始末書はやばい?書くとどうなる・クビになる可能性を判例も踏まえて解説

始末書を書くことになって「やばい」と感じているあなたへ
始末書を書くように言われたとき、おそらく「これってクビになるのか」「評価に響くのか」「転職に影響するのか」といった漠然とした不安を抱える方が多いはずです。結論を先に言うと、始末書を1枚書いたこと自体で会社員人生が終わるケースは原則ありません。始末書の提出そのものが「譴責(けんせき)」という最も軽い懲戒処分の中身として運用されることが多く、提出した時点で1つの処分は完結しているからです。
ただし、ここから先の展開は、始末書がどの位置づけで出されているか、内容に何を書くか、書いた後にどう動くかで大きく変わります。本記事でまとめるのは次のテーマです。
- 始末書のやばさを4段階に分けて自分のケースを位置づける
- 書いたあと評価・転職・解雇にどう影響しうるか
- 書く前に確認すべきこと
- やばさを増やさない書き方
- 書いた後の動き
そもそも提出を断りたい場合は『始末書を拒否できる?書かせる会社の法的根拠と対処法』を、納得できなくて退職を考えている場合は『始末書後の退職判断|自主退職・納得できない場合の対応』もあわせてご確認ください。
始末書の「やばさレベル」早見表|自分のケースはどこ?
始末書を書くことになって「やばい」と感じている方のうち、本当にやばい状況にいる人は実はそれほど多くありません。多くは「注意指導の延長」「軽い譴責処分」のレベルで止まっています。まず自分のケースがどのレベルに該当するか、次の表で位置づけてください。
| レベル | 状況 | 想定される影響 |
|---|---|---|
| Lv.1 注意指導 | 懲戒処分ではなく、上司・人事からの指導の一環として始末書のみ提出 | 正式な処分歴は付かない。上司の心証・短期の評価には影響あり |
| Lv.2 譴責処分 | 就業規則上の「譴責(けん責)」として始末書を提出。最も軽い懲戒処分 | 懲戒処分歴として人事ファイルに記録。賞与・昇給査定でマイナスの可能性 |
| Lv.3 重い処分とセット | 減給・出勤停止などの懲戒処分とともに始末書を提出 | 給与・勤務に直接影響。昇進ストップや異動の可能性も |
| Lv.4 解雇予告の前段 | 同種の問題を繰り返した結果として、最後通牒的に書かされている | 次に同じ問題を起こすと懲戒解雇の有効性が認められやすくなる |
自分のレベルを判定する3つの確認ポイント
- 始末書と一緒に「譴責処分」「減給」「出勤停止」などの懲戒処分が通知されているか(処分通知書の有無)→ 通知があればLv.2以上
- 過去に同種の問題で始末書や注意指導を受けた履歴があるか → 繰り返しならLv.3〜4
- 上司・人事から「次に同じことをしたら処分が重くなる」と明示的に言われているか → 明示があればLv.4寄り
Lv.1〜2は「書いて終わり」のケースが大半で、やばさはそこまで高くありません。

始末書を書くと、何が・いつまで起こるのか
始末書を提出した直後から長期にかけて、どのタイミングで何が起こりうるかを時系列で整理します。すべてのケースで全部が起こるわけではなく、レベルや会社の運用次第ですが、想定される最大の影響を網羅しています。
| タイミング | 起こりうる影響 | 備考 |
|---|---|---|
| 提出直後 | 人事ファイルに記録される/上司・人事の心証への反映 | Lv.1でも社内記録としては残ることが多い |
| 次回の評価期間 | 賞与・昇給・人事評価でマイナス考慮 | 始末書の有無を独立した評価項目にしている会社もある |
| 半年〜1年後 | 昇進・昇格の判断材料/重要プロジェクトからの除外 | Lv.2以上で起こりやすい |
| 再発時 | より重い懲戒処分(減給・出勤停止・解雇)の判断材料 | 繰り返しは解雇有効性の根拠の一つになりうる |
| 退職時 | 退職金規程によっては減額の対象(懲戒解雇の場合は不支給もあり) | 通常の譴責処分単独では退職金には響かないことが多い |
| 転職時 | 履歴書「賞罰」欄への記載要否の検討/前職照会のリスク | 後述。譴責処分は通常「賞罰」の対象外と扱われる |
履歴書の「賞罰」欄には書くべきか
履歴書の「賞罰」欄に書く必要があるのは、一般的に「刑事罰」と「公的な表彰歴」とされており、社内の懲戒処分(譴責・減給・出勤停止)はこの欄の対象外と扱うのが通例です。したがって、多くのケースで、始末書を1枚書いたという事実を履歴書に記載する義務はありません。ただし、面接で過去の懲戒処分について直接質問された場合に事実と異なる回答をすると、入社後に発覚したときに信頼関係が損なわれる原因になります。聞かれた場合は事実を答えるのが原則です。
退職金の減額や不支給は、就業規則・退職金規程に「懲戒解雇の場合は不支給/減額」などと明記されている場合に限って行えるのが一般的です。始末書(譴責)単独で退職金が減らされることは通常ありません。
始末書を書く・書かないとクビになる?解雇との関係を整理
「始末書を書いたらクビになるのか」「逆に書かなかったらクビなのか」は、最も気になる論点でしょう。結論から書くと、始末書1枚(または1回の提出拒否)だけで解雇が認められるケースは極めて限定的です。日本の解雇規制は厳しく、解雇は「客観的に合理的な理由」と「社会通念上の相当性」の両方を満たして初めて有効になります(解雇権濫用法理/労働契約法16条)。
「始末書を書いたら即クビ」はほぼない
始末書の提出自体が譴責処分という独立した懲戒処分の内容であり、提出した時点で1つの処分は完結します。同じ非違行為について「始末書も書かせて、さらに解雇」と二重に処分するのは「二重処分の禁止(一事不再理)」の考え方から原則認められません(同じ事案を理由にした重複処分は無効と判断されやすい)。
「始末書を拒否したらクビ」もほぼない
始末書には反省や謝罪の意思表示が含まれるため、提出を強制すると個人の良心や思想・信条の自由を侵害するおそれがあると考えられています。古くから紹介される代表的な裁判例として、国際航業事件(大阪地裁)の一連の判断では、始末書の提出命令の業務命令該当性が否定されたり、減給処分の後にさらに始末書不提出を理由として解雇したことが同一行為に対する二重処分にあたり無効と判断されたとする紹介がみられます。誓約書の不提出が問題となった福知山信用金庫事件(大阪高裁昭和53年10月27日判決)でも、誓約書(謝罪・反省の意思を含む文書)の不提出を理由に重い処分を行うことには慎重な姿勢が示されたとされ、始末書を含む反省文書全般の取扱いの参考にされています。
ただし「始末書を拒否したから即クビ」ではないだけで、繰り返しの問題行動があり、改善の意欲も見られない、という事情と組み合わさった場合に、解雇の有効性を支える事情の一つとなりうる点には注意が必要です。「拒否すれば全部なかったことになる」わけではありません。
「3回書いたらクビ」のような数のルールはない
「始末書3回で解雇」と就業規則に書いている会社もありますが、回数だけを根拠にした解雇は無効になりうるとされています。解雇の有効性を判断する際は、回数ではなく総合的な事情が見られます(次の節で整理)。
- 同種の問題行動を繰り返しているか
- 会社が改善の機会(注意指導・教育)を十分に与えたか
- 段階的な処分(注意 → 譴責 → 減給 → 出勤停止 → 解雇)を踏んでいるか
- 会社・取引先への損害の大きさ
- 本人に改善の意思・態度があるか
始末書と懲戒処分(特に譴責処分)の関係をより詳しく整理した『譴責処分とは?始末書の書き方・例文と懲戒処分の影響まで解説』もご参照ください。
始末書を書く前に必ず確認したい3つのこと
始末書は一度提出すると、後から「あの記載は事実と違う」と言っても通りにくくなります。提出前に最低限、次の3点だけは確認してください。
① 自分の記憶する事実関係と差がないか
会社が用意した雛形やテンプレートに「私は〜という規則違反を行いました」と既に書かれていることがあります。そのまま署名・押印するのではなく、日時・場所・行為内容・原因が自分の記憶と一致しているかを必ず確認してください。事実と異なる記載は、後で解雇や損害賠償の場面で不利な証拠として使われるおそれがあります。
② 不利な事実だけが切り取られていないか
始末書のテンプレが「自分のミスのみ」を強調する内容になっていて、関連する経緯(業務量の異常な増加、上司の指示の不備、設備の不具合など)が一切書かれていない場合があります。そうした事情があるなら、別途「補足説明書」「弁明書」などのかたちで併せて提出するか、始末書本体の中に短く触れておくのが安全です。
③ 処分の重さと内容が釣り合っているか
軽微なミスに対して重すぎる処分(減給・出勤停止)が同時に通知されている場合、そもそも処分自体の有効性に疑問があります。就業規則の懲戒規定と照らして、明らかに不釣り合いな処分を受けている場合は、提出前に労働組合・労働基準監督署・弁護士・労働問題のNPOなどに相談する選択肢があります。
拒否したい場合の具体的な選択肢と書き方は『始末書を拒否できる?書かせる会社の法的根拠と対処法』にまとめています。
「やばさ」を増やさない始末書の書き方
結局のところ、始末書を書く以上の罰は通常ないとはいえ、書き方次第で評価への悪影響や、再発時の解雇リスクを「自ら高めてしまう」こともあります。やばさを増やさないための3つのポイントです。
ポイント1|事実は事実として書く。誇張も矮小化もしない
「お客様に大変なご迷惑をおかけし、会社の信用を著しく毀損しました」のような過度に重い表現は、後でその記述自体が「重大な非違行為があった」ことの証拠として使われかねません。事実より重く書くのも、軽く書くのも避け、起きたことを淡々と記載します。
ポイント2|原因と再発防止策をセットで書く
「以後気をつけます」だけで終わると、評価者から見ると改善の意思が読み取れません。逆に、原因を「確認不足」と書いたら、対応する再発防止策(チェックリスト導入・ダブルチェックの仕組み化など)を必ずペアで示します。これは評価への悪影響を抑えるうえで最も効果的な書き方です。
ポイント3|他責表現・感情的表現は避ける
「忙しかった」「指示が曖昧だった」「先輩の確認漏れもあった」のような他責表現は、文書全体の信頼性を一気に下げます。一方で、業務量や指示の不備が事実として無視できない要因なら、感情を抜いて事実だけを淡々と添えます(「業務量は当日30件で、所要時間に対する余裕がほぼなかった」など)。


事実と異なる内容に署名するよう求められた場合は、その場で署名せず「自宅で確認のうえ提出します」と持ち帰って構いません。これは正当な対応であり、即時に署名する義務は法律上ありません。
ケース別の例文(遅刻・無断欠勤・紛失・破損・交通事故・作業ミスなど)は『始末書・顛末書 例文集|ケース別テンプレート総まとめ』に集約しています。書き方の汎用論は『始末書の書き方完全ガイド』もご参照ください。
始末書を出した後にやるべきこと・やってはいけないこと
始末書を出してホッとしてしまいがちですが、本当に大事なのは出した後の半年〜1年の動きです。
やるべきこと
- 再発防止策に書いた行動を実際に運用する(チェックリスト・ダブルチェック等)
- 次の1on1や評価面談で「再発防止状況」を自分から共有する
- 同種のミスが起きそうな兆候があれば早めに上司にエスカレーションする
- コピーを1部、自分でも保管しておく(会社側がなくしたとき・退職時の確認用)
やってはいけないこと
- 再発防止策に書いた行動をやらない(書面と実態が乖離するとさらに信用を失う)
- 周囲に「あの始末書は形だけ」「実は俺は悪くない」と話す(再発時の不利な事実になる)
- 会社のSNS・社外でこの件に触れる(守秘義務違反・新たな処分の原因になりうる)
- 退職を決めたからといって、引継ぎを雑にする(退職金規程によっては減額の根拠にされる)
始末書を書かされて納得できず退職を考えている場合の判断軸は『始末書後の退職判断|自主退職・納得できない場合の対応』にまとめています。
始末書の「やばさ」によくある質問
Q1. 始末書を書いたら転職できなくなる?
多くのケースで大きな影響はありません。社内の譴責処分は履歴書「賞罰」欄の対象外で、企業が本人の同意なく前職に処分歴を直接照会することは個人情報保護法上、原則として認められていません(応募者が同意したうえで行うリファレンスチェックは別です)。ただし、業界が狭く人脈で噂が回るような職種では、間接的に影響することはあります。
Q2. 始末書を書くと退職金が減らされる?
退職金の減額・不支給は、就業規則や退職金規程に明文の根拠が必要で、譴責処分単独で退職金が減らされる運用は通常ありません。懲戒解雇に至った場合は規程によって減額・不支給があり得ます。
Q3. 始末書を破り捨てたらどうなる?
会社に提出した正本を勝手に破棄することは、業務上の文書の毀棄として別の処分対象になりえます。手元の控えを破棄するのは自由ですが、提出した原本は会社の人事ファイルにある前提で考えてください。
Q4. 同じ会社で始末書を何枚まで書ける?
「○枚以上で解雇」のような数だけのルールは原則無効です。ただし、同種の問題を繰り返した結果として始末書が累積している事実は、解雇の有効性判断に影響することがあります。本数より「同じ問題を繰り返しているか」が重要です。
Q5. 始末書を強要されたらパワハラ?
事実無根の内容を書くよう繰り返し強要する、人格を否定する文言を書かせる、就業規則の根拠なく書かせる、などはパワハラ・違法な業務命令にあたる余地があります。録音や書類のコピーで証拠を残し、社内の相談窓口・労働基準監督署・労働組合・弁護士に相談してください。
Q6. 始末書を書いた事実は、社内でどこまで知られる?
原則として人事ファイルに保管され、本人と直属の上司・人事・経営層など、業務上必要な範囲でのみ参照されます。社内に広く周知することは、本人のプライバシー権との関係で過剰な扱いになりやすく、通常は行われません。
始末書を書く必要があるなら、テンプレートで素早く整える
ここまでの内容を踏まえ、自分のケースが「書く以外の選択肢がない」(Lv.1〜2)と判断できたら、書き方で迷う時間が長引くほど評価への影響が大きくなります。事実関係と再発防止策が決まったら、フォーマットで悩むのではなく、テンプレートで素早く整えて提出するのが結果的に最も「やばくない」進め方です。
コラム著者・編集者
TEMPLEX編集チーム
TEMPLEX編集チームは、ビジネス文書の作成・管理に精通した実務経験者と技術ライターで構成されています。送付状・請求書・見積書をはじめとする各種ビジネス書類のフォーマットや書き方のノウハウを、わかりやすく丁寧にお届けします。「Office不要で誰でもすぐ使える」をコンセプトに、忙しいビジネスパーソンの書類作成をサポートします。








