電子帳簿保存法と見積書|メール・PDFで受け取った見積書の保存ルール

電子帳簿保存法と見積書|メール・PDFで受け取った見積書の保存ルール

見積書も電子帳簿保存法の対象(電子取引データ保存)

メールにPDFを添付して送った見積書や、Web上の見積システムでやり取りした見積書も、電子帳簿保存法の保存対象です。見積書は請求書・領収書・契約書などと同じ国税関係書類にあたり、取引の証拠書類として保存義務があります。

電子帳簿保存法には保存の区分が3つありますが、見積書で関係するのは主に2つです。データで授受した見積書は「電子取引データ保存」、紙でもらった見積書は紙のまま保存か「スキャナ保存」になります。残る1つ(電子帳簿等保存)は会計帳簿などの話なので、見積書の保管では基本的に意識しなくて構いません。

ここで一番大事なのが電子取引データ保存です。これは2024年1月1日からすべての事業者に義務化されました(2022年の改正で義務化され、2023年末までの宥恕措置を経て完全適用)。法人・個人事業主・規模を問わず対象で、「電子で受け取った見積書を紙に印刷して保存する」だけでは要件を満たしません

見積書の書き方そのもの(記載項目・消費税・有効期限)は 見積書の書き方 にまとめています。この記事は、作った/受け取った見積書をどう保存するかに絞って解説します。

電子で授受した見積書は電子データのまま保存(紙に印刷しただけはNG)

メール添付のPDF、見積システムからのダウンロード、クラウド経由の授受など、電子的にやり取りした見積書は「電子データのまま」保存します。送った側(控え)も、受け取った側も同じです。

ここで多い勘違いが「PDFをプリントアウトしてファイリングしておけばよい」というものです。紙に印刷した保存は電子取引データ保存の要件を満たさず、原本としては認められません。元のPDFデータ(またはダウンロードしたファイル)を、後述の要件を満たす形で残す必要があります。

「電子取引」にあたるかは媒体ではなく授受の経路で判断します。次のような形で受け取った/渡した見積書は、すべて電子取引データ保存の対象です。

  • メールに添付されたPDFの見積書
  • 発注・見積システムやクラウドサービス上でやり取りした見積書
  • Webサイトからダウンロードした見積書
  • チャットツールやストレージ共有で受け渡しした見積書データ

逆に、PDFで送った見積書を相手が印刷して郵送し直してきた、というケースは「紙でもらった見積書」として扱えます。自分がどの形で授受したかで保存方法が決まる、と覚えておくと迷いません。

見積書を修正・再発行したときは、どの版を残す?

金額の打ち間違いや型番ミスなど、単純な誤字脱字を直して再発行しただけなら、確定した最終版だけを保存しておけば差し支えありません。すぐに差し替えられた当初の見積書は取引の前提となる正式な内容とは見なされにくく、最終版が取引を表すデータになるためです。

一方で、金額交渉などで内容が変わって再発行した場合は、変更前の見積書も含めて残しておくのが安全です。値引き交渉の経緯がある見積書は、各版がそれぞれ取引のやり取りを示す記録になり得ます。実際に授受した各版はいずれも電子取引データに当たりうるため、経緯のある見積書は古い版も消さずに保存しておくと、後から金額の根拠を聞かれても説明できます。値引き後の金額の書き方は 見積書の値引きの書き方 を参照してください。

満たすべき要件(真実性=改ざん防止/可視性=検索性)

電子データのまま保存するときは、「真実性の確保(改ざん防止)」と「可視性の確保(検索・表示)」の2つの要件を満たす必要があります。見積書だけ特別なルールがあるわけではなく、電子取引データ共通の要件です。

真実性の確保(改ざん防止)

後からこっそり金額や日付を書き換えられない状態にすることです。次のいずれか1つを満たせば構いません。

  • 授受したデータにタイムスタンプを付与する(最長約2か月+おおむね7営業日以内)
  • 訂正・削除の履歴が残る、または訂正・削除ができないシステムで授受・保存する
  • 改ざん防止についての事務処理規程を定めて運用する

中小規模の事業者で現実的なのは3つ目です。事務処理規程を1枚作って運用すれば、専用システムやタイムスタンプの契約がなくても真実性の要件を満たせます。規程のひな形は国税庁サイトで配布されています。

なお見積書の場合、押印代わりの電子印影や電子署名を入れて送ることもありますが、電子署名・印影は真実性要件を満たす手段の一つではあっても必須ではありません。見積書の押印自体の考え方は 見積書の印鑑 を参照してください。

可視性の確保(検索性)

税務調査などで求められたとき、すぐに該当の見積書を取り出して画面・書面に表示できる状態にすることです。具体的には、ディスプレイやプリンタを備え付けたうえで、「取引年月日・取引金額・取引先」の3項目で検索できるようにします。

本来は、この3項目に加えて「日付・金額の範囲指定」と「2項目以上の組み合わせ」での検索も求められます。ただし、税務職員のデータのダウンロードの求めに応じられるようにしておけば、範囲指定と組み合わせ検索は不要になり、3項目で検索できれば足ります。

専用システムがなくても、ファイル名に「取引年月日・取引先・金額」を入れて規則的に保存し、表計算ソフトで索引(一覧)を作る方法でも検索要件を満たせます。具体的なファイル名の付け方は次のとおりです。

見積書ファイルの命名ルール例(日付_取引先_金額)
20260601_株式会社○○_330000.pdf 20260605_△△商事_154000.pdf 20260612_□□工業_88000.pdf 命名ルール:[取引年月日8桁]_[取引先名]_[税込金額] ・日付はやり取りした日(見積書の発行日)で統一 ・金額は税込の合計額(円・カンマなし) ・同じ取引先・同じ日に複数あるときは末尾に_01、_02 を付ける

紙でもらった見積書はどう保存する

郵送やFAX、手渡しなど紙で受け取った見積書は、紙のまま保存して構いません。電子帳簿保存法で紙の見積書を必ずデータ化しなければならない、というルールはありません。電子取引データ保存の義務化は、あくまで「電子で授受したもの」が対象です。

紙のまま保管するとかさばる・探しにくいという場合は、スキャナ保存の要件を満たせばスキャンしてデータで残し、紙の原本を廃棄することも可能です。スキャナ保存は任意の制度で、解像度やタイムスタンプ、検索性などの要件を満たす必要があります。

「FAXで来た見積書」は注意が必要です。紙に出力される複合機のFAXは紙の書類、PC・クラウドでデータとして受信するインターネットFAXは電子取引 にあたります。受信のしかたで保存方法が変わります。

見積書の保存期間(法人7年・個人5年)

見積書の保存期間は、電子・紙のどちらで保存していても同じです。法人は原則7年、個人事業主は原則5年が基本になります。

区分保存期間起算点
法人原則7年(欠損金が生じた事業年度は10年)その事業年度の確定申告書の提出期限の翌日
個人事業主原則5年(消費税の課税事業者は7年)その年分の確定申告期限の翌日
見積書(控え・受領分)の保存期間

起算点が見積書の発行日ではなく「確定申告期限の翌日」である点に注意してください。実際には事業年度をまたぐため、見積書を発行・受領した日から数えると7年(個人は5年)より少し長く保管することになります。判断に迷うときは長いほうに合わせ、法人は最長10年を目安に保管しておくと安全です。

小規模事業者の検索要件の猶予・現実的な対応

「検索できるシステムを入れる余裕がない」という小規模事業者向けに、要件を軽くする仕組みが2つあります。

売上高5,000万円以下なら検索要件は不要

基準期間(2年前)の売上高が5,000万円以下の事業者は、検索要件をすべて満たさなくてよいとされています(令和5年度の改正で、従来の1,000万円以下から引き上げられました)。ただし条件があり、税務調査の際に、データのダウンロードの求めに応じられること、または見積書を取引年月日・取引先ごとに整理した書面で提示・提出できることのいずれかが前提です。

つまりこのクラスの事業者は、見積書のPDFを規則的なフォルダに保存し、求められたら提出できる状態にしておけば、検索用の索引づくりまでは不要になります。ただし真実性の確保(事務処理規程など)は引き続き必要です。

「相当の理由」がある場合の猶予措置

売上規模にかかわらず使えるのが、令和5年度改正で恒久化された猶予措置です。要件どおりに保存できない「相当の理由」が所轄税務署長に認められ、かつ税務調査の際にデータのダウンロードの求めと、その出力書面(プリントアウト)の提示・提出の求めに応じられる場合は、改ざん防止措置や検索要件を満たしていなくても、データを保存していれば認められます。事前申請は不要です。

ここで勘違いしてはいけないのは、猶予措置でも「電子データの保存」自体は省略できないことです。旧来の宥恕措置(2023年末で終了)と違い、「紙に印刷して、電子データは捨ててよい」わけではありません。元のPDFは必ず残したうえで、改ざん防止や検索の体制づくりが間に合わない部分が猶予される、という位置づけです。

迷ったら、①受け取った見積書PDFは消さずに保存、②ファイル名に日付・取引先・金額を入れる、③改ざん防止の事務処理規程を1枚用意 の3点を押さえれば、多くの中小事業者は要件を満たせます。見積書のあとに発行する請求書や、インボイス制度との関係は次の記事で確認してください。

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コラム著者・編集者

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