覚書の印鑑はどれを使う?認印・角印・実印の使い分けとシャチハタNG

結論: 覚書の印鑑は「個人は認印」「法人は角印」で十分
覚書にどの印鑑を押すか迷ったら、朱肉を使う認印(三文判でも可)を署名の右横に押すのが基本です。
法人間の覚書であれば、角印(社印)が日常的に使われます。金額の大きい契約変更や不動産取引など重要な覚書では丸印(代表者印)を使うのが一般的です。個人・法人を問わず、ほとんどの覚書はこの使い分けで足ります。
そもそも覚書への押印は法律上の義務ではありません。民法522条2項は「契約の成立には、法令に特別の定めがある場合を除き、書面の作成その他の方式を具備することを要しない」と定めており、書面自体が不要なのですから押印も要件ではありません。覚書は契約書の一種なので、この規定がそのまま当てはまります。
それでも押印するのは、証拠としての強さが変わるからです。民事訴訟法228条4項は、本人またはその代理人の署名または押印がある文書は、真正に成立したものと推定すると定めています。つまり署名か押印のどちらかがあれば足りる建て付けで、署名があれば押印がなくても覚書は有効です。ただし押印があると「本人が作成した文書」と認められやすくなるため、実務では押しておくのが通例です。

| 印鑑の種類 | 覚書での扱い |
|---|---|
| 認印(朱肉を使うもの・三文判含む) | ○ 基本。迷ったらこれ |
| 実印+印鑑証明書 | ◎ 不動産・高額な金銭に関する覚書に |
| 角印(社印) | ○ 法人間の日常的な覚書に |
| 丸印(代表者印) | ◎ 法人の重要な契約変更に |
| シャチハタ・インク浸透印 | × 避ける(後述) |
| 拇印(指印) | △ 印鑑がない場合の代替。証拠力は限定的 |
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印鑑の種類と使い分け
覚書に使う印鑑は大きく5種類です。それぞれの特徴と、覚書のどんな場面で使うかを整理します。
実印
市区町村(個人)または法務局(法人)に登録した印鑑です。印鑑証明書とセットで使うと「本人が押した」ことを公的に証明でき、最も証拠力が高くなります。覚書では、不動産売買に関する変更、金額の大きい金銭貸借、公正証書化する前提の覚書など、破られたときの損害が大きい場面で使います。
認印
印鑑登録をしていない個人の印鑑です。朱肉を使うものであれば、文具店で買える三文判でも構いません。一般的なビジネスの覚書や個人間の覚書は認印で十分です。覚書で最もよく使われる印鑑です。
角印(社印)
四角い印面に社名が彫られた法人用の印鑑です。見積書・請求書・領収書など日常的な書類に広く使われ、法人間の覚書でも「確認事項の書面化」「軽微な契約条件の変更」程度であれば角印で対応するのが一般的です。詳しくは後述の「法人の覚書で使う印鑑」で解説します。
シャチハタ(インク浸透印)
インクが内蔵されたスタンプ印の総称です(100円ショップのスタンプ印も同じ扱い)。覚書には不向きで、理由は2つあります。ゴム製の印面が押し方や経年劣化で変形し、印影が安定しないこと。そして同じ印面が大量生産されており、「本人が押した」ことの裏付けにならないことです。覚書は長期間保管され、トラブルの際に印影が照合される書類なので、この2点は致命的です。朱肉を使う認印であれば三文判でも問題ありません。値段ではなく「朱肉を使うかどうか」が分かれ目です。
なお、100円ショップなどで購入できる三文判(既製の朱肉印)も同じ印面が大量に出回っていますが、朱肉で押すため印影が長期間残ります。一方、シャチハタはインクが数年で退色(色あせ)するリスクがあり、長期保管する覚書には不向きです。この退色リスクこそが、三文判はOKでもシャチハタはNGとされる実務上の理由です。
拇印(指印)
印鑑が手元にないときの代用手段です。指紋は本人固有のものなので痕跡にはなりますが、照合には専門的な鑑定が必要で、実務上の証拠力は限定的です。覚書では拇印より自筆の署名を丁寧に書くことを優先してください。前述のとおり、署名さえあれば押印なしでも覚書は有効です。
法人の覚書で使う印鑑(角印 vs 丸印)
法人間で覚書を取り交わすとき、最も迷うのが「角印でいいのか、代表者印(丸印)が要るのか」です。結論としては、日常的な確認事項の覚書は角印、金額が大きい変更や重要な契約変更は代表者印(丸印)という使い分けが実務の標準です。
| 印鑑 | 使う場面の目安 |
|---|---|
| 角印(社印) | 業務フローの確認、軽微な単価変更、納期変更、担当者変更、秘密保持の覚書 |
| 丸印(代表者印・会社実印) | 高額な金銭の変更、不動産の条件変更、M&A関連、原契約で「代表印の押印を要する」と定めている場合 |
丸印(代表者印)は法務局に届け出た会社の実印にあたり、紛失や悪用のリスクが大きいため、ふだんは厳重に保管されています。そのため日常の書類には角印を使い、丸印は重要な契約書や公的手続きに限定するのが実務の慣行です。社内稟議で「代表印が必要な覚書」を定めている会社もあるので、迷ったら社内の押印規程を確認するのが確実です。
角印を押す位置
法人の角印は、社名の末尾に少し重なるように、右寄りに押すのが慣行です。社名の文字に印影が少しかかることで、印影だけを切り取ってコピーされる偽造を防ぐ意味があります。重なりは印影の4分の1程度を目安にし、社名と印影がどちらもはっきり読み取れる状態を保ちます。押印欄や「印」枠がある書式なら、その枠内に押せば十分です。

代表者印(丸印)と角印の両方を押す必要はありません。覚書で丸印を使う場合は丸印だけ、角印で足りる場合は角印だけで問題ありません。なお代表者印を押す場合は、代表者の氏名の右横に押します。
個人の覚書で使う印鑑
個人間の覚書は、朱肉を使う認印で十分です。三文判でも構いません。
ただし、以下のような場面では実印+印鑑証明書が望ましくなります。
- 不動産の売買・賃貸に関する覚書(地代の変更、境界の確認など)
- 高額な金銭の貸し借りに関する覚書
- 公正証書にする予定がある覚書(公証役場で実印の提示を求められることがある)
- 後から「本人が押していない」と争われるおそれがある覚書
実印を使う場合は、印鑑証明書もセットで添付して初めて意味があります。印鑑証明書がなければ、その印影が本当に実印かどうか相手は確認できません。発行後3か月以内のものを添付するのが通例です。
認印でも、最高裁昭和39年5月12日判決が示した「二段の推定」は働きます。印影が本人の印鑑のものと認められれば、本人の意思で押されたと推定され(第一段)、その押印により文書全体が真正に成立したと推定されます(第二段・民事訴訟法228条4項)。ただし大量生産の三文判は「この印影=本人の印鑑」という第一段の立証が弱くなりがちなので、重要な覚書ほど実印が選ばれます。
覚書に印鑑を押す位置
押す場所は、署名(自筆のサイン)または記名(パソコン等での印字)のすぐ右横、または氏名の末尾に少しかかる位置が基本です。「印」「㊞」の枠が印刷されていれば、その枠の中央に押します。
自筆の署名であれば押印がなくても証拠力が高く認められますが、記名(印字)の場合は押印とセット(記名押印)で初めて署名と同等の推定力を得られます(民事訴訟法228条4項)。ビジネス文書では名前が印字されているケースが多いため、覚書には押印しておくのが安全です。
- ㊞枠がある場合 → 枠の中央に押す
- 枠がない場合 → 氏名の右隣に押す(文字に少しかかっても問題ない)
- 法人の場合 → 代表者名の右横に代表者印、または社名の右寄りに角印
氏名に少しかかるように押す慣行には、印影だけを切り取ったり氏名部分を貼り替えたりする偽造を防ぐ意味があります。一方、氏名がはっきり読め、印影も欠けずに残るよう重ねずに押すビジネスマナーもあり、どちらも間違いではないので、迷ったら重ねずに氏名のすぐ右横に押せば十分です。実印を押す場合は、印鑑証明書との照合がしやすいよう文字に重ねないほうが確実です。
契印・割印の位置は別記事で
覚書が複数ページにわたる場合の契印や、正副2通を作った場合の割印は、署名欄の押印とは別の場所に押します。押し方や位置の詳細は以下の記事で解説しています。

覚書の割印や契印は必要?押す位置と正しいやり方
覚書に割印は必要か、押す位置・正しいやり方を解説。割印と契印・消印の違い、複数ページの綴じ方まで、実務で迷いやすいポイントをまとめました。
記事を読む割印・契印と混同しやすいのが「消印」です。消印は収入印紙の再使用を防ぐために印紙と文書にまたがって押す印で、覚書の当事者を証明する割印・契印とは役割がまったく異なります。収入印紙の消印については以下の記事を参照してください。

覚書に収入印紙は必要?金額一覧と4000円のケース
覚書に収入印紙が必要かどうかは文書の名称ではなく記載内容で決まります。課税・非課税の具体シーン、第1号・第2号・第7号文書の印紙税額一覧、4000円になるケース、電子覚書の非課税根拠、貼り忘れの過怠税まで解説。
記事を読む押印なし(印鑑レス)で覚書を作成する方法
押印を省略して覚書を作成する方法は3つあります。
電子契約サービスを使う
電子契約サービスで覚書を取り交わせば、紙の印鑑は一切不要です。電子署名法3条により、本人による電子署名が行われた電子文書は真正に成立したものと推定されます。紙の署名・押印に民事訴訟法228条4項が与えているのと同じ推定効が、電子署名にも用意されています。
自筆の署名のみで取り交わす
紙の覚書でも、押印は法的な要件ではありません。内閣府・法務省・経済産業省が公表した「押印についてのQ&A」(令和2年6月19日)でも、押印がなくても契約の効力に影響は生じないことが明確にされています。自筆の署名さえあれば、押印なしでも覚書は有効です。相手方から「印鑑を省略したい」と言われた場合も、法的には問題ありません。
外国企業や外国人と覚書を取り交わす場合、相手方が印鑑を持っていないケースが一般的です。この場合は自筆のサイン(署名)で代用できます。日本法上、署名と押印は同等の効力があるため(民事訴訟法228条4項)、外国人当事者はサイン、日本人当事者は押印という組み合わせでも法的に問題ありません。
電子印影を使う
「PDFに印影の画像を入れて送ってほしい」と求められるケースもあります。その場合は TEMPLEX の電子印鑑作成ツールで、名前を入力するだけで透過PNGの印影(認印・角印タイプ)を無料・登録不要で作成できます。ただし電子印影はコピーが容易な画像であり、それ自体に本人を証明する力はありません。電子印影は相手先が認めている場合に使い、法的な証明力が必要なら電子署名サービスを利用してください。
覚書の法的効力(押印の有無がどう影響するか)を詳しく知りたい場合は、以下の記事も参照してください。

覚書の法的効力|有効になる条件と無効になるケース
覚書は署名と具体的な合意内容があれば契約書と同等の法的効力を持ちます。有効になる3条件(当事者の特定・合意内容の具体性・署名または記名押印)、無効・取消しになるケース、効力を高める方法、破った場合の法的手段まで解説します。
記事を読むTEMPLEXで押印欄つきの覚書を作成
TEMPLEXの覚書テンプレートなら、当事者・合意内容をフォームに入力するだけで、署名欄と押印欄つきの覚書PDFが完成します。登録不要・無料で何度でもダウンロードできるので、印刷して認印を押せばそのまま使えます。覚書全体の書き方や例文テンプレートは以下の記事でも紹介しています。

覚書の書き方|構成・例文テンプレートと注意点
覚書に書くべき6項目と、基本合意・秘密保持・業務委託変更の3パターンの例文テンプレートを紹介。曖昧表現の回避や原契約との整合性など、作成時の注意点もまとめました。
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TEMPLEX編集チームは、ビジネス文書の作成・管理に精通した実務経験者と技術ライターで構成されています。送付状・請求書・見積書をはじめとする各種ビジネス書類のフォーマットや書き方のノウハウを、わかりやすく丁寧にお届けします。「Office不要で誰でもすぐ使える」をコンセプトに、忙しいビジネスパーソンの書類作成をサポートします。






