適格請求書と領収書の違い|領収書はインボイスになる?

適格請求書と領収書は「別の書類」ではない
「適格請求書を求められたが、うちは領収書しか出していない」と不安になる方は多いですが、結論から言えば、適格請求書(インボイス)は領収書と対立する別の書類ではありません。一定の記載要件を満たした請求書・納品書・領収書・レシートなどをまとめて呼ぶ総称が「適格請求書(等)」です。
国税庁も、適格請求書について「請求書に限らず、所定の事項が記載された書類であれば、領収書や納品書など書類の名称を問わず、インボイスとなります」と明記しています。つまりこれは書類の“名前”の話ではなく、制度上の“地位”の話です。領収書も要件さえ満たせばインボイスになります。
「適格請求書」という言葉に「請求書」と入っているせいで誤解されがちですが、請求書を新たに発行し直す必要はありません。いま出している領収書に足りない項目を足せば、その領収書がそのままインボイスになります。
「書類名」と「制度上の地位」を分けて考える
混乱の原因は、レベルの違う2つの言葉を同じ並びで比べてしまうことにあります。「請求書」「領収書」「納品書」は“書類の名前(種類)”、「適格請求書」は“制度上の地位(=インボイスとして使える状態)”で、そもそも比べる軸が異なります。
| 分類 | 言葉の例 | 意味するもの |
|---|---|---|
| 書類の名前(種類) | 請求書・領収書・納品書・レシート | 取引のどの場面で渡す書類かを表す呼び名 |
| 制度上の地位 | 適格請求書/適格簡易請求書 | 仕入税額控除に使える要件を満たしているかどうか |
したがって両者は対立ではなく包含の関係です。要件を満たした領収書は「適格請求書(または適格簡易請求書)」という地位を持つ領収書、というだけのことで、「領収書か、適格請求書か」という二者択一ではありません。
ふだんの会話で「インボイスをください」と言われたら、“領収書ではなく請求書を出して”という意味ではなく、“登録番号などの要件を満たした証憑をください”という意味だと読み替えれば、ほぼ間違いありません。
「ただの領収書」と「適格要件を満たした領収書」の差
では、手元の領収書がインボイスとして通用するかは何で決まるのか。従来の領収書に「3つの情報」が加わっているかどうかがポイントです。逆に言えば、この3点が足りない領収書は“ただの領収書”のままで、受け取った側は仕入税額控除に使えません。
| 確認するポイント | 従来の領収書 | 適格要件を満たした領収書 |
|---|---|---|
| 登録番号(T+13桁) | なし | あり(発行者の登録番号を記載) |
| 税率ごとに区分した対価の額・適用税率 | 合計額のみのことが多い | 10%対象・8%対象を区分して記載 |
| 消費税額等 | 記載なし/内税で不明確 | 税率ごとの消費税額を記載 |
なかでも登録番号(T+13桁)の有無が、インボイスかどうかを分ける最大の決め手です。登録番号は適格請求書発行事業者として登録した事業者だけが持つ番号で、免税事業者が発行した領収書には登録番号がなく、インボイスにはなりません。
消費税額を「書く/書かない」の細かい判断や、登録番号そのものの調べ方・確認方法は別の論点です。ここでは“書類名と地位の関係”に絞ります。消費税額の書き方は領収書に消費税を書くべきか、登録番号の調べ方は登録番号がわからないときの調べ方で詳しく解説しています。
領収書は「適格簡易請求書」か「適格請求書」になる
領収書がインボイスになるとき、その“地位”は2通りあります。宛名のいらない「適格簡易請求書」になるか、宛名の必要な「適格請求書」になるかで、これは発行する事業の業種によって決まります。
不特定多数向けの業種 → 宛名なしの「適格簡易請求書」でよい
不特定かつ多数の相手に販売する次の業種は、宛名を省いた「適格簡易請求書」を交付できます。小売店やスーパーのレシート、飲食店やタクシーの領収書が宛名なしでも通用するのはこのためです。
- 小売業
- 飲食店業
- 写真業
- 旅行業
- タクシー業
- 駐車場業(不特定かつ多数の者に対するものに限る)
- その他これらに準ずる事業で、不特定かつ多数の者に資産の譲渡等を行う事業
①小売業〜⑤タクシー業には「不特定多数に限る」という限定がありません。例えば小売業として行う販売は、その形態を問わず適格簡易請求書を交付できます(国税庁 インボイスQA 問24)。
上記以外の業種 → 宛名のある「適格請求書」になる
上記の業種に当てはまらない事業が領収書をインボイスとして発行する場合は、「適格請求書」として宛名(書類の交付を受ける事業者の氏名・名称)まで記載する必要があります。「上様」では宛名の要件を満たさないため、取引先の正式名称を確認して記載しましょう。
適格請求書と適格簡易請求書で「宛名が要るか」「適用税率と消費税額のどちらを書けばよいか」など、記載事項そのものの細かい対比は別記事で表にまとめています。ここでは“どの業種ならどちらの地位になるか”だけを押さえれば十分です。
受け取る側:仕入税額控除に必要なのは“適格”な1枚
受け取る側(買い手)にとって大事なのは、書類の名前ではありません。仕入税額控除を受けるには、請求書でも領収書でも“適格”要件を満たした書類が1枚あれば足ります。領収書とは別にわざわざ請求書をもらう必要はありません。
受け取った領収書がインボイスとして使えるかは、次の点を確認すれば判断できます。とくに登録番号の有無を最初に見るのが効率的です。
- 発行者の登録番号(T+13桁)が記載されているか
- 税率ごと(10%・8%)に区分された金額と適用税率があるか
- 税率ごとの消費税額が分かるか
- (適格簡易請求書の業種でなければ)自社名の宛名が入っているか
登録番号のない領収書は免税事業者など登録のない相手からの仕入れとして扱われ、原則として仕入税額控除の対象外(経過措置あり)になります。受け取ったら「T+13桁」があるかを確認する習慣をつけておくと安全です。
よくある誤解の整理
Q. 「適格請求書」と言われたら、請求書を発行し直すべき?
いいえ。いま発行している領収書に登録番号・税率ごとの金額・消費税額がそろっていれば、その領収書がそのまま適格請求書(等)になります。書類名を「請求書」に変える必要はありません。
Q. 領収書だと格が低く、請求書のほうが正式?
そうした上下関係はありません。インボイスとして通用するかは“書類名”ではなく、記載要件を満たしているかだけで決まります。要件を満たした領収書は、請求書と同じく仕入税額控除に使えます。
Q. レシートはインボイスにならない?
なります。小売・飲食・タクシーなどのレシートは、登録番号などの要件を満たせば適格簡易請求書として有効です。レシートと手書き領収書のどちらが良いか、税務上の扱いの細かな違いは関連記事で解説しています。
Q. 市販の手書き領収書だと、登録番号(13桁)を毎回手書きしないとダメ?
いいえ。手書きの領収書でも、空いているスペースに登録番号のゴム印(スタンプ)を押せばインボイスとして有効です。登録番号の記載方法に決まりはなく、手書き・ゴム印・印字のいずれでもかまいません。国税庁も、適格請求書・適格簡易請求書は手書きの領収書等で交付できると明記しています(インボイスQA 問58-2)。毎回13桁を手書きする必要はなく、登録番号入りのゴム印を1つ用意しておけば十分です。
TEMPLEX には、発行者情報だけを事前印刷して手書きで使える手書き領収書テンプレートもあります。登録番号の欄も用意されているので、ゴム印を押すスペースに迷いません。
TEMPLEX で適格要件を満たした領収書を作成する
TEMPLEX では、登録番号・税率ごとの金額・消費税額を入力するだけで、インボイス(適格請求書・適格簡易請求書)の要件を満たした領収書PDFを無料で作成できます。テンプレートに沿って入力するだけなので、登録番号や消費税額の記載漏れも防げます。
コラム著者・編集者
TEMPLEX編集チーム
TEMPLEX編集チームは、ビジネス文書の作成・管理に精通した実務経験者と技術ライターで構成されています。送付状・請求書・見積書をはじめとする各種ビジネス書類のフォーマットや書き方のノウハウを、わかりやすく丁寧にお届けします。「Office不要で誰でもすぐ使える」をコンセプトに、忙しいビジネスパーソンの書類作成をサポートします。











