納品書とインボイス制度|適格請求書にする条件・登録番号・納品書+請求書での対応

納品書はインボイスにできる — まず結論
納品書も、必要な記載事項をすべて満たせば適格請求書(インボイス)として扱えます。適格請求書とは特定の書式の用紙を指すのではなく、請求書・納品書など「決められた事項が書かれた書類」の総称だからです(国税庁タックスアンサー No.6625)。書類のタイトルが「納品書」であっても、後述の6項目が書いてあればインボイスになります。
さらにもう一つ、実務で重要な選択肢があります。1枚の書類だけで全項目を満たす必要はなく、納品書と請求書を組み合わせて要件を満たすことも認められています(国税庁インボイスQ&A 問67)。たとえば納品書側に商品ごとの明細と税率ごとの金額を書き、請求書側に登録番号と合計を書く、という役割分担です。
迷ったときの判断軸:納品の都度シンプルに渡したいなら「納品書+請求書」を組み合わせて要件を満たす、納品と請求が同時で1枚にまとめたいなら「納品書兼請求書」1枚を適格請求書にするのが分かりやすい運用です。どちらでも、登録番号・税率ごとの金額・税額が「全体としてそろっている」ことが条件です。
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適格請求書の記載事項6項目を納品書に当てはめる
国税庁が定める適格請求書の記載事項は次の6項目です(No.6625、消費税法57条の4第1項)。このうち①の登録番号・④の適用税率・⑤の税率ごとの消費税額の3つが、インボイス制度で新しく追加された部分です。従来の納品書に書いていた内容に、この3つを足せると考えると分かりやすくなります。
| 記載事項(国税庁No.6625) | 納品書のどこに書くか |
|---|---|
| ① 発行者の氏名・名称と登録番号 | 差出人欄に会社名と「登録番号 T+13桁」を併記する |
| ② 取引年月日 | 納品日(出荷日・引渡日)を記載する |
| ③ 取引内容(軽減税率対象ならその旨) | 品名・明細欄。税率列がある様式は各行に「8%/10%」と併記する。税率列がない簡易様式は8%対象品に「※」を付け欄外に「※は軽減税率対象」と注記する |
| ④ 税率ごとに区分した合計額と適用税率 | 「10%対象 ○○円/8%対象 ○○円」のように税率別の小計と税率を記載する |
| ⑤ 税率ごとに区分した消費税額 | 「消費税10%分 ○○円/8%分 ○○円」を税率別に記載する |
| ⑥ 交付を受ける事業者の氏名・名称 | 宛名欄(取引先名)を記載する |

②取引年月日・③取引内容・⑥宛名は、従来の納品書にもともと書いてある項目です。つまり登録番号と「税率ごとの金額・税額」を足せば、納品書はそのままインボイスになります。逆に、これらが欠けた納品書は適格請求書にはならず、受け取った側の仕入税額控除の根拠にもなりません。
軽減税率(8%)対象品を扱わない取引でも、「10%対象 ○○円(消費税 ○○円)」という税率と税額の記載は必要です。「8%の品がないから税率は書かなくていい」という誤解に注意してください。
登録番号(T+13桁)を納品書のどこに書くか
登録番号は「T」+13桁の数字で構成されます(例:T1234567890123)。法人はすでに持っている13桁の法人番号の前に「T」を付けたものが登録番号になり、個人事業主など法人番号がない事業者には13桁の番号が新たに割り当てられます。
納品書では、発行者(自社)の会社名・住所のすぐ近くに「登録番号 T○○○…」と1行加えるのが一般的です。請求書と組み合わせて要件を満たす場合は、登録番号は納品書・請求書のどちらか一方に書いてあれば足ります(書類全体として記載されていればよい・問67)。

受け取った納品書・請求書の登録番号が正しいか(取引先が本当に登録事業者か)を確認したいときは、番号から事業者を照会できます。確認手順は別記事で解説しています。

インボイスの登録番号(適格事業者番号)がわからないときの調べ方・確認方法
取引先の登録番号が正しいか確認したい/自分のインボイス登録番号を忘れた、という人向けに、国税庁の公表サイトでの検索方法、登録通知書やe-Taxでの確認、法人番号からの調べ方、番号の照合手順、検索できない条件までを公式情報にもとづいてまとめました。
記事を読む納品書+請求書を組み合わせて適格請求書にする方法
国税庁は、1枚の書類だけで全項目を満たす必要はないとはっきり示しています(問67・基通1-8-1)。条件は、複数の書類の相互の関連が明確で、取引内容を正確に認識できることです。具体例として、国税庁は「請求書に納品書番号を記載する」方法を挙げています。
国税庁の記載例にならうと、役割分担は次のようになります。納品書側に「税率ごとの金額・適用税率・税率ごとの消費税額」、請求書側に「登録番号」を書き足すと、2枚を合わせて適格請求書の記載事項を満たします。請求書には締め期間の合計と、各納品書番号を並べて突き合わせられるようにします。
- 納品書:品名・税率ごとの小計(10%対象/8%対象)・税率ごとの消費税額・納品書番号
- 請求書:登録番号 T+13桁・締め期間・合計金額・対応する納品書番号の一覧
- 両者をつなぐ目印:請求書に納品書番号(例 №0011〜0013)を記載して関連を明確にする
請求書と納品書を別々に発行する取引では、「登録番号は請求書だけに書けばよい」という整理にできます。納品書1枚ごとに毎回登録番号を入れ直す必要はなく、関連が明確であれば書類全体で要件を満たせます。
端数処理は「どの書類で1回行うか」を決める
消費税額に1円未満の端数が出る場合、一の適格請求書につき、税率ごとに1回だけ端数処理を行います(問57・消令70の10、基通1-8-15)。切上げ・切捨て・四捨五入のどれを使うかは任意ですが、個々の商品ごとに端数処理して合計する方法は認められません。
納品書と請求書を組み合わせる場合は、どちらの書類で消費税額を確定(端数処理)するかを先に決めておくのがポイントです。納品書側に「税率ごとに区分した消費税額」を記載するなら、端数処理は納品書につき税率ごとに1回行います(問67の記載例)。この場合、請求書側にあらためて税率ごとの消費税額を書く必要はありません。
- 納品書を「税額の確定書類」にする:納品書ごと・税率ごとに1回端数処理。請求書は合計の集計に徹する
- 請求書を「税額の確定書類」にする:締めた合計を税率ごとに1回端数処理。納品書には税額を載せない(または参考表示)
- 同じ取引で両方の書類に別々の税額を記載して二重に端数処理しない
請求書に税率ごとの消費税額を載せない場合でも、納品書に書いた消費税額の合計を請求書に「参考」として併記しても差し支えありません(問67)。ただしその合計額は法令上の記載事項としての消費税額にはならない点に留意してください。
返品・値引きがあったとき — 適格返還請求書
いったん納品したあとに返品や値引き・割戻しがあった場合、適格請求書発行事業者は「適格返還請求書(返還インボイス)」を交付する義務があります(消費税法57条の4第3項・国税庁インボイスQ&A 問60)。値引き分・返品分を「売上げに係る対価の返還等」として相手に知らせる書類で、税率ごとに区分した返還額と消費税額を記載します。
ただし例外があり、返還等の金額が税込1万円未満の場合は、適格返還請求書の交付義務が免除されます(消法57条の4第3項・消令70条の9第3項二号、国税庁No.6359)。たとえば売り手負担の振込手数料を売上値引きとして処理するようなケースは、通常この1万円未満にあたり交付が不要です。
実務では、独立した返還インボイスを起こすほか、次回の納品書・請求書に値引き行や赤伝票(マイナスの明細)として反映する方法もよく使われます。納品書上でのマイナス(値引き・返品)の具体的な書き方は、書き方の記事で解説しています。

納品書の書き方|項目別の記入例・サンプル・テンプレートの作り方ガイド
納品書 書き方を項目別に徹底解説。タイトル・発行日・宛名・明細・合計・押印など必須10項目の記入例、インボイス制度に対応した登録番号や税率区分の書き方、納品書番号の付け方、値引き・マイナス表記、よくあるミス、紙とPDFの使い分けまでサンプル付きで網羅します。
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受け取った側:仕入税額控除のための保存
納品書を受け取る側(買い手)にとっては、その納品書が適格請求書に該当するなら、納品書も仕入税額控除のための保存対象になります。納品書+請求書の組み合わせで要件を満たしているなら、両方をセットで保存して関連が分かるようにしておきます。どちらか一方を捨ててしまうと、要件を満たした証憑が手元に残らなくなります。
保存期間は書類の区分や事業者の立場によって異なります。具体的な年数と起算日、電子取引データの扱いは別記事で整理しています。

納品書の保管期間・保管義務|不要な場合と保管方法・電子保存
納品書の保管期間を、受け取った納品書と自社が出した控えに分けて解説。法人は原則7年(赤字の年は10年)、個人事業主は原則5年、消費税の課税事業者は7年です。「納品書は保管不要では?」への答え、控えのどっちを残すか、PDFの電子保存ルールまで国税庁の情報をもとにまとめました。
記事を読む免税事業者からの仕入れ — 経過措置の控除割合
登録番号のない事業者(免税事業者など)から受け取った納品書はインボイスにならず、原則として仕入税額控除はできません(消法30条7項)。ただし当面は仕入税額相当額の一定割合を控除できる経過措置があり、令和8年度税制改正で割合が見直されて令和13年9月末まで延長されました(国税庁インボイスQ&A 問113【令和8年4月改訂】)。
| 期間 | 控除できる割合 |
|---|---|
| 令和5年10月1日〜令和8年9月30日 | 仕入税額相当額の80% |
| 令和8年10月1日〜令和10年9月30日 | 仕入税額相当額の70% |
| 令和10年10月1日〜令和12年9月30日 | 仕入税額相当額の50% |
| 令和12年10月1日〜令和13年9月30日 | 仕入税額相当額の30% |
古い解説では「80%→50%で終了」とされていることがありますが、改正後は80%・70%・50%・30%の段階で進むので、適用する時点の割合を確認してください。なお令和8年10月以後に始まる課税期間からは、一の免税事業者等からの対象仕入れが税込1億円を超える部分には適用できません(改正前の上限は10億円)。免税事業者から受け取る請求書の扱いと帳簿の記載は、別記事で詳しく解説しています。

免税事業者の請求書の書き方|消費税は請求していい?登録番号の扱い
免税事業者の請求書の書き方を、発行する側の視点で解説。消費税相当額の請求は問題ないこと、登録番号は書けないこと、適格請求書は出せないこと、買い手側の仕入税額控除の経過措置(80%)まで、国税庁の情報をもとに記入例つきでまとめました。
記事を読むTEMPLEX のテンプレートで登録番号・税率を入れる
TEMPLEX の納品書テンプレートは無料で使えます。インボイスとして登録番号と税率ごとの税額まで入れたい場合は、「納品書兼請求書」テンプレートが対応しています。登録番号(T+13桁)の入力欄があり、消費税の表示を「項目別(インボイス対応)」にすると明細ごとに税率を表示できます。納品と請求を1枚にまとめる取引なら、これ1枚で適格請求書の記載事項を満たせます。
納品書と請求書を分けて発行する運用で納品書だけを使う場合は、標準の納品書テンプレートでも税率を明細ごとに表示できます。この場合、登録番号は組み合わせる請求書側に記載し、納品書には品名・税率ごとの金額・税額を入れて2枚で要件を満たす形にします。
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コラム著者・編集者
TEMPLEX編集チーム
TEMPLEX編集チームは、ビジネス文書の作成・管理に精通した実務経験者と技術ライターで構成されています。送付状・請求書・見積書をはじめとする各種ビジネス書類のフォーマットや書き方のノウハウを、わかりやすく丁寧にお届けします。「Office不要で誰でもすぐ使える」をコンセプトに、忙しいビジネスパーソンの書類作成をサポートします。











