稟議書の書き方|件名・本文・例文と通る5つのコツ(5W2Hフレーム付き)

稟議書の書き方|件名・本文・例文と通る5つのコツ(5W2Hフレーム付き)

稟議書を書くシーン

稟議書(りんぎしょ)は、担当者一人の権限では決められない案件について、関係部署や上位役職者の承認を順に得るための社内文書です。会議を開かずに書面を回覧して意思決定できるため、日本企業で古くから用いられてきました。

次のような場面で稟議書を起案します。本記事では、それぞれのシーンに合わせた書き方を後半で個別記事として用意しているので、該当する場面の解説に直接ジャンプしてご利用ください。

  • PC・什器・備品・工具など物品を購入したいとき
  • 社内システムやSaaSを導入・更新したいとき
  • 新規取引先との契約・業務委託・NDA を結びたいとき
  • 出張や研修への参加、交通費・宿泊費を承認してもらいたいとき
  • 新卒・中途・派遣などの採用を申請したいとき
  • 取引先との会食・接待・忘年会など交際費を支出したいとき
  • 既存契約の更新・解約・条件変更など契約関係を動かしたいとき

本記事の例文はすべて「コピー」ボタンでそのまま貼り付けて使えます。記事末尾の CTA から TEMPLEX の稟議書テンプレートにアクセスすれば、フォーム入力で PDF まで一気に作成できます。

稟議書の必須項目(9つ)

稟議書には法定の様式はなく、社内規程に従って書きますが、決裁者が判断するために最低限必要な項目はほぼ共通しています。次の9項目を漏れなく入れましょう。

  1. 表題 — 「稟議書」「決裁書」「伺い書」など社内ルールに合わせる
  2. 文書番号 — 稟議第〇〇号(社内採番ルールに従う)
  3. 起案日 — 提出日ではなく起案を決めた日
  4. 起案者 — 部署・氏名(必要に応じて社員番号)
  5. 件名 — 何を・どうしたいかが一目で分かる具体表現
  6. 目的・背景 — なぜこの案件が必要なのか(事実・数字で)
  7. 内容詳細 — 品名・数量・金額・期間・発注先など条件
  8. 期待効果 — 定量・定性の両面で示す
  9. 添付資料 — 見積書・比較表・契約書案などの一覧

金額は税抜・税込を明示し、複数年契約は総額と年額を併記すると判断ミスを防げます。承認者が複数人いる場合は、回覧順に印影スペースを設けるのが一般的です。

5W2Hで書く ─ 承認率を上げるフレーム

稟議書の本文は、5W2H(When/Where/Who/What/Why/How/How much)に沿って組み立てると、決裁者が判断しやすい構成になります。多くの大手メディアやワークフローSaaSも、このフレームを稟議書執筆の基本として推奨しています。

  • When(いつ) — 実施時期・契約期間・発注希望日
  • Where(どこで) — 使用場所・配置部署・利用範囲
  • Who(だれが) — 利用者・対象者・契約相手
  • What(なにを) — 物品名・サービス名・契約内容
  • Why(なぜ) — 背景・課題・必要性(最重要)
  • How(どのように) — 導入手順・運用方法・選定理由
  • How much(いくらで) — 金額・内訳・支払条件

順番は「結論→Why→What/How much→How→効果→リスク」が読みやすい型です。決裁者は冒頭で「何を承認してほしいか」を把握し、続く理由と数字で判断します。

件名の書き方|NG/OK 各5例

件名は決裁者が一覧画面で最初に見る要素です。「対象+行為+目的」が含まれる具体表現にすると、開く前に概要が伝わり承認スピードが上がります。

通らない件名(NG例)

  • 「購入の件」 ─ 何を買うのか不明
  • 「契約について」 ─ 誰と何の契約か不明
  • 「ご承認のお願い」 ─ 案件名がない
  • 「業務改善について」 ─ 抽象的すぎる
  • 「○○の件」 ─ 略語・社内コードのみで第三者に伝わらない

通る件名(OK例)

  • 「営業部用ノートPC10台購入の件(合計88万円)」
  • 「株式会社○○との業務委託契約締結について(年額300万円)」
  • 「顧客管理システム△△の新規導入について(初年度220万円)」
  • 「2026年下期 大阪展示会出展に伴う出張稟議(4名・3日間)」
  • 「中途エンジニア1名採用の件(年収550万円・即戦力枠)」

件名に金額や期間など主要な数字を入れておくと、決裁者は本文を開かずに重要度を判断できます。社内ルールで金額表記が禁止されている場合は省きましょう。

本文の書き方|目的・内容・効果・リスクの4ブロック

本文は「目的」「内容」「効果」「リスク」の4ブロックで構成すると、決裁者が短時間で可否判断できます。各ブロックは2〜4行に収め、A4一枚に収まる分量を目安にしましょう。

1. 目的・背景

「なぜこの案件が必要か」を事実で示します。現状の課題、外部環境の変化、過去の経緯を、感情語ではなく数字とファクトで書くのがコツです。「現状○件の問い合わせに対し処理時間が△時間かかっており」など、具体的な数値を入れます。

2. 内容詳細

品名・型番・数量・期間・発注先・金額(税抜/税込)・支払条件などを箇条書きで列挙します。複数候補を比較した場合は、相見積もりの結果と選定理由をセットで書きましょう。価格妥当性が伝わります。

3. 期待効果

「工数が月○時間削減」「売上が○%改善見込み」など、できる限り定量化します。定量化が難しい場合でも「誰に・どんなメリットがあるか」「代替案と比べてどう優れているか」を具体的に書きます。投資(コスト)に対するリターンを意識しましょう。

4. リスクと対応策

想定されるリスク(コスト超過・運用負荷・セキュリティ・属人化など)と、その対応策・撤退条件をセットで書きます。ネガティブ要素を先回りで潰しておくことで、決裁者の疑問が消え、承認率が大きく上がります。

通る稟議書にする6つのコツ

  1. 結論を冒頭1文で書く ─ 「下記の通り○○について承認をお願い申し上げます」
  2. 数字とファクトで根拠を示す ─ 感覚語(「効率化が期待できる」など)を排除
  3. 比較・代替案を1つは入れる ─ 「他社A社・B社と比較し、価格・機能・サポートで○○が最適」
  4. リスクを自分から先に開示する ─ 「想定されるリスクは△で、対応策は□」
  5. 添付で詳細を補強する ─ 本文は要点、見積書・契約書案・比較表は別添
  6. 事前の根回しをしておく ─ 高額案件・他部署を巻き込む案件は、起案前に主要な決裁者へ口頭やチャットで概要を共有しておく

差し戻しの最多原因は「背景や必要性の説明不足」です。決裁者は現場を知らない前提で、初めて聞いた人にも伝わるレベルで書きましょう。社内用語や略称は初出時に正式名称を併記します。

根回しの実務|書類だけでは通らない案件の動かし方

稟議が通る最大のコツは、実は書類の出来だけではなく「事前の根回し」にあると、ワークフローSaaS各社の解説でも繰り返し指摘されています。決裁者が稟議書を初めて目にするタイミングで「聞いてないよ」となれば、内容の良し悪し以前に差し戻されかねません。特に高額案件や複数部門を巻き込む案件では、事前の対話があるかどうかで承認速度が大きく変わります。

根回しが必要な案件の見極め

  • 高額案件(社内基準で社長決裁・役員決裁になる規模)
  • 他部署の業務やリソースを巻き込む案件
  • 前例のない取り組み(新規事業・新規取引先・新制度導入)
  • リスクや反対意見が出そうな案件(人員整理・組織変更・大型投資)
  • 繁忙期と重なる起案(決裁者の余裕がない時期)

根回しの進め方

  1. 直属上長に最初に共有 ─ 起案前にラフな構想段階で意見を聞く
  2. 関係部門に早めに打診 ─ 経理・法務・情シスなど影響を受ける部門に概要を伝える
  3. 反論が出そうな決裁者を優先 ─ 想定される懸念点を先に潰しておく
  4. 口頭・チャット・15分のミーティングで十分 ─ 詳細資料は不要、要点のみ
  5. 根回しで得たフィードバックを稟議書に反映 ─ 「○○の懸念に対し△△で対応」と明記

根回しのコツは「反論が出そうなところにリソースを集中する」ことです。普段からコミュニケーションが取れていて提案内容を理解してくれそうな決裁者にまで根回しする必要はありません。逆に、これまで関わりのない部門・役職者を巻き込む案件こそ、起案前の対話が決定的に重要になります。

電子稟議の保存要件と紙との違い

近年は紙の回覧をやめ、ワークフローシステムや電子稟議サービスで承認を取る企業が増えています。電子化は承認スピードと検索性を大きく改善しますが、保存要件には注意が必要です。

  • e-文書法 — 民間企業が法令で保存義務を負う書類の電子保存を認める法律。稟議書も対象に含まれます
  • e-文書法の保存4要件 — 見読性(鮮明に表示・印刷できる)/完全性(タイムスタンプ等で改ざん防止)/機密性(アクセス制御)/検索性(必要な書類を検索できる)
  • 電子帳簿保存法 — 国税関係書類(請求書・領収書等)の電子保存ルールを定める法律。稟議書本体は直接の対象外ですが、添付の見積書や契約書は対象になることがあります

稟議書本体に法定の保存期間はありませんが、添付される契約書(法人税法上7年)や取締役会議事録(会社法10年)に合わせて、稟議書も同程度の期間を社内規程で定める運用が一般的です。社内規程で電子稟議が認められているか、保存期間と改ざん防止が整備されているかを確認してから運用しましょう。紙と電子のハイブリッド運用も可能ですが、回覧順や捺印の取扱を社内で明文化しておく必要があります。

基本例文|A4一枚で完結する標準フォーマット

目的別の例文は本記事後半の各記事で詳しく扱いますが、まずは「これさえあればどの案件にも応用できる」という標準フォーマットを掲載します。〇〇部分を案件に合わせて書き換えてください。

稟議書 標準フォーマット(A4一枚)
稟議書 文書番号: 稟議第○○-○○○号 起案日: 2026年○月○日 起案部署: ○○部 ○○課 起案者: ○○ ○○ 件名: ○○の購入について(合計○○○,○○○円) 下記の通り承認を賜りたく、お願い申し上げます。 1. 目的・背景 現在、○○業務において△△の課題があり、月○時間の工数が発生しております。 本案件により、現状の課題を解消し、業務効率の改善を図ります。 2. 内容 - 品名・サービス名: ○○ - 数量: ○個 - 単価: ○○,○○○円(税抜) - 合計金額: ○○○,○○○円(税抜)/○○○,○○○円(税込) - 発注先: 株式会社○○ - 納期: 2026年○月○日 - 支払条件: 月末締め翌月末払い 3. 選定理由 A社・B社・C社の3社で比較した結果、価格・機能・サポート体制を総合し、株式会社○○が最も妥当と判断いたしました(比較表を添付)。 4. 期待効果 - 月○時間の工数削減(年間○○○万円相当) - ○○業務の処理スピード○%向上 - 顧客対応の品質向上 5. 想定リスクと対応策 - 導入初期の運用負荷 → ○月までを試行期間とし、撤退条件を「△△」と定めます - 担当者の習熟期間 → 社内勉強会を○月に2回実施します 6. 添付資料 - 見積書(株式会社○○、A社、B社、C社) - 機能比較表 - 導入スケジュール 以上、ご審議のほどよろしくお願い申し上げます。

上記フォーマットはどの目的の稟議でも応用できる骨格です。物品購入・システム導入・契約締結・出張・採用・接待など、シーンごとに適した「目的・効果・リスク」の書き方は次節の各記事を参照してください。

目的別の稟議書の書き方ガイド

案件の種類によって、強調すべきポイントや決裁者が気にする情報が変わります。それぞれの目的別に、コピーして使える例文と書き方のコツを別記事にまとめました。

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物品・備品購入の稟議書|書き方と例文10選(PC・什器・複合機・消耗品)

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システム・SaaS導入の稟議書|書き方と例文(ROI・セキュリティ・撤退条件)

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契約締結の稟議書|業務委託・NDA・新規取引・更新・解約の例文5選

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出張稟議書|国内・海外・展示会・研修参加の例文5選と旅費精算

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接待交際費の稟議書|書き方と例文5選(取引先会食・忘年会・香典・ゴルフ)

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稟議書テンプレート集|用途別12種のコピペ例文とPDF即発行(Word/Excel不要)

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稟議書・決裁書・起案書・伺い書・申請書の違い|比較早見表と回覧フロー図解

よくある質問

稟議書はどのくらいの分量で書くべき?

本文はA4一枚に収まる分量が理想です。決裁者は1日に何件もの稟議を見るため、本文は要点だけ簡潔にまとめ、詳細な根拠資料は別添にします。読み手の時間を奪わない構成が、結果的に承認率を上げます。

稟議が通らないときの主な原因は?

最多の原因は「背景や必要性の説明不足」です。次いで他社比較の欠落、効果が定量化されていない、リスクへの言及がない、金額の内訳が不明、といった点が差し戻しの典型パターンです。決裁者の立場で「この情報で判断できるか」を自問してから提出しましょう。

稟議書と決裁書・起案書はどう違う?

稟議書は複数の承認者を順に回覧して合意を積み上げる形式、決裁書は最終承認権者ひとりの判断を証明する書類、起案書はそのもとになる原案、と整理されることが多いです。詳しい違いと使い分けは、本記事末尾の「稟議と決裁・起案の違い」記事をご覧ください。

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コラム著者・編集者

TEMPLEX編集チーム

TEMPLEX編集チームは、ビジネス文書の作成・管理に精通した実務経験者と技術ライターで構成されています。送付状・請求書・見積書をはじめとする各種ビジネス書類のフォーマットや書き方のノウハウを、わかりやすく丁寧にお届けします。「Office不要で誰でもすぐ使える」をコンセプトに、忙しいビジネスパーソンの書類作成をサポートします。

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