養育費の誓約書の書き方|そのまま使える例文と効力(2026年4月改正対応)

養育費の誓約書の書き方|そのまま使える例文と効力(2026年4月改正対応)

養育費の約束は誓約書に残す|口約束のままにしない

養育費の取り決めを口約束で済ませるのは避けてください。口約束は、不払いが始まったときに約束の存在も金額も証明できません。こども家庭庁の令和3年度全国ひとり親世帯等調査では、母子世帯で養育費を現在も受け取っているのは28.1%にとどまり、そもそも取り決め自体をしている世帯が46.7%しかありません。支払いが続くかどうかは、最初に「金額と期間の明確な書面」を作れるかで大きく変わります。

養育費の誓約書は、支払う側の親が署名して差し入れる文書です。受け取る側(子を監護する親)が文面を用意して書かせてかまいません。協議離婚の前後はもちろん、離婚時に決めずにいた場合や、未婚で出産し認知を受けた場合にも使えます。

養育費支払誓約書の例
養育費支払誓約書の例

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養育費の書面は誓約書でいいのか?|合意書・公正証書との使い分け

最初に整理しておくと、誓約書という書式そのものが養育費の「正解」というわけではありません。取り決めの本筋は父母双方が署名する合意書(離婚なら離婚協議書)であり、最終形は強制執行認諾文言付きの公正証書です。それでも誓約書が現実によく使われるのは、双方で書面を作り込む段取りがいらず、支払う側に一筆書かせるだけで今日作れるからです。向いているのは次のような場面です。

  • 相手が合意書の作成や公正証書化にすぐ応じないので、まず一筆でも書かせて約束を固定したい
  • 離婚協議の途中で、先に合意できた養育費の条件だけ書面にしておきたい
  • 離婚協議書を作った後で、進学費用の負担など追加・変更の約束をさせたい
  • 未婚で出産し、認知した父親に支払いを約束させたい

書面の形ごとの違いは「破られたときに何ができるか」です。効力の弱い順に並べると次のとおりです。

  • 口約束:不払いになったとき、約束の存在も金額も立証できない。
  • 念書・誓約書(支払う側だけが署名):合意内容を本人が認めた証拠になる。ただし署名が一方だけのため、双方の合意の証明としては争われる余地が残る。
  • 合意書・離婚協議書(父母双方が署名):合意した事実そのものを証明できる。2026年4月施行の改正で認められた先取特権(後述)の「父母間の合意を証する文書」としても、一方署名の書面より争われにくい。
  • 強制執行認諾文言付き公正証書:不払い時に裁判を経ずに給与・預金の差押えができる。確実さでは今も最有力(後述)。

差し入れられた誓約書に受け取る側も署名すれば、実質的に双方署名の合意書にできます。同じ用紙に受け取る側の署名欄を1行足すだけで、書き直しは不要です。誓約書で始めても、この一手間で「父母間の合意文書」として一段強くなります。

結局のところ、効力を分けるのは「誓約書」「合意書」「念書」といった表題ではなく、金額・期間・支払方法が特定された書面になっているかです。誓約書は、双方署名の合意書や公正証書に進むまでの「つなぎ・たたき台」と位置づけてください。

なお、財産分与や慰謝料を含む離婚条件の全体を1通にまとめたい場合は、夫婦双方が署名する離婚協議書が向いています。離婚の場面での念書・離婚協議書・公正証書の使い分けは、次の記事で扱っています。

離婚の念書に効力はある?養育費・慰謝料を念書だけで残すリスクと公正証書
念書

離婚の念書に効力はある?養育費・慰謝料を念書だけで残すリスクと公正証書

養育費・慰謝料・財産分与の約束を念書で残して大丈夫か不安な方へ。念書と離婚協議書・公正証書の違い、強制執行できない念書が役立つ場面と例文、2026年4月施行の改正民法による請求期限の延長までまとめました。

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どのタイミングで書かせるか|離婚前・離婚後・別居中・未婚

どの場面にも共通する鉄則は、不払いが始まる前、関係がまだ穏当なうちに書面化することです。支払いが滞って関係がこじれてからでは、任意の署名はまず取れません。場面ごとの考え方は次のとおりです。

  • 離婚協議中:本来は離婚条件の全体を離婚協議書にまとめ、公正証書にするのが王道。協議がまとまりきる前でも、合意できた養育費の条件だけ誓約書で先に固定できる。
  • 離婚後(取り決めずに離婚した):気づいた今すぐ。請求自体は離婚後いつでもできるが、過ぎた期間の分はさかのぼれないのが実務(下記)。
  • 別居中(離婚前):離婚成立までの生活費は養育費ではなく「婚姻費用」という別の請求で、配偶者の生活費と子の生活費分を含む。誓約書で固定するのは離婚後の養育費の条件。
  • 未婚:父親の認知が前提。認知が済んだら、すみやかに書面化する。

離婚協議中なら、離婚届を出す前が、書面化の交渉力がもっとも強いタイミングです。離婚が成立すると、相手が協議書や公正証書の作成に応じる動機は大きく下がります。公正証書を離婚届の提出前に作っておくよう勧められるのも、これが理由です。

取り決めのないまま離婚した場合に注意したいのが過去分です。養育費はいつでも請求できますが、請求しないまま過ぎた期間の分をさかのぼって払わせることは、原則として認められにくいのが実務です。家庭裁判所の調停・審判では、「請求の意思を明示した時点」=一般には調停申立時からの分を認める扱いが定着しています。養育費はその時々の子の生活を支える費用で、過去分の一括請求は支払う側への不意打ちになる、という考え方です。放置した期間の分は戻らないため、気づいた時点でメールや内容証明など記録が残る形で請求し、あわせて誓約書の書面化(応じなければ調停の申立て)を進めてください。

養育費の誓約書に書くべき項目

核になるのは「誰の養育費を・いくら・いつからいつまで・どうやって払うか」の特定です。特に金額と期間は、2026年4月に施行された改正(後述する先取特権)で差押えの入口になる要素なので、「相応の額」「子どもが大きくなるまで」のような曖昧な書き方は厳禁です。

  • 子の特定:氏名と生年月日。誰の養育費かを曖昧にしない。
  • 月額:「月額金30,000円」のように数字で固定する。
  • 始期と終期:「令和○年○月から、子が満20歳に達する日の属する月まで」のように書く。
  • 支払日:「毎月末日限り」など、遅れたかどうかが一目で分かる期日。
  • 支払方法・振込先:口座を特定し、振込手数料の負担も決める。記録が残る振込が安全。
  • 特別な費用の協議:進学・入院・事故などの臨時出費は「誠実に協議して定める」と道筋を書く。
  • 増減額の協議:収入や生活状況の大きな変動時に金額を見直す条項。
  • 住所・勤務先変更の通知:不払い時に給与の差押え先を把握するための実務上の生命線。
養育費の誓約書に書くべき項目
養育費の誓約書に書くべき項目

終期は「満20歳に達する日の属する月まで」とする例が実務では多数派です。成年年齢が18歳に下がった後も、家庭裁判所の実務では経済的に自立するまでの支払いが認められています。大学進学が見込まれるなら「満22歳に達した後の最初の3月まで」とする例もあります。決めきれない場合は終期を20歳とし、進学時の扱いは特別な費用の協議条項に委ねるのが現実的です。

そのまま使える養育費の誓約書の例文(全文)

上の項目をすべて盛り込んだ全文です。氏名・生年月日・金額・口座を実際の内容に置き換えて使ってください。日付と署名は必ず本人の自筆にし、押印(認印で可)までさせます。原本は受け取る側が保管してください。

養育費支払誓約書の例文(全文)
養育費支払誓約書 ○○ ○○ 殿 私は、貴殿に対し、貴殿と私との間の長男 ○○(令和○年○月○日生)の養育費の支払いについて、以下のとおり誓約いたします。 1. 私は、貴殿に対し、上記の子の養育費として、令和○年○月から同人が満20歳に達する日の属する月まで、月額金30,000円を、毎月末日限り、貴殿の指定する銀行口座(○○銀行○○支店 普通○○○○○○○ 口座名義 ○○ ○○)に振り込む方法により支払います。振込手数料は私の負担とします。 2. 子の進学、入院、事故その他特別の費用を要する場合は、その負担について、貴殿と誠実に協議して定めます。 3. 貴殿または私の収入・生活状況に重大な変動があった場合は、養育費の額の変更について、貴殿と誠実に協議します。 4. 私は、住所、勤務先または連絡先を変更したときは、速やかに貴殿に通知します。 5. 私が養育費の支払いを怠った場合、貴殿が法的措置(強制執行を含みます)をとることに異議を述べません。 6. 貴殿が求めたときは、私は、本誓約書の内容について、強制執行認諾文言付き公正証書の作成に協力します。 以上、相違ないことを誓約いたします。 令和○年○月○日 住所 ○○県○○市○○1-2-3 氏名 ○○ ○○(自筆・押印)

例文の「令和○年」は、作成時の実際の年に置き換えてください。2026年は「令和8年」です(例:令和8年6月15日)。和暦でなければならない決まりはないので、「2026年6月15日」のように西暦で書いても効力は変わりません。

未婚(結婚していない相手の子)の場合は、冒頭を「私が認知した ○○(令和○年○月○日生)の養育費の支払いについて」に置き換えます。父親が認知していれば、未婚でも法律上の扶養義務が生じ、養育費を請求できます。認知がまだなら、まず任意認知(市区町村への届出)または認知調停が先です。

この例文と同じ条項を最初から収録した養育費誓約書テンプレートを使えば、氏名・金額・期間をフォームで書き換えるだけでA4のPDFが作れます。

誓約書の効力と2026年4月に施行された改正(先取特権・法定養育費)

本人が署名した誓約書は、養育費の合意内容を示す証拠として有効です。不払いになったとき、調停・審判や請求の場面で「この金額・この期間を本人が認めていた」ことの強力な裏付けになります。一方で、私文書の誓約書だけでは、従来はいきなり給与や預金を差し押さえることはできませんでした。

ここが2026年4月1日に施行された改正民法(令和6年法律第33号)で変わりました。養育費の債権に先取特権が認められ、公正証書がなくても、金額と支払期間が明確に書かれた父母間の合意文書に基づいて差押えを申し立てる道が開かれています。優先的に回収できるのは子1人あたり月額8万円までの範囲です。誓約書を「金額・期間が明確な文書」の水準で作っておく意味は、この改正で従来より大きくなりました。改正の全体像は法務省の解説ページで確認できます。

ただし、対象期間には経過措置があります。先取特権が使えるのは2026年4月1日(施行日)以後に生じた月分だけで、施行日前にすでにたまっていた未払い分(過去の滞納分)には使えません。一方、取り決めの時期は問われないため、施行日前に作った誓約書や離婚協議書でも、金額・期間が明確なら2026年4月以後の分の不払いに先取特権を主張できます。

同じ改正で、金額を取り決めないまま離婚した場合でも「法定養育費」(子1人あたり月額2万円)を請求できる制度も始まりました(2026年4月1日以降に成立した離婚が対象)。ただしこれは取り決めをしなかった場合の暫定的な下限です。後述の算定表ベースで金額を合意して書面にするほうが、ほとんどのケースで有利になります。

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確実さで選ぶなら公正証書が最有力

改正で誓約書の価値は上がりましたが、回収の確実さでは強制執行認諾文言付きの公正証書が今も最有力です。「支払いを怠ったときは直ちに強制執行に服する」という文言の入った公正証書なら、不払いが起きたとき裁判を経ずに給与や預金の差押えを申し立てられます。

しかも養育費の差押えには、ほかの金銭債権にはない特例があります。将来分もまとめて差し押さえられ(民事執行法151条の2)、給与は手取りの2分の1まで差押え可能(同152条3項)です(通常の債権は4分の1まで)。不払いのたびに申し立て直す必要がないため、長期の支払いを担保する手段として圧倒的に強力です。

問題は、後になって相手が公正証書の作成を渋るケースが非常に多いことです。だからこそ、例文の6条のように「求められたら公正証書の作成に協力する」という条項を誓約書の段階で入れておくのが定石です。公正証書の作成の流れ・必要書類・手数料(2025年10月改定後)は、次の記事で詳しく解説しています。

誓約書は公正証書にできる?強制執行の条件・作り方・費用|2025年10月改定後の手数料
誓約書・同意書

誓約書は公正証書にできる?強制執行の条件・作り方・費用|2025年10月改定後の手数料

誓約書の内容は、相手の協力があれば強制執行認諾文言付きの公正証書にでき、不払い時に裁判なしで差押えができます。強制執行の対象が金銭の支払いに限られる理由と違約金条項での対処、作成の流れ・必要書類、2025年10月改定後の公証人手数料までまとめました。

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月額の決め方|相場は裁判所の養育費算定表

金額に迷ったら、裁判所が公表している養育費算定表(令和元年12月公表の改定標準算定表)を基準にしてください。家庭裁判所の調停・審判でも使われている実務の標準で、裁判所のサイトで誰でも見られます。父母それぞれの年収(給与か自営か)と、子の人数・年齢で月額の幅が決まります。たとえば子1人(0〜14歳)で、支払う側の年収500万円(給与)・受け取る側の年収100万円程度なら月4〜6万円が目安です。

父母の合意があれば算定表より高い金額でも低い金額でも有効ですが、相場とかけ離れた金額は、後の調停・審判で増減額される一因になります。算定表の幅の中で、進学の見込みなど事情を踏まえて決めるのが堅実です。

支払いが止まったときの動き方

不払いは最初の1回のうちに動くのが鉄則です。「今月だけだろう」と見送ると、滞納額が膨らむほど相手は払えなくなり、回収は難しくなります。

  1. 誓約書を示して支払いを求める(メールなど記録が残る形で。応じなければ内容証明郵便で請求する)
  2. 家庭裁判所の調停・審判を申し立てる(誓約書が合意した金額・期間の証拠になる)
  3. 強制執行(差押え)に進む(公正証書や調停調書・審判書があれば直接申立てできる。金額・期間が明確な合意文書があれば、2026年4月以後の分について先取特権に基づく申立ても選択肢になる)

給与の差押えには相手の勤務先の特定が必要です。誓約書に入れた住所・勤務先の変更通知条項が、差押え先を把握する生命線になります。通知が来なくなった場合も、調停や強制執行の段階では裁判所の手続(財産開示手続・第三者からの情報取得手続)で勤務先や預貯金口座を調べる道があります。

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TEMPLEXの養育費誓約書テンプレート
TEMPLEXの養育費誓約書テンプレート

印刷したら、日付と署名は本人の自筆にして押印させてください。なお、離婚はせずに、生活費やギャンブルなど夫婦間の問題行動の約束を書面にしたい場合は、次の記事が使えます。

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コラム著者・編集者

TEMPLEX編集チーム

TEMPLEX編集チームは、ビジネス文書の作成・管理に精通した実務経験者と技術ライターで構成されています。送付状・請求書・見積書をはじめとする各種ビジネス書類のフォーマットや書き方のノウハウを、わかりやすく丁寧にお届けします。「Office不要で誰でもすぐ使える」をコンセプトに、忙しいビジネスパーソンの書類作成をサポートします。

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