発注書に収入印紙は必要?原則不要・例外で必要になるケースと印紙税額を解説

発注書に収入印紙は原則不要
結論からお伝えすると、通常の発注書(注文書)に収入印紙は不要です。発注書は発注者が「この条件で発注します」と一方的に伝える「申込み」の文書であって、契約の成立を証明する「契約書」ではないためです。印紙税がかかるのは法律で決められた課税文書だけで、申込みにすぎない発注書はそこに含まれません。
ただし例外があります。発注書でも、その書面が「契約書」としての性質を持つと判断されると課税対象になります。要否を整理すると次のとおりです。
| ケース | 収入印紙 | ポイント |
|---|---|---|
| 通常の発注書(紙) | 不要 | 一方的な申込みの文書で、契約書ではない |
| 契約書としての性質を持つ発注書(紙) | 必要 | 基本契約で自動成立/見積書に基づく申込み/双方の押印など |
| 発注書をPDF・メール・FAXで発行 | 不要 | 電子データは「文書」に当たらず、内容を問わず印紙不要 |
つまり「迷ったらとりあえず貼る」必要はありません。まず例外に当てはまるかを確認し、当てはまらなければ貼らなくてよいというのが正しい判断順です。例外の見分け方は次章以降で具体的に説明します。
「発注書」と「注文書」は名称が違うだけで、印紙の扱いも完全に同じです。表題が「注文書」でも、判断の考え方はこの記事のとおりで変わりません。
呼び方の違いは、次の記事で解説しています。

発注書と注文書の違いは?|法的な扱い・業界慣行・使い分けを実例で解説
発注書と注文書の違いを、法的な扱い(同義)と業界慣行(製造業・建設業・IT業)の両面から整理。注文請書とのセット運用、印紙税の要否、電帳法対応まで現場で迷わない判定基準をまとめました。
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なぜ発注書には印紙がいらないのか
理由は、契約は「申込み」と「承諾」がそろって初めて成立するからです。発注書を出した時点では、相手(受注者)がまだ「承りました」と答えていません。発注書は契約成立の一歩手前、発注者側の意思表示だけが書かれた片方の書面にすぎないのです。
印紙税法は、課税する文書を別表(課税物件表)で限定列挙しています。そして国税庁も、「契約の申込みの事実を証明する目的で作成される単なる申込書等は、通常、課税対象にはなりません」と明示しています(国税庁 No.7118)。発注書はこの「単なる申込書等」に当たるため、原則として印紙はいりません。
これに対し、受注者が「注文を承りました」と返す注文請書は「承諾」の文書なので、内容が請負契約なら課税対象になります。発注書(申込み・原則不要)と注文請書(承諾・請負なら課税)で扱いが逆になる点は、後半でもう一度整理します。
例外:発注書に収入印紙が必要になるケース
発注書でも、書面の記載内容から「契約の成立を証明する文書(=契約書)」と判断されると課税されます。国税庁の取扱い(印紙税法基本通達第21条/No.7118)では、申込書・注文書等が契約書になる場合として次の3つが挙げられています。タイトルが「発注書」でも、中身がこれらに当てはまると課税対象です。
ケース1:双方の署名または押印がある
1枚の発注書に発注者と受注者の双方が署名または押印している場合は、その書面上で両者の合意(申込みと承諾)が成立しているため、実質的な契約書とみなされます。
見分け方はシンプルです。発注書に受注者の押印欄(確認印・受領印など)があり、そこに相手の印が入って返ってくる運用なら要注意。自社の押印だけで相手の押印欄がない発注書は、このケースには当たりません。
ケース2:相手の見積書等に基づく申込みだと書いてある
「貴社お見積書No.◯◯に基づき発注します」のように、受注者が出した見積書(申込みの誘引)に対する承諾だと読み取れる記載があると、その発注書は「見積りへの承諾=契約成立」を証明する文書と判断され、課税されます。
ただし国税庁の取扱いでは、その発注書に「別途、注文請書を作成する」旨が書かれている場合は除外されます。請書を別に交付する運用なら、見積番号を引用していても発注書自体は課税対象になりません。見分け方は「見積書を引用 + 請書を返さない(発注書だけで取引が動く)」かどうかです。
また、ここで課税されるのは「見積りの内容どおりに発注する=承諾」の場合です。見積書から金額や条件を変えて発注するときは、承諾ではなく新たな申込み(民法上の反対申込み)と考えられ、契約成立を証明しないため原則どおり印紙は不要と考えられます。見積書を引用していても、中身が見積りと食い違っている発注書は課税対象になりにくい、と理解しておくとよいでしょう。
ケース3:基本契約で「発注書の交付=契約成立」と決めている
あらかじめ結んだ基本契約書・規約・約款などに「個別の発注書を出せば自動的に契約が成立する」と定められている場合、その発注書は契約成立を証明する文書になり課税対象です(このケースも、別途請書を作成する旨が記載されていれば除外されます)。
見分け方は、基本契約書に「注文書の交付をもって契約成立」という条項があるか。継続取引の発注書で「◯◯基本取引契約書に基づき発注します」と書く運用は多いので、基本契約側の文言を一度確認しておくと安全です。
上の例外に当てはまっても、売買契約(既製品の購入など)の発注書なら印紙は不要です(理由は次章)。課税されるのは主に「請負」に当たる発注書が契約書化したケースです。
印紙が必要な場合の印紙税額
発注書が契約書とみなされても、いくらの印紙を貼るかは「その契約が請負か売買か」で大きく変わります。ここを取り違えると、本来不要なのに貼ってしまう/必要なのに貼り忘れる、の両方が起こります。
売買契約の発注書 → 金額にかかわらず不要
既製品の購入・原材料の仕入れなど物品の売買契約は、そもそも印紙税の課税物件表に含まれていません。そのため、たとえ売買の発注書が契約書化しても(双方押印などがあっても)、金額にかかわらず印紙は不要です。請負と売買は、契約の目的が「仕事の完成・結果物の引渡し」にあるか「物の所有権移転」にあるかで区別します(国税庁 請負と売買の判断基準)。
請負契約の発注書 → 第2号文書(200円〜)
工事・制作・開発・修繕など「仕事の完成」を依頼する発注書が契約書とみなされると、「第2号文書(請負に関する契約書)」に当たり、契約金額に応じた印紙が必要です。税額は次のとおりです。
| 契約金額 | 印紙税額 |
|---|---|
| 1万円未満 | 非課税 |
| 1万円以上 100万円以下 | 200円 |
| 100万円超 200万円以下 | 400円 |
| 200万円超 300万円以下 | 1,000円 |
| 300万円超 500万円以下 | 2,000円 |
| 500万円超 1,000万円以下 | 1万円 |
| 1,000万円超 5,000万円以下 | 2万円 |
| 5,000万円超 1億円以下 | 6万円 |
| 1億円超 5億円以下 | 10万円 |
| 5億円超 10億円以下 | 20万円 |
| 10億円超 50億円以下 | 40万円 |
| 50億円超 | 60万円 |
| 契約金額の記載のないもの | 200円 |
税額の基準となる「契約金額」は、消費税額が区分記載されていれば税抜金額で判定できます。たとえば「請負金額100万円・消費税等10万円」と分けて書けば契約金額は100万円(印紙税200円)ですが、「110万円(税込)」とだけ書くと110万円で判定され400円になります。区分記載で税抜判定できるのは第1号・第2号・第17号文書に限られます(国税庁 No.7124)。
発注書が「建設工事の請負契約書」に当たる場合は、令和9年(2027年)3月31日まで軽減措置があり、契約金額100万円超の税額が上の本則より下がります(国税庁 No.7102)。
3か月超の継続取引を定める内容 → 第7号文書(一律4,000円)
個別の発注ではなく、単価・支払条件など継続的な取引の基本ルールを定める内容で、契約期間が3か月を超える(または更新の定めがある)営業者間の文書に当たる場合は、「第7号文書(継続的取引の基本となる契約書)」として一律4,000円の印紙が必要です(国税庁 No.7104)。通常の個別発注書であれば、ここには当たりません。
上の税額表は契約書化した発注書(紙)の話です。請負の発注書でもPDF・メールで発行すれば印紙はかかりません。高額な工事ほど節約効果が大きく、たとえば契約金額3,000万円なら1通あたり2万円の印紙代がゼロになります。
印紙を貼ったら消印(割印)を忘れずに
発注書に収入印紙を貼ったら、必ず消印をします。現場では「割印」と呼ばれることが多いですが、印紙税法上の正式名称は「消印」です。本来、割印は2通以上の文書にまたがって押し関連性を示すもの、消印は印紙と書面にまたがって押し再利用を防ぐもので別物ですが、収入印紙に押すこの処理はどちらの呼び方でも同じものを指します。やり方は、印紙と書面の両方にまたがるように印鑑を押す(または署名する)ことが印紙税法第8条第2項で義務づけられています。
- 印紙を発注書の空いている場所(右上・左上など)に貼る
- 印紙の縁と書面にまたがるように印鑑を押す(上下左右どこでも可)
- 実印・角印・認印・シャチハタ、ボールペンでの署名でも有効

注意したいのが過怠税です。本来貼るべき印紙を貼らなかった場合は、本来の印紙税額の3倍(印紙税額+その2倍)が徴収されます(印紙税法第20条/国税庁 No.7131)。ただし税務調査で指摘される前に自主的に申し出れば1.1倍に軽減されます。また、印紙を貼っても消印を忘れると、その印紙の額面と同額の過怠税がかかります。貼ったら必ず消印まで済ませましょう。
ここでの消印(割印)の考え方は、印紙を貼るすべての書類で共通です。注文請書(受注側)の割印のやり方・使える印鑑・誰が押すかは、後半で紹介する注文請書の記事にまとめています。
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PDF・メールで発行すれば印紙はかからない
発注書をPDFで作成し、メールやクラウドで送信する場合は、内容が契約書に当たるケースでも印紙税はかかりません。印紙税が課税するのは「紙の文書」であり、電子データ(電磁的記録)は印紙税法上の「文書」に該当しないためです(国税庁の質疑応答事例)。
ポイントは「紙の現物を相手に渡さないこと」です。PDFをメールで送った後に、同じ内容の紙の発注書を別途持参・郵送すると、その紙には印紙税がかかります。印紙代を確実にゼロにするには、交付を電子データだけで完結させてください。FAX送信も電子データの送信として同じ扱いです。
TEMPLEX なら、発注書をブラウザ上で作成してそのままPDFでダウンロードできます(発注書テンプレートは登録不要・無料)。ダウンロードしたPDFをメールで送れば、契約書化する内容でも印紙はいりません。電子で授受した発注書は電子帳簿保存法の対象になるため、データのまま保存してください。
注文請書(受注側)とは扱いが逆になる
受発注でよく混同されるのが、発注書と注文請書で印紙の扱いが逆という点です。発注書は「申込み」なので原則不要、注文請書は「承諾」なので請負契約なら課税対象になります。
| 書類 | 性質 | 印紙の扱い(紙) |
|---|---|---|
| 発注書(注文書) | 申込み | 原則不要(例外で課税) |
| 注文請書 | 承諾 | 請負契約なら必要(売買は不要) |
そのため、発注した側(発注書)には印紙がいらなくても、受注した側が返す注文請書には印紙が必要になることがあります。請書側の税額一覧・割印・電子発行での節約は別記事にまとめています。

注文請書の印紙ガイド|税額一覧・貼り方・割印の方法をまとめて解説
注文請書に収入印紙は必要?請負契約なら必要・売買契約なら不要です。第2号文書の印紙税額一覧、割印(消印)のやり方と使える印鑑、PDF交付で印紙代を節約する方法まで解説します。
記事を読むよくある質問
Q. 注文書も発注書と同じ扱い?
同じです。「発注書」と「注文書」は名称が違うだけで、印紙の判断も変わりません。どちらも原則は申込みの文書として不要、例外で課税という考え方です。
Q. 発注書と契約書をセットで作ったら印紙はどうなる?
契約書(請負契約書など)には課税文書として印紙が必要ですが、それに付随する発注書まで二重に貼る必要はありません。発注書が単なる申込みにとどまるなら、課税されるのは契約書側だけです。
Q. 発注書に印紙を貼らないとどうなる?
そもそも不要な発注書なら、貼らなくても問題ありません。一方、本来必要な(契約書化した請負の)発注書に貼り忘れると、本来の税額の3倍の過怠税が徴収されます(自主申告なら1.1倍)。心配なら電子発行にすれば、貼り忘れのリスク自体がなくなります。
Q. 発注書がいくらだと印紙が必要?
金額だけでは決まりません。まず「契約書化しているか」「請負か売買か」で要否が決まり、課税される請負の場合に金額に応じた税額(1万円未満は非課税、1万円以上100万円以下は200円〜)が決まります。売買は金額にかかわらず不要です。なお金額の判定は、消費税額を区分記載していれば税抜金額が基準になります。
Q. 収入印紙はどこで買える?
郵便局と法務局なら1円〜10万円の全種類が購入できます。コンビニでも買えますが、主に200円の収入印紙しか扱っていない店が多いため、高額の印紙が必要なときは郵便局・法務局を利用してください。
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コラム著者・編集者
TEMPLEX編集チーム
TEMPLEX編集チームは、ビジネス文書の作成・管理に精通した実務経験者と技術ライターで構成されています。送付状・請求書・見積書をはじめとする各種ビジネス書類のフォーマットや書き方のノウハウを、わかりやすく丁寧にお届けします。「Office不要で誰でもすぐ使える」をコンセプトに、忙しいビジネスパーソンの書類作成をサポートします。








