稟議書・決裁書・起案書・伺い書・申請書の違い|比較早見表と回覧フロー図解

5つの書類を一目で比較
「稟議書」「決裁書」「起案書」「伺い書」「申請書」は、いずれも社内の意思決定を得るための書類ですが、一般的には対象者・タイミング・目的が異なります。まずは比較早見表で全体像を押さえ、社内で混同して使われている用語を整理しましょう。
| 書類 | 目的 | 対象者 | タイミング | 主な用途 |
|---|---|---|---|---|
| 起案書 | 原案の提案 | 提案者→上長 | 案件発生直後 | 新規案件・施策の提案 |
| 稟議書 | 関係者の承認を順に得る | 関係者全員(複数) | 起案後 | 物品購入・契約・採用など |
| 決裁書 | 最終承認権者の判断 | 決裁者1名 | 稟議承認後または直接 | 最終判断の証跡 |
| 伺い書 | 上長への判断仰ぎ | 直属上長 | 都度 | 軽微な相談・取扱判断 |
| 申請書 | 個人の事務手続き申請 | 担当部署(人事・総務等) | 都度 | 休暇・経費精算・社内手続き |
本記事は一般的な定義です。用語や運用は会社によって異なるので、最終的には自社の規程・前例に従ってください。
5書類は対象者・タイミング・目的が異なります。社内で「決裁書を作って」と言われても、実態は稟議書だったり伺い書だったりすることが多いので注意が必要です。
稟議書 ─ 関係者全員の承認を順に積み上げる
稟議書は、自分の権限では決められない事案について、関係者や上長に承認・決裁を求めるための文書です。下位の承認者から順に複数名で回覧し、合意を積み上げる形式が特徴です。会議を開かずに意思決定できるため、日本企業で古くから用いられてきました。
- 対象者: 関係者全員(部長・本部長・役員など複数)
- 回覧形式: 順次承認(フローが規程で定められる)
- 代表的な用途: 物品購入・システム導入・契約締結・採用・接待・出張
- 決裁の証跡: 各承認者の捺印または電子承認のタイムスタンプ
決裁書 ─ 最終承認権者ひとりの判断
決裁書は、稟議書の内容に対して最終的な判断を下すための書類、または決裁権限を持つ単独の役職者が直接判断するための書類です。複数の承認者を順に通すのではなく、決裁者ひとりで完結する点が稟議書と異なります。
- 対象者: 決裁者ひとり(社長・本部長・部長など、職務権限規程で定義)
- 形式: 決裁印 1 つで完結
- 用途: 規程上「○○円までは部長決裁」「○○円超は社長決裁」のように、金額・案件種別で決裁者が定められた事項
- 稟議書との関係: 稟議書の最終回覧者が決裁者である場合、稟議書 = 決裁書として運用するケースもある
「稟議書 = 関係者の合意形成プロセス」「決裁書 = 最終承認の証跡」と整理すると分かりやすいです。社内によって両者を兼ねるか、別書類として運用するかが分かれます。
起案書 ─ 提案の原案を整理する
起案書は、社内で実行したい事案やプロジェクトに関する原案をまとめた書類です。「これからこういうことをやりたい」という最初のステップで作成し、上長との合意形成や、稟議書の前段階の検討資料として使われます。
- 対象者: 直属上長/関係者(議論の出発点として)
- タイミング: 案件発生の直後、稟議書作成の前
- 用途: 新規施策・新規プロジェクト・組織変更の提案
- 稟議書との関係: 起案書で合意が取れた後、正式な稟議書を起案する流れが一般的
近年では「起案=稟議のスタート段階」と捉え、起案書と稟議書を同義に使う企業も増えています。社内の運用ルールに従いましょう。
伺い書 ─ 上長へ判断を仰ぐ軽量な書類
伺い書は、自分の判断では決められない案件について、直属上長に判断を仰ぐための書類です。稟議書よりも軽量で、複数人を回覧せず、上長ひとりへの相談・確認に使われます。
- 対象者: 直属上長
- 形式: A4半枚〜1枚程度の簡潔な書類
- 用途: 取扱判断、運用方針の確認、軽微な経費の支出可否
- 稟議書との関係: 軽微な案件は伺い書、組織を巻き込む案件は稟議書、と使い分け
申請書 ─ 個人が事務手続きを依頼する
申請書は、個人が会社の制度・規程に沿って手続きを依頼する書類です。意思決定を仰ぐというより、所定の要件を満たした申請を担当部署が処理する性格が強い点が、稟議書・決裁書と異なります。
- 対象者: 担当部署(人事・総務・経理)
- 用途: 有給休暇申請・育児休業申請・経費精算申請・住所変更届
- 判断の余地: 多くの場合、要件を満たせば自動的に処理される
申請書は決裁を仰ぐより「届出」「依頼」の性格が強いです。判断の余地が大きい案件(出張稟議・採用稟議)は、申請書ではなく稟議書を使うのが原則です。
稟議の標準フロー|起案 → 回覧 → 承認 → 決裁
稟議は、次の4ステップで進みます。各ステップで担当者が変わるため、「いまどの段階か」が分かるようにしておくと、停滞時の問い合わせがスムーズです。
- 起案 ─ 提案内容を稟議書に落とし込む(起案者)
- 回覧 ─ 作成した稟議書を関係者に閲覧してもらう(順次回覧)
- 承認 ─ 起案内容に対して合意・承諾する(職務権限規程に沿った順番)
- 決裁 ─ 決裁者が総合判断して最終承認を下す(決裁者)
| 金額帯 | 回覧経路(最終→決裁者) |
|---|---|
| 100,000円未満 | 起案者 → 課長(決裁) |
| 100,000円〜500,000円 | 起案者 → 課長 → 部長(決裁) |
| 500,000円〜3,000,000円 | 起案者 → 課長 → 部長 → 本部長(決裁) |
| 3,000,000円〜10,000,000円 | 起案者 → 課長 → 部長 → 本部長 → 経理部長 → 役員(決裁) |
| 10,000,000円超 | 起案者 → 課長 → 部長 → 本部長 → 経理部長 → 役員 → 社長(決裁) |
- 中小企業では10万円から課長決裁、100万円超で社長決裁というケースも一般的です。
- 経理部長が組み込まれる金額帯から先は法務部長も並行回覧することが多いです。
- 自社の「職務権限規程」または「決裁権限規程」で必ず確認してください。
職務権限規程と決裁権限の関係
「どの金額・案件までを誰が決裁できるか」は、各社の「職務権限規程」または「決裁権限規程」で定められています。これに沿って稟議の回覧順と決裁者が決まるため、稟議書を起案する前に必ず確認しましょう。
- 決裁権限の定め方は会社規模・業種により大きく異なる
- 金額(円)・案件種別(採用/契約/投資 等)の二軸で定義されることが多い
- 規程は数年に一度見直され、組織変更時にも改定される
- 決裁権限を超える案件は、必ず上位役職者まで回覧する必要がある
職務権限規程はイントラネットや管理本部のフォルダに格納されているのが一般的です。新人や異動直後は、最初の稟議を起案する前に一度目を通しておくと、回覧経路を間違えずに済みます。
実務での使い分けの目安
用語の定義は分かっても、実務では「これは稟議書?申請書?」と迷う場面が出てきます。次の指針を押さえると、ほぼ判断できます。
- 金額や契約期間が大きく、決裁判断に裁量が必要 → 稟議書
- 決裁権限規程で「単独決裁可」と定められている → 決裁書(または稟議書を1名回覧で運用)
- 新規プロジェクトの提案・施策議論 → 起案書(稟議の前段階)
- 上長に取扱を確認したい軽微な相談 → 伺い書
- 規程上の手続きを依頼する(休暇・経費精算など) → 申請書
迷ったら、社内の前例(過去の類似案件で何が使われたか)を検索するのが最短ルートです。多くの企業では、ワークフローシステムや共有フォルダで過去稟議が検索できます。
電子化で変わるところ・変わらないところ
ワークフローシステム導入により、紙を回覧するプロセスは大幅に簡略化されますが、職務権限規程に基づく承認順や決裁者は基本的に変わりません。電子化で本質的に変わるのは「スピード」と「検索性」です。
- 変わる ─ 物理的な回覧時間(数日 → 数時間)、過去稟議の検索(数十分 → 数秒)、出張中の承認、印刷・保管コスト
- 変わらない ─ 職務権限規程、回覧順、決裁者。なお稟議書本体は電子帳簿保存法の直接の対象外ですが、添付される契約書・請求書・領収書等の国税関係書類については電子帳簿保存法(真実性・可視性等)の保存要件が引き続き適用されます
コラム著者・編集者
TEMPLEX編集チーム
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