前受金・前払いの請求書の書き方|着手金・内金の相殺・精算と記入例

前受金・前払いの請求書の書き方|着手金・内金の相殺・精算と記入例

前受金の請求書は「通常の請求書+目的の明記」でよい

着手金・内金・手付金など、商品やサービスを提供する前に代金の一部(または全部)を請求するのが前受金の請求です。請求書の様式そのものは通常の請求書と同じで、特別なフォーマットは要りません。違うのは「これは前受金の請求である」と相手に伝わるように書く点だけです。

迷ったときに最低限おさえるのは次の3つです。件名(タイトル)で前受金とわかること・但し書きで何に対する前受金かを書くこと・後で精算することがわかること。これさえ満たせば、相手の経理も二重請求の心配なく処理できます。

  • 件名 — 「請求書(着手金)」「前受金のご請求」のように、前受金分だとひと目でわかるようにする。
  • 但し書き・品目 — 「○○制作 着手金として」のように、どの取引・案件の前受金かを具体的に書く。
  • 金額 — 総額のうち今回いくら受け取るか。割合で決めたなら「総額の30%」と実額の両方を書くと親切。
  • 後の精算の予告 — 「残金は納品後にご請求します」など、これで終わりではないと添える。

前受金・着手金・内金・手付金は、実務ではほぼ同じ意味で使われます。会計の勘定科目はいずれも「前受金」でまとめて処理することが多く、請求書の書き方も共通です。相手に伝わる呼び方(着手金が一般的な業界なら着手金)を選べば問題ありません。

前受金を請求する記入例(そのまま使える但し書き)

まずは前受金そのものを請求するパターンです。総額が決まっているなら、件名・品目・備考の3か所で「前受金分の請求」だと伝えると誤解が起きません。下の例はそのまま貼り付けて使えます(金額・案件名は置き換えてください)。

前受金を請求する記入例
前受金を請求する記入例
件名・品目・備考(着手金を請求する場合)
件名:請求書(着手金) 品目:Webサイト制作 着手金(総額の30%) 金額:150,000円 消費税(10%):15,000円 合計:165,000円 備考: 本請求は着手金です。残金は納品後に別途ご請求いたします。

品目欄に行を分けて書くスタイルなら、「○○一式」のうち今回は着手金分だけを請求していることを品名で示すとより明確です。

品名数量単価(円)金額(円)
Webサイト制作一式 着手金(総額500,000円のうち30%)1150,000150,000
前受金(着手金)を請求する明細の書き方。残金は後日精算する旨を備考に添える

前払いをお願いする理由は書かなくても失礼にはあたりませんが、新規取引なら一言添えると角が立ちません。「ご入金の確認後に作業を開始いたします」と備考に書いておくと、着手の条件として自然に伝わります。

受け取った前受金を後の請求書で相殺する書き方

前受金の請求でいちばん間違えやすいのが、納品後の精算請求です。総額をそのまま請求すると、すでに受け取った前受金と合わせて二重に請求してしまいます。これを防ぐ書き方は決まっていて、「総額(税込)→ 受領済みの前受金をマイナス → 差引請求額」の順に並べるだけです。

項目金額
Webサイト制作一式(税抜)500,000円
消費税(10%)50,000円
合計(税込)550,000円
前受金(○月○日受領済み)△165,000円
差引ご請求金額385,000円
精算請求書の書き方。先に総額を出し、受領済みの前受金(税込)を差し引いて残額を請求する

ポイントは、差し引く前受金は「税込の受領額」をそのまま引くことです。前受金165,000円には消費税15,000円が含まれているので、165,000円を丸ごとマイナスします。税抜を先に引いて残額に課税しても差引の最終額(385,000円)は同じですが、その場合は請求書に載る消費税が35,000円になり、本来の取引(課税売上500,000円)の消費税50,000円より少なく表示されてしまいます。消費税は前受金を引く前の総額にかかるため、インボイスには総額の消費税50,000円を載せ、税込の前受金を入金として差し引くのが正しい形です。

精算請求書の備考(前受金の相殺を明記する一文)
備考: 本案件の総額(税込550,000円)から、○月○日に受領済みの前受金165,000円を差し引いてご請求しております。

前受金を受け取った日付と金額を備考に必ず書いておきましょう。「いつ・いくら受け取った分を差し引いたか」が請求書だけで追えると、相手の経理も突き合わせがしやすく、問い合わせが減ります。

前受金は「売上」ではなく「負債」になる

請求して入金があると売上に計上したくなりますが、前受金は違います。前受金を受け取った時点では売上ではなく、貸借対照表の「負債(流動負債)」に計上します。まだ商品やサービスを提供していない=「これから提供する義務」を負っているお金だからです。提供できなければ返金する性質のお金、と考えるとわかりやすいです。

売上に振り替えるのは、実際に商品を引き渡した日・サービスを提供し終えた日です。前受金を受け取ったときと、納品して売上に振り替えるときで、仕訳は次のように2段階になります。

タイミング借方貸方
前受金を受け取ったとき現金・預金 165,000前受金 165,000(負債)
納品して売上に振り替えるとき前受金 165,000売上 150,000/仮受消費税 15,000
前受金は受領時にいったん負債に計上し、納品時に売上へ振り替える(金額は着手金165,000円の例)

受け取る側の「前受金」は、支払う側から見ると「前払金(前渡金)」です。同じお金でも、受け取る側は負債、支払う側は資産(前払金)として記帳します。請求書を出すあなたの側では負債、と覚えておけば十分です。

前受金の消費税は「非課税」ではなく、課税が引渡し時まで繰り延べになる

「前受金は非課税」と説明されることがありますが、これは正確ではありません。前受金は非課税取引ではなく、課税の時期が後ろにずれる(繰り延べられる)だけです。消費税が課税されるのは、原則として商品の引渡しやサービスの提供があった時だからです。

国税庁も、前受金を受け取った時期に関係なく、現実に引渡し・役務提供をした時が「資産の譲渡等の時期」になると示しています(国税庁 タックスアンサー No.6165「前受金や前払金などがあるとき」)。消費税の納税義務も、課税資産の譲渡等をした時=引渡しや役務提供の時に成立します(同 No.6141「納税義務の成立の時期」)。

実務への影響はシンプルです。前受金を請求・受領した期ではなく、納品した期の売上・消費税として申告する。たとえば3月に着手金を受け取り、5月に納品したなら、消費税の認識は5月(納品した課税期間)です。決算期をまたぐ前受金は、売上・消費税の計上もれが起きやすいので注意してください。

請求書に「非課税」と書くのは避けましょう。本当の非課税取引(土地の譲渡や利子など)と混同され、相手の経理を混乱させます。前受金の段階で消費税を分けて書くなら「税込○○円」と書けば十分で、わざわざ非課税と注記する必要はありません。

インボイス対応:前受金の段階で適格請求書を完結させない

あなたが適格請求書発行事業者なら、前受金まわりでもう一つ注意点があります。適格請求書(インボイス)に書く「取引年月日」は、請求書を出した日ではなく、実際に引渡し・提供をした日です。ところが前受金は提供前に請求するため、その時点では本当の取引年月日が確定しておらず、適格請求書の記載要件をきれいに満たせません。

そこで実務では、前受金の段階では通常の請求書として出し、適格請求書の要件は納品後の精算書類(精算請求書・納品書・領収書)で満たすのが確実です。適格請求書は「請求書」という名前の書類に限られず、納品書や領収書でも記載要件を満たせば適格請求書として通用します。前受金の領収書をインボイスにしたい場合は、入金日(=提供が前受金分だけ完了したとみなせる日)を取引年月日にする運用もありますが、迷うなら最終の精算書類でまとめて要件を満たすほうがトラブルが少なくなります。

取引先から「着手金の請求書もインボイス形式(T番号付き)で」と求められたら、応じても問題ありません。登録番号を記載し、品目を「○○案件 着手金(提供予定:○月)」のように書けば、適格請求書の体裁で着手金を請求できます。ただしこれは相手が即その金額を仕入税額控除できる書類ではありません。相手の仕入税額控除のタイミングは引渡し・役務提供が完了した時で、辻褄は最終の精算書類で合わせるのが基本、と添えておくと誤解を防げます。

免税事業者は、前受金でも登録番号(T+13桁)を書きません。適格請求書発行事業者の必須項目や登録番号の扱いそのものは、書類が前受金分かどうかで変わりません。記載事項の全体像は 請求書の書き方 で確認してください。

源泉徴収が必要な報酬の前受金はどうする

原稿料・デザイン料・士業の報酬など、源泉徴収の対象になる仕事の着手金を請求するときは、消費税とは扱いが分かれます。源泉徴収は「支払った時点」で発生するため、源泉対象の報酬なら着手金でも支払時に源泉徴収するのが原則です。報酬を支払う者は「その支払の際」に所得税を徴収すると定められており(所得税法第204条第1項)、ここでいう支払には前払金・概算払も含まれます(所得税基本通達181〜223共-1「支払の意義」)。前受金として処理していても、源泉徴収だけは支払時に行うのが原則、と整理しておきましょう。

ただし源泉徴収するのは支払う側で、請求するあなたが天引きするわけではありません。着手金の段階から税額を分けて書くなら、請求書に「報酬○○円・源泉徴収税額△△円・差引お支払額」を明示しておくと、相手も支払時に源泉しやすくなります。最終の精算請求書では、着手金で源泉済みの額を踏まえて二重に源泉されないよう、その旨を備考で補足しておくと安全です。源泉徴収の対象範囲や税率(10.21%など)は 請求書の書き方 にまとめています。

前受金の請求書をすぐ作る

前受金の請求書も、品目に「着手金」と書き、備考に「残金は納品後に請求」「前受金を相殺済み」と添えるだけで形になります。TEMPLEXの請求書テンプレートなら、フォームに入力するだけで前受金・差引請求額まで整えてPDF出力できます。振込先や消費税の区分もレイアウト済みなので、書式づくりに悩む必要がありません。テンプレートはこちらから使えます。

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TEMPLEX編集チームは、ビジネス文書の作成・管理に精通した実務経験者と技術ライターで構成されています。送付状・請求書・見積書をはじめとする各種ビジネス書類のフォーマットや書き方のノウハウを、わかりやすく丁寧にお届けします。「Office不要で誰でもすぐ使える」をコンセプトに、忙しいビジネスパーソンの書類作成をサポートします。

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