賃料変更(改定)の覚書の書き方|値上げ・値下げのテンプレート

賃料変更に覚書が必要な理由
賃料の値上げ・値下げは、賃貸人と賃借人が口頭で合意するだけでも法律上は成立します。しかし口約束だけでは「いつから」「いくらに」変わったのか記録が残らず、後から言った・言わないのトラブルに発展するリスクがあります。
覚書を交わしておけば、変更前の金額・変更後の金額・適用開始日が書面に残ります。賃貸借契約書を全面的に作り直す必要はなく、変更点だけを覚書にまとめて原契約に添付するのが実務上の一般的な方法です。覚書は双方が署名押印して2通作成し、各自1通を保管します。
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賃料値上げの覚書テンプレート
増額改定の覚書です。ポイントは変更前の金額・変更後の金額・適用開始日の3点を明記することです。物件を特定できる情報(所在地・部屋番号など)と原契約の日付も忘れずに記載します。

法人が賃貸人・賃借人の場合は、氏名欄を「商号・代表取締役 ○○ ○○」に変えてください。適用開始日は「○月○日分の賃料から」と書くと、日割り計算の余地がなく明確です。
原契約に連帯保証人がいる場合、賃料の増額により保証人の負担も重くなります。増額の覚書には連帯保証人の署名押印(同意)も必ずもらうようにしてください。保証人の同意がないまま増額すると、増額分について保証の効力が及ばないと判断されるリスクがあります。
賃料値下げの覚書テンプレート
減額改定の覚書も構成は値上げの場合と同じです。金額の変更方向が逆になるだけで、適用開始日と原契約の参照を忘れずに書く点は変わりません。
減額の場合は「変更の理由」条項を入れておくと、賃貸人が後から「一時的な値下げだった」と主張するのを防ぎやすくなります。
共益費・管理費もあわせて変更する場合
賃料と一緒に共益費(管理費)も変更する場合は、覚書に追加条項を設けます。賃料と共益費は法的に別の費目なので、それぞれの変更前・変更後を分けて記載するのが確実です。
駐車場使用料や水道料など、原契約で別費目として定められている項目を変更する場合も同じ書き方です。変更する費目ごとに条項を立てて、変更前・変更後・適用開始日を記載してください。
家賃保証会社を利用している場合、賃料変更後に保証会社への変更届・通知手続きが必要です。届出を怠ると、滞納発生時に旧賃料分しか代位弁済されないおそれがあります。保証契約の約款を確認のうえ、速やかに手続きしましょう。
賃貸人・賃借人どちらから提案するか
賃料変更の提案は、値上げなら賃貸人(オーナー)側から、値下げなら賃借人(テナント・入居者)側から切り出すのが一般的です。どちらから提案しても法的に有利・不利はありません。
- 変更の根拠を整理する:固定資産税の増減、近隣の賃料相場、建物の経年劣化など具体的な理由を用意する
- 書面またはメールで打診する:口頭だけで終わらせず、提案内容を文書にして渡すとスムーズ
- 合意できたら覚書を作成する:上記のテンプレートに沿って2通作成し、双方が署名押印して各自1通を保管する
- 合意に至らない場合は調停を検討する:後述の借地借家法32条に基づき、簡易裁判所の民事調停を利用できる
交渉時のポイントは、感情的にならず客観的なデータで説明することです。近隣の賃料相場は不動産ポータルサイトで調べられますし、固定資産税の変動は納税通知書で確認できます。根拠を示して提案すれば、相手も検討しやすくなるため、合意に至りやすくなります。
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借地借家法との関係
賃料の値上げ・値下げは当事者同士の合意で決めるのが原則ですが、合意がまとまらない場合に備えて借地借家法32条(借賃増減請求権)という制度があります。
借地借家法32条1項は、建物の賃料が土地・建物の租税負担の増減、土地・建物の価格変動、近隣同種の建物の賃料と比較して不相当になったとき、当事者は将来に向かって賃料の増減を請求できると定めています(出典:e-Gov法令検索 借地借家法)。つまり、相手が交渉に応じなくても、法律上は一方的に増額・減額を請求する権利があります。
特約の扱い
「一定期間賃料を増額しない」という不増額特約は有効です(借地借家法32条1項ただし書)。一方、「一定期間賃料を減額しない」という不減額特約は、普通借家契約では無効とされます。32条1項が「契約の条件にかかわらず」増減を請求できると定めているため、借主の減額請求権を特約で排除することはできません。
なお、定期借家契約(定期建物賃貸借)の場合は、借地借家法38条9項により賃料改定の特約が優先され、32条の増減請求権は適用されません。つまり定期借家で不減額特約を設けている場合はその特約が有効となり、借主からの減額請求はできません。
合意できないときの手続き
賃料増減額の請求について当事者間で合意に至らない場合、いきなり訴訟を起こすことはできません。民事調停法24条の2により、まず簡易裁判所に調停を申し立てる必要があります(調停前置主義)。調停でも合意に至らなければ、裁判所が相当な賃料額を判断する訴訟に移行します。
覚書で合意が成立していれば、こうした調停・裁判の手続きを踏む必要はありません。交渉段階で覚書を作成しておくことは、双方にとって紛争コストを避ける手段でもあります。
収入印紙は必要か
結論から言うと、建物の賃貸借契約にかかる賃料変更の覚書には収入印紙は不要です。
建物の賃貸借契約書は印紙税法上の課税文書に該当しません。これは国税庁タックスアンサーNo.7106で明確にされています(出典:国税庁 No.7106 建物の賃貸借契約書)。原契約自体が課税文書でない以上、その一部を変更する覚書も課税文書には当たりません。
注意が必要なのは土地の賃貸借の場合です。土地の賃借権の設定に関する契約書は印紙税法上の第1号の2文書に該当するため、賃料などの重要事項を変更する覚書にも収入印紙が必要になる場合があります(出典:国税庁タックスアンサーNo.7140)。本記事のテンプレートは建物(マンション・アパート・店舗・事務所など)の賃料変更を想定しています。

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コラム著者・編集者
TEMPLEX編集チーム
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