契約締結の稟議書|業務委託・NDA・新規取引・更新・解約の例文5選

契約締結の稟議書|業務委託・NDA・新規取引・更新・解約の例文5選

契約稟議で必ず問われること

契約締結の稟議書は、物品購入の稟議と違い「将来発生する権利義務」を約束する重大な意思決定です。法務・経理・現場の各部門が次の項目を確認するため、本文または添付(契約書ドラフト)でこれらを明示する必要があります。

  1. 契約相手 ─ 商号・所在地・代表者・反社チェック実施有無
  2. 契約金額 ─ 一括/月額/成果報酬の別と総額
  3. 契約期間 ─ 開始日・終了日・自動更新条項の有無
  4. 業務範囲 ─ 何を委託/提供するか、成果物の定義
  5. 解除事由 ─ 中途解約条件、解約予告期間、違約金
  6. 責任範囲 ─ 損害賠償の上限、不可抗力、知的財産権の帰属
  7. 秘密保持 ─ NDA同時締結の有無、秘密保持期間
  8. 支払条件 ─ 締め日・支払日・遅延利息

本記事の例文は「コピー」ボタンですべて貼り付けて使えます。契約相手・金額・期間を書き換えるだけで、社内提出に耐える稟議文面が完成します。

法務チェックの定番8項目

稟議書の本文に「法務確認の論点」を整理して書いておくと、法務部門との往復が大幅に減ります。次の8項目をチェックリスト形式で添付すると、決裁者と法務の双方が短時間で判断できます。

  • 契約期間と自動更新条項 ─ 自動更新あり/なし、不更新通知の期限
  • 中途解約権 ─ 双方/一方/なし、予告期間(一般に1〜3か月前)
  • 損害賠償の上限 ─ 契約金額相当、年額相当、上限なしの3パターン
  • 知的財産権の帰属 ─ 制作物・成果物の権利が誰に帰属するか
  • 再委託の可否 ─ 事前承諾なしの再委託禁止が一般的
  • 秘密保持の範囲 ─ 期間・対象情報・契約終了後の存続
  • 反社条項 ─ 暴力団排除条例対応の有無
  • 管轄裁判所 ─ どの地方裁判所が管轄か(自社所在地が望ましい)

下請法・フリーランス新法の対象になるかを確認する

委託先がフリーランス(個人事業主)や自社より資本金の小さい企業の場合、「下請法(下請代金支払遅延等防止法)」または「フリーランス・事業者間取引適正化等法(フリーランス新法)」の対象となり、発注側に書面交付・支払期日・買いたたき禁止等の追加義務が課されます。法務が特に厳しくチェックする論点なので、稟議の段階で適用有無を整理しておきましょう。

下請法(資本金で判定)

  • 資本金1,000万円超の法人が、それ以下の事業者または個人に発注すると、ほとんどのケースで対象となります(公正取引委員会)
  • 対象取引:製造委託・修理委託・情報成果物作成委託・役務提供委託の4類型
  • 発注側の主な義務:書面交付、60日以内の支払、書類保存(2年)、遅延利息支払
  • 禁止行為:受領拒否・支払遅延・減額・買いたたき・返品・購入強制 など
  • 2026年1月1日施行の改正で名称が「取適法(中小受託取引適正化法)」に変更され、「特定運送委託」も追加対象に

フリーランス新法(資本金にかかわらず適用)

  • 正式名称:特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律(2024年11月1日施行)
  • 対象:資本金にかかわらず、従業員を使用しているすべての発注事業者と、個人事業主・1人法人(特定受託事業者)の取引
  • 発注側の主な義務:契約条件の書面等による明示、納品から60日以内の報酬支払、ハラスメント防止、就業環境整備
  • 禁止行為:受領拒否、報酬減額、返品、買いたたき、購入強制、不当な経済上の利益提供要求、不当な給付内容変更/やり直し(6か月以上の継続業務委託の場合)

下請法とフリーランス新法は重複適用されることがあります(資本金1,000万円超の法人が個人事業主に役務提供委託する場合など)。判断に迷う場合は、稟議書本文に「委託先:個人事業主/資本金○○○万円」と記載し、法務に適用法令の確認を依頼しましょう。

例文1|業務委託契約の締結

業務委託契約締結の稟議書
件名: 株式会社○○との業務委託契約締結の件(年額3,600,000円) 下記の通り、株式会社○○と業務委託契約を締結いたしたく、ご承認をお願い申し上げます。 1. 目的・背景 当社Webサイトの運用・保守業務について、社内リソース不足により外部委託が必要となりました。複数社で比較検討の結果、実績・体制・価格の総合評価で株式会社○○を選定しました。 2. 契約内容 - 契約形態: 業務委託契約(準委任) - 委託業務: コーポレートサイトの月次運用・保守、月間更新10件まで - 契約相手: 株式会社○○(東京都○○区、代表取締役 ○○) - 契約期間: 2026年○月○日〜2027年○月○日(1年間/3か月前通知の自動更新) - 委託料: 月額300,000円(税抜)/年額3,600,000円 - 支払条件: 月末締め翌月末払い(請求書受領後、銀行振込) 3. 選定理由 A社・B社・C社で比較し、対応速度SLA・夜間対応の体制・価格の総合でA社を選定(比較表添付)。 4. 期待効果 - サイト障害時の対応時間を社内体制比50%短縮 - 社内リソースを本来業務(戦略立案)に集中 - 年額360万円の固定費化により、案件単位の見積もり依頼工数を削減 5. 法務チェック項目(契約書ドラフト確認済) - 中途解約: 双方 3か月前通知で可能、違約金なし - 損害賠償上限: 委託料の年額相当 - 知的財産権: 成果物の著作権は当社に帰属 - 再委託: 当社の事前書面承諾を必要とする - 秘密保持: 別途NDA を同時締結、契約終了後3年間有効 - 反社条項: 含む(暴排条例対応済) - 下請法/フリーランス新法対応: 委託先は資本金○○○万円の法人(または個人事業主)。当社(資本金○○○万円超)からの役務提供委託につき下請法/フリーランス新法の対象。書面交付・60日以内支払・買いたたき禁止等の規定を遵守 - 管轄: 東京地方裁判所 6. 想定リスクと対応策 - ベンダーの倒産リスク → 法人登記・決算情報を確認済(直近3期黒字) - 移行リスク → 解約時のデータ・ノウハウ移管を契約書 第○条に明記 以上、ご審議のほどよろしくお願い申し上げます。

例文2|秘密保持契約(NDA)の締結

NDA締結の稟議書
件名: 株式会社○○との秘密保持契約(NDA)締結の件 下記の通り、株式会社○○と秘密保持契約を締結いたしたく、ご承認をお願い申し上げます。 1. 目的・背景 2026年下期に検討中の業務提携案件「△△」について、当社の○○技術情報および先方の□□事業情報を相互に開示する必要が生じます。検討段階での情報漏洩リスクを防ぐため、業務提携契約に先行してNDAを締結します。 2. 契約内容 - 契約形態: 秘密保持契約(双方向 NDA) - 契約相手: 株式会社○○ - 締結日: 2026年○月○日(予定) - 契約期間: 締結日から1年間 - 秘密保持期間: 契約終了後さらに3年間 - 契約金額: なし(金銭支払なし) 3. 開示する情報 - 当社から: ○○技術仕様、開発ロードマップ - 先方から: △△事業の市場データ、顧客リスト概要 4. 法務チェック項目 - 秘密情報の定義: 書面・口頭ともに「秘密」と表示・通告したもの - 例外事項: 公知情報、独自開発情報、第三者から正当に取得した情報 - 目的外使用の禁止: 業務提携検討の目的に限定 - 複製の制限: 業務上必要な範囲に限定、契約終了時に返還または廃棄 - 損害賠償: 通常損害および合理的範囲の逸失利益 - 反社条項: 含む 5. 想定リスクと対応策 - 当社情報の流出 → 秘密表示・アクセス制限の徹底、開示ログを管理 - 検討終了後の情報処理 → 契約終了時に返還/消去証明を取得 以上、ご審議のほどよろしくお願い申し上げます。

例文3|新規取引先との基本契約

新規取引基本契約締結の稟議書
件名: 株式会社○○との取引基本契約締結の件(想定年間取引額12,000,000円) 下記の通り、株式会社○○と取引基本契約を締結いたしたく、ご承認をお願い申し上げます。 1. 目的・背景 新規取引先候補として株式会社○○を選定し、年間1,200万円規模の継続取引を見込みます。個別契約のたびに条件交渉を行うのは非効率なため、共通条件を定めた基本契約を締結します。 2. 契約内容 - 契約形態: 取引基本契約(売買・業務委託の双方を想定) - 契約相手: 株式会社○○(資本金○○○○万円、設立○年、従業員○○名) - 契約期間: 2026年○月○日〜2027年○月○日(1年間/3か月前通知の自動更新) - 想定年間取引額: 12,000,000円(個別契約による) - 支払条件: 月末締め翌月末払い・銀行振込 3. 取引相手の確認事項 - 商号・所在地・代表者: 確認済 - 反社チェック: 当社「反社チェック規程」に基づき、商業登記・公開情報・帝国データバンク信用情報を確認、問題なし - 与信枠: 月額200万円を上限に設定(経理部承認済) 4. 法務チェック項目 - 個別契約の優先関係: 個別契約と基本契約の条件が矛盾する場合は個別契約優先 - 検収: 納入後14日以内、無回答の場合は合格とみなす - 瑕疵担保責任: 検収後6か月 - 損害賠償上限: 個別契約金額相当 - 解除事由: 重大な契約違反、信用不安、反社該当 - 反社条項: 含む - 管轄: 東京地方裁判所 5. 想定リスクと対応策 - 与信リスク → 月次で帝国データバンク情報を更新、与信枠超過時はアラート - 自動更新の見落とし → 契約管理台帳に登録、満了3か月前に法務部から通知 以上、ご審議のほどよろしくお願い申し上げます。

例文4|契約更新(条件変更あり)

契約更新の稟議書
件名: 株式会社○○との保守契約 条件変更の上での更新の件(年額1,440,000円) 下記の通り、株式会社○○との保守契約を、条件を変更の上で更新いたしたく、ご承認をお願い申し上げます。 1. 目的・背景 2025年○月に締結した株式会社○○とのシステム保守契約が2026年○月で満期を迎えます。利用規模拡大に伴い、保守対象台数を増やし、対応時間も延長する条件で更新します。 2. 主な変更点 - 保守対象: サーバ5台 → サーバ8台 - 対応時間: 平日9-18時 → 平日9-21時、土曜9-18時 - 月額費用: 80,000円 → 120,000円 - 契約期間: 1年 → 1年(自動更新) 3. 契約内容(更新後) - 契約相手: 株式会社○○ - 契約期間: 2026年○月○日〜2027年○月○日 - 月額費用: 120,000円(税抜)/年額1,440,000円 - 増額理由: 対象台数増(5→8台、+60%)、対応時間延長 4. 選定の妥当性 - 他社B社(年額1,800,000円)、C社(年額1,560,000円)と相見積もり実施 - 既存運用ノウハウの蓄積、移行コスト不要を考慮し、A社継続が最適 5. 想定リスクと対応策 - 価格交渉余地 → 3年契約による10%値引きを別途交渉中 - 自動更新の管理 → 契約管理台帳に新条件で登録 以上、ご審議のほどよろしくお願い申し上げます。

例文5|契約解約

契約解約の稟議書
件名: 株式会社○○とのライセンス契約 解約の件(月額50,000円) 下記の通り、株式会社○○とのソフトウェアライセンス契約を解約いたしたく、ご承認をお願い申し上げます。 1. 目的・背景 2024年○月に契約した株式会社○○の○○ソフトについて、当初想定した利用部門での活用が進まず、稼働率が直近6か月で20%以下となっています。社内利用ニーズの再調査の結果、代替手段(既存システムでの代替)で運用可能と判断したため、解約します。 2. 解約内容 - 契約相手: 株式会社○○ - 契約名: ○○ソフトウェアライセンス契約 - 月額費用: 50,000円(税抜)/年額600,000円 - 解約予定日: 2026年○月○日(契約上の解約通知期限内) - 通知方法: 書面通知(契約書 第○条)/3か月前通知必須 - 違約金: なし 3. 解約理由 - 利用率: 6か月平均20%未満(社内ログより) - 当初想定したROIが未達(年300時間削減見込み → 実績60時間) - 代替手段: 既存の△△システムで類似機能をカバー可能 4. 期待効果 - 年額600,000円のコスト削減 - ライセンス管理工数の削減 5. 想定リスクと対応策 - データ移行 → 解約日までに既存利用部門のデータをCSV出力、社内DBへ取り込み完了予定 - 利用ユーザーへの周知 → 解約日2か月前に部門長経由で通知済 - データ削除 → ベンダーから解約後30日以内に削除証明書を取得 6. 添付資料 - 過去6か月の利用率データ - 代替手段の検証結果 - 契約書(解約条項該当箇所) 以上、ご審議のほどよろしくお願い申し上げます。

契約稟議で差し戻されるパターン

  • 契約書ドラフトが未添付 ─ 必ず契約書案を添付し、レビュー済の旨を記載
  • 自動更新条項の有無が書かれていない ─ 「自動更新あり、不更新は3か月前通知」など明記
  • 解除事由・違約金が不明 ─ 中途解約条件は必ず本文に書く
  • 反社チェックが未実施 ─ 新規取引時は商業登記・信用情報・反社情報を確認
  • 知的財産権の帰属が不明 ─ 業務委託では特に重要、本文に明記
  • 管轄裁判所が相手方の所在地 ─ 紛争時の不利を避けるため自社所在地に交渉

契約稟議は法務部と並行して進めることが多いです。法務レビュー結果(修正提案)を稟議の添付資料に含めると、決裁者は安心して承認できます。法務未確認のドラフトでの稟議は差し戻されやすいので注意。

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コラム著者・編集者

TEMPLEX編集チーム

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