個人間の覚書の書き方|友人・家族・近隣で使える例文

個人間の覚書の書き方|友人・家族・近隣で使える例文

個人間でも覚書は法的に有効

友人や家族、隣人との取り決めを書面にしたいとき、「個人間の覚書に法的な効力はあるのか」と心配になるかもしれません。結論から言えば、個人間の覚書も法人間の覚書と同じ法的効力を持ちます。覚書の法的な位置づけは「当事者が合意した内容を記録した私文書」であり、法人か個人かで効力に差は生じません。

当事者全員が署名または押印した覚書は、民事訴訟法228条4項(e-Gov法令検索)により真正に成立した文書と推定されます。つまり、裁判になった場合でも「当事者本人がその内容を認めて作成した書面」として扱われるということです。口約束だけでは「言った・言わない」の水掛け論になりがちですが、覚書を交わしておけば合意の証拠が残ります。

覚書は双方が署名する書面です。一方だけが義務を負う約束(相手に約束させるだけ)なら、覚書ではなく念書が適切です。この違いは記事末尾で詳しく説明しています。

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個人間の覚書に書くべき項目

覚書には法律で決まった書式はありませんが、後から証拠として機能させるには次の項目を漏れなく記載してください。

個人間の覚書に書くべき項目
個人間の覚書に書くべき項目
  • タイトル:「覚書」と記載する。タイトルで法的効力は変わらないが、書面の趣旨が一目で分かる。
  • 当事者の表示:住所・氏名・生年月日で特定する。法人のように登記番号がないため、同姓同名の別人と区別できるよう生年月日を併記するのがポイント。
  • 合意内容(本文):いつ・誰が・何を・いつまでに・どうするかを具体的に書く。「お互い気をつけます」のような抽象的な文面は証拠として弱い。
  • 違反時の取り決め:合意が守られなかった場合にどうするかを書く。遅延損害金や原状回復など、具体的な措置を定めておくと効果的。
  • 作成日:実際に署名した日付。合意が成立した時点を特定する根拠になる。
  • 当事者全員の署名・押印:覚書は双方が署名・押印して各1通ずつ原本を保管する。認印でも有効だが、金額が大きいなら実印+印鑑証明書がより確実。

当事者の呼称は「甲・乙」を使っても、氏名をそのまま使っても、どちらでも構いません。法人間の覚書では慣例的に甲乙を用いますが、個人間では「○○(以下「甲」という)」の定義を省略して氏名で書いたほうが読みやすいことも多いです。この記事の例文では状況に応じて両方の書き方を示しています。

覚書の「甲」「乙」とは?3者以上の書き方と実名表記のルール
覚書

覚書の「甲」「乙」とは?3者以上の書き方と実名表記のルール

覚書の「甲」「乙」は当事者の略称で、法的な上下関係はありません。甲と乙はどちらが上か、3者以上の場合の丙・丁・戊の使い方、実名で書いてもよいか、前文の定義文テンプレートまでまとめました。

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当事者が未成年者の場合は、親権者(法定代理人)の同意と署名押印が必要です。同意のない覚書は取り消される可能性があります(民法5条)。署名欄に親権者の記名押印欄を設けておきましょう。

金銭貸借の覚書テンプレート

友人や家族間でお金を貸し借りする際、口約束だけで済ませてしまうとトラブルの元です。返済期限・返済方法・遅延損害金を明記した覚書を交わしておくことで、双方の義務が明確になります。

金銭貸借の覚書の例
金銭貸借の覚書の例
金銭貸借の覚書(一括返済)
覚書 ○○ ○○(住所:○○県○○市○○町1-2-3、生年月日:昭和○年○月○日生、以下「甲」という)と△△ △△(住所:○○県○○市○○町4-5-6、生年月日:昭和○年○月○日生、以下「乙」という)は、金銭の貸借について下記のとおり合意した。 記 1. 甲は乙に対し、令和○年○月○日、金○○万円を貸し渡し、乙はこれを借り受けた。 2. 乙は甲に対し、令和○年○月○日までに、元金○○万円を甲指定の銀行口座に振り込む方法で一括返済する。振込手数料は乙の負担とする。 3. 乙が前項の期日までに返済しないときは、未払い元金に対し年3%の割合による遅延損害金を支払う。 4. 利息は付さないものとする。 本覚書の成立を証するため、本書2通を作成し、甲乙署名押印のうえ各1通を保有する。 令和○年○月○日 甲 住所 ○○県○○市○○町1-2-3 氏名 ○○ ○○(印) 乙 住所 ○○県○○市○○町4-5-6 氏名 △△ △△(印)
金銭貸借の覚書(分割返済)
覚書 ○○ ○○(住所:○○県○○市○○町1-2-3、生年月日:昭和○年○月○日生、以下「甲」という)と△△ △△(住所:○○県○○市○○町4-5-6、生年月日:昭和○年○月○日生、以下「乙」という)は、金銭の貸借について下記のとおり合意した。 記 1. 甲は乙に対し、令和○年○月○日、金○○万円を貸し渡し、乙はこれを借り受けた。 2. 乙は甲に対し、令和○年○月から令和○年○月まで、毎月末日限り金○万円ずつ、甲指定の銀行口座に振り込む方法で分割返済する。振込手数料は乙の負担とする。 3. 乙が分割金の支払いを2回以上怠ったときは、当然に期限の利益を失い、残元金全額を直ちに一括で支払う。 4. 乙が支払いを遅延したときは、未払い元金に対し年3%の割合による遅延損害金を支払う。 5. 利息は付さないものとする。 本覚書の成立を証するため、本書2通を作成し、甲乙署名押印のうえ各1通を保有する。 令和○年○月○日 甲 住所 ○○県○○市○○町1-2-3 氏名 ○○ ○○(印) 乙 住所 ○○県○○市○○町4-5-6 氏名 △△ △△(印)

遅延損害金の利率は当事者間で自由に決められます。上の例文では民法404条の法定利率(年3%)に合わせていますが、これより高く設定しても構いません。ただし利息制限法の上限(元本10万円未満は年20%、100万円未満は年18%、100万円以上は年15%)を超える部分は無効になるため注意してください(出典:e-Gov 利息制限法)。

なお、遅延損害金の上限は利息の上限の1.46倍まで認められています(利息制限法4条1項)。たとえば元本10万円未満なら年29.2%、100万円未満なら年26.28%が上限です。ただし実務上は利息の上限と同率に設定しておくのが安全です。

親族間で高額(数百万円以上)の貸し借りを無利息で行うと、税務署から「実質的な贈与」とみなされ贈与税が課される可能性があります。定期的な返済実績を残し、借用書(覚書)を書面で交わしておくことが、贈与でないことを示す有力な証拠になります(出典:国税庁 タックスアンサーNo.4420)。

騒音・生活トラブルの覚書テンプレート

隣人との騒音やゴミ出しルールなど、生活トラブルの再発を防ぐには双方の義務を明確にした覚書を交わしておくのが効果的です。念書(片方だけの約束)と違い、覚書なら「騒音を出さない」という相手の義務と「管理会社への通報は控える」という自分の義務を同じ書面に載せられます。

騒音トラブルの覚書(近隣住民間の取り決め)
覚書 ○○ ○○(○○マンション○○号室、以下「甲」という)と△△ △△(同マンション○○号室、以下「乙」という)は、乙の住戸から生じる騒音に関し、下記のとおり合意した。 記 1. 乙は、午後9時から翌朝7時までの間、楽器の演奏、大音量での音楽・テレビの再生その他近隣に迷惑を及ぼす騒音を発しないよう努める。 2. 乙は、洗濯機・掃除機など生活上やむを得ない音についても、上記時間帯は使用を控えるよう配慮する。 3. 甲は、乙が本覚書の定めを誠実に履行している限り、本件について管理会社への苦情申し入れを控える。 4. 甲および乙は、本覚書の定めに関して疑義が生じた場合、誠実に協議して解決する。 本覚書の成立を証するため、本書2通を作成し、甲乙署名押印のうえ各1通を保有する。 令和○年○月○日 甲 住所 ○○マンション○○号室 氏名 ○○ ○○(印) 乙 住所 ○○マンション○○号室 氏名 △△ △△(印)
ゴミ出し・共用部ルールの覚書(隣家・町内会)
覚書 ○○ ○○(以下「甲」という)と△△ △△(以下「乙」という)は、ゴミ集積所(○○市○○町○番地前)の利用に関し、下記のとおり合意した。 記 1. 甲および乙は、○○市の指定する収集日・分別ルールに従い、収集日当日の朝8時以降にゴミを排出する。 2. 甲および乙は、ゴミ集積所の清掃を月ごとに交替で行う。当番月は各月の第1日曜日に清掃を実施する。 3. ルール違反があった場合は、まず当事者間で話し合い、改善されないときは自治会に相談する。 本覚書の成立を証するため、本書2通を作成し、甲乙署名押印のうえ各1通を保有する。 令和○年○月○日 甲 住所 ○○県○○市○○町1-2-3 氏名 ○○ ○○(印) 乙 住所 ○○県○○市○○町4-5-6 氏名 △△ △△(印)

騒音やゴミ出しの覚書には金銭の支払いが含まれないため、収入印紙は不要です。印紙税がかかるのは法律で限定された種類の文書(金銭消費貸借や不動産譲渡など)だけで、生活ルールの合意はどれにも該当しません。

個人間の不動産売買・賃貸に関する覚書

親族間や知人間で土地・建物を売買・賃貸するとき、不動産会社を介さず当事者だけで進めるケースがあります。正式な売買契約書を作成する前段階として、売買条件の大枠を覚書で合意しておくと、その後の契約作成がスムーズになります。

不動産売買に関する覚書(個人間)
覚書 ○○ ○○(住所:○○県○○市○○町1-2-3、以下「甲」(売主)という)と△△ △△(住所:○○県○○市○○町4-5-6、以下「乙」(買主)という)は、下記不動産の売買に関し、以下のとおり合意した。 記 【対象不動産】 所在:○○県○○市○○町○丁目○番○号 地目:宅地 地積:○○.○○平方メートル 家屋番号:○番 種類:居宅 床面積:1階 ○○.○○平方メートル、2階 ○○.○○平方メートル 1. 甲は乙に対し、上記不動産を金○○万円で売り渡し、乙はこれを買い受ける。 2. 乙は甲に対し、本覚書締結時に手付金として金○○万円を支払い、残代金○○万円は令和○年○月○日までに甲指定の銀行口座に振り込む。 3. 甲は、残代金の受領と引き換えに、乙への所有権移転登記に必要な書類を引き渡す。 4. 甲は、引渡し日までに抵当権その他の負担を抹消する。 5. 甲および乙は、本覚書の内容に基づき、令和○年○月○日までに正式な不動産売買契約書を締結する。 6. 本覚書に定めのない事項については、甲乙協議のうえ定める。 本覚書の成立を証するため、本書2通を作成し、甲乙署名押印のうえ各1通を保有する。 令和○年○月○日 甲(売主)住所 ○○県○○市○○町1-2-3 氏名 ○○ ○○(印) 乙(買主)住所 ○○県○○市○○町4-5-6 氏名 △△ △△(印)

不動産の覚書で特に重要なのは対象物件を登記簿どおりに正確に記載することです。所在・地番・家屋番号は住居表示(いわゆる住所)と異なる場合が多いため、法務局で登記事項証明書を取得して確認してください。

個人間の不動産売買でも、覚書の段階から司法書士に相談しておくと安心です。所有権移転登記は司法書士が行うのが通常で、登記に必要な条件(抵当権の抹消、売主の本人確認など)を覚書の時点で確認しておけば、後からやり直しになるリスクを減らせます。

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個人間でも印紙が必要になるケース

覚書に収入印紙が必要かどうかは、タイトルではなく書面の内容で決まります。個人間の覚書でも、印紙税法上の課税文書に該当すれば印紙が必要です(出典:国税庁 タックスアンサーNo.7100)。

覚書の内容印紙の要否根拠
金銭の貸し借り(金銭消費貸借)必要(記載金額1万円以上)第1号文書(消費貸借に関する契約書)
不動産の売買必要(記載金額に応じた額)第1号文書(不動産の譲渡に関する契約書)
騒音・生活ルールの取り決め不要課税文書に該当しない
物の貸し借り(使用貸借)不要課税文書に該当しない
損害賠償額の合意不要金銭の受取書にも契約書にも該当しない
個人間の覚書と印紙税の関係

金銭消費貸借の覚書(前述の金銭貸借テンプレート)の場合、記載金額が1万円未満なら非課税、1万円以上なら200円以上の印紙が必要です。具体的な税額は記載金額の区分に応じて定められています(出典:国税庁 タックスアンサーNo.7140)。印紙を貼らなくても覚書自体は有効ですが、後から過怠税を徴収される可能性があるため、該当する場合は必ず貼ってください。

念書と覚書、個人間ではどちらを使う?

個人間のトラブルや約束事で、念書と覚書のどちらを使うべきか迷ったときは、双方に義務があるなら覚書、一方だけに義務があるなら念書と考えてください。

判断基準覚書を選ぶ場面念書を選ぶ場面
義務を負う人数双方に義務がある(双務)一方だけが義務を負う(片務)
署名する人当事者全員が署名・押印約束する側(差入人)だけが署名
具体例金銭の貸借条件、騒音ルール、不動産の売買条件騒音をやめる約束、借金を返す約束、弁償の約束
作成通数2通(各自1通ずつ原本を保管)1通(受け取る側が原本を保管)
覚書と念書の使い分け

たとえば「隣人に騒音をやめてもらう」だけなら念書で十分です。しかし「騒音をやめる代わりに、こちらも管理会社への通報を控える」のように自分にも守るべき条件があるなら覚書一択です。念書に署名するのは差入人だけなので、こちらの義務を念書に書いても相手を拘束する証拠にはなりません。

覚書の書き方|構成・例文テンプレートと注意点
覚書

覚書の書き方|構成・例文テンプレートと注意点

覚書に書くべき6項目と、基本合意・秘密保持・業務委託変更の3パターンの例文テンプレートを紹介。曖昧表現の回避や原契約との整合性など、作成時の注意点もまとめました。

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念書と覚書の違いや判断基準のより詳しい比較は、以下の記事で解説しています。

念書と覚書の違い|どちらで書くべきかの判断基準と書き換え例文
念書

念書と覚書の違い|どちらで書くべきかの判断基準と書き換え例文

念書と覚書の違いは「署名する人数」です。一方だけが約束を差し入れるなら念書、双方の合意を残すなら覚書。迷ったときの判断基準、同じ内容を念書・覚書それぞれで書いた例文、法的効力と収入印紙の扱いまでまとめました。

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念書で足りるケースの具体的な文面やシーン別例文は、以下の記事をご覧ください。

個人間の念書の書き方|騒音・近隣トラブルなどそのまま使える例文6つ
念書

個人間の念書の書き方|騒音・近隣トラブルなどそのまま使える例文6つ

友人・隣人など個人間のトラブルや約束を念書で証拠に残す書き方を解説。必須5項目、騒音・ペット・無断駐車・越境・物の返却・口外禁止のシーン別例文6つ、署名・押印で証拠力を高めるポイント、守られないときの次の手段まで。

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コラム著者・編集者

TEMPLEX編集チーム

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