発注書の書き方|必須項目・注文書との違い・電帳法対応まで実務担当者向けガイド

発注書とは|注文書との違い
発注書とは、商品・原材料・制作物・業務などを外部に依頼するとき、発注する側が「この条件で発注します」と受注者に書面で伝える書類です。発注書と注文書は名称が違うだけで、法的な扱いも記載内容もまったく同じです。企業の慣習で使い分けることがありますが、書類としての役割に差はありません。
- 発行する人 — 買い手(発注者・代金を支払う側)
- 受け取る人 — 売り手(受注者・商品やサービスを提供する側)
- 発行のタイミング — 見積書を確認し、正式に発注することが決まったとき
- 受け取った側の返答 — 注文請書(受注確認書)を返送して受注の意思を示す
業界ごとの呼び方の傾向として、製造業・物販では「注文書」、IT・広告・建設業の業務委託では「発注書」と呼ぶケースが多く見られます。ただし法律上の区別はないため、社内やテンプレートの表題はどちらを使っても問題ありません。
TEMPLEX では「発注書」「注文書」の両方のテンプレートを用意しています。表題を変えるだけなので、取引先の慣行に合わせて選んでください。
発注書を発行する流れ(見積から請求まで)
発注書は取引全体の中で「見積の承諾」にあたる書類です。以下の流れの中で、ステップ2が発注書の出番です。
- 見積書の受領 — 受注者から見積書を受け取り、金額・条件を確認する
- 発注書の送付 — 内容に合意したら、発注書を作成して受注者に送る
- 注文請書の受領 — 受注者から「承りました」の意思を示す注文請書が届く
- 納品・検収 — 商品・成果物が届いたら、数量・品質を検査して検収書を発行
- 請求書の受領 — 受注者から請求書が届く
- 支払い — 請求書の支払条件に従って代金を支払う

発注書と請求書・納品書はそれぞれの発注番号で紐付けて管理します。発注書の番号体系(例: HC-2026-0001)を社内で統一しておくと、経理や購買の照合作業が格段にスムーズになります。
発注書の必須記載項目と任意項目
発注書には法定の様式はありませんが、取引条件を明確にし、トラブルを防ぐために以下の12項目は必ず記載しましょう。
必須12項目
- 表題 — 「発注書」または「注文書」
- 宛先 — 受注者の正式な会社名+「御中」(個人宛は「様」)
- 発行者情報 — 自社の会社名・住所・電話番号・担当部署・担当者名
- 発行日 — 発注書を作成した年月日
- 発注番号 — 社内の採番ルールに従った一意の番号
- 品名・仕様 — 型番・サイズ・カラーなど識別に必要な情報を含める
- 数量 — 単位(個・式・セット等)を明記
- 単価 — 税抜か税込かを明示
- 金額 — 数量 × 単価の合計(小計・消費税・合計金額を整理)
- 納期 — 「○年○月○日必着」など具体的な日付
- 納品場所 — 住所・建物名・部署名まで
- 支払条件 — 締め日・支払日・支払方法(銀行振込など)・手数料負担

取適法の対象となる取引では、手形払いが禁止されています。支払方法は銀行振込などに限定し、受領日から60日以内に代金全額を支払う必要があります。
あると便利な任意5項目
- 検収方法・検収期限 — 「納品後○日以内に検収」など
- 分納の可否 — 数回に分けた納品を認めるか
- キャンセル・変更の条件 — 納期○日前までの変更可否
- 瑕疵対応 — 不良品の交換・返品条件
- 基本契約書への参照 — 「○○基本取引契約書に基づく」
また、消費税の税率(10%・8%)を明示しておくと、後続の請求書やインボイスとの整合が取りやすくなります。
コピペで使える発注書の例文
すぐに使える発注書の本文例です。「コピー」ボタンで取得し、自社の情報に書き換えてご利用ください。
物品購入の発注書(標準)
業務委託の発注書(制作・開発系)
制作や開発などの業務委託では、業務内容・修正対応の範囲・著作権の帰属を明記しておくとトラブルを防げます。
継続取引向け発注書(基本契約参照型)
【重要】取適法(旧下請法)とフリーランス新法の遵守
発注業務で最も注意すべき法律が、2026年1月に改正施行された「中小受託取引適正化法」(通称:取適法)と、2024年11月に施行された「フリーランス新法」です。これらは、立場の強い発注者が弱い受注者に不当な要求をすることを防ぐための法律です。
取適法(旧下請法)の「4条書面」義務
一定の資本金基準または従業員数基準を超える企業が、中小企業や個人事業主に発注する場合、発注時に「4条書面(旧3条書面)」として以下の項目を明示する義務があります。これを怠ると、たとえ悪意がなくても行政指導や勧告の対象となります。
- 発注者(委託事業者)の名称
- 受注者(中小受託事業者)の名称
- 発注日
- 給付(業務)の内容
- 納期(給付の期日)
- 納品場所(給付を受領する場所)
- 検査完了の期日(検査を行う場合)
- 代金の額(または算定方法)
- 代金の支払期日(受領から60日以内)
取適法への改正により、PDFメール送付などの電子交付に「受注者の事前承諾」が不要になりました。ただし、受注者から書面(紙)での交付を求められた場合は、紙で発行する義務があります。
フリーランス新法(2024年11月施行)への対応
フリーランス(特定受託事業者)に業務委託をする場合、「取引条件の明示(3条義務)」が必要です。内容は取適法とほぼ共通していますが、資本金基準に関わらず「従業員を使用していない個人」への発注すべてが対象になる点に注意が必要です。
発注書に収入印紙は必要?
結論から言うと、通常の発注書に収入印紙は不要です。発注書は発注者からの一方的な「申込み」にあたるため、印紙税法上の課税文書には該当しません。
例外:収入印紙が必要になる3つのケース
ただし、以下のケースでは発注書が「契約書」としての性質を持つと判断され、契約金額に応じた収入印紙が必要になります。
- 基本契約で「発注書の交付をもって契約成立」と定めている場合 — 一方の申込みだけで自動的に契約が成立する取り決めがある場合、発注書が契約成立の証拠文書になる
- 見積書に基づく申込みで、別途注文請書を作成しない場合 — 見積書への合意を発注書の交付だけで示し、受注側が請書を返さない運用の場合
- 発注書に発注者・受注者の双方が署名押印している場合 — 双方の合意が1枚の書面上にあるため、実質的な契約書と判断される
PDF・メールなど電子的に発行した発注書には、金額にかかわらず印紙税はかかりません。紙の発注書で収入印紙が必要になるケースでも、電子発行に切り替えれば印紙代を削減できます。
保存期間と電子帳簿保存法
発注書は取引の証憑として、法律で定められた期間の保存が必要です。
| 区分 | 保存期間 | 根拠法 |
|---|---|---|
| 法人(原則) | 7年 | 法人税法施行規則 |
| 法人(欠損金繰越のある年度) | 10年 | 法人税法施行規則 |
| 個人事業主(青色申告) | 7年 | 所得税法施行規則 |
| 個人事業主(白色申告) | 5年 | 所得税法施行規則 |
| 消費税の課税事業者 | 7年 | 消費税法 |
電子帳簿保存法への対応
2024年1月から、メールやPDFなど電子的に授受した発注書は、電子データのまま保存することが義務化されました。紙に印刷して保存する運用は認められません。電子保存にあたっては、次の3つの要件を満たす必要があります。
- 改ざん防止措置 — タイムスタンプの付与、または訂正・削除の記録が残るシステムでの保存
- 検索要件 — 「取引年月日」「取引金額」「取引先名」の3項目で検索できること
- 見読性の確保 — ディスプレイやプリンタで速やかに出力できる状態にしておくこと
発注書のメール送付文例
発注書をPDF添付で送る際のメール文例です。件名には発注番号を必ず入れると、先方の管理がスムーズになります。
標準の送付メール(物品購入)
業務委託の送付メール(制作・開発系)
差替え(訂正)のメール
数量や金額を間違えた場合は、旧発注書の番号を明記し、変更箇所を一覧で示すと先方が照合しやすくなります。
発注キャンセルのメール
注文請書の受け取りと返送
注文請書(ちゅうもんうけしょ)とは、受注者が「注文を承りました」と発注者に返す書類です。発注書と注文請書がセットで揃うと、双方の合意が書面で証明されるため、契約上のトラブルリスクが下がります。
注文請書は受注者が発注書の内容を転記して返送するのが一般的です。なお、紙の注文請書は請負契約に該当する場合、契約金額に応じた収入印紙が必要です(1万円未満は非課税、PDF・メールなどの電子発行なら不要)。
よくあるトラブルと改訂の運用
発注書まわりで起きやすいトラブルと、対処のポイントをまとめます。
数量・金額の間違い
発注後に数量ミスや単価の転記ミスに気づいた場合は、旧発注書と同じ番号に「-R1」などの改訂記号を付けた差替え版を発行します。旧版の破棄を依頼するメールも忘れずに(上記の差替えメール文例を参照)。
納期の変更
納期の前倒し・延長はまず受注者に相談し、合意が得られたら差替え発注書を発行します。口頭やメールだけの変更は、後日「聞いていない」と言われるリスクがあるため、必ず書面で残すことが重要です。
発注のキャンセル
受注者がすでに製造・手配に着手している場合、一方的なキャンセルは損害賠償請求の対象になりえます。取適法(旧下請法)の適用取引では、正当な理由のない発注取消しは「不当な給付内容の変更」として禁止されています。キャンセルが必要なときは、上記のキャンセルメール文例のように、まず製造・手配状況を確認するのが安全です。
よくある質問
Q. 発注書と注文書は使い分けるべき?
法的な違いはないため、社内ルールや取引先の慣行に合わせればOKです。迷ったら取引先に「御社ではどちらの呼び方を使っていますか」と確認するのが確実です。
Q. 発注書に印鑑は必要?
法律上は不要ですが、商慣習として角印の押印を求める取引先は多くあります。PDF発行の場合は、電子印鑑(画像)を貼り付けるか、押印欄を空けて出力する運用が一般的です。
Q. 発注書はメールやPDFで送ってもいい?
問題ありません。メール添付・PDF送付・システム上の電子発注のいずれも法的に有効です。電子データで送った発注書は、電子帳簿保存法の要件に従い電子のまま保存してください。
Q. 取適法(旧下請法)の対象取引かどうかの判断基準は?
自社と受注者の資本金または従業員数の組み合わせで判断します。たとえば、資本金3億円超の法人が資本金3億円以下の事業者に製造委託する場合は取適法の対象です。2026年の改正で従業員数基準(製造委託等は300人超、役務提供委託等は100人超)も追加されました。該当するかの判断が難しい場合は、公正取引委員会の相談窓口や弁護士・行政書士に相談することをおすすめします。
Q. 発注書の保存期間は?
法人は原則7年(欠損金繰越のある年度は10年)、個人事業主は5年(課税事業者は7年)です。上記の保存期間テーブルを参照してください。
コラム著者・編集者
TEMPLEX編集チーム
TEMPLEX編集チームは、ビジネス文書の作成・管理に精通した実務経験者と技術ライターで構成されています。送付状・請求書・見積書をはじめとする各種ビジネス書類のフォーマットや書き方のノウハウを、わかりやすく丁寧にお届けします。「Office不要で誰でもすぐ使える」をコンセプトに、忙しいビジネスパーソンの書類作成をサポートします。








