領収書の控えは必要?|発行者の保管義務・保存期間・電子保存のルール

領収書の控えは法的に必要か
結論から言うと、領収書の控えは発行者側にとって「保管すべき書類」です。法人税法・所得税法では帳簿書類の保存が義務付けられており、自社が発行した領収書の控えは、取引の事実を裏付ける証憑(しょうひょう)に該当します。
領収書の「正本」は金銭を支払った側(受領者)に渡す書類で、「控え」は発行した側が手元に残す写しです。受領者が経費精算や仕入税額控除のために正本を保管するのと同様に、発行者にも控えの保管義務があります。
控えがあることで、後日の金額照会・二重発行の防止・税務調査での取引証明がスムーズになります。「受領者に正本を渡したから控えは捨てていい」ということにはなりません。
控え(写し)は印紙税法上の課税文書に該当しないため、収入印紙を貼る必要はありません。正本にのみ貼付すれば問題ありません。ただし、控えに発行者の署名・押印があり「金銭の受領事実を証明する目的で作成された」と判断される場合は、課税文書とみなされる可能性があります(国税庁 No.7120)。トラブルを防ぐため、控えには「控」と明記し、余分な署名押印を入れないのが実務上の安全策です。
保存期間の一覧 ── 法人税法・所得税法・消費税法
領収書控えの保存期間は、適用される税法によって異なります。法人は原則7年、欠損金がある事業年度は10年が基本です。個人事業主は申告方法によって5年または7年に分かれます。
| 適用法令 | 対象者 | 保存期間 | 起算日 |
|---|---|---|---|
| 法人税法 | 法人(すべて) | 7年 | 確定申告書の提出期限の翌日 |
| 法人税法(欠損金あり) | 青色申告法人で欠損金が生じた事業年度 | 10年 | 同上 |
| 会社法 | 株式会社 | 10年 | 帳簿閉鎖時 |
| 所得税法(青色申告) | 個人事業主 | 7年 | 確定申告書の提出期限の翌日 |
| 所得税法(白色申告) | 個人事業主 | 5年 | 同上 |
| 消費税法 | 課税事業者 | 7年 | 課税期間の末日の翌日から2か月経過した日 |
会社法では会計帳簿の保存期間が10年と定められているため、法人は10年保管しておけばすべての法令をカバーできます。迷ったら10年保管がもっとも安全です。
消費税の課税事業者は、売上に係る消費税額を正確に申告するために帳簿の保存が必要です(消費税法第58条)。発行した領収書の控えは帳簿記載内容を裏付ける書類にあたるため、消費税法上も7年間保存しておくのが安全です。
インボイス制度による「写しの保存義務」
2023年10月に開始されたインボイス制度(適格請求書等保存方式)では、適格請求書発行事業者に対し、交付した適格請求書の写しを保存する義務が消費税法第57条の4第6項で明確に定められています。領収書が適格簡易請求書に該当する場合も同様です。保存期間は交付した日の属する課税期間の末日の翌日から2か月を経過した日から7年間です(消費税法施行令第70条の13第1項)。
登録番号・税率ごとの消費税額等を記載した領収書を発行している事業者は、その控えの保存が法的義務になっている点を押さえておきましょう。「写し」は原本のコピーに限らず、レジのジャーナルや発行データの記録など、記載事項が確認できるものであれば認められます。
控えの正しい保管方法
領収書の控えは「何を・どう保管するか」を決めておかないと、枚数が増えるにつれて管理が破綻します。代表的な4つの方法を紹介します。
1. 複写式(カーボン・ノーカーボン)領収書を使う
もっとも一般的な方法です。2枚綴り・3枚綴りの複写式領収書を使えば、正本を渡すと同時に控えが自動で残ります。文房具店や通販で「領収書 複写式」として市販されており、特別な設備は不要です。
2. 発行時にコピーを取る
手書き領収書を複写式でなく1枚もので発行している場合は、渡す前にコピーを取って控えにします。コピーであっても、通し番号・日付・金額・宛名が確認できれば証憑として有効です。
3. 通し番号で管理する
領収書に連番(通し番号)を振ることで、欠番チェックによる発行漏れ・紛失の早期発見が可能になります。複写式領収書にはあらかじめ番号が印字されているものが多く、そのまま台帳と照合できます。
4. 台帳(発行記録)を作成する
Excel やスプレッドシートに「日付・通し番号・宛名・金額・但し書き」を記録しておく方法です。控え現物との二重管理になりますが、税務調査で発行履歴を一覧で示せるため信頼性が高まります。
控えの保管場所は、月別・取引先別にファイリングし、日付順に綴じるのが基本です。年度末にまとめて段ボールに入れるだけでは、税務調査の際に該当書類を探し出すのに時間がかかります。
電子帳簿保存法と領収書控えの電子保存
2024年1月から電子帳簿保存法の電子取引データ保存が完全義務化されました。領収書の控えについても、紙で保管する方法だけでなく、電子データで保存する選択肢が広がっています。
スキャナ保存 ── 紙の控えを電子化する場合
紙で発行した領収書の控えをスキャンまたはスマートフォンで撮影し、電子データとして保存する方法です。スキャナ保存を行うには以下の要件を満たす必要があります。
- 入力期間の制限 ── 書類の作成・受領から「速やかに」(おおむね7営業日以内)、または業務処理サイクル方式で最長約2か月+7営業日以内に入力する
- タイムスタンプの付与 ── 入力時にタイムスタンプを付与するか、訂正・削除の履歴が残るシステムを使用する
- 解像度・階調 ── 200dpi以上、カラー画像(一般書類はグレースケール可)で読み取る
- 検索機能の確保 ── 日付・金額・取引先で検索できる状態にする
- 帳簿との関連性 ── スキャンデータと帳簿の記載を紐づけられるようにする
2024年の改正で、入力者情報の確認要件と解像度等の数値情報を画像と一緒に保存する要件が廃止され、以前より導入しやすくなっています。
電子取引データ保存 ── PDFやメールで発行する場合
領収書をPDFで発行した場合やメール送信した場合、その電子データは「電子取引」に該当します。電子取引データは紙に印刷して保存する方法が認められなくなったため、電子データのまま保存しなければなりません。
- 改ざん防止措置 ── タイムスタンプの付与、または訂正・削除の履歴が残るシステムの利用、あるいは「正当な理由がない訂正・削除の禁止」に関する事務処理規程の備え付け
- 検索機能 ── 日付・金額・取引先で検索できること(基準期間の売上高5,000万円以下の事業者等は、税務職員によるダウンロードの求めに応じられれば検索要件不要)
- 見読可能性 ── ディスプレイやプリンタで速やかに出力できること
TEMPLEX で作成したPDF領収書を取引先にメール送付した場合、発行者側はその送付データ(PDF原本)を電子取引データとして保存する必要があります。「メールで送ったから手元になくてよい」とはならない点に注意してください。
控えがない場合のリスクと対処法
「控えなんて取っていなかった」という場合、どのようなリスクがあるのかを整理します。
リスク1:税務調査で取引事実を証明できない
税務調査では、帳簿の記載と領収書控えの突合が行われます。控えがないと「本当にその取引があったのか」「金額は正しいのか」を裏付ける書類が不足し、売上の計上漏れや架空経費の疑いを招く原因になります。
リスク2:二重発行・改ざんの疑いを晴らせない
取引先から「領収書を再発行してほしい」と依頼されたとき、控えがなければ過去の発行内容を確認できません。同一取引に対して複数枚の領収書が存在する状態になると、不正利用を疑われるリスクがあります。
リスク3:帳簿書類の保存義務違反
法人税法・所得税法で義務付けられた帳簿書類の保存を怠ると、青色申告の承認取消しの対象になりえます。青色申告が取り消されると、欠損金の繰越控除や各種特別控除が適用できなくなり、税負担が増加します。
控えを紛失した場合の対処法
- 帳簿・会計ソフトの記録を確認する ── 発行日・金額・取引先が帳簿に記載されていれば、取引事実の補完資料になる
- 取引先に正本のコピーを依頼する ── 受領者が保管している正本のコピーをもらい、控えの代替とする
- 銀行振込明細・クレジットカード明細で補完する ── 入金記録は第三者(金融機関)が発行するため、証拠力が高い
- 今後の再発防止策を講じる ── 複写式領収書への切替え、台帳の運用開始、電子化による自動保管など、仕組みで防止する
領収書がなくても、帳簿への記載と他の証憑(振込明細・納品書・契約書など)で取引の事実が証明できれば、経費が全額否認されるとは限りません。ただし、立証責任は納税者側にあるため、控えの保管を日常業務に組み込んでおくことが最善の対策です。
よくある質問
個人事業主も領収書の控えは保管すべき?
はい。個人事業主であっても、所得税法で帳簿書類の保存が義務付けられています。発行した領収書の控えは取引を証明する書類にあたるため、青色申告なら7年、白色申告なら5年の保管が必要です。消費税の課税事業者であれば、あわせて消費税法上の7年保存も適用されます。
複写を取るのが面倒な場合はどうすればよい?
複写式の領収書を使えば、記入と同時に控えが自動で作成されるため手間がかかりません。文房具店や通販で1冊数百円から購入でき、もっとも手軽な方法です。TEMPLEX のPDF領収書テンプレートなら、PDF自体がそのまま電子データの控えになります。
PDFで渡した領収書の控えはどう管理する?
PDFで領収書を発行した場合、そのPDFファイルは「電子取引データ」に該当します。電子帳簿保存法の要件(改ざん防止措置・検索機能・見読可能性)を満たした状態で、電子データのまま保存してください。紙に印刷しての保存は認められません。ファイル名を「日付_取引先名_金額」の形式で統一しておくと検索要件を満たしやすくなります。
レジのレシートを領収書として渡した場合、控えは?
レジのジャーナル(レジ内部に記録される取引履歴)が控えの代わりになります。POSレジであれば売上データが電子的に保存されているため、それを帳簿と突合できる形で保管しておけば問題ありません。
取引先から原本ではなく「控え(コピー)」を渡された場合、経費精算に使える?
紙の領収書のコピー(複写機で複製したもの)は、原則として経費精算の証憑にはなりません。改ざんリスクや二重請求の防止の観点から、税務調査でも原本の保存が求められます。コピーしか手元にない場合は、取引先に原本の再発行を依頼するか、振込明細・クレジットカード明細など第三者が発行した書類で取引事実を補完してください。
一方、PDFやメールで受領した電子発行の領収書は、そのデータ自体が原本です。電子帳簿保存法の要件を満たして電子データのまま保存すれば、正式な証憑として認められます。
TEMPLEX で領収書を作成する
TEMPLEX では、必要事項を入力するだけで領収書PDFを無料で作成できます。PDFファイルがそのまま控えになるため、複写式領収書を用意する必要がありません。
コラム著者・編集者
TEMPLEX編集チーム
TEMPLEX編集チームは、ビジネス文書の作成・管理に精通した実務経験者と技術ライターで構成されています。送付状・請求書・見積書をはじめとする各種ビジネス書類のフォーマットや書き方のノウハウを、わかりやすく丁寧にお届けします。「Office不要で誰でもすぐ使える」をコンセプトに、忙しいビジネスパーソンの書類作成をサポートします。








