顛末書の書き方【社内向け】|上司・人事への報告に使える構成と例文

社内向けの顛末書を書くことになったあなたへ
社内で発生したトラブルやミスについて顛末書(てんまつしょ)の提出を求められたとき、最初に押さえておきたいのは「顛末書は事実報告の文書であって、謝罪文ではない」ということです。顛末書の主な目的は、起きたことを客観的に記録し、原因と再発防止策を共有することにあります。謝罪・反省を中心に書く始末書とは、書く目的そのものが違います。
本記事では、社内(直属上司・部長・人事・経営層)に向けて顛末書を提出する人向けに、5W1Hで事実を整理する基本構成、提出先別の文面の差、ケース別の例文(軽微な業務ミス/システム障害/顧客クレーム/情報漏洩)を、コピーしてそのまま使える形でまとめます。社外向け顛末書(取引先・顧客あて)は『顛末書の書き方【社外向け】』で別途扱います。
顛末書と反省文の違い、始末書との使い分けは『始末書と反省文・顛末書の違い』に整理しています。社外向けの顛末書を書く場合は『顛末書の書き方【社外向け】』をご参照ください。
顛末書は「事実報告」|謝罪文ではないという前提を押さえる
社内向け顛末書で最初に意識すべきは、文書の性格そのものです。顛末書は「事の顛末(始まりから終わりまで)」を客観的に報告することが目的で、提出先(上司・人事・経営層)はその情報をもとに、再発防止策の妥当性、原因究明の精度、必要に応じて懲戒処分や組織的対応の判断を行います。
書き手が「申し訳ありませんでした」を繰り返しても、読み手が知りたい情報(何が・なぜ・どう収束したか)は埋まりません。
| 観点 | 顛末書 | 始末書 |
|---|---|---|
| 主目的 | 事実関係と原因・再発防止策の報告 | 謝罪・反省と再発防止の誓約 |
| 主な提出先 | 社内(上司・人事・経営層)が中心 | 社内(経営層あて)/必要に応じて社外 |
| 懲戒処分との関係 | 懲戒処分とは独立した報告文書 | 譴責処分の内容として提出されることが多い |
| 求められるトーン | 客観・事実中心・感情を抑える | 反省と謝罪を明確に伝える |
| 業務命令の対象 | 業務命令としての提出指示は適法とされやすい | 謝罪を含むため強制には慎重な議論がある |

顛末書は事実報告の文書であるため、業務上必要な範囲で提出を命じることは正当な業務命令の対象になりうると整理されることが多いとされています(一方で、謝罪・反省の意思表示を伴う始末書については、提出強制の限界が議論されてきました)。社内向け顛末書は「業務報告書類の一種」と捉えて、感情ではなく情報を埋めることに集中するのが安全です。
始末書の提出を断りたい場合の整理は『始末書を拒否できる?書かせる会社の法的根拠と対処法』にまとめています。顛末書は事実報告という性格上、拒否のロジックは異なります。
社内向け顛末書の基本構成|5W1Hで事実を埋める
社内向け顛末書の構成は、見出しを大きく変える必要はありません。読み手(上司・人事)が短時間で事実を把握できるよう、5W1Hの順序で項目を並べ、本文は箇条書きを基本に整えます。長い散文より、要素を分けた箇条書きのほうが、再発防止策を検討する側にとっても扱いやすくなります。
| 項目 | 5W1Hの対応 | 書く内容 |
|---|---|---|
| タイトル | — | 「○○の件に関する顛末書」と内容が一目でわかる件名 |
| 宛名 | — | 提出先の役職+氏名(例:「総務部長 ○○ ○○ 様」) |
| 提出日・提出者 | — | 提出日/所属部署/氏名/押印(電子は省略可) |
| 発生日時 | When | 「令和○年○月○日 ○時○分頃」のように具体的に |
| 発生場所 | Where | オフィス名・会議室・店舗名など具体的に |
| 関係者 | Who | 自分/同行者/取引先担当者など、必要な範囲で実名または役職名 |
| 事象の内容 | What | 何が起きたのかを淡々と。憶測と事実を分ける |
| 原因 | Why | 直接原因と、背景にある運用・体制の要因を分けて整理 |
| 経過・対応 | How | 発覚から収束までを時系列で。誰が何をしたかを明確に |
| 影響・損害 | — | 金銭的損害/業務影響/顧客への影響を分けて記載 |
| 再発防止策 | — | 誰が・いつから・どうやって運用するかまで落とし込む |
| 結語 | — | 「以上のとおりご報告申し上げます」など、報告の締め |
本文で迷わないための小さなコツ
- 事実と推測を分ける:「〜と思われる」「〜の可能性がある」は、事実とは別の段落にまとめる
- 時刻は分単位まで書く:「○時頃」より「○時○分頃」のほうが、再発防止策の検討材料になる
- 数字を入れる:影響範囲は件数・金額・時間で表現し、「多数」「甚大」のような曖昧表現を避ける
- 他責表現を避けつつ、構造的要因は事実として書く(「業務量は当日○件」など)
- 「再発防止に努めます」だけで終わらせず、運用変更の具体策とセットで書く
提出前に「これを読んだ人は、この事象を第三者に説明できるか?」と自問してください。説明できるだけの情報密度があるかが、社内向け顛末書の品質の目安になります。
提出先別の文面差|上司・部長・人事・経営層
社内向け顛末書は、宛名と本文の濃度を提出先に合わせて調整するのが実務的です。直属上司に出すものと、人事部・経営層に上げるものでは、必要な前提情報の量と再発防止策の粒度が変わります。
| 提出先 | 宛名の書き方 | 本文の重点 | 再発防止策の粒度 |
|---|---|---|---|
| 直属上司 | 「○○課長 ○○ ○○ 様」 | 事象の事実関係と直接原因を中心に。背景説明は最小限 | 現場運用レベル(チェック項目、確認手順など) |
| 部長・本部長 | 「○○部長 ○○ ○○ 様」 | 課・チーム横断で見たときの構造的要因まで触れる | 課単位の運用変更、人員配置、教育計画まで |
| 人事部 | 「人事部長 ○○ ○○ 様」または「人事部 御中」 | 規程との関係、コンプライアンス上の論点を整理 | 規程改訂の必要性、研修の実施、評価制度との接続 |
| 経営層(社長・役員) | 「代表取締役 ○○ ○○ 様」 | 事業・取引先・株主リスクなど経営インパクトを要約 | 全社運用、内部統制、外部公表方針との接続 |
宛名と「写し」運用
実務では、直属上司あてに提出した顛末書を、上司から人事・経営層に回覧する運用が多くなります。
最初から経営層あてに直接出すのではなく、組織のレポートラインに沿って提出するのが基本です。会社によっては、本書末尾に「写し送付先:人事部、総務部」と明記する運用もあります。
上位者あてに出すときの本文の調整
- 経過・対応の章を厚くし、「何が原因で」「どう収束させたのか」を一読で把握できるようにする
- 影響・損害の章で、社外影響(取引先・顧客・株主・規制当局など)を必ず触れる
- 再発防止策の章を「短期(1か月以内)/中期(半年以内)/長期(半年以上)」に分けて整理する
- 本文冒頭に「概要(要旨)」として3〜5行のサマリを置くと、上位者の読みやすさが大きく上がる
経営層あての顛末書では、原因の章で「個人の不注意」だけに帰着させず、運用・体制の要因まで触れるのが定番です。再発防止策の説得力が大きく変わります。
社内向け顛末書の汎用テンプレート(5W1H準拠)
ケース別の例文に入る前に、どの状況にも使い回せる汎用テンプレートを置いておきます。このテンプレートをベースに、ケースごとの章だけ差し替える運用がいちばん早く整います。

「概要」を冒頭に置きたい場合は、「記」の直前に「概要:○月○日に○○が発生し、○時○分に収束。社外影響は○○。再発防止策は○項目。」のような3〜5行のサマリを差し込みます。経営層あてや、複数部門にまたがる事案で特に有効です。
ケース1|軽微な業務ミスの社内顛末書 例文
発注ミス、伝票の入力誤り、社内資料の数字ずれなど、社外に影響が及ばずに収束した軽微な業務ミスは、社内向け顛末書の典型的な対象です。
事実関係を簡潔に、再発防止策を運用レベルまで落として書くのがコツです。文章量は多くなくてかまいません。
書き方のポイント
- 影響範囲が「社内のみ」で収束していることを明示する(社外影響の有無を必ず触れる)
- 金銭的影響は「無し」または金額で具体的に書く(「軽微」だけにしない)
- 再発防止策はチェックリスト・ダブルチェックなど、現場で運用できる具体策にする
- 再発防止策の運用開始日を必ず入れる
ケース2|システム障害の社内顛末書 例文
システム障害の社内顛末書は、復旧時刻と顧客影響の有無が読み手の最大の関心事です。技術的な詳細を書きすぎると、上位者には読みにくくなります。
冒頭に概要、本文に時系列、末尾に再発防止策(短期・中期・長期)の3層構造が定番です。
書き方のポイント
- 発生時刻・検知時刻・収束時刻を分単位で書く(「○時頃」を避ける)
- 影響範囲を「件数」と「機能」で表現する(例:「○○機能が○分間停止、影響顧客数は約○件」)
- 原因は「直接原因(技術的)」と「運用要因(プロセス・体制)」を分ける
- 再発防止策は技術対策と運用対策の両方を書く(片方だけだと説得力が弱い)
- 暫定対応と恒久対応を区別して記載する
システム障害の顛末書では、原因について「○○と推測される」と書く場面が出てきます。事実と推測を同じ段落に混ぜず、「直接原因(確認済み)」と「現時点での推測」を別項目に分けると、読み手が判断材料として扱いやすくなります。
ケース3|顧客クレームの社内顛末書 例文
顧客クレームの社内顛末書は、社外向けの謝罪文(始末書)とは別に、社内向けに事実関係を整理して提出する文書です。
クレームの内容、発生原因、対応状況、現時点での顧客の状況、再発防止策をまとめて、上司・人事・経営層が今後の対応方針を判断できる材料にします。
書き方のポイント
- 顧客の発言内容を要約して書く(生のまま書くと誤解の原因になる場合がある)
- 対応経過を時系列で書き、社外接触(電話・訪問・メール)の日時と担当者を明記する
- 現時点での顧客の状況(沈静化/継続中/訴訟示唆など)を必ず触れる
- 金銭的影響の見込みを「確定額」と「見込み額」に分けて記載する
- 再発防止策では「クレーム対応プロセス」と「業務プロセス」の両方の改善を書く
顧客クレームの顛末書は、社外文書と社内文書で内容を分けるのが原則です。社外向けの書面では謝罪と再発防止策を中心に、社内向けでは原因究明・経営判断材料を中心に書きます。社外文書をそのまま社内に流用すると、原因分析が浅く見えてしまいます。
テンプレートで素早く整えるなら
社内向け顛末書は、書く事実は決まっているのにレイアウトで時間を取られがちです。事実関係と再発防止策が決まったら、フォーマットはテンプレートで整えて、提出までの時間を短くするのが結果的に上司・人事・経営層から見たときの印象を良くします。
▶ 始末書・顛末書テンプレートを開く(社内向け顛末書として使えます)
手書きで提出する場合の作法は『始末書を手書きで書くときのルールと注意点』を、書き方の体系的な整理は『始末書の書き方完全ガイド』もご参照ください。
ケース4|情報漏洩・コンプライアンス事案の社内顛末書 例文
情報漏洩や個人情報の取扱い、コンプライアンス上の論点を含む事案では、社内向け顛末書は経営判断・対外公表・規制当局対応の基礎資料として扱われます。
事実関係の正確性、影響範囲の特定、再発防止策の網羅性が、ほかのケースより一段高いレベルで求められます。
書き方のポイント
- 「漏洩しました」と断定する書き方は避け、確認できた事実と社内調査の結果に基づく記述を分ける
- 情報の種類(個人情報/機密情報/技術情報)を区別する
- 影響範囲は「対象件数」「対象者」「外部への二次拡散の有無」を必ず明記する
- 対応状況は時系列で、社内通報・関連部署連携・必要に応じた当局通知まで触れる
- 再発防止策は、運用面・教育面・技術面の3軸で整理する
情報漏洩・コンプライアンス事案は、社内向け顛末書がそのまま対外公表資料・当局報告の元データとして使われる場合があります。憶測や断定を避け、調査結果に従う旨の留保を必ず添えるのが安全です。なお、個人情報保護法上の報告義務(個人情報保護委員会への報告・本人通知)の要否は、要配慮個人情報の有無・漏えい件数(1,000人超)・不正の目的の有無などの要件で判断されます。本人だけで判断せず、法務部・情報セキュリティ部門と必ず連携してください。
コンプライアンス事案で懲戒処分を伴う場合の整理は『譴責処分とは?始末書の書き方・例文と懲戒処分の影響まで解説』を、社内規定違反のケース別例文は『社内規定違反の始末書 例文』もご参照ください。
社内向け顛末書のよくある質問
Q1. 顛末書の提出を断ることはできますか?
顛末書は事実関係の報告文書という性格上、業務上必要な範囲で提出を命じることは正当な業務命令の対象になりうると整理されることが多いとされています。謝罪・反省の意思表示を含む始末書とは、提出強制の整理が異なります。事実と異なる内容を書くよう求められた場合は別問題で、その場で署名せず持ち帰る対応は正当です。
Q2. 顛末書に「申し訳ありません」と書く必要は?
原則不要です。顛末書は事実報告の文書で、謝罪は本来の目的ではありません。書き手として一言添えたい場合は、結語で「ご迷惑をおかけしましたこと、お詫び申し上げます」のように一文に留めるのが定番です。本文中で謝罪を繰り返すと、報告書としての客観性が下がります。
Q3. 直属上司に出すべきか、人事に直接出すべきか?
原則として、組織のレポートライン(直属上司)を通すのが基本です。直属上司が事実関係を確認したうえで、必要に応じて人事・経営層に共有します。直属上司を飛ばして人事へ直接提出するのは、よほどの事情(直属上司自身が当事者である等)でない限り避けるのが安全です。
Q4. 顛末書はどれくらいの長さで書けばよいですか?
事案の重さに合わせて変えてください。軽微な業務ミスならA4 1枚、システム障害・顧客クレーム・情報漏洩などの重い事案ならA4 2〜3枚が目安です。長く書くこと自体を目的にせず、5W1Hと再発防止策が網羅されているかで判断します。
Q5. 顛末書を出した後、懲戒処分が下されることはありますか?
顛末書は処分そのものではなく、事実報告の文書です。提出した後、会社が事実関係を踏まえて懲戒処分(譴責・減給・出勤停止など)を判断する場合があります。重い処分が見込まれるケースでは、提出前に事実関係の整理に時間をかけるのが安全です。
始末書の提出を断りたい場合の整理は『始末書を拒否できる?書かせる会社の法的根拠と対処法』に、反省文との違いは『始末書と反省文・顛末書の違い』にまとめています。
社内向け顛末書をテンプレートで素早く整える
社内向け顛末書は、フォーマットそのものはどのケースでも共通です。事実関係と再発防止策が固まったら、レイアウトはテンプレートに任せて、上司・人事・経営層への共有までの時間を短くするのが、結果的に最も評価への悪影響を抑える進め方になります。
▶ 始末書・顛末書テンプレートを開く(社内向け顛末書のフォーマットに対応)
社外(取引先・顧客)あての顛末書は『顛末書の書き方【社外向け】』を、書き方の体系的な整理は『始末書の書き方完全ガイド』をご参照ください。
コラム著者・編集者
TEMPLEX編集チーム
TEMPLEX編集チームは、ビジネス文書の作成・管理に精通した実務経験者と技術ライターで構成されています。送付状・請求書・見積書をはじめとする各種ビジネス書類のフォーマットや書き方のノウハウを、わかりやすく丁寧にお届けします。「Office不要で誰でもすぐ使える」をコンセプトに、忙しいビジネスパーソンの書類作成をサポートします。








