発注書と注文書の違いは?|法的な扱い・業界慣行・使い分けを実例で解説

結論:発注書と注文書は名称の違いだけ
発注書と注文書は法的にまったく同じ書類です。民法・商法のどちらにも「発注書」「注文書」という法律用語はなく、どちらも買い手(発注者)が売り手(受注者)に対して「この条件で依頼します」と申し込む書面にすぎません。記載する項目(宛先・品目・数量・金額・納期・支払条件)も共通です。
違いがあるのは呼び方の慣行だけです。企業や業界によって使い分ける傾向はありますが、どちらを使っても法的な効力に差はありません。
なぜ2つの呼び方があるのか
歴史的には、商取引で「注文する」という日本語が先にあり、そこから「注文書」が生まれました。その後、業務委託や外注が一般化する中で、「発注する」という表現が広まり「発注書」という呼び方が定着したと考えられています。
法律の条文で見ると、民法の請負契約では仕事を依頼する側を「注文者」と呼び、建設業法でも「注文者」「注文書」の語が登場します。一方、取適法(旧下請法)では「委託」という表現が用いられ、経理実務や購買管理の現場でも「発注」が多用されており、どちらも公的に使われている用語です。
業界別の呼び方の傾向
法律上の区別はありませんが、業界ごとに使いやすい呼び方は異なります。自社や取引先が以下のどれに近いかで選ぶと自然です。
| 業界 | よく使われる呼び方 | 背景 |
|---|---|---|
| 製造業・物販 | 注文書 | 商品を「注文する」という表現が定着している |
| 建設業 | 注文書 | 建設業法で「注文書・請書」の交付が規定されている |
| IT・広告・制作 | 発注書 | 業務を「発注する」という言い回しが一般的 |
| 印刷業 | 注文書(伝統的)/ 発注書(最近) | 印刷物の注文から、デザイン発注へ範囲が拡大 |
| フリーランス | 発注書 | 業務委託契約に基づく発注が多い |
取引先が「注文書」と呼んでいるのに「発注書」を送ると、些細ながら違和感を与えることがあります。迷ったら取引先の使っている呼び方に合わせるのが無難です。
法的な位置づけ(売買契約と請負契約)
取引の法的な性質は「売買契約」か「請負契約」に大別されますが、どちらの場合でも発注書(注文書)の位置づけは同じで、買い手側の「申込み」を書面化したものです。
| 売買契約 | 請負契約 | |
|---|---|---|
| 内容 | 既製品・規格品を買う | 仕事の完成を依頼する |
| 典型例 | 原材料・部品の購入 | ソフトウェア開発・デザイン制作・建設工事 |
| 発注書の呼び方 | 注文書が多い | 発注書が多い |
| 印紙税 | 原則不要 | 注文請書に必要な場合あり |
注意が必要なのは印紙税です。請負契約に該当する取引では、受注者が返す注文請書に収入印紙が必要になる場合があります(1万円未満は非課税、PDF・メールなど電子発行なら不要)。逆に、売買契約(既製品や物品の購入など)の注文請書であれば原則として印紙税は非課税です。発注書自体はどちらの契約類型でも原則として印紙不要です。
注文請書とのセット運用
発注書(注文書)を送ったら、受注者から「承りました」という意思表示の書面が返ってきます。これが注文請書(ちゅうもんうけしょ)です。「受注確認書」「受注書」と呼ぶ企業もありますが、役割は同じです。
- 発注書 → 買い手が「この条件で買います」と申し込む
- 注文請書 → 売り手が「その条件で承ります」と回答する
- 2つが揃う → 双方の合意が書面で証明される
注文請書の返送は法律上の義務ではありませんが、合意の証拠を残す意味で実務上はセット運用が推奨されます。特に金額の大きい取引や業務委託では、注文請書がないと「言った・言わない」のトラブルになりやすくなります。
「発注書兼注文請書」の運用パターン
1枚の書類で発注と受諾を完結させる「発注書兼注文請書」という運用もあります。発注者欄と受注者欄を1枚に設け、それぞれが署名・押印して完了です。少額・定型の取引で書面のやり取りを減らしたいときに便利です。
印紙税の扱い(発注書=注文書で同じ)
発注書と注文書は同一の書類なので、印紙税の取り扱いも完全に同じです。通常の発注書・注文書は課税文書に当たらず、収入印紙は不要です。
ただし、「発注書兼注文請書」のように双方が署名押印する書面や、基本契約で「発注書で契約成立」と定めている場合は課税文書に該当します。また、PDFやメールなど電子的に発行すれば印紙税は一切不要です。
電子帳簿保存法の扱い(名称に関係なし)
「発注書」「注文書」どちらの名称であっても、PDFやメール、クラウドサービスなど電子データで送受信した場合は、電帳法の「電子取引」に該当します。紙に印刷して保存するのではなく、電子データのまま保存する義務があります(2024年1月〜完全義務化)。
保存にあたっては「取引年月日・金額・取引先」で検索できるようにし、改ざん防止措置を講じる必要があります。ファイル名を「YYYYMMDD_取引先名_金額_番号.pdf」の形式で統一しておくと対応しやすくなります。この要件は書類の名称が「発注書」でも「注文書」でもまったく同じです。
TEMPLEX のテンプレートで表題を切り替える
TEMPLEX では「発注書」と「注文書」のテンプレートを両方用意しています。フォームの入力内容は同じで、表題が異なるだけです。取引先が「注文書」を使う慣行であればそちらを、「発注書」を求める場合はそちらを選んでください。
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