契約書と請書(注文請書)の違い|法的効力・印紙税・どちらを使うべきか

契約書と請書(注文請書)の違い|法的効力・印紙税・どちらを使うべきか

結論:請書は一方の承諾文書、契約書は双方の合意文書。効力は基本的に同じ

「請書で済ませていいのか、それともきちんと契約書を交わすべきか」で迷ったときの結論は、両者で署名押印の形式は違うが、契約として成立すれば法的効力は基本的に同じということです。請書は受注者が一方的に「承ります」と差し入れる書面、契約書は発注者と受注者の双方が記名押印して取り交わす書面です。

契約は、申込みに対して相手が承諾したときに成立し、書面の作成は要件ではありません(民法522条、e-Gov 民法第522条)。注文書という申込みに対して受注者が請書で承諾すれば、請書だけでも契約は有効に成立します。「請書は契約書より効力が弱いのでは」という不安はよくありますが、片方だけが署名しているからといって効力が下がるわけではありません。

ただし、請書が承諾=契約成立として働くのは、注文書(申込み)の金額・納期などの内容をそのまま承諾した場合に限られます。条件を変えて承ける場合は承諾ではなく新たな申込みとみなされ(民法528条、e-Gov 民法第528条)、注文書と請書の内容がズレているとそのままでは契約が成立せず、後のトラブルの元になります。注文書と請書の内容が一致していることが前提です。

差が出るのは「効力の有無」ではなく「証拠としての残り方」です。双方が記名押印した契約書は、合意内容を当事者双方の意思として一通で立証しやすいのが強みです。請書は受注者側の承諾を示す書面なので、合意の全体像は発注者が出した注文書とセットで確認することになります。

スポンサーリンク

形式の違い(署名押印は請書=受注者のみ、契約書=双方)

もっとも分かりやすい違いは、誰が記名押印するかです。請書は受注者(仕事を受ける側)だけが記名押印して相手に渡します。契約書は発注者・受注者の双方が記名押印し、同じ書面を2通作って各自が1通ずつ保管するのが一般的です。

比較項目請書(注文請書)契約書
記名押印する人受注者のみ(片方)発注者・受注者の双方
作成・保管受注者が作成し発注者へ渡す(受注者は控えを保管)同じ内容を2通作り双方が1通ずつ保管
書面の性質承諾(注文を引き受ける意思表示)申込みと承諾の合意そのもの
条件の決め方原則、注文書の内容に合わせる双方で交渉して条文に落とし込む
カバーする範囲個別の注文1件が中心取引全体のルール(責任・解除など)まで定めやすい
請書(注文請書)と契約書の形式の違い

請書は注文書とペアで使うことが前提なので、記載内容は注文書に合わせ、品目・数量・金額・納期などを一致させます。一方の契約書は、損害賠償・契約解除・秘密保持・管轄裁判所といった「もしも」のルールまで条文として盛り込めるのが特徴です。請書1枚にそこまで書き込むことは通常なく、ここが両者の運用上の差になります。

「請書」「注文請書」「受注書」「発注請書」など名称はさまざまですが、いずれも受注者が注文を承諾したことを示す片方作成の書面という点では同じです。会社や業界で呼び方や使う範囲は変わるので、名称そのものに法的な優劣はありません。

印紙税の扱い(請書も契約書も課税対象になりうる)

「契約書は印紙が必要だが請書なら不要」と思われがちですが、これは誤解です。印紙税法上の「契約書」には請書も含まれており、請書も契約書も同じ基準で課税対象になりえます。印紙の要否は書類のタイトルではなく、中身が何の契約を証明しているかで決まります。

根拠は印紙税法の通則です。課税対象の「契約書」とは「契約証書、協定書、約定書その他名称のいかんを問わず、契約の成立……の事実を証すべき文書」をいい、ここに「念書、請書その他契約の当事者の一方のみが作成する文書」も含むと明記されています(印紙税法 別表第一 課税物件表の適用に関する通則5、国税庁「契約書の意義」)。受注者が一方的に作る請書でも、印紙税の世界では「契約書」と同じ扱いになるということです。

実際に印紙が必要になる代表例は、請負(工事・制作・加工・修繕など仕事の完成を約束する契約)に関する文書=第2号文書です。工事注文請書や物品加工注文請書はこの第2号文書に該当し、契約金額が1万円以上なら収入印紙が必要になります(国税庁 No.7102 請負に関する契約書)。請負契約書でも、請負の請書でも、金額に応じた同じ印紙税額が課されます。

契約金額(請負=第2号文書)印紙税額
1万円未満非課税
1万円以上 100万円以下200円
100万円超 200万円以下400円
200万円超 300万円以下1,000円
300万円超 500万円以下2,000円
500万円超 1,000万円以下1万円
1,000万円超 5,000万円以下2万円
出典:国税庁「No.7102 請負に関する契約書」(請負契約書・請負の請書に共通)

継続的な取引の基本ルールを定める内容(基本契約に相当する内容)を含む場合は、契約書でも請書でも第7号文書(継続的取引の基本となる契約書)として1通4,000円の印紙になることがあります(国税庁 No.7104)。なお、PDF・電子契約なら契約書・請書を問わず収入印紙が不要で、その分のコストを丸ごと削減できます(電磁的記録での交付は課税文書の作成に当たらないという国税庁の見解。出典:国税庁 電磁的記録に関する印紙税の取扱い)。

逆に、既製品の購入のような物品の売買契約は課税文書の一覧に含まれないため、その請書・契約書には印紙が要りません。ただし、オーダーメイド品の製作やシステム・ソフトウェアの開発などは、物の売買ではなく「請負(第2号文書)」とみなされ、請書でも記載金額1万円以上で収入印紙が必要になります(既製品やパッケージソフトの購入・ライセンス使用許諾は売買・使用許諾寄りで原則対象外。出典:国税庁 請負と売買の判断基準(1)プログラムの設計・開発契約書)。請書の印紙の要否・税額一覧・割印のやり方は、別の記事で詳しくまとめています。

注文請書の印紙ガイド|税額一覧・貼り方・割印の方法をまとめて解説
注文請書

注文請書の収入印紙|税額一覧・貼り方と割印・電子なら不要

注文請書に収入印紙は必要?請負契約なら必要・売買契約や電子(PDF・メール)交付なら不要です。第2号文書の印紙税額一覧、割印(割り印・消印)のやり方と使える印鑑、電子化で印紙代をゼロにする方法まで解説します。

記事を読む

どちらを使うべき?(少額・定型は請書、継続・高額・リスク高は契約書)

どちらが「正しい」というものではなく、取引のリスクと金額・継続性で選ぶのが実務的です。1回限りの定型的な発注なら注文書+請書で十分なことが多く、長く続く取引や金額が大きくトラブル時の損害が読みにくい取引は契約書が向いています。

  • 請書(注文書+請書)で足りやすいケース:金額が小さい、内容が定型的、単発の発注で、品目・数量・金額・納期が決まっていれば足りる取引。発注のたびに契約書を結ぶのが現実的でない場面。
  • 契約書を交わしたいケース:取引が継続する、金額が大きい、納期遅延や品質不良で生じる損害が大きい、責任分担・知的財産・秘密保持・中途解除など個別に取り決めたい条件がある場面。
  • 両方を併用するケース:先に取引全体のルールを基本契約書で結び、個々の発注は注文書+請書で回す。継続取引で広く使われる組み合わせ。

判断の軸をひと言にすると、「決めるべき条件が品目・数量・金額・納期で尽きるなら請書、それ以外の取り決めが必要なら契約書」です。請書か契約書かは会社のルールや相手との関係でも変わるので、社内の慣行や取引先の指定があればそれに合わせて構いません。

相手から渡された契約書に記名押印する前は、責任分担や解除条項など不利な条文がないかを確認しておくと安心です。署名前のチェック観点は次の記事にまとめています。

契約書の確認ポイント|署名・押印前にチェックすべき項目と危険な条文
契約書

契約書の確認ポイント|署名・押印前にチェックすべき項目と危険な条文

相手から渡された契約書に署名・押印する前の確認チェックリスト。当事者情報・業務範囲・対価・損害賠償・解除・印紙税まで、どこが危険でどう直すかを項目ごとに解説します。

記事を読む

注文書・注文請書との関係

ここまでは「双方が記名押印する契約書」と「受注者が一方的に出す請書」の違いを見てきました。これとは別に、取引の前半(注文書=申込み)と後半(注文請書=承諾)の違いという切り口もあります。注文書は買い手が「この条件で買います」と申し込む書面、注文請書は売り手が「承ります」と応じる書面で、発行する人が逆になります。

つまり「注文書 vs 注文請書」は、同じ請書系のやり取りを申込み側・承諾側に分けて比べる話で、本記事の「請書 vs 契約書」とは比べている軸が違います。注文書と注文請書の発行者・印紙税・発行タイミングの違いは、次の記事で比較表にまとめています。

注文請書と注文書の違い|発行者・法的効力・印紙税を比較表でわかりやすく解説
注文請書

注文請書と注文書の違い|発行者・法的効力・印紙税を比較表でわかりやすく解説

注文請書と注文書の違いを、発行者・法的性質・印紙税・発行タイミングの4軸で比較表にまとめました。発注書との関係や受注書・受注確認書との違いも整理しています。

記事を読む

そもそも請書を発行すべきか、省略してよいかで迷う場合は、必要なケース・不要なケースを具体例で整理した記事も参考にしてください。

注文請書は不要?|必要なケース・不要なケースを具体例で解説
注文請書

注文請書は不要?|必要なケース・不要なケースを具体例で解説

注文請書の発行は法的義務ではありませんが、実務上必要になるケースがあります。必要な場面・省略できる場面を具体例で整理し、代替手段まで解説します。

記事を読む

注文請書をテンプレートで作成する

使う書面が決まったら、あとはフォームに入力するだけです。TEMPLEX の注文請書テンプレートは、品目・数量・金額・納期などを入力すると、登録不要・無料でPDFをダウンロードできます。注文請書を作成する場合は 注文請書テンプレート からそのまま作成できます。

TEMPLEXの注文請書テンプレート
TEMPLEXの注文請書テンプレート

スポンサーリンク

注文請書をすぐに作成しませんか?

TEMPLEXなら、フォームに入力するだけで注文請書のPDFを作成・ダウンロードできます。

注文請書のテンプレートを見る

コラム著者・編集者

TEMPLEX編集チーム

TEMPLEX編集チームは、ビジネス文書の作成・管理に精通した実務経験者と技術ライターで構成されています。送付状・請求書・見積書をはじめとする各種ビジネス書類のフォーマットや書き方のノウハウを、わかりやすく丁寧にお届けします。「Office不要で誰でもすぐ使える」をコンセプトに、忙しいビジネスパーソンの書類作成をサポートします。

関連記事

新着記事