定年退職に退職届は必要?必要・不要の判断と書き方の完全ガイド

結論|法律上は不要・会社が求めれば提出する
定年退職は法的には『自然退職』に分類され、就業規則で定めた定年年齢に達した時点で雇用契約が自動的に終了します。そのため、自己都合退職と違って退職届を出さなくても退職そのものは成立します。ただし、実務では多くの企業が記録・社会保険手続き・再雇用への切り替えなどの目的で『定年退職届』の提出を求めるのが現状です。
| 状況 | 退職届の要否 | 理由 |
|---|---|---|
| 就業規則・社内ルールで提出が定められている | 提出する | 会社のルールに従うのが原則 |
| 再雇用・継続雇用に切り替えて勤務継続 | 提出を求められることが多い | 一度退職→再雇用の手続きを明確に区切るため |
| 完全に退職して勤務を終える(再雇用なし) | 会社の指示があれば提出 | 社内記録・離職票発行のため |
| 就業規則に何も書かれていない | 原則は不要・会社確認推奨 | 提出しなくても自然退職として効力発生 |
| 雇用延長(同一条件で65歳まで継続) | 原則は不要 | 退職ではなく雇用継続のため |
本記事は定年退職に特化した解説です。定年退職届を実際に手書きで書く場合の便箋・縦書きの構成・例文の詳細パターンは『定年退職届の書き方|手書き・縦書きで使える例文集』にまとめています。
退職届・退職願・辞表
定年退職届を手書き縦書きで書く方法|便箋・例文・レイアウトの完全ガイド
定年退職は『自然退職』|法律上は退職届不要の根拠
定年退職は、労働者の意思表示による退職(自己都合退職)でも、会社からの解雇(会社都合退職)でもなく、『自然退職』という第3のカテゴリに分類されます。あらかじめ就業規則で定めた定年年齢に達した時点で、自動的に雇用契約が終了する仕組みです。
自己都合退職との違い
| 項目 | 自己都合退職 | 定年退職(自然退職) |
|---|---|---|
| 退職の起点 | 労働者の意思表示 | 就業規則で定めた定年年齢への到達 |
| 退職届 | 原則必要 | 法律上は不要(会社のルールで提出することが多い) |
| 本文の表現 | 「一身上の都合により退職いたします」 | 「定年により退職いたします」 |
| 退職理由 | 自己都合 | 定年(離職票では『定年』として区別される) |
| 失業給付 | 給付制限あり(待機 + 2〜3ヶ月) | 給付制限なし(待機7日のみ)/受給期間延長申請も可(実際の振込までは最初の認定日経由で4〜5週間程度) |
| 撤回 | 実務上は会社判断(承諾権者の承諾前なら可の場合も) | そもそも自然退職のため撤回の概念がない |
離職票の退職事由は『定年』として区別されます。失業給付(基本手当)は自己都合退職と違って給付制限の月数が課されず、待機7日経過後から支給対象期間に入ります(自己都合退職の場合は2025年4月以降の離職で原則1ヶ月の給付制限が加わる仕組み)。ただし、待機後すぐに振込まれるわけではなく、最初の失業認定日を経て口座入金されるまでは申請から4〜5週間程度かかるのが一般的です。再雇用予定がある場合は、雇用保険の受給期間延長を申請できる場合もあります。
高年齢者雇用安定法|65歳までの雇用確保と70歳までの努力義務
定年退職を理解する上で、高年齢者雇用安定法(高年齢者等の雇用の安定等に関する法律)の理解は欠かせません。事業主は、定年を65歳未満に定めている場合、65歳までの雇用確保措置を講じる義務を負います。これにより、現在の60歳定年制でも65歳までの雇用が事実上保障される仕組みです。
事業主が選ぶ3つの雇用確保措置(65歳まで)
- ①65歳までの定年の引き上げ
- ②65歳までの継続雇用制度の導入(再雇用制度・勤務延長制度)
- ③定年の廃止
70歳までの就業機会確保(努力義務・2021年4月施行)
2021年4月の改正では、70歳までの就業機会を確保することが事業主の努力義務とされました。65歳から70歳までの間も、定年引き上げ・継続雇用制度の導入・業務委託契約での就業機会の確保などが選択肢に入っています。
高年齢者雇用に関する法令の詳細は厚生労働省の高年齢者の雇用ページに整理されています。自分の会社が継続雇用制度を導入しているか、定年を引き上げているかは、就業規則を確認するか、人事部に問い合わせれば確認できます。
60歳で一度定年を迎え、再雇用で勤務を続ける場合は、社会保険の手続き(同日得喪と呼ばれる資格喪失届と取得届の同時提出)により、再雇用後の給与に応じた標準報酬月額に変更できます。これは社会保険料の負担軽減につながる手続きで、人事担当者が処理してくれることがほとんどです。
定年退職届が必要なケース・不要なケース
『定年退職届は必要か?』への答えは、自分の状況によって変わります。次の4つのパターンに当てはめて判断してください。
①完全退職する場合(再雇用なし)
60歳・65歳で完全に退職し、その後は仕事をしないか、別の会社に再就職する予定の方。法律上は退職届を出さなくても自然退職として効力が発生しますが、社内記録のために『定年退職届』『退職届』の提出を求められるケースが多いです。会社の指示に従って提出してください。
②再雇用・継続雇用に切り替える場合
60歳で一度退職し、再雇用契約で65歳まで(または70歳まで)継続して働く場合。多くの会社で『定年退職届』『定年に伴う退職届』の提出が求められます。これは退職と再雇用を雇用契約上明確に区切るため・社会保険の手続き(同日得喪)のためです。
③雇用延長(勤務延長制度)の場合
勤務延長制度は、定年に達しても退職せずに同じ雇用契約のまま勤務を継続する制度です。雇用契約が継続するため、退職届の提出は原則として不要です。会社が勤務延長を採用しているか、再雇用を採用しているかは就業規則で確認できます。
④定年廃止の会社の場合
定年制度自体を廃止している会社では、自分が辞めるタイミングを自分で決めて退職届を出します。この場合は『定年退職届』ではなく、通常の自己都合退職としての退職届になります。

自分が再雇用に切り替わるのか、勤務延長で同じ条件のまま継続するのか、それとも完全に退職するのかは、人事部から案内が来るのが一般的です。案内が来ない場合は人事部に確認してください。再雇用の場合は契約条件(給与・勤務時間・職務内容)が変更になるため、納得したうえで契約書にサインする必要があります。
定年退職届の書き方の基本
定年退職届は、自己都合退職の退職届とは本文の文言が異なります。基本構成は同じですが、退職理由の書き方と『就業規則第〇条』の引用が定年退職届ならではの特徴です。
定年退職届の基本構成
- 表題:『定年退職届』(または『退職届』)
- 書き出し:『私儀』または『私事』(謙譲表現)
- 本文:『就業規則第〇条の定めにより、令和〇年〇月〇日をもって定年退職いたします』
- 提出日:実際に提出する日(書面の中の退職日とは別)
- 所属部署と氏名 + 押印
- 宛名:会社の正式名称・代表取締役の役職と氏名 + 様/殿


本文の文言バリエーション
- 標準型:『このたび、令和〇年〇月〇日をもちまして満〇〇歳に達し、就業規則第〇条の定めにより、定年退職いたします』
- 事務的:『令和〇年〇月〇日をもって、就業規則第〇条により定年退職いたします』
- 報告型:『満〇〇歳に到達するため、就業規則第〇条に基づき、令和〇年〇月〇日をもって定年退職となりますことをお届けいたします』
『就業規則第〇条』の条番号は、就業規則を確認して書きます。手元になければ人事部に問い合わせてください。条番号がわからない場合は『就業規則の定めにより』とぼかしても受理されることがほとんどです。
定年退職届のテンプレート集(横書き・印刷向け)
ここでは横書き・印刷向けの定年退職届テンプレートを4パターン紹介します。会社・氏名・日付・条番号はお使いの内容に書き換えてください。手書きで縦書きで作成したい方は『定年退職届を手書き縦書きで書く方法』に専門の例文集(6パターン)と便箋・ペンの選び方をまとめているので、そちらをご覧ください。
退職届・退職願・辞表
定年退職届を手書き縦書きで書く方法|便箋・例文・レイアウトの完全ガイド
1. 標準パターン
2. 再雇用へ切り替える場合
3. 退職後の連絡先を明記する場合
4. 65歳定年で退職する場合
退職後の連絡先を書くかどうかは会社の慣習次第です。退職金の振込・源泉徴収票の郵送・健康保険の任意継続書類などのために連絡先を求められることがあるため、書いておくと事務手続きがスムーズです。
縦書きで提出する場合や、便箋にボールペンで手書きしたい場合は、紙面のレイアウトと縦書き専用の例文(6パターン)を『定年退職届を手書き縦書きで書く方法』にまとめています。本記事の横書き例文を縦書きに直すよりも、最初から縦書き向けに整えた例文を使うほうが見栄えが整います。
定年退職に伴う社内手続きの流れ
定年退職届を提出する前後で、複数の手続きが並行して進みます。あらかじめ流れを把握しておくと、漏れなく対応できます。
退職前(おおむね3〜6ヶ月前から)
- 人事部から定年退職に関する案内(再雇用・継続雇用の意向確認)が届く
- 再雇用希望の場合:契約条件(給与・勤務時間・職務内容)を相談
- 退職金の試算依頼・受取方法の確認(一時金/年金/併給)
- 有給休暇の残日数を確認し、消化スケジュールを立てる
- 後任者・引き継ぎ書類の準備
退職時(定年日前後)
- 定年退職届の提出(会社が求める場合)
- 退職金・最終給与の支払日確認
- 健康保険証・社員証・名刺・社用パソコン/携帯の返却
- 離職票の発行依頼(雇用保険受給予定の場合)
- 源泉徴収票の発行依頼
退職後(公的手続き)
- 健康保険:①任意継続(退職前の健康保険を最大2年間継続)/②国民健康保険/③家族の被扶養者になる、のいずれかを選択
- 年金:年金事務所で老齢年金の請求手続き(受給開始年齢到達時)
- 雇用保険:ハローワークで求職申込・基本手当の受給手続き(再就職を希望する場合)
- 確定申告:給与所得・年金所得の申告(必要な場合)
- 住民税:退職時期によって支払方法が変わる(一括徴収か普通徴収)
再雇用に切り替える場合は、退職と同時に新しい雇用契約を結び直すため、社会保険の同日得喪手続きが行われます。同日得喪により、再雇用後の給与に応じた標準報酬月額に切り替わり、社会保険料の負担が下がるケースがあります。
再雇用・継続雇用と定年退職届の関係
60歳以上の従業員について、企業が選択している雇用確保措置によって、定年退職届の必要性が変わります。再雇用制度を採用している企業では、いったん退職して新しい雇用契約を結び直すため、退職届の提出が手続き上必要になります。
| 雇用確保措置 | 退職の有無 | 定年退職届 | 備考 |
|---|---|---|---|
| 65歳までの定年引き上げ | 65歳まで退職なし | 65歳定年時に提出 | 実質的に65歳定年制 |
| 再雇用制度 | 60歳でいったん退職→再雇用契約 | 提出を求められることが多い | 雇用契約が変わるため記録のため |
| 勤務延長制度 | 退職せず雇用契約継続 | 原則不要 | 同一条件で勤務続行 |
| 定年廃止 | 退職タイミングは個人判断 | 通常の自己都合退職届 | 定年そのものがない |
再雇用契約は希望者全員が対象
高年齢者雇用安定法では、継続雇用制度(再雇用・勤務延長)の対象者は希望者全員とすることが原則です。健康上の理由などやむを得ない場合を除き、再雇用を希望する従業員を会社が拒否することは原則としてできません。
再雇用契約の条件は定年前と異なる場合がある
再雇用は新しい雇用契約として結び直されるため、給与・勤務時間・職務内容が定年前と変わるのが一般的です。給与は定年前の60〜70%程度に下がるケースが多く、その分だけ社会保険料も下がります。再雇用後の給与に応じた手取りを確認したうえで、契約書にサインしましょう。
再雇用後の給与が60歳到達時より大きく下がった場合、雇用保険から『高年齢雇用継続給付金』が支給されることがあります。60歳到達時の賃金月額と比べて支給対象月の賃金が75%未満に下がった場合に、その低下率に応じた支給率を支給対象月の賃金に乗じた金額が支給されます。支給率の上限は2025年3月31日までに60歳に達した方が最大15%、2025年4月1日以降に60歳に達した方は最大10%です。詳細はハローワーク・厚生労働省の公式ページでご確認ください。
定年退職届でやってしまいがちなNG例
- 本文を『一身上の都合により』にしてしまう → 定年退職は『定年により』『就業規則第〇条の定めにより』が正しい
- 提出日と退職日を取り違える → 提出日は届を出す日、退職日は雇用契約終了日(通常は定年到達日)
- 再雇用契約を結ぶのに退職届を出さない → 再雇用は新規契約のため、いったんの退職手続きが必要なケースが多い
- 就業規則第〇条の条番号を勝手に書く → 確認できなければ『就業規則の定めにより』と書く
- シャチハタで押印 → 認印を使う(朱肉を使うもの)
- 退職日を有給消化の都合でずらす → 定年退職の退職日は就業規則で定めた定年日(誕生日/誕生月の末日/年度末など)に固定されており、有給を使っても退職日自体は動かせない。有給を消化したい場合は定年日までに使い切るのが原則
- 提出を口頭だけで済ませる → 会社が求めるなら書面で残す
- 再雇用希望なのに退職届に再雇用希望を書かない → 案内に従って書く(書かないと処理が止まることも)
よくある質問
Q1. 定年退職届は本当に出さなくていい?
法律上は不要です。定年退職は自然退職として、就業規則で定めた定年年齢に達した時点で雇用契約が自動的に終了します。ただし、実務では多くの企業が記録・社会保険手続き・再雇用切替のために『定年退職届』の提出を求めるため、会社の指示があれば提出してください。
Q2. 自己都合退職と定年退職で書類は別物?
書類のフォーマットは似ていますが、本文の文言が違います。自己都合は『一身上の都合により』、定年退職は『定年により』『就業規則第〇条の定めにより』です。提出した書類は離職票の退職事由(自己都合/定年)にも反映されるため、書き方を間違えると失業給付の給付制限の有無が変わる可能性もあります。
Q3. 再雇用希望なのに退職届を求められた。意味があるのか?
再雇用は新しい雇用契約として結び直されるため、いったんの退職と新規雇用を明確に区切る必要があります。社会保険の同日得喪手続きにも、退職と再雇用の双方の事実が必要です。記録としても、新しい契約条件での再雇用に切り替えたことを文書で残す意味があります。
Q4. 就業規則の条番号がわからない
人事部に確認するのが最も確実です。確認できない場合は『就業規則の定めにより』と書いてもほとんどの場合受理されます。条番号がないと無効になるわけではありません。
Q5. 定年退職届と通常の退職届、どちらの表題を使う?
会社のひな形があればそれに従います。指定がない場合は『定年退職届』としたほうが事由が明確で、人事の処理もスムーズです。『退職届』としても受理されますが、本文に『定年により』『就業規則第〇条により』を必ず入れて、自己都合退職と区別できるようにしてください。
Q6. 定年退職後の手続きで一番大事なものは?
健康保険の切り替えです。退職と同時に会社の健康保険資格を喪失するため、①任意継続(退職前の健康保険を最大2年間継続)、②国民健康保険、③家族の被扶養者になる、のいずれかを選び、手続きが必要です。任意継続の手続き期限は退職翌日から20日以内と短いため、退職前から準備しておきましょう。
Q7. 定年退職でも『一身上の都合』と書く人がいるが間違い?
退職届として受理はされますが、書類のフォーマットとしては不正確です。離職票には会社が『定年』として退職事由を記入するため、書類の文言と離職票の事由が食い違う可能性があります。可能なら『定年により』『就業規則第〇条の定めにより』と書きましょう。
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コラム著者・編集者
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