介護の事故報告書の書き方|厚労省様式の記入例と市町村への報告の流れ

介護の事故報告書の書き方|厚労省様式の記入例と市町村への報告の流れ

市町村への報告が必要な事故とは(報告対象の範囲)

介護施設で利用者の事故が起きたとき、まず判断したいのが「これは市町村へ報告すべき事故か」です。厚生労働省の通知では、次の2つは原則としてすべて市町村へ報告するとされています。

  1. 死亡に至った事故
  2. 医師(施設の勤務医・配置医を含む)の診断を受け、投薬・処置など何らかの治療が必要となった事故

それ以外の事故を報告するかどうかは、各自治体の取扱いによって異なります(出典:厚生労働省「介護保険施設等における事故の報告様式等について」介護保険最新情報Vol.1332)。骨折・打撲・擦過傷などでも、受診して治療を受けたなら②に該当します。自施設のある市町村が独自に報告範囲を定めている場合も多いので、迷ったら市町村の事故報告取扱要綱を確認するのが確実です。

「ケガには至らなかったが、ヒヤリとした」段階の出来事は、事故報告書ではなくヒヤリハット報告書で記録します。治療が必要なケガや死亡が発生済み=事故報告書、未発生の気づき=ヒヤリハットと覚えておくと、どちらを書くべきか迷いません。

ケガに至らなかった「ヒヤリ」とした段階の記録については、あわせてこちらもご覧ください。

介護のヒヤリハット報告書の例文|転倒・誤嚥・誤薬・離設など類型別の書き方
報告書

介護のヒヤリハット報告書の例文|転倒・誤嚥・誤薬・離設など類型別の書き方

介護のヒヤリハット報告書の例文を、転倒・転落・ずり落ち・誤嚥/窒息・誤薬・異食・離設・チューブ抜去など介護に多い類型ごとにそのまま使える形で紹介。事故報告書との使い分け(被害の有無)、実名で正式名称を使うコツ、職員を責めずに共有するための書き方まで、介護現場の言葉でまとめました。コピーできる例文付き。

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様式は厚労省の標準様式(令和6年改訂)を使う

市町村への事故報告は、厚生労働省が示す標準様式(別紙様式)を使うのが基本です。この様式は令和6年11月29日付の通知(Vol.1332)で改訂され、それまでの様式(令和3年のVol.943)は廃止されました。改訂のポイントは、選択式の項目がチェックボックス形式になり、電子データで集計・分析しやすくなったことです。報告も原則として電子メール等の電磁的方法で行うこととされています。

標準様式は、次の9つのまとまりで構成されています。チェックを入れる欄と、自由記述で具体的に書く欄に分かれており、自由記述の中身で報告書の質が決まります

様式の項目書く内容
1 事故状況報告区分(第1報/第□報/最終報告)・程度(受診・入院・死亡)
2 事業所の概要法人名・事業所名・事業所番号・サービス種別・所在地・保険者
3 対象者氏名・年齢・性別・要介護度・認知症高齢者の日常生活自立度
4 事故の概要発生日時・発生場所・事故の種別・発生時の状況の詳細
5 事故発生時の対応発見からの対応・受診方法・医療機関・診断名・診断内容
6 事故発生後の状況利用者のその後・家族等への報告・連絡した関係機関
7 事故の原因分析本人要因・職員要因・環境要因に分けて分析
8 再発防止策手順変更・環境変更・評価時期などの具体策
9 その他特記事項上記に収まらない補足
厚労省標準様式(Vol.1332)の構成

これまで市町村独自の様式を使ってきた場合でも、将来的な情報の蓄積・活用のために標準様式の項目を含めることが求められています。なお報告は原則として電磁的方法ですが、自治体によっては専用の電子申請システムやメール送付など、提出ルートが指定されている場合があるため、提出前に必ず確認を

第1報から最終報告までの流れ

事故報告は一度で完結するものではなく、第1報 → 続報 → 最終報告と、段階を分けて出すのが基本です。様式の冒頭にも「第1報/第□報/最終報告」を選ぶ欄があります。

段階タイミング書く範囲
第1報事故発生後すみやかに、遅くとも5日以内を目安様式の項目1〜6を可能な限り記載(原因分析・再発防止策は後でよい)
続報(第□報)状況の変化があったとき随時入院・診断の確定、利用者の経過など、変わった点を追記
最終報告原因分析・再発防止策がまとまり次第項目7(原因分析)・項目8(再発防止策)を含めて完成させる
事故報告の3段階と提出のタイミング

ポイントは、原因分析や再発防止策が固まるのを待って第1報を遅らせないことです。第1報は「いつ・どこで・誰に・何が起きて・どう対応したか」がわかれば出してよく、原因分析(項目7)・再発防止策(項目8)は作成でき次第あらためて報告するという流れが通知でも示されています。

死亡や生命に関わる重大な事故の場合は、5日を待たずまず電話で市町村へ第一報を入れてから様式を提出するよう求める自治体が多くあります。緊急性の高い事故ほど、連絡のスピードが優先されます。

事故の状況・対応の書き方|事実を時系列で、主観を混ぜない

様式の「発生時の状況・事故内容の詳細」と「事故発生時の対応」は、報告書の心臓部です。ここで意識したいのは、発見の瞬間から対応までを時系列で、確認できた事実だけを書くことです。事故報告書は反省文ではないので、「不注意だった」「申し訳ない」といった反省や憶測は書きません

NG(主観・あいまい)OK(事実・具体的)
目を離した隙に転んでしまったようです。たぶん立ち上がろうとしたのだと思います。10:45、職員Aが居室を訪室したところ、利用者がベッド脇の床に座り込んでいるのを発見した。
すぐに対応し、大事には至りませんでした。10:47 看護師Bへ報告、バイタル測定(血圧○/○、脈拍○)。10:55 右股関節の痛みの訴えあり、11:30 ○○病院を受診した。
発生時の状況・対応の書き方(NG/OK)

「見ていなかったため発生時の状況が不明」という場合も、推測で埋めず「発見時の状況」を事実として書けば十分です。誰が発見し、そのとき利用者がどんな状態だったか、何時に誰へ報告し、どんな処置・受診をしたか。時刻を添えて並べるだけで、伝わる報告になります。専門用語や施設独自の略語は避け、介護を知らない人が読んでも状況が再現できる文章を目指してください。

事故種別ごとの記入例(事故概要・原因分析・再発防止策)

様式の「事故の種別」は、転倒・転落・誤嚥/窒息・異食・誤薬(与薬もれ等)・医療処置関連(チューブ抜去等)から選びます。種別ごとに、押さえるべき原因と再発防止策の観点は変わります。ここでは「事故概要」「原因分析」「再発防止策」をそのまま貼り付けて使える記入例を、種別別に用意しました。〇〇や時刻・部位は自施設の状況に置き換えてご利用ください。

ここに載せた5種別のほか、「医療処置関連(チューブ抜去など)」の記入例や、さらに細かいシチュエーション別の例文は、下部の介護事故報告書テンプレート(TEMPLEX)でも確認できます。フォームに入力すればそのままPDFにできます。

転倒|記入例
【事故概要】 14:10、職員が食堂から居室へ移動中、利用者が居室前の廊下で前のめりに転倒しているのを発見した。床に擦り傷あり、左膝の痛みの訴えがあった。15:00 ○○整形外科を受診し、左膝打撲と診断された。 【原因分析】 本人要因:下肢筋力の低下があり、ふらつきが見られていた。当日は便意により急いで移動しようとしていた。 職員要因:移動の見守りが行き届かず、付き添えていなかった。 環境要因:廊下に手すりはあるが、居室前の数mは手すりが途切れていた。 【再発防止策】 手すりが途切れる区間に可動式の手すりを設置する(○月末まで)。トイレ誘導の時間帯を見直し、移動が集中する時間に職員を配置する。歩行状態をカンファレンスで再評価し、必要に応じて歩行器を導入する(評価時期:○月)。
転落(ベッド・車いす)|記入例
【事故概要】 2:30、巡視中の職員が、利用者がベッドから滑り落ち床に座り込んでいるのを発見した。意識は清明、頭部・体幹に外傷は確認されなかったが、念のため2:45 当直看護師へ報告し経過観察とした。翌朝○○病院を受診し、異常なしと診断された。 【原因分析】 本人要因:寝返りが大きく、夜間に起き上がろうとする動作が見られていた。 職員要因:就寝前のベッド柵の設置位置の確認が不十分だった。 環境要因:ベッドの高さが高めに設定されており、柵の一部が外れていた。 【再発防止策】 ベッドを低床に変更し、離床センサーを設置する(○月○日対応)。就寝前チェックリストにベッド柵の固定確認を追加する。夜間巡視の間隔を見直す(評価時期:○月)。
誤嚥・窒息|記入例
【事故概要】 12:20、昼食介助中に利用者が突然むせ込み、顔色不良となった。ただちに食事を中止し背部叩打法を実施、12:22 看護師が吸引を行い食塊を除去した。12:25 救急要請し、○○病院へ救急搬送、誤嚥性肺炎の疑いで入院となった。 【原因分析】 本人要因:嚥下機能の低下があり、食事を一度に口へ入れる傾向があった。 職員要因:一口量とペースの確認が不十分なまま介助していた。 環境要因:当日の副菜が利用者の嚥下状態に対して刻みが粗かった。 【再発防止策】 本人の嚥下評価をST(言語聴覚士)に依頼し、食形態を見直す(○月)。一口量・声かけ・ペースを介助手順書に明記し、職員間で統一する。窒息時対応の手順を掲示し、定期的に実技訓練を行う。
誤薬(与薬もれ・誤配)|記入例
【事故概要】 18:00の与薬時、職員AがB様の夕食後薬をC様に配薬し、C様が服用した後に取り違えに気づいた。ただちに看護師へ報告、18:20 配置医へ連絡し、経過観察の指示を受けた。当該薬剤による有害事象は確認されていない。 【原因分析】 本人要因:特になし。 職員要因:配薬時の氏名照合を声出し・指差しで行っていなかった。一人で配薬・確認まで行っていた。 環境要因:薬包の氏名表示が小さく、隣席の利用者と取り違えやすい配置だった。 【再発防止策】 配薬時はフルネームの照合を声出し・指差しで実施し、配薬者と別の職員によるダブルチェックを徹底する。薬包の氏名表示を拡大し、配薬車の並びを座席と対応させる。誤薬時の連絡フローを掲示する。
異食|記入例
【事故概要】 15:40、職員が居室を訪室した際、利用者がティッシュを口に入れているのを発見した。すぐに声をかけ口腔内から除去、誤嚥や窒息の所見はなかった。15:50 看護師へ報告し、経過観察とした。 【原因分析】 本人要因:認知症により、食べ物と食べ物でない物の区別がつきにくい状態だった。 職員要因:居室内に口に入りやすい物が置かれていることへの注意が不足していた。 環境要因:手の届く位置にティッシュ箱や小物が置かれていた。 【再発防止策】 居室内の手の届く範囲から、口に入る大きさの物を撤去・収納する。訪室時に居室内の環境を確認する項目をチェックリストに追加する。本人の行動パターンを記録し、見守りの時間帯を調整する(評価時期:○月)。

どの種別でも、原因分析は「本人要因・職員要因・環境要因」の3つに分けて書くのが様式の指定です。1つの要因に偏らせず3方向から見ることで、「本人の不注意」で終わらない、実効性のある再発防止策につながります。

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原因分析と再発防止策で評価が分かれる

市町村が報告書を通して最も見ているのは、同じ事故を繰り返さないために、施設が何を変えるのかです。ここが弱いと、報告書全体が形だけのものに見えてしまいます。

原因分析でやりがちなのが、「本人の不注意」「職員の確認不足」で止めてしまうことです。これでは対策が「以後注意する」になり、再発を防げません。「なぜそうなったのか」をもう一段掘り下げると、仕組みの問題が見えてきます。

浅い分析(NG)掘り下げた分析(OK)
職員の確認不足が原因。配薬時の氏名照合を一人で行う運用になっており、ダブルチェックの手順が決まっていなかった。
本人の不注意による転倒。移動が集中する時間帯に職員配置が薄く、見守りが行き届かない状態が常態化していた。
原因分析を一段掘り下げた書き方

再発防止策は、「誰が・いつまでに・何を・どう変えるか」と、効果を確かめる評価時期までセットで書きます。標準様式の再発防止欄も「手順変更・環境変更・評価時期および結果等」を書く欄になっています。人の心がけに頼る対策より、手順・環境・仕組みを変える対策のほうが、再発防止策として高く評価されます。

再発防止欄が「注意喚起する」「徹底する」だけになっていたら書き直しのサインです。「センサーを設置する」「手順書に追加する」「配置を見直す」など、具体的な行動に置き換えられないか考えてみてください。

家族・市町村への報告を忘れずに

事故が起きたときの連絡は、市町村だけではありません。運営基準では、事故が発生した場合、速やかに市町村・利用者の家族等へ連絡し、必要な措置を講じることとされています。様式にも「家族等への報告(続柄・報告年月日)」を記載する欄があります。

  • 利用者の家族等:事故発生後すみやかに連絡する(様式に続柄・報告日を記載)
  • 保険者である市町村:標準様式で報告する(治療を要する事故・死亡事故は原則すべて)
  • 事業所の所在地が利用者の保険者と異なる場合:所在地の市町村へも報告する

なお、警察への届出が必要なケース(事件性が疑われる場合など)では、様式の「連絡した関係機関」欄に警察や他の自治体への連絡を記録します。どこへ・いつ連絡したかを残しておくことが、後の確認に役立ちます。

報告の範囲・提出方法・提出先(保険者か所在地市町村か、都道府県への報告の要否など)は自治体ごとに細かく異なります。最終的には、自施設のある市町村が公表している事故報告の取扱要綱・提出フォームに従ってください。

報告書の基本の型もあわせて確認

介護の事故報告書も、結論から書く・事実と意見を分けるといったビジネス報告書の基本の型がベースになっています。報告書全体の構成や、報告書・始末書・顛末書の違いをあらためて押さえたいときは、以下も参考にしてください。

報告書の書き方|基本構成・5W1H・例文テンプレと種類別の使い分け
報告書

報告書の書き方|基本構成・5W1H・例文テンプレと種類別の使い分け

報告書の書き方を、表題・宛先・5W1Hの基本構成、結論から書く・事実と意見を分けるといったビジネス報告の鉄則、そのまま使える構成テンプレ付きで解説。業務・調査・事故・トラブル・クレーム・改善など種類別の使い分けと、「報告書・始末書・顛末書・経緯報告書の違い」も整理します。

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介護事故報告書テンプレートでPDFを即作成

厚労省の標準様式をExcelで一から整えるのは手間がかかります。TEMPLEXの介護事故報告書テンプレートは、Vol.1332の様式に沿ってフォームに入力するだけでA4のPDFが作れます。報告区分(第1報/続報/最終報告)・発生場所・事故の種別・要介護度などは選択式で、原因分析や再発防止策は本記事の記入例をそのまま貼り付ければ完成します。介護事故報告書はこちらから作成できます。

TEMPLEXの介護事故報告書テンプレート
TEMPLEXの介護事故報告書テンプレート
  • 報告区分・程度(受診・入院・死亡)をチェック式で選択
  • 発生場所・事故の種別・要介護度・認知症自立度も選択式
  • 発生時の状況・原因分析・再発防止策は本記事の例文をコピペ
  • プレビューで体裁を確認しながらPDFをダウンロード(Microsoft Office不要)

提出先の市町村が独自フォームでの提出を求めている場合もあります。様式の指定を確認したうえで、施設内での記録・控えや、家族説明用の資料としてもテンプレートを活用してください。

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コラム著者・編集者

TEMPLEX編集チーム

TEMPLEX編集チームは、ビジネス文書の作成・管理に精通した実務経験者と技術ライターで構成されています。送付状・請求書・見積書をはじめとする各種ビジネス書類のフォーマットや書き方のノウハウを、わかりやすく丁寧にお届けします。「Office不要で誰でもすぐ使える」をコンセプトに、忙しいビジネスパーソンの書類作成をサポートします。

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