支払い誓約書の書き方(取引先・売掛金向け)|分割払い・遅延損害金の文例

支払い誓約書とは(業務取引における用途)
本記事は取引先(法人・個人事業主)間の売掛金回収に使う支払い誓約書を解説しています。個人間の借金・慰謝料・養育費など消費者間の金銭トラブルに関する誓約書は、弁護士・司法書士にご相談ください。
支払い誓約書とは、代金を支払えていない債務者(買い手)が債権者(売り手)に対して「いつまでに・いくら・どのように支払います」と書面で約束する書類です。債務の存在を認め、支払い計画を具体的に約束させる点が督促状との最大の違いです。
取引先から支払いが遅れた場合、いきなり訴訟を起こすのは取引関係の維持という面でもコスト面でもハードルが高いのが実情です。支払い誓約書を取得しておけば、「相手が債務を認めている」という証拠になり、万が一の訴訟・強制執行でも強力な証拠書類として機能します。また、時効の更新(民法152条1項の「承認」にあたる)効果も得られるため、消滅時効(商事債権は原則5年)のリセットにも有効です。
督促から法的措置までの段階別フロー
支払い遅延が発生してから法的措置に至るまでには段階があります。支払い誓約書の取得は「交渉による解決」と「法的手続き」の間に位置する重要なステップです。以下のフローを把握しておくと、社内稟議や弁護士相談の際にも話が早くなります。
段階1〜2の督促を行っても支払いがない場合に、段階3として支払い誓約書の取得に進みます。段階3で合意できれば、取引関係を維持しながら債権を回収できる可能性が高いため、まずはここでの解決を目指すのが実務上の定石です。
支払い誓約書の必須項目
支払い誓約書には法定の書式はありませんが、法的な証拠力を持たせるためには以下の5項目を必ず盛り込む必要があります。1つでも欠けると、後日「金額が違う」「そんな約束はしていない」と争われるリスクがあります。
| 項目 | 記載内容 | 欠けた場合のリスク |
|---|---|---|
| 1. 債務の特定 | 「2026年4月分の売掛代金」など、いつ・何の取引で発生した債務かを明示 | どの債務について誓約したのかが不明確になり、証拠力が低下 |
| 2. 金額 | 未払い総額を具体的な数字で記載(消費税込み・遅延損害金の扱いも明記) | 金額の争いが生じた場合に解決が困難 |
| 3. 支払期日・計画 | 一括の場合は期日、分割の場合は各回の金額と期日を一覧化 | 支払い義務の履行時期が不明確で督促の根拠が弱くなる |
| 4. 違反時の効果 | 期限の利益喪失・遅延損害金・法的措置への同意など | 違反しても実質的なペナルティがなく、誓約の抑止力が弱い |
| 5. 日付・署名・押印 | 作成日、債務者の住所・氏名(法人は代表者名)・押印 | 誰がいつ誓約したか不明となり、文書全体の証拠力が失われる |

なお印鑑は法律上必須ではありませんが、実務上は代表者印(実印)の押印があると証拠としての信用力が大きく上がります。記名+押印のセットが理想です。
分割払いの設定例
取引先が一括で支払えない場合、現実的な回収手段として分割払いを認めるケースは少なくありません。分割払いを設定するときの実務上のポイントは3つあります。
- 分割回数は3〜6回程度が一般的 — 回数が多すぎると回収が長期化し、相手の資金繰り悪化リスクも高まる
- 各回の金額は均等割りか、最終回に残額をまとめる — 端数を最終回に寄せると管理しやすい
- 支払方法は銀行振込に限定し、振込手数料は債務者負担とする — 現金手渡しは証拠が残りにくい
支払い計画の書き方は「各回の支払日を具体的な年月日で指定する」のが鉄則です。「毎月末日」のような書き方でも有効ですが、「2026年6月30日に10万円」のように1回ごとに金額と日付を明記するほうが、入金確認と督促がしやすいため実務ではこちらが推奨されます。
分割払いの間隔は月末締め・翌月末払いに合わせると、経理の消込作業と噛み合います。取引先の締日にも配慮すると、支払いの遅延リスクを下げられます。
遅延損害金の設定(年3% vs 約定14.6%)
支払いが遅れた場合に備えて、遅延損害金の利率を明記しておくことが重要です。2020年4月の民法改正(令和2年施行)により旧商法514条の商事法定利率(年6%)は廃止され、現在の法定利率は民法404条に基づく年3%です(3年ごとに見直し)。
| 利率 | 根拠 | 適用場面 |
|---|---|---|
| 年3%(法定利率) | 民法404条 | 約定がない場合に自動適用 |
| 年14.6%(約定利率) | 当事者間の合意 | 商事取引の支払い遅延で広く使われる慣行的な利率 |
支払い誓約書に遅延損害金の定めがない場合、法定利率の年3%しか請求できません。約定利率として年14.6%を明記しておくことで、支払い遅延に対する抑止力が大幅に高まります。ただし消費者契約法の適用がある場合(B2Cの売買など)は年14.6%を超える部分が無効となる可能性があるため、B2B取引に限定して設定するのが安全です。
年14.6%は日割り計算で1日あたり約0.04%です。遅延日数が長引くと相当な金額になるため、支払い誓約書に明記するだけで支払いの本気度が上がるケースが多く見られます。
期限の利益喪失条項
分割払いを認める場合に必ずセットで入れるべきなのが「期限の利益喪失条項」です。これは「分割払いを1回でも怠ったら、残額を一括で請求できる」という取り決めです。民法137条にも期限の利益の喪失事由が定められていますが、約定で範囲を広げておくほうが実務上は安全です。
期限の利益喪失条項がないと、たとえば4回分割の1回目を払わなかった場合でも、債権者は「1回目の分割金」しか請求できず、2回目以降の期日が来るまで待つ必要があります。条項を入れておけば、1回でも不払いがあった時点で残額全額を一括請求でき、すぐに法的措置に移行できます。
- 「分割金を一度でも怠ったとき」 — 最も一般的な喪失事由
- 「手形・小切手が不渡りになったとき」 — 取引先の信用不安に対応
- 「破産・民事再生等の申立てがあったとき」 — 法的整理に入ると個別回収が困難になるため
- 「差押え・仮差押えを受けたとき」 — 他の債権者に先を越されるリスクへの備え
上記のうち、支払い誓約書では最低限「分割金を一度でも怠ったとき」を入れておけば機能しますが、取引金額が大きい場合は2番目以降も含めておくと安心です。
連帯保証人を立てる場合(民法改正の注意点)
取引先の資力に不安がある場合、連帯保証人を立ててもらうことで回収リスクを下げることができます。2020年4月施行の改正民法(465条の6)では、個人が事業用の「貸金等債務」の保証人になる場合に公正証書(保証意思宣明公正証書)が必要とされていますが、売掛金(未払い代金)は「貸金等債務」に該当しないため、売掛金の連帯保証には原則として公正証書は不要です。ただし、未払い代金を借入金に切り替える契約(準消費貸借契約)を結ぶ場合は「貸金債務」に変わるため、同条が適用され公正証書が必要になります。判断に迷う場合は弁護士にご相談ください。
連帯保証人は、主たる債務者と同列の責任を負います(催告の抗弁権・検索の抗弁権がない)。つまり債権者は主たる債務者に請求せずに、いきなり連帯保証人に全額を請求することも法的には可能です。この点を連帯保証人本人が十分に理解したうえで署名してもらう必要があります。
売掛金の保証では公正証書は原則不要ですが、準消費貸借契約に切り替えた場合は話が変わります。法人の代表取締役が個人として保証する場合は経営者保証の例外に該当しますが、代表者以外の役員・従業員に個人保証を求める場合は公正証書が必要です。実印+発行3ヶ月以内の印鑑証明書をセットで提出してもらうのが鉄則です。連帯保証人からも同様に取得してください。
公正証書化のすすめ(強制執行を可能にする)
支払い誓約書を公証役場で「公正証書」として作成し、「強制執行認諾条項」を入れると、相手が約束を破った場合に裁判を経ずに直接強制執行(銀行口座の差押え等)が可能になります。通常は訴訟→判決→強制執行と3ステップが必要ですが、公正証書があれば判決なしで強制執行に進めるため、回収のスピードが格段に上がります。
| 私文書の誓約書 | 公正証書 | |
|---|---|---|
| 作成場所 | 当事者間で自由に作成 | 公証役場で公証人が作成 |
| 証拠力 | 署名・押印があれば証拠になるが、偽造の争いが生じうる | 公文書として高い証拠力(偽造の争いが起きにくい) |
| 強制執行 | 訴訟→判決が必要 | 強制執行認諾条項があれば判決なしで可能 |
| 費用 | 無料 | 公証人手数料が必要(債務額に応じて5,000円〜数万円) |
| 手間 | 当事者の署名のみ | 公証役場に当事者が出頭(代理人可) |
公正証書化が特に推奨されるのは、債務額が100万円以上、または取引先の信用に明確な不安がある場合です。公証人手数料は債務額100万円超〜200万円以下で7,000円、500万円超〜1,000万円以下で17,000円が目安です(公証人手数料令9条別表)。回収不能になるリスクと比較すれば、十分に元が取れる投資です。
公正証書の作成には当事者双方(または代理人)が公証役場に出頭する必要があります。相手方が出頭を拒否する場合は公正証書化ができないため、私文書の誓約書で対応しつつ、別途訴訟の準備を進めることになります。手続きの詳細は弁護士・司法書士にご相談ください。
支払い誓約書の全文テンプレート(売掛金・分割払い)
ここまで解説した必須項目・分割払い・遅延損害金・期限の利益喪失をすべて盛り込んだ全文テンプレートです。○○の部分を自社の取引内容に合わせて書き換えてください。
第5条の「強制執行を取ることに異議を申し立てない」は、相手への心理的な抑止力や裁判時の証拠としては有効ですが、私文書の誓約書にこの一文があるだけでは即座に強制執行はできません。裁判を経ずに差押えをしたい場合は、後述の公正証書化が必要です。
相手が個人事業主(フリーランス)の場合は、法人名・役職の代わりに「屋号+個人の氏名」を記載し、個人の実印を押印してもらいます。住所は個人の現住所を記載してください。
法人・個人を問わず、押印が実印であることを証明するため、発行3ヶ月以内の印鑑証明書をセットで提出してもらうのが鉄則です。認印だけでは「自分は押していない」と否認されるリスクがあります。
収入印紙の要否
単なる売掛金の支払い約束(債務の承認)であれば、原則として収入印紙は不要です。ただし、未払い代金を借入金に切り替える契約(準消費貸借契約)にする場合は、金銭消費貸借契約書(1号文書)に該当し、印紙が必要になります。高額な支払い誓約書で判断に迷う場合は、税務署や税理士に確認してください。
連帯保証人を付ける場合は、前述の「連帯保証」条項を第6条として追加し、保証人の署名欄を設けます。公正証書にする場合は、末尾に「本誓約書と同内容で公正証書を作成する場合、債務者は強制執行を受けることを認諾する」旨の一文を加えておくとスムーズです。
支払い誓約書を取った後の運用
支払い誓約書は取得して終わりではありません。入金管理と次のアクションをあらかじめ決めておくことで、実際の回収率が大きく変わります。
- 入金日に必ず消込確認を行う — 分割払いの場合、各回の入金日に銀行口座を確認し、入金額・日付を記録する
- 入金がなければ即日連絡する — 1日でも遅れたら電話またはメールで確認。放置すると「黙認した」と解釈される恐れがある
- 期限の利益喪失が発生したら書面で通知する — 「○月○日の支払いが確認できないため、期限の利益喪失条項により残額○○円の一括支払いを請求します」と内容証明郵便で送付
- 一括請求にも応じない場合は弁護士に相談する — 公正証書があれば強制執行、なければ訴訟(支払督促・少額訴訟含む)の準備に移行
支払い誓約書の原本は債権が完済されるまで必ず保管してください。コピーでは証拠力が下がります。完済後は返却するか、「完済確認書」を発行して双方の記録として残すのが一般的です。
社内の債権管理台帳(Excel等)に「支払い誓約書取得済み」のフラグを立て、分割払いの各回期日をカレンダーに登録しておくと、消込漏れを防げます。
TEMPLEX で支払い誓約書をPDF作成
TEMPLEX では、誓約書・同意書のテンプレートにフォームで入力するだけで、A4サイズのPDFをブラウザだけで即ダウンロードできます。Word不要・会員登録不要で、そのまま印刷して取引先に提出してもらう運用が可能です。
誓約書の基本的な書き方や構成・法的有効性の基礎知識については、こちらの記事もあわせてご覧ください。
誓約書・同意書
誓約書の書き方|法的有効性・必須項目・シーン別例文集とNG条項チェック
繰り返しになりますが、個人間の借金や慰謝料・養育費に関する誓約書は、本記事の対象外です。弁護士・司法書士にご相談ください。
コラム著者・編集者
TEMPLEX編集チーム
TEMPLEX編集チームは、ビジネス文書の作成・管理に精通した実務経験者と技術ライターで構成されています。送付状・請求書・見積書をはじめとする各種ビジネス書類のフォーマットや書き方のノウハウを、わかりやすく丁寧にお届けします。「Office不要で誰でもすぐ使える」をコンセプトに、忙しいビジネスパーソンの書類作成をサポートします。








