免税事業者の請求書の書き方|消費税は請求していい?登録番号の扱い

免税事業者でも消費税は請求していい(登録番号は書かない)
結論から言うと、免税事業者でも、消費税相当額を上乗せして請求することは問題ありません。仕入れや経費の段階であなた自身が負担した消費税を、取引価格に転嫁するのは適正な行為だからです。一方で、登録番号(T+13桁)は書けませんし、適格請求書(インボイス)も発行できません。免税事業者は登録番号を持っていないためです。
つまり、免税事業者の請求書は「消費税相当額は載せてよい/登録番号は載せない」が基本形になります。様式は、インボイス制度の前から使われてきた区分記載請求書と同じで構いません。何か特別なフォーマットを用意する必要はなく、登録番号の欄だけを設けないイメージです。

そもそも免税事業者とは、前々年(基準期間)の課税売上高が1,000万円以下などの理由で、消費税の納税義務が免除されている事業者です。開業して間もない個人事業主やフリーランスの多くがこれに当たります。納税義務はなくても、取引先に消費税相当額を請求することまで禁じられているわけではない、という点をまず押さえてください。
なぜ免税事業者でも消費税を請求していいのか
「自分は消費税を納めないのに、請求していいの?」と不安になる方は多いです。ここは国税庁が明確に答えています。免税事業者が、仕入れの際に負担した消費税相当額を取引価格に上乗せして請求することは、適正な転嫁として何ら問題ないという立場です(国税庁 インボイス制度に関するQ&A 問26-2)。
理由はシンプルで、あなたも商品の仕入れや外注費・備品の購入では消費税を払っているからです。その負担を価格に反映させずに「税抜き相当でしか受け取れない」となると、免税事業者だけが消費税分を丸ごとかぶることになってしまいます。だから上乗せ請求は正当だ、という整理です。
請求書の見せ方も自由です。「税込○○円」と内税でまとめても、税抜き+消費税相当額に分けて書いても構いません。納める税額の計算とは無関係なので、相手が処理しやすい形を選べば十分です。
免税事業者は受け取った消費税相当額をそのまま手元に残せます(いわゆる益税)。これは制度上認められた状態であり、後ろめたく感じる必要はありません。気になる場合は、税込価格だけを示して消費税という言葉を出さない見せ方にする手もあります(次のセクションで解説します)。
「消費税」と「消費税相当額」どちらで書く?
上乗せできるとして、請求書の項目名を「消費税」とするか「消費税相当額」とするかで迷うところです。実は免税事業者は厳密には消費税を「預かる」立場ではないため、「消費税相当額」と書くのがより正確です。納税義務のない事業者が「消費税」と言い切ると、取引先によっては違和感を持たれることがあります。
とはいえ、実務での選択肢は次の3つです。トラブルが起きにくい順に並べました。
- 税込価格だけを書く(最も無難) — 「○○一式 110,000円」のように、税込の総額だけを示す。消費税という言葉を出さないので、誤解も指摘も生まれにくい方法です。
- 「消費税相当額」として内訳に書く — 税抜と分けて見せたいときは、項目名を「消費税」ではなく「消費税相当額」にする。正確で、相手にも転嫁の趣旨が伝わります。
- 従来どおり「消費税」と書く — 使っている様式の改修が難しい場合などは現状でも差し支えありません。ただし適格請求書と誤認させる体裁にはしないこと。
実際の書き方はこの通りです。税抜と分けて見せる場合の記入例を載せます。登録番号の欄は設けず、消費税の内訳は「消費税相当額」とするのがおすすめです。
| 品目 | 数量 | 単価 | 金額 |
|---|---|---|---|
| デザイン制作 | 1 | 100,000円 | 100,000円 |
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 小計 | 100,000円 |
| 消費税相当額(10%) | 10,000円 |
| 合計金額 | 110,000円 |
| 品目 | 金額 |
|---|---|
| デザイン制作(税込) | 110,000円 |
| 合計金額 | 110,000円 |
軽減税率(8%)の対象品目を含む場合は、税率ごとに分けて書きます。8%対象の行と10%対象の行を区別し、それぞれの税込合計がわかるようにすれば、区分記載請求書の要件を満たせます。税率の併記は「8%」「10%」とそのまま書けば十分です。
免税事業者の請求書に書く項目(区分記載請求書)
免税事業者の請求書は、適格請求書の必須6項目をそろえる必要はありません。区分記載請求書として、次の5項目があれば十分です。インボイス制度で増えた「登録番号」「税率ごとの消費税額」「適用税率」を厳密に書く義務はない、という点が課税事業者との違いです。
| 記載事項 | 書き方のポイント |
|---|---|
| ① 発行者(自分)の氏名・名称 | 屋号や個人名、住所・連絡先を記載。登録番号は書かない(持っていないため) |
| ② 取引年月日 | 商品の引き渡し日・サービス提供日。月締めなら「○月分」でも可 |
| ③ 取引内容(軽減税率対象はその旨) | 品目・数量など。8%対象を含むなら、その品目がわかるように区別する |
| ④ 税率ごとに区分した税込合計額 | 10%対象・8%対象に分けた税込の合計。税率ごとの「消費税額」までは不要 |
| ⑤ 交付を受ける相手の氏名・名称 | 取引先の正式名称。会社宛は「御中」、担当者宛は「様」 |
ここに、実務で必要な請求書番号・件名・振込先・支払期日を足せば、課税事業者と見た目はほとんど変わらない請求書になります。違いは「登録番号の欄がない」ことと、消費税の内訳が「消費税相当額」になっている(または税込のみ)ことだけです。各項目の細かな書き方は、発行側向けの基本ガイドにまとめています。

請求書の書き方|インボイス対応の必須項目・端数処理・源泉徴収まで
請求書を発行する側のための実務ガイド。適格請求書(インボイス)の必須6項目、免税事業者の請求書の書き方(登録番号は書かない)、消費税の端数処理、源泉徴収の要否と計算、押印・印紙の扱い、振込手数料の負担、支払期日の決め方、送付前チェックリストまでをまとめました。
記事を読む税込・税抜のどちらで見せるか、内税と外税の使い分けで迷う場合は、記入例を並べた次の記事も参考になります。

請求書の税込・税抜の書き方|内税・外税の違いと金額の記載例
請求書を税込(内税)と税抜(外税)どちらで作るかの選び方と金額の書き方を発行側向けに並べて解説。インボイスでは税率ごとの消費税額が必須で税抜金額のみはNG、内税で明細を税込にすると消費税額がずれる点も記載例つきで整理しました。
記事を読む登録番号は書けない・書いてはいけない
免税事業者がいちばん注意すべきなのが登録番号の扱いです。登録番号(T+13桁)が割り当てられるのは適格請求書発行事業者として登録した事業者だけで、免税事業者は登録していないため番号を持っていません。だから書けない、というのが大前提です。
ここで絶対にやってはいけないのが、番号があるように見せかけることです。体裁を整えるために架空の番号を作る、他社の登録番号を借りる、T+13桁に似せた英数字を「登録番号」として書く——これらはすべて禁止されています。
適格請求書と誤認されるおそれのある書類の交付は、消費税法57条の5で禁止されています。登録番号に類似した英数字や、自分のものではない登録番号を記載した書類が該当します。違反すると消費税法65条により1年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金の対象になり得ます(国税庁 消費税法基本通達 第7節)。
正しい対応は単純で、登録番号の欄を作らない(または空欄のまま何も書かない)ことです。前述のとおり消費税相当額を請求書に載せること自体は問題なく、それが適格請求書と誤認させる体裁でなければ罰則の対象にはなりません。番号さえ書かなければ、消費税相当額の記載で違反になることはないと考えて差し支えありません。
自分が登録しているか不安なときや、取引先のT番号が本物か確かめたいときは、登録番号の調べ方・照合のしかたを別記事にまとめています。

インボイスの登録番号(適格事業者番号)がわからないときの調べ方・確認方法
取引先の登録番号が正しいか確認したい/自分のインボイス登録番号を忘れた、という人向けに、国税庁の公表サイトでの検索方法、登録通知書やe-Taxでの確認、法人番号からの調べ方、番号の照合手順、検索できない条件までを公式情報にもとづいてまとめました。
記事を読む取引先(買い手)はどうなる?仕入税額控除の経過措置
免税事業者の請求書を受け取った取引先(買い手)は、原則としてあなたへの支払いについて消費税の仕入税額控除ができません。適格請求書がないためです。ただし、いきなり全額控除できなくなるわけではなく、当面は一定割合まで控除できる経過措置が設けられています。
| 期間 | 買い手が控除できる割合 |
|---|---|
| 2023年10月1日〜2026年9月30日 | 80% |
| 2026年10月1日〜2028年9月30日 | 70% |
| 2028年10月1日〜2030年9月30日 | 50% |
| 2030年10月1日〜2031年9月30日 | 30% |
| 2031年10月1日以降 | 控除できない(0%) |
今は最初の「80%控除」の期間にあたるため、買い手側の負担増もまだ限定的です。買い手が経過措置を使うには帳簿に「経過措置の対象である旨」を記載する必要がありますが、あなたが発行する請求書の様式は通常どおりで構いません。なお、この控除割合のスケジュールは令和8年度の税制改正で見直されたもので、当初は80%の後に50%へ一気に下げて令和11年で終了する予定でした。それが80%→70%→50%→30%と段階的にゆるめられ、最終期限も2年延びています。
区分記載請求書として必要な記載(前述の5項目)がそろっていれば、買い手は経過措置による控除を受けられます。項目が欠けていると控除できず、取引先に余計な手間と負担をかけてしまいます。免税事業者だからこそ、記載漏れには気をつけましょう。
「インボイスがないなら値下げを」と言われたら
経過措置があるとはいえ、買い手の控除額は段階的に減っていきます。そのため、免税事業者であることを理由に取引先から「登録してほしい」「無理なら値下げを」と打診されるケースが出てきます。ここで知っておきたいのが、発行側にも守られる立場があるという点です。
公正取引委員会は、課税事業者にならなければ取引価格を引き下げる・取引を打ち切ると一方的に通告することは、独占禁止法や下請法(取適法)上問題となるおそれがあるとしています(公正取引委員会 免税事業者及びその取引先のインボイス制度への対応に関するQ&A)。登録を「要請」すること自体は問題になりませんが、十分な協議なく仕入側の都合だけで低い価格を押し付けるのは別の話だ、という整理です。
つまり、価格を見直すなら双方の協議が前提です。あなたが価格維持を求めたのに理由の説明もなく一方的に減額される、協議の場で消費税の転嫁について話し合わずに据え置かれる、といった対応は問題視され得ます。打診されたときは、いきなり受け入れるのではなく、まず話し合いの場を持つよう求めて構いません。
登録するかどうかは、取引先との関係と売上規模を踏まえたあなた自身の事業判断です。取引先が課税事業者中心(BtoB)でインボイスを求められるなら登録を検討、一般消費者向け(BtoC)が中心なら登録しない選択も十分あり得ます。価格の話と登録の話を切り分けて考えるのがおすすめです。
登録して課税事業者になったら請求書はどう変わる?
取引先の事情で適格請求書発行事業者として登録した場合、請求書の書き方も変わります。登録番号(T+13桁)を記載し、税率ごとの消費税額・適用税率まで書いた適格請求書を発行することになります。免税事業者向けの「登録番号なし・消費税相当額」の様式から、課税事業者向けの様式に切り替えるイメージです。

登録すると消費税の納税義務が生じますが、負担をやわらげる措置もあります。免税事業者からインボイス登録で課税事業者になった人は、納付税額を売上にかかる消費税の2割に抑えられる「2割特例」を使えます(国税庁 2割特例 特設ページ。令和5年10月1日〜令和8年9月30日を含む各課税期間が対象。事前の届出は不要で、申告時に選べます)。ただし2割特例の対象は令和8年(2026年)9月30日を含む課税期間が最後で、適用期間は終盤に入っています。これから登録するなら、使える期間が限られる点も踏まえて判断してください。登録後の請求書の具体的な記載事項は、発行側向けの基本ガイドで確認してください。

請求書の書き方|インボイス対応の必須項目・端数処理・源泉徴収まで
請求書を発行する側のための実務ガイド。適格請求書(インボイス)の必須6項目、免税事業者の請求書の書き方(登録番号は書かない)、消費税の端数処理、源泉徴収の要否と計算、押印・印紙の扱い、振込手数料の負担、支払期日の決め方、送付前チェックリストまでをまとめました。
記事を読む免税事業者の請求書はテンプレートで簡単に作れる
ここまでの内容をまとめると、免税事業者の請求書は「登録番号は書かない・消費税相当額は載せてよい・区分記載の5項目をそろえる」の3点を守れば問題ありません。あとは振込先や支払期日を入れて1枚に仕上げるだけです。
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コラム著者・編集者
TEMPLEX編集チーム
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