介護のヒヤリハット報告書の例文|転倒・誤嚥・誤薬・離設など類型別の書き方

介護のヒヤリハット報告書の例文|転倒・誤嚥・誤薬・離設など類型別の書き方

介護のヒヤリハット報告書とは|「ケガにならずに済んだ」を残す

介護のヒヤリハット報告書は、利用者のケガや事故には至らなかったものの、「転びそうになった」「もう少しで薬を間違えるところだった」といった“ヒヤリ”を記録し、施設で共有する書類です。誰かのミスを責めるためのものではなく、同じ場面で次の利用者を守るために残します。

書く内容はシンプルで、「いつ・どこで・誰に・何が起こりそうだったか/なぜ起きかけたか/どうすれば防げるか」がそろっていれば十分です。立派な文章よりも、読んだ職員が同じ場面を思い浮かべられる具体性のほうが大切で、記憶が鮮明なその日のうちに出すのが基本です。

ヒヤリハットの基本的な書き方の型・良い例と悪い例の対比は、介護に限らない汎用の解説でまとめています。型から押さえたいときはあわせてご覧ください。ここでは介護に絞り、介護現場で実際に多い類型ごとの例文を紹介します。

ヒヤリハット報告書の書き方と例文|良い例・悪い例で学ぶ書き方のコツ
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ヒヤリハット報告書の書き方と例文|良い例・悪い例で学ぶ書き方のコツ

ヒヤリハット報告書の書き方を、良い例文と悪い例文の対比でわかりやすく解説。発生状況・想定される事故の型・問題点・心身の状態・対策の各項目の埋め方、ハインリッヒの法則(1:29:300)の意味、人を責めずに事実を書くコツ、そのまま使える汎用例文と書き出しフレーズまでまとめました。

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事故報告書との違いは「被害の有無」で分ける

介護の現場で迷いやすいのが、ヒヤリハット報告書と事故報告書のどちらを書くかです。判断の基準はシンプルで、実際に利用者に被害(ケガ・体調変化)が出たかどうかで分けます。

ヒヤリハット報告書(介護)事故報告書
書くとき被害ゼロ(ケガ・治療なし)で済んだときケガ・治療・死亡など被害が発生したとき
目的事故の芽に気づいて未然に防ぐ起きた事故の事実・原因・対応を残し報告する
提出先施設内で共有(社内記録)施設内+保険者である市町村など外部への報告も
書き方簡潔でよい(多く集めるため)様式に沿って詳しく、時系列で
ヒヤリハット報告書と事故報告書の使い分け

たとえば「転びそうになったが支えて事なきを得た」ならヒヤリハット、「転倒して打撲し受診した」なら事故報告書です。未発生の気づき=ヒヤリハット、発生済みの被害=事故報告と覚えておくと迷いません。治療を要するケガや死亡が起きた場合の事故報告書は、市町村への報告も関わるため、書き方を別にまとめています。

介護の事故報告書の書き方|厚労省様式の記入例と市町村への報告の流れ
報告書

介護の事故報告書の書き方|厚労省様式の記入例と市町村への報告の流れ

介護施設の事故報告書の書き方を、厚生労働省の標準様式(令和6年改訂・Vol.1332)に沿って解説。市町村への報告対象となる事故の範囲、第1報から最終報告までの流れ、転倒・転落・誤嚥/窒息・誤薬・異食など事故種別ごとの「事故概要・原因分析・再発防止策」の記入例、家族への報告までまとめました。そのままコピーできる例文付き。

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介護のヒヤリハットを書くときのコツ

様式は施設ごとに異なりますが、介護のヒヤリハット報告書に共通して並ぶのは発生日時・場所/対象者/状況の経過/結果(被害の有無)/ヒヤリとしたポイント・要因/対応・再発防止策です。そのうえで、介護ならではの書き方のコツがいくつかあります。

  • 対象者はイニシャルや「利用者様」で済ませず、施設のルールに沿って実名で記す(取り違えや共有漏れを防ぐため)
  • 「ADL」「BPSD」などの略語や施設内の隠語ではなく、正式名称・誰でもわかる言葉で書く
  • 結果欄には「被害なし(ケガなし)」とはっきり書く。事故ではないことが伝わり、事故報告書と区別できる
  • 要因は「○○さんの不注意」ではなく「環境・手順・本人の状態のどこに危険があったか」で書く
  • 再発防止策は「注意する」で終わらせず、見守り・声かけ・環境・手順を“どう変えるか”まで書く

とくに差がつくのが「状況の経過」と「再発防止策」です。状況は誰が・どこで・何をしていて・どうなりかけたかを時間とともに具体的に書き、対策は本人の心がけではなく「環境・見守り・手順・物」を変える案で書くと、報告書が「読んで終わり」から「次に活かせる」ものになります。

ヒヤリハット報告は件数を集めることに意味があります。きれいに書こうとして提出が遅れるより、短くてもその日のうちに出すほうが大切です。様式が複雑で書く手が止まるなら、チェック式+ひと言で出せる簡単な様式に変えるのも有効です。

類型別の例文|転倒・転落・誤嚥・誤薬・離設ほか

介護で起こりやすいヒヤリハットの類型ごとに、【状況】【要因】【対策】の3つに分けた記入例を用意しました。介護の報告書はこの3欄に分かれていることが多いので、欄ごとにそのままコピーして貼り付けられます。〇〇や時刻・部位・お名前は自施設の状況に置き換えてご利用ください。

例文1|転倒
【状況】16:20、デイルームから居室へ歩いて戻ろうとされた〇〇様が、敷物の端に足を取られてふらつき、近くにいた職員がとっさに支えて転倒を防いだ。被害なし(ケガなし)。あのまま転倒していれば打撲や骨折につながった可能性がある。 【要因】下肢筋力の低下でふらつきがあったこと、動線上に端のめくれた敷物が置かれていたこと。 【対策】動線上の敷物を撤去(または固定)し、移動が多い時間帯は付き添い・見守りを増やす。
例文2|転落(ベッド・車いす)
【状況】3:10、巡視中の職員が、〇〇様がベッド柵を越えて足を床側に下ろそうとしているのを発見し、声をかけて体勢を支えた。被害なし。発見が遅れていればベッドからの転落につながるところだった。 【要因】夜間に起き上がろうとする動作が見られていたこと、ベッドが高めの設定で柵の一部がしっかり固定されていなかったこと。 【対策】ベッドを低床に変更し、就寝前チェックに柵の固定確認を加え、夜間の離床センサー設置を検討する。
例文3|ずり落ち(車いす・いす)
【状況】14:45、レクリエーション中に車いすに座っていた〇〇様が、徐々に前方へずり落ちそうな姿勢になっているのに職員が気づき、姿勢を整え直した。被害なし。気づくのが遅れれば座面から滑り落ちる事故につながる可能性があった。 【要因】長時間の座位で姿勢が崩れやすかったこと、フットサポートやクッションの調整が本人に合っていなかったこと。 【対策】クッション・フットサポートの位置を見直し、座位時間が長くなる場面では定期的に姿勢を確認する。
例文4|誤嚥・窒息
【状況】12:15、昼食介助中に〇〇様が一口量の多いまま続けて飲み込もうとし、軽くむせ込んだ。すぐに食事を止めて姿勢を整え、落ち着いたため誤嚥には至らなかった。被害なし。一歩間違えば誤嚥・窒息につながるところだった。 【要因】嚥下機能の低下があること、介助の一口量とペースが本人に合っていなかったこと、当日の副菜の刻みがやや粗かったこと。 【対策】一口量・声かけ・ペースを介助手順に明記し、本人の嚥下状態に合わせて食形態を見直す。
例文5|誤薬
【状況】18:00の与薬時、職員が〇〇様の夕食後薬を別の利用者へ渡そうとしたが、配薬直前に氏名表示と照合して取り違えに気づき、服用前に正しい本人へ渡し直した。被害なし。気づかなければ誤薬につながるところだった。 【要因】氏名照合を声出し・指差しで行っていなかったこと、配薬を一人で確認まで済ませる運用だったこと、薬包の氏名表示が小さく隣席と紛らわしかったこと。 【対策】フルネームの声出し・指差し照合と別職員によるダブルチェックを徹底し、薬包の氏名表示を拡大する。
例文6|異食
【状況】15:30、居室を訪室した職員が、〇〇様がテーブルのティッシュを口に入れようとしているところを発見し、声をかけて手元から離していただいた。被害なし。気づかなければ異食・誤嚥につながる可能性があった。 【要因】認知症により食べ物と食べ物でない物の区別がつきにくい状態だったこと、手の届く位置に口に入る大きさの物が置かれていたこと。 【対策】居室内の手の届く範囲から小物を撤去・収納し、訪室時に環境を確認する項目をチェックリストに加える。
例文7|離設(無断外出)
【状況】17:10、〇〇様が「家に帰る」と話しながら玄関へ向かい、外へ出ようとされたところを職員が気づいて声をかけ、フロアへお戻りいただいた。被害なし。気づくのが遅れれば施設外への離設・行方不明につながるところだった。 【要因】夕方に帰宅願望が強く出やすいこと、その時間帯に玄関付近の見守りが手薄だったこと、出入口の通知の仕組みが十分でなかったこと。 【対策】帰宅願望が出やすい時間帯の見守り・声かけを強化し、玄関の開閉を知らせるセンサーの設置を検討する。
例文8|チューブ抜去(経管栄養・点滴・カテーテル)
【状況】20:40、経管栄養の注入中に〇〇様が体動でチューブを手で引っ張り、抜けかけているのを職員が発見して固定し直した。被害なし。そのまま抜去していれば中断・再挿入や誤注入のリスクにつながるところだった。 【要因】注入中に手が動きやすい状態だったこと、チューブの固定とルートの取り回しが緩かったこと、注入中の見守りが行き届いていなかったこと。 【対策】チューブの固定方法とルートの取り回しを見直し、注入中の見守り・訪室の頻度を高める。

どの類型も、要因は「本人の状態・職員の対応・環境」の3方向から書くと、「本人の不注意」だけで終わらない実効性のある対策につながります。例文の【状況】【要因】【対策】の3欄をなぞるだけで、伝わるヒヤリハット報告になります。

職員を責めず、職場で共有する文化が報告を増やす

ヒヤリハットがいちばん集まらなくなる原因は、「報告すると怒られる・評価が下がる」という空気です。報告した職員が責められる職場では、危険の芽がそのまま隠れてしまい、いつか同じ場面で本当の事故が起きてしまいます。当事者を責めず、職場全体の課題として扱うことが、報告を増やすいちばんの近道です。

同じ要因が残っていれば、誰が担当しても同じヒヤリハットは起こり得ます。だからこそ「○○さんのミス」で終わらせず、その人がそう動いてしまった背景(時間帯・人員・動線・手順・本人の状態)に目を向けることが、再発防止につながります。

書く側が意識すること

  • 自分のヒヤリも隠さず出す。怒られるかより「次に同じ思いをする利用者・職員を減らせるか」で判断する
  • 「○○さんが悪い」ではなく「○○の状態・手順・環境が危なかった」と、原因を人から事象へ移して書く
  • うまく書こうとしすぎない。短くても、起きかけた事実と気づいた危険が伝わればよい

受け取る側(リーダー・施設)が意識すること

  • 報告してくれたことにまず感謝を伝え、責めない(報告へのお礼が次の報告を生む)
  • 報告者個人を対策担当に決めつけず、原因と対策はチーム・施設全体の課題として扱う
  • 出てきた対策を1つでも実行し、「報告したら現場が変わった」という実感を返す

集めたヒヤリハットは、共有して初めて価値が出ます。申し送りや事故防止委員会で取り上げ、似た危険のある利用者・場面に横展開するところまで回すと、報告が「書いて終わり」になりません。

例文づくりに迷ったら|公的なヒヤリハット情報を参考に

「自分の現場のヒヤリハットをどう言葉にすればいいか」「他施設ではどんな事例があるか」を知りたいときは、公的に集められた事例も参考になります。厚生労働省 老健局の委託事業として、福祉用具・介護テクノロジーの利用にかかわる事故・ヒヤリハット情報が収集・公開されています(テクノエイド協会「福祉用具 事故・ヒヤリハット情報」)。ベッドや車いす、移乗用リフトなど、用具に関わるヒヤリハットの記入の参考になります。

何を「ヒヤリハット」として報告するかの基準は、施設ごとのマニュアルや事故防止指針で決まっていることが多くあります。まずは自施設の様式・基準を確認し、迷ったら「まず1件、1行でも書く」ことから始めてください。

ヒヤリハット報告書テンプレートでPDFを即作成

ヒヤリハット報告書をExcelやWordで一から整えると、項目や選択肢を作る手間がかかります。TEMPLEXのヒヤリハット報告書テンプレートなら、発生状況・想定される事故の型・要因・対策などをブラウザのフォームに入力するだけでA4のPDFが作れます。シーンで「介護」を選ぶと、想定される事故の型が転倒・転落・ずり落ち・誤嚥/窒息・誤薬・異食・離設・チューブ抜去に切り替わるので、介護現場のヒヤリハットをそのままチェック式で記録できます。ヒヤリハット報告書はこちらから作成できます。

TEMPLEXのヒヤリハット報告書テンプレート
TEMPLEXのヒヤリハット報告書テンプレート
  • シーンで「介護」を選び、発生日時・場所・あらましを入力
  • 想定される事故の型・心身の状態は介護向けの選択肢からチェック
  • 本記事の類型別例文をコピペして対策欄まで完成
  • プレビューで体裁を確認しながらPDFをダウンロード(Microsoft Office不要)

様式づくりに時間をかけるより、1件でも多くのヒヤリハットを書き残すことが、結果的に利用者の重大事故を遠ざけます。本記事の例文をたたき台に、自施設の言葉で書いてみてください。

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コラム著者・編集者

TEMPLEX編集チーム

TEMPLEX編集チームは、ビジネス文書の作成・管理に精通した実務経験者と技術ライターで構成されています。送付状・請求書・見積書をはじめとする各種ビジネス書類のフォーマットや書き方のノウハウを、わかりやすく丁寧にお届けします。「Office不要で誰でもすぐ使える」をコンセプトに、忙しいビジネスパーソンの書類作成をサポートします。

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