顛末書の書き方【社外向け】|取引先への謝罪報告に使える構成と例文

社外向け顛末書とは|事実報告に「お詫び」を添える文書
顛末書(てんまつしょ)は本来、業務上のトラブルについて発生から収束までの一部始終を、事実として淡々と報告する文書です。社内向けであれば「事実報告」だけで完結することも多いのですが、取引先・顧客・元請けなど社外に提出するときは、相手にすでに迷惑が及んでいるため、冒頭または末尾に明確なお詫びの一文を添えるのが商慣行となっています。
つまり社外向け顛末書は、「事実報告書」と「お詫び状」の中間にあたるハイブリッド文書です。本記事では、取引先に出しても恥ずかしくない構成(差出人会社名・宛名・件名・お詫び・5W1H事実経過・原因・対応・再発防止策・結びの謝罪)と、提出形態(書面手交・郵送・メール添付PDF)の選び分け、そして実務でよく出る4ケース(納品遅延/商品不良/システム障害/情報漏洩)の例文をまとめます。
社内向けの顛末書をお探しの場合は『顛末書の書き方【社内向け】|事実報告に徹する構成と例文』を、始末書全般との違いは『始末書と反省文の違い|どちらを書くべきか判断する基準』をご参照ください。
社内向けと社外向けで「変わるところ・変わらないところ」
社内向けと社外向けの顛末書は骨格こそ同じですが、目的が違うため文体や情報の出し方に差が出ます。違いを最初に押さえておくと、書く速度が一気に上がります。
| 観点 | 社内向け | 社外向け(取引先) |
|---|---|---|
| 主目的 | 経営層・上長への事実報告 | 相手への謝罪と説明責任の履行 |
| 宛名 | 代表取締役・部長など自社の上位者 | 取引先の会社名+代表者名(または担当部署長) |
| 差出人 | 担当者個人名(所属+氏名) | 原則として自社の会社名・代表者名で発出(重要案件) |
| お詫びの位置 | 原則不要(必要に応じて末尾に短く) | 冒頭にお詫び、末尾に再度の謝辞を添えるのが定型 |
| 情報の粒度 | 社内プロセスや原因分析を詳細に | 顧客視点で簡潔に。内部固有名詞は伏せるか抽象化 |
| 文体 | ですます調または常体(社内文書規程に従う) | 敬語・丁寧体で統一。時候の挨拶は通常不要。頭語結語は省略するフォーマットが現代では多いが、格式を重んじる場面では『謹啓』〜『敬具』を添える例もある |
| 提出形態 | 社内ファイル提出、メール添付など | 書面手交・郵送が原則。緊急時はメール添付PDF+後日原本郵送 |
社内向け顛末書をそのまま取引先に渡してはいけません。お詫びの一文がない/差出人が個人名のままになっている/内部の固有名詞が露出している、の3点が典型的な事故です。

社外向け顛末書の標準構成|9つの要素を順番どおりに
社外向け顛末書は、相手の担当者が短時間で「何が起きたか・なぜ起きたか・どう収束したか・今後どうするか」をつかめる順序で並んでいる必要があります。次の9要素を上から順に並べるのが無難です。
- 提出日(発出日。発生日ではない)
- 宛名(取引先の会社名+代表者名または担当部署長名。様または御中)
- 差出人(自社の会社名・住所・代表者名/担当部署と担当者名・連絡先)
- 件名(「○○の件に関する顛末書」と内容がひと目で分かる表現)
- 冒頭のお詫び(「平素は格別のお引き立てを賜り厚く御礼申し上げます」+「このたびは〜誠に申し訳ございませんでした」)
- 事実経過(発生日時・発覚経緯・関係者・5W1Hに沿った時系列)
- 原因(一次原因と背景要因を客観的に。言い訳は避ける)
- 対応(既に実施した暫定対応・恒久対応)
- 再発防止策+結びの謝罪(具体的な仕組み化と、結びの「重ねてお詫び申し上げます」)

事実経過は5W1Hで時系列に
事実経過は、いつ・どこで・誰が・何を・なぜ・どのように、を意識して時系列で書きます。社外提出文書では、感情的な表現や「だと思います」「のはずです」など推測の語尾は避け、確認できた事実のみを断定形で並べます。確認中の事項は「現在調査中」と明記してかまいません。
原因は「言い訳」と「分析」を分ける
社外向けで最も嫌われるのは、原因欄が言い訳になっているケースです。「業務量が多くて」「担当者が新人で」のような他責表現は、書いた瞬間に文書全体の信頼性を下げます。
一次原因(直接の引き金)と背景要因(仕組みの不備)を分けて記載し、再発防止策で背景要因を潰す構造にすると、誠実な文書になります。
再発防止策は「行動」まで落とし込む
「以後、注意いたします」だけで終わると、相手は「同じことが繰り返される」と判断します。チェックリスト化、ダブルチェック体制、システム的な制限、教育の実施日、責任者の指名など、第三者が読んで運用が想像できる粒度まで具体化してください。
提出形態の選び分け|手交/郵送/メール添付PDF
社外向け顛末書は「どう届けるか」も重要です。相手の業界慣習・トラブルの深刻度・スピード感の三軸で決めます。
| 提出形態 | 向いているケース | 注意点 |
|---|---|---|
| 持参・手交 | 重大トラブル/長年の取引先/謝罪訪問とセット | アポイントを取り、上長または役員が同行。封筒は白の角形2号、表に「顛末書在中」 |
| 郵送(書留・特定記録) | 遠方の取引先/持参が難しい/記録を残したい | 添え状(送付状)を必ず同封。配達記録が残る方法を選ぶ |
| メール添付PDF | 速報性が必要/相手担当者が在宅・地方/受信慣習がある相手 | PDFで送付(編集可能形式は避ける)。本文に概要と謝罪、添付に正式書面 |
| メール(速報)+郵送(原本) | 深刻度が高く、時間も惜しい場合の併用 | メール本文に「正式書面は別途郵送いたします」と明記 |
重大トラブルでは、メールやPDFだけで済ませるのは避けるのが無難です。電話で一報→書面持参または郵送、というのがビジネスマナーの王道です。メール添付PDFは「補助手段」と位置づけてください。
PDFで送るときの3つのチェック
- ファイル名は「顛末書_自社名_YYYYMMDD.pdf」など、相手側で識別しやすい命名にする
- 編集可能なWord形式ではなくPDFで送る(改ざん疑義の防止)
- 代表者名で発出する場合は社印・代表者印を画像で押した上でPDF化する

例文1|納品遅延の顛末書
納期に間に合わなかった場合の顛末書です。原因が自社にあるケースを想定し、暫定対応(先行出荷など)と恒久対応(生産計画の見直し)の両方に触れる構成にしています。
例文2|商品不良・不具合の顛末書
納品物に不良が含まれていた場合の顛末書です。代替品の手配など、相手の被害を最小化する暫定対応を必ず明記します。
例文3|システム障害・サービス停止の顛末書
オンラインサービスや基幹システムを提供している事業者向けの顛末書です。発生時刻・復旧時刻・影響範囲を明確にし、再発防止策はインフラ・運用・組織の各レイヤで具体化します。
例文4|情報漏洩の顛末書
情報漏洩は、顛末書の中でもとくに表現と提出方法に注意が必要なケースです。
- 憶測や未確認情報を書かない
- 二次被害の可能性に触れる
- 相談窓口を明示する
の3点を必ず満たしてください。重大案件では代表者名で発出し、書面持参または郵送が原則です。
個人情報漏洩は、規模や内容によっては個人情報保護委員会への報告義務(個人情報保護法)や、対象本人への通知義務が発生します。社外向け顛末書を作る前に、法務・コンプライアンス部門と必ず連携してください。
顛末書をメールで送付する場合のメール本文|4パターン
社外向け顛末書は、書面手交や郵送のほかに、PDF添付メールで送るケースも増えています。顛末書本体は別ファイル(PDF)として用意し、メール本文はその送付状の役割を果たします。状況別に4パターンの文面を用意しました。固有名詞・日時・対応内容の部分を自社の事案に合わせて書き換えてご利用ください。
メール本文に顛末書の内容そのものを丸ごと貼り付けるのは避け、顛末書本体はPDFで添付し、メールには概要・添付物の説明・連絡先のみを記載するのが一般的な作法です。
パターン1|顛末書を添付してご報告する基本のメール
事案がある程度収束し、顛末書を整えたうえで初めて文書として送付する、最も基本的な型です。
パターン2|緊急の第一報を入れた後に、文書として顛末書を送るメール
システム障害・情報漏洩・人身を伴う事案など、発覚直後に電話で第一報を入れた後、改めて文書として顛末書を送る場面で使う型です。電話で伝えた事実関係を文書として残す位置づけになります。
パターン3|取引先からの要請を受けて顛末書を提出するメール
取引先から「顛末書をお送りください」と書面で要請された場合の返信パターンです。要請に応じる旨を明示し、文書として正式に提出した記録を残します。
パターン4|追加情報・続報として再度送付するメール
一度顛末書を送付した後、追加の調査結果や対応状況の進捗が出た場合に、続報として再送する型です。前回送付分との関係を明示するのがポイントです。
メール送付時に押さえたい3つの注意点
- 件名に【顛末書送付】【続報】など内容が一目でわかるラベルを入れる(取引先側でも管理しやすくなる)
- 顛末書本体はPDFで添付し、メール本文には貼り付けない(改ざん防止と、文書としての体裁を保つため)
- 送信前に宛先・添付ファイル・社外秘の取扱いを必ずダブルチェックする(誤送信は新たな顛末書の対象になる)
メールでの送付が認められるか、原本の郵送が必要か、は取引先の文書管理ルールによります。重大事案や正式な記録として残したい場合は、メール送付に加えて原本の郵送を併用するのが安全です。
社外向け顛末書で避けたい5つのNG表現
社外向け顛末書は、書き方ひとつで「誠実」にも「不誠実」にも見えます。とくに避けたい5つのNG表現を整理しておきます。
- ①「忙しかった」「人手不足だった」など他責の言い訳 — 背景要因として書きたい場合は、再発防止策とセットで淡々と。
- ②「絶対に再発させません」「二度と起こしません」 — 結果保証は書かない。代わりに「再発防止策を実行してまいります」と行動ベースに。
- ③ 推測・伝聞の語尾(〜だと思います/〜のはずです) — 確認できた事実のみ断定形で。未確認は「現在調査中」と明記。
- ④ 過度に重い表現(「会社の信用を著しく毀損」など) — 後で記述自体が証拠化されうるため、事実より重く書かない。
- ⑤ 内部固有名詞(社内システム名・担当者個人名・処分内容) — 取引先には不要な情報。抽象化するか伏せる。
「弁護士監修」「業界最高水準」など景表法上の優良誤認にあたりうる表現は、再発防止策にも書かないほうが安全です。事実として実施する仕組みを淡々と書きます。
社外向け顛末書のよくある質問
Q1. 顛末書と始末書、社外には結局どちらを出すべき?
社外への提出は「顛末書(事実報告+お詫び)」が標準です。始末書は本来、社内の懲戒処分に伴う反省・謝罪の文書なので、社外には出しません。ただし、相手が「始末書」という名称を要求してきた場合は、相手の慣習に合わせて表題を変える運用もあります。中身は同じ構成で問題ありません。
Q2. 担当者個人名で出すべきか、代表者名で出すべきか
影響範囲が小さく、相手担当者ベースで処理が完結する案件は担当者の所属長名でも問題ありません。一方で、納品停止・大規模障害・情報漏洩など、自社全体の責任が問われるケースは代表者名(社長名)で発出するのが原則です。迷ったときは「相手から見た深刻度」で判断してください。
Q3. 手書きで出す必要はある?
社外向けは原則PCで作成・印刷で問題ありません。手書きにしたほうが誠意が伝わるという考え方もありますが、誤字や読みにくさで二度手間になるくらいなら、PC作成でレイアウトを整えたほうが結果的に丁寧です。
手書き版にしたい場合は『始末書を手書きで書くときの注意点と例文』を参考にしてください(始末書向けですが、社外文書の手書きルールも同様です)。
Q4. 添え状(送付状)は必要?
郵送するときは、白封筒に顛末書本体+送付状を同封するのが丁寧です。送付状には「○○の件につき、別紙のとおり顛末書をお届け申し上げます」と短く記載します。手交のときは送付状は不要ですが、封筒の表書きは「顛末書在中」とします。
Q5. 顛末書を出した後、追加で書面は必要?
再発防止策の進捗報告(実施完了報告書/改善報告書)を、後日あらためて発出するケースが多いです。とくに重大案件では、顛末書を1回出して終わりにせず、3カ月後や半年後に「再発防止策の実施状況」を改めて報告するのが信頼回復の近道です。
顛末書を整えるなら、テンプレートで時間を圧縮する
社外向け顛末書は、書式の整え方そのものに時間をかけるより、事実関係の精査と再発防止策の検討に時間を使うべき文書です。フォーマットの調整に追われて発出が遅れると、それ自体が新たな迷惑になりかねません。事実と対応策が固まったら、テンプレートに流し込んでスピーディーに整えるのが結果的に最も誠実な進め方です。
▶ 始末書・顛末書テンプレートを開く(社内・社外、始末書/顛末書の切り替えに対応)
書き方の総合ガイドは『始末書の書き方完全ガイド』に、ケース別例文の集約は『始末書・顛末書 例文集|ケース別テンプレート総まとめ』にあります。
コラム著者・編集者
TEMPLEX編集チーム
TEMPLEX編集チームは、ビジネス文書の作成・管理に精通した実務経験者と技術ライターで構成されています。送付状・請求書・見積書をはじめとする各種ビジネス書類のフォーマットや書き方のノウハウを、わかりやすく丁寧にお届けします。「Office不要で誰でもすぐ使える」をコンセプトに、忙しいビジネスパーソンの書類作成をサポートします。








