覚書を変更・修正するには?追加覚書と再締結の使い分け

覚書の変更は「追加の覚書」で行うのが基本
一度締結した覚書の内容を変える必要が出てきたとき、原本を差し替えたり書き直したりする必要はありません。変更点だけを記載した「追加の覚書」を新たに締結するのが実務上の標準的な方法です。
追加覚書は、原覚書の「第○条をこう変える」という差分だけを記録する書面です。原覚書はそのまま有効で、変更対象の条項だけが追加覚書の内容に置き換わります。契約実務では「変更覚書」「修正覚書」「覚書に関する覚書」などと呼ばれることもありますが、名称にかかわらず法的効力は同じです。大切なのは「どの覚書の、どの条項を、どう変えるか」が明確に書かれていることです。
- 原覚書を破棄・回収する必要がない
- 変更の経緯が時系列で残るため、後から「いつ・何を変えたか」を追跡しやすい
- 変更されなかった条項は原覚書がそのまま適用されるため、書き漏れのリスクが小さい
追加覚書を締結したら、原覚書の表紙や末尾に「○年○月○日付追加覚書あり」とメモを添えておくと管理しやすくなります。
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追加覚書のテンプレート
追加覚書のポイントは3つです。原覚書の特定(日付・タイトル)、変更箇所の新旧対比、変更されない条項は原覚書に従う旨の確認。この3つが入っていれば、書式は自由です。
記名押印は、原則として原覚書と同じ権限を持つ者(代表取締役など)が行います。部署の担当者印で締結してしまうと、後から「権限がなかった」と争われるリスクがあります。
変更が金額に関する場合、追加覚書にも収入印紙が必要になることがあります。原覚書の契約金額を増額する追加覚書は、増額分が記載金額として課税対象になります(国税庁タックスアンサーNo.7127)。減額の変更覚書は「記載金額のない文書」として扱われ、第1号・第2号文書に該当する場合は200円の印紙で済みます。ただし、元の契約が継続的取引の基本契約(第7号文書)の重要事項を変更する場合は一律4,000円、準委任契約や秘密保持契約など不課税文書の変更であればそもそも印紙は不要です。元の覚書の種類によって異なるため注意が必要です。

覚書に収入印紙は必要?金額一覧と4000円のケース
覚書に収入印紙が必要かどうかは文書の名称ではなく記載内容で決まります。課税・非課税の具体シーン、第1号・第2号・第7号文書の印紙税額一覧、4000円になるケース、電子覚書の非課税根拠、貼り忘れの過怠税まで解説。
記事を読む追加覚書は元の覚書と物理的に綴じ合わせる必要はありません。それぞれ独立した書類として保管して問題ありませんが、セットでファイリングしておくと管理がスムーズです。
再締結(全面改訂)が適切なケース
追加覚書が便利とはいえ、すべての変更を追加覚書で対応すべきとは限りません。次のような場合は、原覚書を解約して新しい覚書を一から作り直す「再締結」のほうが合理的です。
- 変更箇所が多く、追加覚書だけでは読み合わせが困難になる場合(目安として条項の過半数を変えるとき)
- 原覚書が古く、法改正や社内規定の変更で前提が変わっている場合
- 当事者が変わった場合(合併・事業譲渡・担当部署の分社化など)
- 追加覚書が何度も重なり、現在の合意内容を1通で確認できなくなった場合
再締結のときは、新しい覚書の中に「○年○月○日付原覚書は本覚書の締結をもって失効する」という旧覚書の終了条項を明記してください。これがないと、旧覚書と新覚書の両方が有効な状態になり、どちらの条項が適用されるかで争いが生じるおそれがあります。
「追加覚書か再締結か」の判断に迷ったら、第三者が原覚書と追加覚書をセットで読んだときに、現在の合意内容をすぐ把握できるかどうかを基準にしてください。把握が難しくなっていれば再締結のタイミングです。
口頭合意だけで変更できるか
日本の民法では、契約は当事者の意思表示の合致だけで成立するのが原則です(民法522条2項)。覚書も同じで、理論上は口頭の合意だけで変更すること自体は有効です。
ただし、口頭だけでは「いつ・何を・どう変えたのか」の証拠が残りません。後から相手が「そんな話はしていない」と主張した場合に、変更の事実を証明する手段がなくなります。実務では、口頭で変更に合意した場合も、速やかに書面(追加覚書)にまとめるのが鉄則です。
なお、原覚書に「変更は書面による合意がなければ効力を生じない」という条項(書面変更条項)が入っている場合があります。この条項がある覚書では、口頭合意だけでは変更の効力が否定される可能性が高くなります。まず原覚書の条項を確認してください。
メールやチャットのやり取りも証拠にはなりますが、変更の全容が散在して分かりにくくなりがちです。最終合意が固まったら、1通の追加覚書に集約することで「この書面が最新の合意」と明確にできます。
相手方が変更に応じないときの対処
覚書は双方の合意で成り立つ書面ですから、一方的に内容を変更することはできません。相手方が変更に応じない場合でも、まずは交渉で解決を目指すのが基本です。
交渉のポイント
変更が必要になった理由を具体的に示すことが大切です。「原材料費が○%上昇した」「法改正で○○が義務化された」など、客観的な事情の変化を根拠にすると相手方も合理性を判断しやすくなります。あわせて、変更によって相手方が得るメリット(取引継続・条件緩和など)を提示すると交渉が進みやすくなります。
交渉で合意できない場合
話し合いで合意に至らない場合は、社内の法務部門や弁護士に相談して対応を検討しましょう。契約書に紛争解決条項(管轄裁判所や仲裁機関の指定)がある場合は、その定めに従います。
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