼロにはなりません。事実関係と再発防止策の方針が固まったら、フォーマットで悩む時間を最小化して提出するのが現実的です。テンプレートを活用すれば、構成と体裁で迷う時間を省き、内容(事実関係・原因・再発防止策)に集中できます。
コラム著者・編集者
TEMPLEX編集チーム
TEMPLEX編集チームは、ビジネス文書の作成・管理に精通した実務経験者と技術ライターで構成されています。送付状・請求書・見積書をはじめとする各種ビジネス書類のフォーマットや書き方のノウハウを、わかりやすく丁寧にお届けします。「Office不要で誰でもすぐ使える」をコンセプトに、忙しいビジネスパーソンの書類作成をサポートします。








