譴責処分とは?始末書の書き方・例文と懲戒処分の影響まで解説

譴責処分とは|まず結論
譴責(けんせき)処分とは、労働者に始末書を提出させて将来を戒める懲戒処分のことです。厚生労働省のモデル就業規則でも譴責は「始末書を提出させて将来を戒める」と定義されており、多くの会社の就業規則も同じ表現を採用しています。
一般的な懲戒処分は、軽い順に「戒告 → 譴責(けん責) → 減給 → 出勤停止 → 降格 → 諭旨解雇 → 懲戒解雇」と段階構成されており、譴責は懲戒処分のうちもっとも軽い部類に位置づけられます。
譴責処分を受けた/受けそうな人がまず気になるのは、次のような点でしょう。
- 始末書を出せば終わりなのか
- 昇進や転職にどこまで響くのか
- 拒否することはできるのか
本記事では、譴責処分の意味と他の懲戒処分との違いを整理したうえで、始末書の書き方・例文(社内規定違反・業務ミスなど)と、処分後の人事ファイル・昇進・転職・退職金への影響、拒否したい場合の選択肢までをまとめます。
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譴責処分の定義と就業規則上の位置づけ
譴責は「悪い行いを戒めて責める」という意味の言葉で、人事労務の文脈では「始末書を提出させ、文書で反省を促すことで将来を戒める懲戒処分」を指します。読み方は「けんせき」、漢字が常用漢字でないため、社内規程では「けん責」「ケン責」と表記される会社も多く、いずれも内容は同じです。
厚生労働省モデル就業規則の規定例
始末書を提出させて将来を戒める。
懲戒処分を行うためには、その種類と対象行為があらかじめ就業規則に明記され、従業員に周知されていることが必要です(労働基準法89条・労働契約法7条参照)。譴責もこの例外ではなく、就業規則に「次の各号の一に該当するときは譴責とする」といった形で根拠規定が置かれているのが通例です。
譴責処分の対象になりやすい行為
- 正当な理由のない遅刻・早退・欠勤の繰り返し
- 軽微な業務命令違反、職場秩序を乱す言動
- 業務上のミスや確認漏れによる軽度な損害発生
- 営業車での軽微な物損事故、社内設備の取り扱い不注意
- 経歴・申告内容の軽度な不正確(重大な経歴詐称は別の処分対象)
- 社内規定(情報持ち出し・SNS利用など)への軽微な違反
対象行為が同じでも、状況や反復性、損害の大きさによって、戒告・減給・出勤停止のどこに該当するかが変わります。譴責は「単発・軽微・初回」の事案で選ばれやすい処分です。
他の懲戒処分との違い|戒告・減給・出勤停止・諭旨解雇・懲戒解雇
譴責処分の重さを正しく理解するには、他の懲戒処分との比較が欠かせません。下表は、一般的な就業規則で見られる懲戒処分の種類を、軽い順にまとめたものです。
| 処分 | 重さ | 始末書 | 給与・勤務への影響 | 想定される対象行為 |
|---|---|---|---|---|
| 戒告(訓戒・訓告) | 最軽 | 原則なし(口頭注意中心) | なし | ごく軽微な注意指導レベルの違反 |
| 譴責(けん責) | 軽 | 提出を求めるのが通例 | 原則なし(賞与査定で考慮の余地) | 単発・軽微な規律違反、軽度の業務ミス |
| 減給 | 中 | あわせて提出を命じる例あり | 賃金から減額(労基法91条の上限あり) | 繰り返しの違反、損害が一定以上の事案 |
| 出勤停止 | 中〜重 | あわせて提出を命じる例あり | 停止期間中は無給、勤続年数不算入 | 業務妨害、繰り返しの重大違反 |
| 降格 | 重 | あわせて提出を命じる例あり | 役職・等級の引き下げ、給与減 | 管理者としての適格性を欠く行為等 |
| 諭旨解雇 | 最重 | 退職届の提出を勧告 | 原則として退職金は支給される運用が多い | 懲戒解雇相当だが情状を酌む余地あり |
| 懲戒解雇 | 最重 | 提出は問題ではなく即時解雇 | 退職金不支給・減額もあり | 重大な背信行為、業務上の犯罪等 |
戒告と譴責の違い
戒告と譴責はいずれも「将来を戒める」処分で、給与や勤務に直接の不利益を与えない点では共通しています。違いは「始末書の有無」が分かりやすい目安で、戒告は口頭での注意中心、譴責は文書(始末書)での反省提出を伴うのが一般的です。
会社によっては「戒告」「訓戒」「訓告」と呼び方を変えていますが、内容としては大きな差がないケースが多く、譴責だけが「書面で反省を残す処分」として明確に区別されています。
減給・出勤停止との違い
減給と出勤停止は、給与や勤務に直接の不利益を生じさせる点で譴責よりも明確に重い処分です。
減給は労働基準法91条で「1回の額が平均賃金の1日分の半額を超えてはならない、総額が一賃金支払期の賃金総額の10分の1を超えてはならない」という上限が定められており、これを超える減給は無効になります。
出勤停止は期間中の給与が支給されないのが一般的で、実務では数日〜1か月程度に設定されることが多いとされています。
諭旨解雇・懲戒解雇との違い
諭旨解雇と懲戒解雇は、雇用契約そのものを打ち切る最も重い処分です。譴責は雇用関係を継続したまま反省を求める処分なので、両者の間には明確な段差があります。なお、解雇の有効性は「客観的に合理的な理由」と「社会通念上の相当性」の両方が必要で(労働契約法16条)、譴責1回で直ちに解雇に至ることは原則想定されていません。
「始末書1枚でクビになるのか」「何回書いたら解雇か」をより詳しく整理した『始末書はやばい?書くとどうなる・クビになる可能性』もあわせてご覧ください。
譴責処分の流れと始末書の位置づけ
譴責処分は「いきなり始末書を書かされる」ものではなく、就業規則に基づく一連の手続きの中で行われます。一般的な流れは次のとおりです。
- 事実関係の調査(証拠の確認、関係者からの聞き取り)
- 本人へのヒアリングと弁明機会の付与
- 就業規則の懲戒事由・処分内容の確認、処分の決定
- 懲戒委員会等の会議体での審議(規程がある会社)
- 譴責処分通知書の交付
- 始末書の提出(期限を定めて命じるのが通例)
- 人事ファイルへの記録、必要に応じて社内開示の検討
始末書は「処分の効果」として位置づけられる
重要なのは、始末書の提出が「処分そのもの」の中身として位置づけられていることです。会社が譴責処分を決定した後に、その効果として始末書の提出を命じる、という順序です。
事実認定の手段として先に始末書を取らせるのは適切ではないとされており、事実確認は別途のヒアリングや顛末書(事実報告書)で行うのが本来の姿です。
弁明機会の重要性
懲戒処分の有効性を判断するうえで、本人に弁明(言い分を述べる)の機会が与えられたかは重要なポイントです。弁明機会を付与せずに処分を行った事例で、譴責処分が無効と判断され、慰謝料の支払いが命じられた裁判例も紹介されています。会社側にとっても本人にとっても、ヒアリングは形式的なものでなく、事実と認識のすれ違いを修正する機会として活用されるべきものです。
通知書を受け取った段階で「事実認識が異なる」「軽微な事案に対して処分が重い」と感じる場合は、署名・押印を急がず、弁明機会の中で見解を伝えるのが適切です。
譴責処分時の始末書の書き方
譴責処分の始末書は、単なる「謝罪文」ではなく、会社が処分の効果として求める「将来の戒め」の証拠として残る文書です。書き方を誤ると、評価への悪影響を自ら大きくしてしまったり、再発時の不利な事実として使われたりするおそれがあります。次の構成で淡々と書くのが安全です。
- 宛先:代表取締役名(または就業規則に定める処分権者)
- 提出日・所属・氏名・押印
- 謝罪の表明:簡潔に1〜2文
- 事実関係:日時・場所・行為内容を時系列で
- 原因の分析:自分の何が原因だったか
- 再発防止策:具体的な行動レベルで
- 結語:今後の戒めの言葉で締める

書くときの3つのポイント
- 事実は事実として書く(誇張も矮小化もしない)。「会社の信用を著しく毀損」のような重い表現は、後の処分判断で不利な証拠になりうる。
- 原因と再発防止策を必ずペアで書く。「以後気をつけます」だけでは反省の実効性が読み取れない。
- 他責表現・感情的表現は避ける。背景事情があるなら、感情を抜き「事実」として淡々と添える(業務量、指示内容、設備状況など)。
会社が文例を渡してきた場合の注意
会社側が「この通りに書いてください」と完成済みの文面を渡してくることがありますが、本来、始末書は本人の内心の表明であり、文例をそのまま書き写すのは趣旨に合わないとされています。
事実関係に違いがあれば必ず修正し、自分の言葉で書き直してから署名・押印するのが原則です。事実と異なる内容に署名するよう求められた場合は、その場で署名せず「自宅で確認のうえ提出します」と持ち帰って構いません。
ケース別の汎用的な書き方は『始末書の書き方完全ガイド』に、ケース別の例文集は『始末書・顛末書 例文集|ケース別テンプレート総まとめ』にまとめています。
譴責処分の始末書 例文|ケース別テンプレート
譴責処分でよくある3つのパターン(社内規定違反・業務ミス・遅刻欠勤)について、そのまま使える始末書の例文を用意しました。日付・氏名・部署・原因・再発防止策の部分は自分の状況に合わせて差し替えてください。
本記事の例文では宛先を「代表取締役 ○○ ○○ 様」としていますが、宛先は処分権者によって変わります。就業規則に処分権者の定めがある場合や、大企業で人事権が事業所長・本部長・支店長・工場長などに委ねられている場合は、その役職名宛てが適切です。譴責処分通知書の発信者名や社内規程を確認し、上司・人事の指示に従ってください。

▶ 始末書・顛末書テンプレートを開く(社内・社外、始末書/顛末書の切り替えに対応)
他のケース別例文(無断欠勤・紛失・破損・交通事故・レジ過不足など)は『無断欠勤の始末書』、『紛失の始末書』、『物品破損の始末書』、『交通違反・事故の始末書』、『レジ過不足の始末書』もご参照ください。
譴責処分が今後に与える影響|昇進・転職・履歴書・退職金
譴責処分は懲戒処分のうち最も軽い部類とはいえ、社内記録としては残ります。よく聞かれる4つの観点(昇進・転職・履歴書・退職金)について、想定される影響を整理します。
| 観点 | 影響 | 補足 |
|---|---|---|
| 賞与・昇給査定 | マイナス考慮の可能性あり | 人事評価の中で考慮することは認められやすい |
| 昇進・昇格 | 短期では遅れる可能性あり | 「不当に長期間」遅らせると権利濫用となる余地 |
| 履歴書 賞罰欄 | 原則として記載不要 | 賞罰欄の対象は刑事罰・公的表彰が一般的とされる |
| 前職照会 | 本人同意なく直接照会されることは少ない | 応募者同意のリファレンスチェックは別 |
| 退職金 | 譴責単独では原則減額・不支給にならない | 退職金規程の根拠と懲戒解雇相当の事案が必要 |
| 次回処分 | 繰り返し時に「段階的処分」の前提となる | 解雇の有効性判断で参考にされる |
昇進・賞与への影響
譴責処分を理由に賞与査定や昇給で考慮を加えることは、人事権の範囲として一般に認められると説明されています。
ただし、「処分の重さに見合わないほど不当に」昇給を遅らせる、賞与をゼロにするなどの運用は、人事権の濫用として無効になる余地があるとされています。短期(次回の評価期間)にマイナスの考慮が入ることはあっても、永続的な不利益を強いる扱いは合理性に乏しいと考えられます。
転職・履歴書への影響
履歴書の「賞罰」欄に記載が必要なのは、一般に「刑事罰」と「公的な表彰歴」と説明されており、社内の譴責処分はこの欄の対象外として扱うのが通例です。したがって、譴責処分を受けた事実を履歴書に記載する義務は通常ありません。応募者本人の同意を得たうえでのリファレンスチェックは別ですが、企業が本人の同意なく前職に処分歴を直接照会することは、個人情報保護法の観点から原則認められていません。
退職金への影響
退職金の減額・不支給は、就業規則や退職金規程に明文の根拠が必要で、譴責処分単独で退職金が減らされる運用は通常ありません。退職金の減額・不支給が問題となるのは、主に懲戒解雇に至った場合や、退職金規程に「重大な背信行為があった場合」などの特別な減額事由が定められている場合です。
「やばい・クビになるのか」をさらに掘り下げた解説は『始末書はやばい?書くとどうなる・クビになる可能性』に、退職を検討する場合の判断軸は『始末書後の退職判断|自主退職・納得できない場合の対応』にまとめています。
譴責処分の始末書を拒否したい場合
譴責処分そのものへの納得感がない場合や、内容に事実と異なる部分がある場合、始末書の提出を拒否したいと考えることがあります。法的には、始末書の提出を強制することはできないとする見解が多数で、提出拒否そのものを理由に追加の懲戒処分を科すことは原則できないとされています(同一事案への二重処分は無効と判断されやすい)。
理論的な背景には、日本国憲法第19条が保障する「思想・良心の自由」があります。始末書の中核は「謝罪」と「反省の表明」、すなわち本人の内心の表明であり、内心の領域に踏み込んで謝罪や反省を強制することはできない、というのが過去の裁判例での一般的な見解です。会社が始末書の提出を業務命令として命じることはできても、「謝罪・反省を表明しなかったこと」自体を理由に重い懲戒処分を上乗せするのは難しいのはこのためです。
完全拒否ではなく「顛末書への切り替え」「補足説明書の添付」も選択肢
とはいえ、何も提出しないと評価面・人間関係面で間接的な不利益が残ります。実務的には、「謝罪・反省を含む始末書」ではなく「事実関係のみを記載した顛末書(報告書)」に切り替えて提出する、または「事実関係についての補足説明書」を併せて提出する、という選択肢が現実的です。
ここで注意したいのが、事実関係の報告(顛末書)まで拒否すると別問題になりうるという点です。「謝罪・反省」は内心の問題なので強制できませんが、「業務上発生した事実を従業員に報告させること」は、会社の業務命令権の範囲内と整理されています。事実報告まで一切拒むと、業務命令違反として別途の懲戒処分の根拠になるリスクがあるため、「始末書(謝罪文)は内容に納得できないので出せないが、事実関係の報告(顛末書)は出します」と切り分けて応じるのが、現実的かつ穏当な落とし所です。
弁明機会を活用する
処分通知前のヒアリング段階で、事実関係や処分の重さに対する見解を文書(弁明書)で残すのも有効です。特に、譴責処分の前提となる事実認識に争いがある場合は、署名・押印を急がず、弁明機会の中で見解を伝えるのが適切です。
拒否したい場合の具体的な選択肢・テンプレート・強要されたときの相談先は『始末書を拒否できる?書かせる会社の法的根拠と対処法』に詳しくまとめています。
譴責処分についてよくある質問
Q1. 譴責処分は何回まで受けられる?
「譴責○回で解雇」と就業規則に書いている会社もありますが、回数だけを根拠にした解雇は無効になりうるとされています。解雇の有効性は、回数ではなく「同種の問題を繰り返している事実」「会社が改善の機会を与えたか」「段階的な処分を踏んでいるか」など、総合的な事情で判断されます。
Q2. 譴責処分は社内のどこまで知られる?
原則として人事ファイルに保管され、本人と直属の上司・人事・経営層など、業務上必要な範囲でのみ参照されるのが一般的です。社内に広く周知することは、本人のプライバシー権との関係で過剰な扱いになりやすく、業務上の必要性が乏しい場合には行わないのが通例です。
Q3. 譴責処分の有効性が争えるケースは?
次のような事情があると、譴責処分の有効性が争われる余地があります。
- 就業規則に懲戒事由・処分種類が定められていない/周知されていない
- 本人に弁明機会が与えられなかった
- 処分の重さが事案に対して不釣り合い(軽微な事案に対し過剰な処分)
- 同じ事案に対し繰り返し処分されている(二重処分)
実際に、弁明機会を付与せずに行われた譴責処分が無効と判断され、慰謝料の支払いが命じられた裁判例も紹介されています。
Q4. 譴責処分は履歴書に書く必要がある?
履歴書の賞罰欄の記載対象は、一般に「刑事罰」と「公的な表彰歴」とされており、社内の譴責処分はこの欄に書く必要は通常ありません。ただし、応募先から退職理由や懲戒歴について明示的に質問された場合に虚偽の回答をすると、後で経歴詐称として問題になる余地があるため、聞かれた場合は事実を答えるのが原則です。
Q5. 譴責処分と始末書はどちらが先?
譴責処分の決定が先で、始末書の提出はその効果として命じられるのが本来の流れです。事実認定の手段として始末書を先に取らせるのは、本人の弁明機会を確保しないまま処分の前提を作ることになりかねず、適切ではないとされています。事実確認は別途のヒアリングや顛末書(事実報告書)で行うのが本来の姿です。
Q6. 譴責処分でも反省文や顛末書では足りない?
会社が譴責処分の効果として始末書の提出を命じている場合、原則として始末書(謝罪・反省を含む文書)が想定されています。反省文や顛末書(事実関係のみ)で足りるかは、就業規則の規定と会社の運用によります。譴責処分の趣旨は「将来を戒める」ことにあるため、事実関係のみの顛末書では趣旨を満たさないと判断されることもあります。
始末書と反省文・顛末書の違いを整理した『始末書と反省文の違い』もご参照ください。
始末書をすぐに整えたい方へ
譴責処分通知書を受け取ったあとは、提出期限が短く設定されることもあります。事実関係と再発防止策が決まったら、フォーマットで悩むのではなく、テンプレートで素早く整えて提出するのが、評価への影響を最小化する最も現実的な進め方です。
コラム著者・編集者
TEMPLEX編集チーム
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