領収書に「お品代」「商品代」は使える?|税務リスクと具体的な書き換え例

「お品代として」「商品代として」は但し書きとして有効か?
結論から言うと、「お品代として」「商品代として」と書かれた領収書が即座に無効になるわけではありません。ただし、経費精算や税務調査の場面では否認リスクが高く、インボイス(適格請求書)の記載要件も満たさない可能性があるため、実務上は避けるべき表現です。
「お品代」も「商品代」も、何を買ったのか特定できない曖昧な表現です。少額の買い物であれば店名から推測できることもありますが、金額が大きくなるほど「使途不明金」として扱われるリスクが上がります。この記事では、なぜ「お品代」が使われ続けるのか、どんなリスクがあるのか、そして具体的にどう書き換えればよいかをまとめました。
なぜ「お品代で」「商品代で」と頼む人がいるのか
レジや店頭で「但し書きはお品代で」「商品代でお願いします」と言われた経験がある方は多いでしょう。「お品代」や「商品代」が選ばれる理由は、大きく3つに分類できます。
理由1: 何を買ったか知られたくない
贈答品やプライベート寄りの買い物で、品目を具体的に書かれると経理担当者や上司に中身を知られてしまうことを気にするケースです。取引先へのお中元・お歳暮、接待用の高額ギフトなどが該当します。
理由2: 但し書きに何と書けばいいかわからない
複数の商品をまとめて買ったときや、商品名が長いときに「何て書けばいいんだろう」と迷い、とりあえず「お品代で」と依頼してしまうパターンです。発行する店員側も、品目を一つひとつ確認する手間を省くために「お品代」で済ませてしまうことがあります。
理由3: 昔からの慣習
以前は社内の経費精算ルールが緩く、「お品代」「品代」でも問題なく通る会社が少なくありませんでした。慣習として定着していたため、経理部門が厳格化した今でもそのまま使い続けている方がいます。
どの理由であっても、後述するとおり「お品代」は経費処理と税務の両面でリスクがあります。面倒でも具体的な品目を書いてもらうのが安全です。
「お品代」「商品代」が否認される具体的な理由
「お品代」「商品代」と書かれた領収書には、主に3つのリスクがあります。
経費の内容が特定できない
経費精算では「何にいくら使ったか」を勘定科目に仕分ける必要があります。「お品代」では文房具なのか、書籍なのか、飲食なのか判別できないため、正しい勘定科目に振り分けられず、経理担当者が購入者に内容を問い合わせる手間が発生します。社内ルールで「お品代の領収書は受け付けない」と定めている会社もあります。
税務調査で「使途不明金」扱いされるリスク
税務調査では、領収書の但し書きは支出の実態を示す重要な根拠です。「お品代」が不自然に多い場合や、1件あたりの金額が大きい場合は、調査官から「何を購入したのか」を個別に説明するよう求められ、裏付け資料がなければ経費として否認される可能性があります。少額であっても「お品代」が10件、20件と並んでいれば目を付けられやすくなります。
インボイス制度での取扱い
2023年10月に始まったインボイス制度(適格請求書等保存方式)では、領収書に「課税資産の譲渡等に係る資産又は役務の内容」を記載することが法律上の要件です。「お品代」では、そもそも取引内容を客観的に特定できず記載要件を満たさないうえ、軽減税率8%の対象品目(飲食料品など)か標準税率10%の品目かの区別もできないため、インボイスとして認められない可能性があります。全商品が標準税率10%の店舗であっても、取引内容の記載義務は免除されません。要件を満たさない領収書では、受け取った側が仕入税額控除を受けられなくなるため、損をするのは支払った側です。
国税庁のインボイスQ&Aでは、適格簡易請求書(レシート型インボイス)にも「課税資産の譲渡等に係る資産又は役務の内容」の記載が必要とされています。「お品代」のような抽象的な表記が認められるかは取引内容が客観的に判断できるかどうかがポイントです。判断に迷う場合は、具体的な品名を書いておくのが最も安全です。
「お品代」の代わりに書くべき但し書き(ケース別)
「お品代」を避けるといっても、具体的に何と書けばいいのか迷う方は多いでしょう。ここではケース別に、そのまま使える書き換え例を紹介します。基本の形は「○○代として」です。
贈答品・ギフト
「お品代」が最も使われやすい場面が贈答品です。贈り先の用途に合わせて書き分けましょう。
事務用品・備品
飲食関連
書籍・セミナー
衣類・日用品・雑貨
複数品目をまとめるとき
品数が多い場合は、主要な品目を1つ書き、残りを「ほか○点」でまとめるのが実務上の定番です。
但し書きにすべての商品名を書ききれない場合は、領収書に「別紙明細のとおり」と記載し、レシートや納品明細書を添付する方法もあります。
「贈答品代として」は但し書きとして有効か?
「お品代」の代わりに「贈答品代として」と書く方は多いですが、これは有効なのでしょうか。結論としては、「贈答品代として」は「お品代」よりもはるかに望ましい表現です。「贈答品」という記載で、経費の勘定科目(交際費・接待交際費)への仕分けが可能になり、支出の目的も伝わります。
ただし、さらに具体的にできるなら「御中元代として」「御歳暮代として」「お祝い品代として」のように、贈答の目的まで書くほうが経理処理がスムーズです。税務調査でも「どの取引先に・何の目的で」贈ったかを説明しやすくなります。
| 但し書き | 評価 | 理由 |
|---|---|---|
| お品代として/商品代として | 非推奨 | 何を買ったか不明。勘定科目も判別不能 |
| 贈答品代として | 可 | 目的(贈答)がわかる。交際費に仕分け可能 |
| 御中元代として | 推奨 | 目的+時期が明確。経理処理が最もスムーズ |
| 菓子折り代として(手土産) | 推奨 | 品目が具体的。会議費か交際費かの判断も容易 |
発行者側の対応 ―「お品代で」「商品代で」と頼まれたら
店舗や事業者として領収書を発行する際に「但し書きはお品代で」と依頼されることがあります。このとき、「お品代」のまま発行しても法律違反にはなりませんが、相手の経費処理に支障をきたす可能性があることを知っておきましょう。
対応のポイント
- まずレシート(品目が印字されたもの)を一緒に渡せないか確認する。レシートが明細の代わりになる
- 品目が多い場合は「文房具代ほか○点として」のように、主要品目+点数でまとめる提案をする
- 贈答品であれば「お祝い品代として」「御中元代として」など、目的がわかる表現で提案する
- お客様がどうしても「お品代」を希望する場合は、そのまま発行しても違法ではない。最終的に決めるのは受け取る側
インボイス発行事業者は特に注意
適格請求書発行事業者(インボイス登録事業者)が発行する領収書は、適格簡易請求書として扱われます。この場合、「取引内容」の記載が法的な要件となります。「お品代」では取引内容が客観的に特定できないため、受け取った相手が仕入税額控除を受けられなくなる可能性があります。お客様のためにも、できるだけ具体的な品名を記載しましょう。
よくある質問
Q. 「お品代」の領収書はすべて経費にできない?
いいえ、即座に無効にはなりません。領収書の有効性は「お品代」と書かれているだけで失われるわけではないです。ただし、会社の経費精算ルールで「お品代NG」としている場合は突き返されますし、税務調査では内容を確認される可能性があります。後からレシートや購入履歴で補足できるよう、証拠を残しておくと安心です。
Q. 少額(数百円〜数千円)でも「お品代」は避けるべき?
少額の場合、コンビニや文具店など店名から購入品の推測がつきやすいため、実務上は問題になりにくいことが多いです。ただし、1件では問題なくても「お品代」が何件も続くと全体として不審に見えます。できるだけ品名を書いてもらう習慣をつけておくのが無難です。
Q. すでにもらった「お品代」の領収書はどうすればいい?
領収書は原則として自分で書き換えてはいけません。対処法としては、レシートや購入明細を領収書と一緒に保管し、「何を買ったか」がわかる状態にしておくことです。クレジットカードの利用明細やネット通販の注文履歴も、社内の経費精算で内容を証明する補足資料になります。
ただし、クレジットカードの利用明細だけでは消費税の仕入税額控除の証拠(インボイス)にはなりません。カード会社の明細はカード加盟店(実際の販売者)が発行した書類ではなく、登録番号も記載されていないため、消費税法上の適格請求書には該当しないからです。仕入税額控除を受けるには、加盟店が発行したレシートや領収書(インボイス)を必ず保管してください。
Q. 領収書の但し書きを「書き直してほしい」と頼める?
発行した店舗に再発行を依頼することは可能です。ただし、再発行時は旧領収書を回収してもらい、二重発行にならないよう注意してください。なお、発行日が変わる場合はその旨を記載してもらいましょう。
Q. 「品代」「お品代」「商品代」に違いはある?
意味はいずれも同じです。「お品代」は「品代」に「お」を付けた丁寧表現で、「商品代」は「商品の代金」を略した表現です。税務上・法律上の効力に違いはなく、どれも曖昧な表現として同等に扱われます。具体的な品名への書き換えが推奨される点も共通です。
コラム著者・編集者
TEMPLEX編集チーム
TEMPLEX編集チームは、ビジネス文書の作成・管理に精通した実務経験者と技術ライターで構成されています。送付状・請求書・見積書をはじめとする各種ビジネス書類のフォーマットや書き方のノウハウを、わかりやすく丁寧にお届けします。「Office不要で誰でもすぐ使える」をコンセプトに、忙しいビジネスパーソンの書類作成をサポートします。








