振込手数料の領収書は必要?|銀行振込で経費処理するための証憑ガイド

振込手数料に領収書は出るのか
結論から言うと、銀行は振込手数料の領収書を別途発行しません。窓口・ATM・ネットバンキングのいずれで振り込んでも、「振込手数料の領収書」という書面が手渡される運用は原則ありません。
振込手数料の支払いを証明するには、振込時に発行される振込明細書(振込受付書)や、ネットバンキングの取引明細画面が証憑になります。税務上も、振込明細書は領収書と同等の証拠力を持つとされており、別途領収書を取得する必要はありません。
銀行窓口で「手数料の領収書をください」と依頼すれば、受領証を出してもらえるケースもありますが、通常は振込明細書で十分です。
振込明細書・振込受付書は領収書の代わりになるか
振込明細書(振込受付書)は、実務上も税務上も領収書の代わりとして認められます。振込明細書には「振込日」「振込先」「振込金額」「振込手数料」が記載されており、取引の事実を証明する証憑としての要件を満たしているためです。
振込明細書が証憑になる理由
- 取引日・取引先・金額が明記されている ── 税務上の証憑として最低限必要な3要素を満たしている
- 金融機関の名称・店番が入っている ── 第三者(銀行)が発行した書面として客観性がある
- 振込手数料が内訳として記載されている ── 手数料の金額と消費税額が確認できる
ATMで振り込んだ場合は、出力される利用明細票を保管してください。窓口で振り込んだ場合は、振込受付書の控えがそのまま証憑になります。いずれも紛失すると再発行が難しいため、受け取ったらすぐにファイリングしましょう。
ネットバンキングの振込手数料の証憑
ネットバンキング(インターネットバンキング)で振り込んだ場合は紙の明細が出ないため、取引明細画面のPDFやスクリーンショットを保存して証憑とします。
保存すべき情報
- 振込日(取引日)
- 振込先の口座情報(銀行名・支店名・口座番号・口座名義)
- 振込金額
- 振込手数料の金額
電子帳簿保存法への対応
ネットバンキングの取引明細は「電子取引」に該当するため、電子帳簿保存法(電帳法)に従った保存が必要です。2024年1月以降、電子取引データは紙に印刷して保存する方法が認められなくなり、電子データのまま保存することが義務化されました。
保存にあたっては、次の要件を満たす必要があります。
- 改ざん防止措置をとる ── タイムスタンプを付与する、または事務処理規程を整備して運用する
- 「日付・金額・取引先」で検索できる状態にする ── ファイル名に日付・金額・取引先を入れる方法が簡便
- ディスプレイ・プリンタで整然と表示・印刷できるようにしておく
基準期間の売上高が5,000万円以下の事業者は、検索要件が不要になる措置があります(税務調査の際にデータのダウンロードに応じることが条件)。個人事業主や小規模法人の場合は、フォルダにPDFを整理して保存するだけで実務上は対応できます。
インボイス制度での振込手数料の扱い
振込手数料で仕入税額控除を受けるには、原則としてインボイス(適格請求書)の保存が必要ですが、振込方法によって対応が異なります。
ATMで振り込んだ場合 ── 自動販売機特例
ATMでの振込手数料は「自動販売機及び自動サービス機により行われる3万円未満の課税資産の譲渡等」に該当し、インボイスの交付義務が免除されます。帳簿に「自販機」と記載して保存すれば、インボイスがなくても仕入税額控除が可能です(令和6年度改正でATMの所在地の記載は不要になりました)。
ネットバンキングで振り込んだ場合
ネットバンキングは「自動販売機特例」の対象外です。国税庁の見解では、ATMは「機械装置のみで代金の受領と役務提供が完結する」ため特例に該当しますが、ネットバンキングは機械装置とは認められていません。そのため、仕入税額控除を受けるには銀行から交付されるインボイスの保存が原則として必要です。
少額特例(税込1万円未満)
基準期間の課税売上高が1億円以下(または特定期間の課税売上高が5,000万円以下)の事業者は、税込1万円未満の課税仕入れについてインボイスの保存が不要になる「少額特例」を利用できます。振込手数料は通常数百円程度なので、この要件を満たす事業者であればATM・ネットバンキングを問わず帳簿のみの保存で仕入税額控除が可能です。
少額特例の適用期間は2023年10月1日から2029年9月30日までの6年間の経過措置です。恒久的な制度ではないため、適用期間が終了した後はATMの自動販売機特例を活用するか、銀行からインボイスを入手する運用に切り替える必要があります。
振込手数料の仕訳と勘定科目
振込手数料の勘定科目は「支払手数料」を使うのが一般的です。会社によっては「雑費」で処理しているケースもありますが、振込手数料は毎月一定額が発生する経常的な支出のため、「支払手数料」に統一しておくと管理しやすくなります。
買掛金を振り込んだとき(自社が手数料負担)
買掛金を振り込んだとき(手数料を差し引いて振込)
取引先との合意で振込手数料を差し引いて振り込む場合(例:500,000円の買掛金から手数料660円を差し引き、499,340円を送金)、差し引いた手数料相当額の処理方法は2つあります。
いずれの方法でも、銀行口座からの引落総額は500,000円(送金額499,340円+手数料660円)です。
方法1では、銀行へ支払った手数料660円を「支払手数料」として費用計上し、差し引いた660円分を「雑収入」として計上します。費用と収入が同額のため損益への影響はありません。
方法2では、差し引いた660円分を仕入値引き(対価の返還)として扱います。銀行への手数料660円は「支払手数料」で費用計上し、同額を「仕入値引」で相殺するため、損益への影響は方法1と同じくありません。売り手側が返還インボイス(適格返還請求書)を交付する必要がありますが、税込1万円未満の値引きは返還インボイスの交付義務が免除されます(恒久措置)。振込手数料の差引額は通常1万円未満なので、この免除措置により売り手側の事務負担は生じません。
消費税の区分
振込手数料は消費税法上「課税取引」に該当し、消費税率は10%です。税抜経理の場合は仮払消費税を計上し、税込経理の場合はそのまま税込額を支払手数料に含めます。
振込手数料をどちらが負担するか
民法第485条は「弁済の費用は、別段の意思表示がないときは、債務者の負担とする」と定めています。また、民法第484条は金銭債務について「債権者の現在の住所」で弁済すべき持参債務の原則を規定しています。つまり、振込手数料は法律上「支払う側(債務者)」が負担するのが原則です。
実務での運用
法律上は支払う側の負担が原則ですが、実際の商取引では契約書や請求書で手数料負担者を明記しているケースがほとんどです。契約書や取引条件に「振込手数料は買い手負担」「振込手数料は売り手負担」と記載があれば、その合意が優先されます。
- 「振込手数料はお客様ご負担でお願いします」── 請求書に記載される最も一般的なパターン。法律上の原則どおり
- 「振込手数料は弊社負担」── 大手企業や官公庁が取引先への配慮として負担するケース
- 「振込手数料を差し引いてお振込みください」── 売り手側が負担する形。売り手側で売上値引きまたは支払手数料として処理する
手数料を差し引いて振り込まれた場合の注意点
事前の合意なく一方的に振込手数料を差し引いて振り込まれた場合、売り手は差額を請求する権利があります。トラブルを避けるためには、契約時点で手数料負担のルールを決め、請求書にも明記しておくのが鉄則です。
振込手数料を差し引かれたときに請求金額との差額を放置すると、消込が合わなくなります。差し引かれた手数料は「支払手数料」か「売上値引き」として速やかに仕訳しましょう。
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コラム著者・編集者
TEMPLEX編集チーム
TEMPLEX編集チームは、ビジネス文書の作成・管理に精通した実務経験者と技術ライターで構成されています。送付状・請求書・見積書をはじめとする各種ビジネス書類のフォーマットや書き方のノウハウを、わかりやすく丁寧にお届けします。「Office不要で誰でもすぐ使える」をコンセプトに、忙しいビジネスパーソンの書類作成をサポートします。








