請求書の支払期日が過ぎた・記載がないとき|受け取った側の対応

まず結論:気づいたらすぐ連絡し、支払予定日を伝える
受け取った請求書の支払期日を過ぎてしまった、あるいは請求書に支払期日が書かれていない――支払う側として困ったときの対応を、ケース別にまとめます。
どちらのケースでも基本は同じです。気づいた時点ですぐ発行元に連絡し、いつ支払うかを自分から伝えること。放置がいちばん危険で、連絡なしの遅延は信用低下や取引停止につながります。逆に、先に一報を入れて支払予定日を示せば、たいていは穏便に済みます。
「もう期限を過ぎたから払わなくていいのでは」「期日が書いてないから急がなくていい」といった思い込みは禁物です。支払期日を過ぎても、請求書が期限切れになっても、代金を支払う義務は消えません。まずはこの前提を押さえたうえで、自分のケースに当てはまる項目を読んでください。
ケース1:支払期日を過ぎてしまったとき
うっかり処理が漏れていた、承認が間に合わなかった――支払期日を過ぎてしまったら、言い訳より先に「お詫び+いつ払うか」を伝えるのが最短です。相手が知りたいのは遅れた理由よりも「結局いつ入金されるのか」だからです。日付を明示すると相手も安心し、督促の手間をかけずに済みます。
連絡の前に、社内で請求書の金額・振込先・現実的に振り込める最短日を確認しておきます。支払予定日は「できるだけ早く」と曖昧にせず、必ず具体的な日付で伝えてください。約束した日をまた破ると信用を一気に失います。
意外と多いのが、支払期日が土日祝に重なり「金曜に前倒しか、翌営業日の月曜か」と迷ううちに遅れてしまうケースです。契約に特約がなければ、期日が休日のときは翌営業日に支払うのが一般的な扱いとされています(休日に取引しない慣習のもとでの黙示の合意と解されます)。迷ったら前倒しで金曜に振り込めば、少なくとも遅延にはなりません。
振り込むときの手数料にも注意します。契約で取り決めがなければ、振込手数料は支払う側が負担して全額を送金するのが無難です(民法485条でも弁済の費用は債務者負担が原則)。遅れてお詫びする立場でわざわざ手数料を差し引いて振り込むと、相手は請求額より少ない入金を確認することになり、印象をさらに悪くします。差し引いた分は未払い扱いになりかねない点でも避けるのが安全です。
提示した日にどうしても間に合わない、まとまった支払いが難しいといった場合は、支払期日の延長や分割払いを相談します。その際は「資金繰りの都合で」のような理由と、現実的なスケジュールをセットで伝えると話が進みやすくなります。延長幅は1〜2週間程度なら受け入れられやすい一方、長期や分割は相手の判断次第である点は理解しておきましょう。
延長や分割に応じてもらえたら、合意した新しい期日を必ずメールなど文章で残しておきましょう。口頭だけだと「言った・言わない」になりがちです。「○月○日までにお支払いする件、ご承諾ありがとうございます」と一文返しておけば、双方の認識がそろい、後のトラブルを防げます。
そして、約束した支払予定日に振込を済ませたら、「本日お振込みの手続きを完了しました。ご確認ください」と完了報告のメールを一本入れておきましょう。相手の経理は入金消込の確認がしやすくなり、遅れた件もきちんとクローズできて誠実な印象が残ります。行き違いで督促が再送されるのを防ぐ意味でも効果的です。
ケース2:請求書に支払期日が書かれていないとき
支払期日の記載がない請求書を受け取ったとき、まずすべきことは発行元に「いつまでに支払えばよいか」を確認することです。記載漏れか、口頭・契約で期日が決まっている前提なのか、相手に聞けば一度で解決します。自己判断で先延ばしにすると、相手が想定していた期日を過ぎてトラブルになりかねません。
では、確認できないまま放っておくとどうなるのか。法律上は、支払期日(期限)を定めていない債務は、相手から支払いの請求を受けた時点で初めて「支払いが遅れている(履行遅滞)」状態になるとされています(e-Gov法令検索 民法412条3項)。つまり、期日の記載がないからといって即座に遅延扱いになるわけではなく、相手の請求(催告)があって初めて遅延の責任が生じる、という整理です。
ただし、これは「請求されるまで払わなくてよい」という意味ではありません。代金を支払う義務そのものは取引が成立した時点で発生しており、いつでも請求され得る状態です。期日の記載がない場合でも、こちらから確認して支払うのが取引上の常識的な対応で、放置すれば結局は督促を受けます。
「請求書は納品から60日以内に支払う決まりがある」と書かれた解説を見かけますが、これは取適法(旧・下請法)の話で、すべての取引に当てはまるわけではありません。60日ルールが適用されるのは、発注者(委託側)と受注者(受託側)の資本金・従業員数が一定の関係にある委託取引に限られます(公正取引委員会 取適法の概要)。詳しくは支払期日の決め方の記事で整理しています。一般的なB2B取引では、契約や請求書で定めた期日、それもなければ請求を受けた時が基準になります。
勘違い注意:期限切れでも支払義務は消えない
支払う側がいちばん誤解しやすいのがここです。支払期日を過ぎても、請求書を受け取ってから時間が経っても、代金の支払義務は自動的になくなりません。請求書はあくまで「代金債権が存在する証拠」であって、有効期限が切れたら帳消し、という性質のものではないからです。
支払義務が消えるとすれば、消滅時効が完成し、相手がそれを主張(援用)した場合に限られます。売掛金などの代金債権の消滅時効は、2020年4月の民法改正後は原則として支払期日の翌日から5年です(民法166条1項。権利を行使できることを知った時から5年)。改正前にあった「飲食代1年」「商品代金2年」などの短期の時効は廃止され、原則5年に統一されました。
しかも、この5年は黙って待っていれば確実に成立するものではありません。相手が督促状(内容証明郵便)を送ったり、裁判上の請求をしたりすると時効の進行は止まります。さらに、こちらが「支払います」と認める(債務の承認)と、その時点で時効はリセット(更新)され、また一から数え直しになります。「払う」と言いながら払わずに時効を待つ、という対応は成り立たないと考えてください。
身に覚えのない請求や、二重請求の疑いがある場合は、支払う前に必ず内容を確認しましょう。請求書番号・取引日・発注内容・金額を自社の記録(発注書や納品書)と突き合わせ、合わない点があれば支払う前に発行元へ問い合わせます。あわてて払って二重払いになると、今度は自分が返金を求める側になり手間が増えます。
放置するとどうなる?支払う側が負うリスク
支払いを遅らせたまま放置すると、単に「気まずい」では済まないことがあります。代表的なのが信用の低下と取引の停止です。支払遅延が重なると、相手は前払いへの切り替えや納品の停止といった防衛策を取り、最悪の場合は取引そのものを打ち切られます。
金銭面でも負担が増えます。支払いが遅れた場合、相手は期日の翌日から遅延損害金を請求できます。利率は契約や請求書での取り決めがあればその率(年14.6%などと定められていることもあります)、なければ法定利率の年3%が適用されます(法務省 法定利率について)。少額でも長引けば積み上がるため、早く払うほど負担は小さくなります。
見落としがちなのが期限の利益の喪失です。契約書に「支払を遅滞したら残額を一括で支払う」といった条項(期限の利益喪失条項)があると、一度の遅延をきっかけに分割していた残金全額を即座に請求される恐れがあります。心当たりがあれば、取引基本契約の条項を確認しておきましょう。
支払いを続けると会社の資金繰り自体が苦しい、というレベルになっているなら、遅延を重ねる前に専門家(弁護士・税理士など)に相談するのが安全です。一社への遅延は他の支払いの遅れの予兆であることも多く、早めに全体を立て直したほうが選択肢が残ります。
立場が逆のとき(自分が請求した側で入金されない)
ここまでは「受け取った請求書を支払う側」の対応でした。反対に、自分が請求書を出した側で、取引先から入金されずに困っている場合は、催促のしかたや回収の進め方が変わります。督促メールの段階的な文例、遅延損害金の請求、内容証明郵便や法的手段までは別の記事にまとめています。
回収する側の具体的な進め方は入金催促メールの例文と売掛金の回収方法を参照してください。段階別の督促文例から、時効・内容証明・支払督促・少額訴訟までを扱っています。
支払う側が請求書を作るときは
今回は支払う側でも、別の取引では自分が請求書を出すこともあるはずです。受け取った請求書に支払期日がなくて困った経験があるなら、自分が発行するときは支払期日と振込先を必ず明記するようにしましょう。TEMPLEX なら、フォーム入力だけで支払期日入りの請求書PDFを無料で作成できます。請求書テンプレートはこちらからご利用いただけます。
コラム著者・編集者
TEMPLEX編集チーム
TEMPLEX編集チームは、ビジネス文書の作成・管理に精通した実務経験者と技術ライターで構成されています。送付状・請求書・見積書をはじめとする各種ビジネス書類のフォーマットや書き方のノウハウを、わかりやすく丁寧にお届けします。「Office不要で誰でもすぐ使える」をコンセプトに、忙しいビジネスパーソンの書類作成をサポートします。









