見積書の日付はいつにする?発行日・提出日の決め方とバックデートの注意

見積書に書く日付は「発行日」
見積書の右上に入れる日付は、見積りを相手に提示する「発行日」です。実務上は、見積書を作成して取引先に渡す(メール送付・郵送・手渡しする)日を記載します。納品日や入金日のような後工程の日付ではなく、また「いつから取引が始まるか」を表す日付でもありません。

見積書はあくまで取引前に金額・条件を提示するための書類なので、領収書の「受領日」や請求書の「締め日」のように、何かの事実が起きた日を厳密に証明する役割はありません。だからこそ「いつ提示した見積りか」を示す発行日が、日付欄の中心になります。
発行日を入れておくと、同じ案件で見積りを出し直したときに「どの時点の見積りか」を区別できます。見積書番号とあわせて管理すれば、価格を改定した後でも「先月の見積りなのか、今回の見積りなのか」が一目で分かり、社内・取引先双方の確認ミスを防げます。
見積書・納品書・請求書を後からまとめて作るとき、3枚を全部同じ日付にするのは避けます。本来は「見積書(発注前)→ 納品書(納品時)→ 請求書(検収後)」と時系列が分かれるはずの書類が同日付だと、不自然な処理として指摘される原因になります。
提出日・送付日とずれるときの考え方
「作成した日」と「実際に提出・送付する日」が数日ずれることはよくあります。結論としては、相手に提示する日(送付・提出する日)を発行日にしておけば実務上問題ありません。社内でメンバーが下書きした日と、上長の確認を経て先方へ出す日が違っても、出す日に合わせて日付を入れれば自然です。
テンプレートやフォーマットの日付欄が「発行日」ではなく「作成日」となっている場合も、基本的には提出する日を記載して問題ありません。見積書は提示した日を起点に扱う書類なので、欄の名称が違っても「相手に渡す日」を入れておけば実務上の支障はありません。
迷ったときは、発行日を起点に有効期限を数えるという前提で考えると判断しやすくなります。提出が遅れて発行日と提出日が大きく開くと、相手が検討できる期間(=有効期限までの残り日数)が短くなってしまうためです。提出までに時間が空きそうなら、提出する日に合わせて発行日を入れ直すほうが親切です。
注意したいのは、前に出した古い見積書を、日付だけ今日に書き換えて使い回すケースです。仕入価格や数量の前提が当時から変わっているのに日付だけ新しくすると、社内の価格改定と矛盾したり、根拠を聞かれて答えられなくなったりします。条件が変わっているなら、面倒でも内容を見直して作り直しましょう。
内容を修正して出し直すときは、修正した日の日付で再発行し、見積書番号に枝番(例:「-2」)を付けておくと履歴が追えます。元の見積書をそのまま上書きするより、「いつ・どの版で金額が変わったのか」が双方に残るので、後から「言った・言わない」のトラブルになりません。
提出が先になることが分かっているなら、有効期限を「発行日から○日」ではなく「20××年○月○日まで」と具体的な期日で書くと、起算日のずれによる誤解を防げます。期限の書き方そのものは後述の関連記事で詳しく解説しています。
和暦・西暦どちらでもよい
発行日を「令和○年○月○日」と書くか「20××年○月○日」と書くかは、和暦・西暦のどちらでも問題ありません。見積書の様式に法的な決まりがないのと同じで、年号の表記方法に決まったルールはありません。比較的新しい会社は西暦、古くからある会社や官公庁向けは和暦を使う傾向がある程度です。
大切なのは、1枚の見積書の中、そして見積書・納品書・請求書をまたいで表記を統一することです。発行日が西暦なのに有効期限が和暦、といった混在は読み手が混乱します。会社で「西暦に統一」などと決めておくと、書類間の突き合わせも楽になります。
和暦を使うときは「R6」「H」などと略さず正式に書くのが無難です。元号をまたぐ年(改元のあった年など)は、相手が和暦に不慣れだと年が分かりにくいこともあるため、取引先に合わせて選ぶとよいでしょう。
日付なしの見積書は有効か
結論から言うと、日付がない見積書も、それだけで無効になるわけではありません。見積書は様式が法律で決まっていないため、発行日の欄が空でも「金額を提示した」という意思表示としての効力自体は残ります。
ただし実務では、日付なしの見積書は次のような不都合を招きます。発行する側にとってもデメリットが大きいので、特別な事情がない限り発行日は入れておくべきです。
- どの時点の見積りか分からない ── 同じ案件で複数回見積りを出すと、どの金額で話が進んでいるのか双方で食い違う原因になる
- 有効期限の起算日が定まらない ── 「発行日から○日」と書いていても、発行日が空欄では期限がいつまでか確定できない
- 相手の社内で通りにくい ── 受け取った側が稟議・経費申請に使うとき、日付のない書類は差し戻されることがある
「提出のタイミングが読めないので日付を空けておきたい」という相談を受けることがありますが、その場合は空欄のままにせず、提出時にその日の日付を入れて渡すのが基本です。どうしても期限を長めに取りたいなら、有効期限のほうを「発行日より6か月」などと長めに設定して対応します。
過去の日付(バックデート)を頼まれたときの注意
取引先や社内から「先月の日付で見積書を出してほしい」と頼まれることがあります。まず押さえたいのは、実際にその日に見積りを提示していたなら、当時の日付で後から書面化するのは問題ないということです。電話やメールで先月すでに金額を伝えており、その記録が残っているのであれば、提示した日を発行日にして見積書を作成しても不自然ではありません。
問題になるのは、実際には提示していない過去の日付を、事実と違うと分かったうえで記載するバックデートです。たとえば「今月作った見積りを、予算消化のために先月付にしてほしい」といった依頼がこれにあたります。
事実と異なる日付にするリスク
よく「私文書偽造罪になる」と言われますが、自社名義の見積書に事実と違う日付を書く行為だけで、ただちに私文書偽造罪(刑法第159条)が成立するわけではありません。同罪が処罰するのは他人の名義を勝手に使う「有形偽造」で、自社名義の書類に虚偽の内容を書く「無形偽造」は原則として対象外だからです。とはいえ、事実と異なる日付には次のような実務上のリスクがあります。
- 税務上のペナルティ ── 売上・経費の計上時期を操作する目的だと評価されると、決算操作・脱税への加担と見なされ、依頼に応じた側も税務調査で重加算税などの対象になりうる。納品書のように事実がないと出せない書類で相手と「通謀」したケースは特に重く扱われる
- 詐欺罪・背任罪などの共犯・幇助 ── 取引先の社内不正(背任・横領)や、第三者を欺く詐欺の道具として日付が使われると、それを知って協力した側が共犯・幇助に問われるおそれがある
- 信用の失墜 ── 日付の改ざんが発覚すると、その後の取引で書類全体の信頼性を疑われる
頼まれたときの対処はシンプルです。実際に提示した日付なら、その日付で発行する。提示した事実が確認できない過去日付を求められたら、「実際の日付でしか発行できません」と断る。これが発行側を守る基本姿勢です。なお、契約の効力を過去にさかのぼらせたい場合は、日付を偽るのではなく、契約書側で「効力発生日」を別に定めるのが正しいやり方です。
とはいえ、取引先からの依頼を真正面から断ると角が立つこともあります。個人の判断ではなく社内ルールを理由にすると、相手の顔を立てつつ穏やかに辞退できます。
有効期限の起算日との関係
見積書の発行日は、有効期限を数えるときの起算日になります。「有効期限:発行日より30日間」と書いた場合、ここでいう発行日は当然この見積書に記載した発行日のことなので、発行日が正しく入っていることが前提になります。
起算日のあいまいさを避けたいなら、「発行日より○日」と「20××年○月○日まで」のどちらで書くかを決めておくとよいでしょう。前者は発行日との連動が分かりやすく、後者は受け取った相手がいつまでか一目で判断できます。提出までに間が空く見積りは、後者の具体日付のほうが誤解が起きません。
有効期限を何日・何か月に設定するかの目安や、見積書への具体的な記載例 は、別の記事にまとめています。期限の決め方で迷ったらそちらをご覧ください。

見積書の有効期限|一般的な期間の目安と記載例・期限切れの対応
見積書の有効期限を何日にするか、一般的な目安(2週間〜6か月)と商材・業種別の考え方を解説。「発行日より30日間」などそのまま使える記載例、起算日は発行日か提出日か、期限切れの見積書の扱い・再発行、受け取った側が発注できるかまで整理します。
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