覚書の「甲」「乙」とは?3者以上の書き方と実名表記のルール

覚書の「甲」「乙」とは?3者以上の書き方と実名表記のルール

甲・乙は当事者の略称

覚書や契約書に出てくる「甲」「乙」は、当事者を本文中で短く呼ぶための略称です。冒頭で「○○株式会社(以下「甲」という)」と定義しておき、以降は実名の代わりに甲・乙で書くことで条文を読みやすくしています。

よくある誤解に「甲のほうが立場が上」というものがありますが、法的に甲が上位・乙が下位という決まりはありません。甲と乙を入れ替えても契約の効力には何の影響もなく、裁判所がタイトルや甲乙の順で当事者の優劣を判断することもありません。

甲乙の署名欄
甲乙の署名欄

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甲と乙はどちらが上か

結論として、法律上の優劣は一切ありません。ただし実務では、発注者・委託者・貸主など「お金を払う側」を甲にする慣習が広く定着しています。たとえば業務委託契約では委託者が甲・受託者が乙、不動産賃貸借では貸主が甲・借主が乙とするのが一般的です。

この慣習から「甲=偉いほう」という印象が生まれやすく、実際に取引先から「甲にしてほしい」と求められるケースもあります。しかしあくまで慣習なので、甲乙の順を入れ替えても契約の内容・効力は変わりません。相手の希望に合わせて甲乙を入れ替えることは、実務上よくある対応です。

覚書を自社で作成する場合、先に名前が出るほう(=甲)を相手方にする書き方も見られます。「お客様を立てる」意味合いですが、どちらでも法的な差はないので、社内ルールや先方の希望があればそれに従ってください。

3者以上の場合の書き方

当事者が3者以上になるときは、甲・乙のあとに丙(へい)・丁(てい)・戊(ぼ)と続けます。これは中国由来の「十干(じっかん)」の順番で、甲・乙・丙・丁・戊・己(き)・庚(こう)・辛(しん)・壬(じん)・癸(き)の10文字です。実務で戊より先を使うケースはまれですが、覚えておくと困りません。

略称読み順番
こう1番目
おつ2番目
へい3番目
てい4番目
5番目
覚書で使う当事者の略称と順番

3者間の覚書では、前文で3者全員を定義し、末尾の署名欄も3者分を設けます。以下に前文のテンプレートを示します。

3者間の覚書 前文テンプレート
覚書 ○○株式会社(以下「甲」という)、△△株式会社(以下「乙」という)および□□株式会社(以下「丙」という)は、○○に関し、下記のとおり合意した。 記 第1条(目的) 甲、乙および丙は、○○について以下のとおり取り決める。 第2条(甲の義務) 甲は、○○するものとする。 第3条(乙の義務) 乙は、○○するものとする。 第4条(丙の義務) 丙は、○○するものとする。 第5条(その他) 本覚書に定めのない事項については、甲、乙および丙が協議のうえ決定する。 本覚書成立の証として本書3通を作成し、甲乙丙署名押印のうえ各1通を保有する。 2026年○月○日 甲 ○○株式会社 代表取締役 ○○ ○○(印) 乙 △△株式会社 代表取締役 △△ △△(印) 丙 □□株式会社 代表取締役 □□ □□(印)

3者間では「本書3通を作成し」と部数も変わります。4者なら4通、5者なら5通です。署名欄の数と部数を揃え忘れるミスが多いので注意してください。

末尾の署名欄も、前文で定義した順番(上から甲・乙・丙)に合わせて記載するのが一般的です。横書きなら上から順に、縦書きなら右から順に並べます。

覚書が複数ページになる場合の契印の押し方や、複数通を作成する際の割印については、以下の記事で解説しています。

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甲乙を使わず実名で書いてもよいか

法的にまったく問題ありません。甲・乙の使用は法律上の義務ではなく、実名や役割名(委託者・受託者、売主・買主など)で記載しても覚書の効力は同じです。契約が有効であるために必要なのは、当事者が誰か明確に特定できることであり、略称のスタイルではありません。

実名のほうが向いている場面もあります。たとえば個人間の簡易な合意や、当事者が2者しかいない短い覚書であれば、甲・乙に置き換えるより実名をそのまま使うほうが誰の義務か一目で分かることもあります。逆に、条文が多く当事者名が何度も登場する長い覚書では、甲・乙に略したほうが読みやすくなります。

表記方法向いている場面注意点
甲・乙条文が多い覚書・契約書、3者以上が当事者の場合冒頭の定義文で実名と紐づけること
実名個人間の短い合意、当事者が2者だけの簡易な覚書本文中に実名が繰り返し出るため長文では読みづらくなりやすい
役割名(委託者・受託者など)業務委託・売買など役割が明確な取引覚書の種類ごとに呼び方が変わるため、汎用性は低い
甲乙・実名・役割名の使い分け

また、契約期間中に社名変更があった場合、甲乙方式なら前文の定義のみ読み替えれば済みますが、実名表記では本文中のすべての箇所を修正する必要があります。長期契約や合併の可能性がある取引では、甲乙方式のほうが変更に強い点も覚えておきましょう。

前文の定義文の書き方

甲・乙を使う場合、覚書の冒頭で「以下『甲』という」と定義する一文を置きます。この定義文は覚書全体の読み方を決める部分なので、正式名称と略称の対応を正確に書くことが大切です。

2者間の定義文(法人同士)
○○株式会社(以下「甲」という)と△△株式会社(以下「乙」という)は、○○に関し、下記のとおり合意した。
2者間の定義文(個人同士)
○○ ○○(以下「甲」という)と△△ △△(以下「乙」という)は、○○に関し、下記のとおり合意した。
2者間の定義文(法人と個人)
○○株式会社(以下「甲」という)と△△ △△(以下「乙」という)は、○○に関し、下記のとおり合意した。

ポイントは3つです。

  1. 正式名称をフルで書く(株式会社は前株・後株を正確に)
  2. 略称は二重カギ括弧「」で囲む(「甲」「乙」)
  3. 定義文の直後に覚書の目的(○○に関し)を簡潔に入れる

なお、TEMPLEXの覚書テンプレートでは「甲」「乙」の欄にそれぞれ会社名・住所・代表者名を入力するだけで、定義文が自動で組み立てられます。手入力で書き間違える心配がありません。

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TEMPLEXの覚書テンプレート
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コラム著者・編集者

TEMPLEX編集チーム

TEMPLEX編集チームは、ビジネス文書の作成・管理に精通した実務経験者と技術ライターで構成されています。送付状・請求書・見積書をはじめとする各種ビジネス書類のフォーマットや書き方のノウハウを、わかりやすく丁寧にお届けします。「Office不要で誰でもすぐ使える」をコンセプトに、忙しいビジネスパーソンの書類作成をサポートします。

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